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透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

高過庵

2008-01-30 | A あれこれ考える

 ①           ②


 ③

■**この人は、学術的な大著をそれに似合った文体でものすかたわら、啓蒙書のスタイルを借りて、荒唐無稽な法螺話をでっちあげたりする。(中略)まともな建築家たち(?)がそれはないだろうというようなルール違反をやりながら、ぬけぬけとそれが「思想」なのだといったりする。**

前回取り上げた磯崎新さんが「乞食照信を論ず」というエッセイのなかでこのように書いています。

学術的な大著に①を荒唐無稽な法螺話(かどうか・・・)に②をルール違反に③の高過庵を対応させてみました。ルール違反ってべつにこの建築が基準法違反ということではないです、誤解なきよう。(農地内の工作物扱いということだそうで・・・)


④神長官守矢史料館の内観 

藤森さんの建築家としてのデビュー作、神長官守矢史料館は守矢家七八代当主の守矢早苗さんが藤森さんと幼なじみだったことから「大学の建築の先生になっている照信ちゃん」に白羽の矢を立てて設計を依頼したそうです(「タンポポハウスのできるまで」による)。

今回、引いたカードの「高過庵」はこの史料館のすぐ近くにあります。藤森さんが自分ちの畑に山から切り出してきた栗の木を立ててその上に茶室を造ってしまったというわけです。

しまった!高すぎた! とこの茶室に高過庵と命名したのでしょう。藤森さんらしいユーモアを感じます。

私が撮った高過庵はイラストの高過庵とは違って下のハシゴが外してあります(分かりにくいですが)。まさか木を登って中に入ろうなどと考える人はいないでしょう。

同様に史料館では収蔵庫に至る階段を外してあります(内観写真)。貴重品が納められているのでしょう。どちらも防犯としては完璧。

建築家はよく同じ手法を繰り返します。確か赤瀬川原平さんの「ニラハウス」でも藤森さんは同じことをしていたような気がします。資料が手元に無いので未確認ですが・・・。

見たことない東京

2008-01-29 | A あれこれ考える



 週末東京 その8

「週末東京」 なんだかつまらないタイトルでブログを書いてしまった。反省。 いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」や黒沢明とロス・プリモスの「ラブユー東京」(古い!)という歌のタイトルに倣ってブログのタイトルを替えて再度アップしておく。

今回は東京国立博物館(平成館)@上野で開催中のこの特別展。

見たことありますか? 道長自筆の日記。奇を衒うでもなく平凡でもなく上手いコピーだ。

近衛家の所蔵品の展覧会。宮廷貴族が筆先に託した書の美。私の日常からははるか彼方の優雅な世界。この国には千年も前からこんなに洗練されたみやびがあったんだ・・・。

感想を書こうにも、無縁な世界のことゆえ書きようもなく・・・。





中年オジサンには分からないゾ東京

2008-01-29 | A あれこれ考える

 週末東京 その7
今夜はです!!

アートな週末。東京都写真美術館で開催中の3つの展覧会を観ました。

①「文学の触覚」
② スティル|アライブ
③ 土田ヒロミのニッポン

先ず地下1階で開催中の「文学の触覚」

この展覧会はブックマークしてある川上弘美 関連サイト(別に川上弘美が好きというわけではありません、あくまでも作品が好きということです)で知りました。

パンフレットには**現代に活躍する文学作家+メディアアーティストのコラボレーションとあり、本来はむ人のイマジネーションにゆだねられる文学作品の世界を、多様なかたちで視覚化します。**とあります。期待して出かけたのですが・・・。

現代アートはよく分かりませんが、とりわけ映像による表現は中年おじさんの理解を拒絶する存在です。文学から立ち上がる視覚的なイメージを映像化するなどという試みをまともに考えた私バカよね、でした。

紙ふぶきのように舞う文章。

よく分からなかったけれど谷崎の「陰翳礼讃」の文章と多分同調している映像。

「七つの質問」という作品、川上弘美の「あなたの好きな色は何色ですか?」といった(正確に覚えてはいませんが、この類の質問)と磁性を帯びた液体の造形とが一体どういう関係なのかワカンナ~イでした。

質問に液体がきちんと応答するくらいのことをプレゼンしてもらわないと・・・、そう映画「惑星ソラリス」の海のように。

次、
スティル|アライブ 

屋代敏博という作家の「回転回LOVE」、じゃなかった「回転回LIVE」というプロジェクトが面白かったです。

スローシャッターで動いているものを写すとボケて存在感が希薄になります。学校の教室や卒業式の会場などで生徒達に回転してもらってそれをスローシャッターで写真に収めると、「チビクロさんぼ(って使ってよかった?)
な世界」が写るというワケ。意味不明だと思いますから、パンフレットを写真に撮ってアップします。


学校の生徒達のパフォーマンスを撮るこのプロジェクト、表現のオリジナリティを評価していいでしょう。



ラスト、土田ヒロミのニッポン 

日本人が群れている。写っている人たちがお互いに全く無関係で極めて離散的、なんとも不思議な光景。写真という表現手段の可能性を感じました、とさ。


 


何に見えますか東京

2008-01-29 | A あれこれ考える



Q この門扉、何に見えますか?

 週末東京 その5

東京駅の丸の内北口前、「丸の内オアゾ」の書店丸善は私が東京する際に必ず立ち寄るスポットです。ゆったりとしたスペースで静かに本を探すことができます。インテリアも「優」。4階のカフェでの読書は「幸」。

この書店で『銭湯からガウディまで 一眼レフカメラの建築観察日記』下村純一/クレオという本を見つけました。カバーデザインにはちょっと軽い中身か?と思わせるような雰囲気が漂っていますが、実際はいたって「まとも」。

建築の魅力をキッチリ伝える写真、文章もまた真面目。藤森さんのような柔らかな表現で綴ってはいませんが、こんな文章が書けたらいいなと思います。

この本にも取り上げられているのが、有名な鉄製の門扉。有名なと書いて、設計者がギマールだということは知っていますが、この建物の名前は・・・?、カンニングして、カステル・べランジェ 19世紀末の作品、そうアール・ヌーボー。

A 左を向いた女性の顔

「ふたつの小さな点が目で、門扉の左側は顔の輪郭、右側には髪と首筋を表現している」と説明されるとなるほど確かにそう見えてくるから不思議です。

この門扉はデザインを取り上げた本にはよく紹介されていますが、このような指摘は初めて読みました。 この建物のオーナーのマダム・フルニエではないかと著者は推察しています。

このように著者は建築をじっくり観察してデザインの背後にあるものをこの門扉の例のように読み取っています。

なかなかいい本です。が、製本がよくなくて既に私の本はばらばらになってしまいました。

ところで、先の門扉の写真を美大出身の友人に見せたところ直ちに「女性の顔」に見えると答えました。感性が鋭いのでしょう・・・。

今は私も女性の顔にしか見えません。そのような「先入観」を持ってしまいましたから。


ロートレック東京 

2008-01-29 | A あれこれ考える
■ 週末東京 その4

「ロートレック展」が3月9日までの会期で始まった(サントリー美術館)。ロートレックといえばシンプルな構成のポスター。

ロートレックが描く踊り子を始めとする人物はどうも表情が暗い。暗くてどこか寂しげな表情をしている。それは私がそのように彼の絵を観ようとしているからなのかも知れない・・・。

会場にはモデルになった踊り子達の写真も何点か展示されていた。写真とロートレックの絵を比べてみるとふっくらとした顔が絵ではほっそりとした顔に描かれている。

展示作品には小さく描かれた顔のデッサンもあった。上手い!! びっくり!

ロートレックに関する知識は全くなかった。会場で手にしたパンフレットによると、彼は南仏の貴族の家系に生まれたということだが、少年期に骨折がきっかけで脚の成長が止まってしまったという。「濃い血」が原因ではないかと友人から聞いた。

身体的なハンディが彼の心に少なからぬ影を落としたに違いない、と私は勝手に決め込んでしまった。絵の鑑賞には「解釈」という側面があると思うがその比重が案外大きいのかも知れない。

ダンスホールや娼館に通いつめてそこの人々を彼独自の視点で捕らえた作品に宿る「影」、それはこの画家の心象の投影、あるいは鑑賞者としての私の心象の投影に違いない。



 chat_noirさん、庭園美術館で始まった興味深い展覧会の情報をいただきましたが、ロートレック展でタイムアップ、行くことができませんでした。残念です。情報提供のお礼に「CHAT NOIR」を載せます。

続 繰り返し東京

2008-01-27 | B 繰り返しの美学

 週末東京 その3 

繰り返しの美学 東京の街で見かけた繰り返し その②

その①は横フレの写真をアップ、今回は縦フレの写真をアップする。



今東京で最も話題のスポット、ミッドタウンは和のテイストなデザインで統一されている。ストライプな照明の繰り返し、上質な雰囲気を醸し出している。



 日本テレビ@汐留 この斬新なデザイン、基本デザインを担当したのは・・・、誰だっけ?調べないと分からない。先日読んだ『新・都市論TOKYO』に出ていたな。そうだ、リチャード・ロジャース! どうも外国人の名前は覚えられない・・・。僕としてはノーマン・フォスターのデザインを見たかった。

トラス柱の△フレームの上方への繰り返し。最頂部まで写さない方が繰り返し観が強調されることは京都の東寺の五重塔で確認済み。



 繰り返しの美学な街 銀座。この街路灯が新しくなるんだっけ?



 東京駅のプラットホームの小屋組み、まだ木造トラスが残っている。美しい写真ではないが載せておく。


 


繰り返し東京  

2008-01-27 | B 繰り返しの美学

 週末東京 その2 

繰り返しの美学 東京の街で見かけた繰り返し その①



■ 工事現場の仮設:落下物によって歩行者が怪我をしないように設置する「あさがお」

仮設なのに美しい。やはり
繰り返しには美が宿る。



 汐留はガラスの街、空中歩道の手摺もガラス。補強リブの繰り返し



■ 東京駅近くの某スーパーゼネコンの工事現場。仮囲いの一部、黒く写っているのは植物の壁。



■ 電車の中の繰り返し。いくらなんでもこんなものまで撮るなんて・・・


 


カプセル東京 

2008-01-27 | A あれこれ考える



 週末東京 その1

今回の週末東京の目的のひとつはこの建築、建築家黒川紀章さんの代表作「中銀カプセルタワー」の見学でした。

「中銀」はメタボリズムという建築思想、生物学上の新陳代謝という概念を建築や都市に当て嵌める、換言すれば建築や都市を生命現象のアナロジーとして捉えるという考え方に基づいて設計され具現化された唯一の作品と言ってもいいと思います。

残念なことにというか皮肉なことにこの建築にメタボリック・シンドロームな現象が生じてついに取り壊しが決まってしまいました。

今回が見納め。黒川さんは21世紀を見据えたこの建築を30代半ばに設計しています。ただすごい! の一言です。



「中銀」にはカプセルのサンプルがこのように展示されています。丸窓のところに黒川さんの**カプセルとは「ホモ・モーベンス」のための住いである。**という説明文がありました。

深い建築思想に裏打ちされた論理的な発言を繰り返してきた黒川さんが昨年都知事選などに立候補して、選挙戦で変人と捉えられても仕方がないような発言をしたのは残念ですが、あれは黒川さん流のパフォーマンスだったのかも知れません。

黒川さんの遺作となった国立新美術館で行なわれた黒川さん講演を偶然聴くことができたのは幸せなことでした。記憶に留めておきたいと思います。



 久しぶりに再会した東京の友人がこのトランプをプレゼントしてくれました。嬉しい!感謝!

建築作品や建築家を描いたカード、ジョーカーが2枚ついていますから全部で54枚。これからはカードを「ネタ」にときどき書こうと思います。今回はこの新企画の記念すべき?初回、「中銀」を取り上げました。

私が撮った写真の左上に写っている黒い三角はこのカードに描かれている高速道路のシルエットです。


豊かな暮らしとは 

2008-01-24 | A 本が好き 







 **たくさんの物に囲まれているかどうか・・・、そんなことは豊かさの指標には決してならない、ということをこの写真は表現しているかのようです。** などと陳腐なことを前稿で書いた。 

『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』TOTO出版   既にこの本のことはここに書いたと思うが再び書く。家の中の物を全部、家の前に出してもらって写真に収めるという企画。

ブータンと日本。仏教の信仰に満たされた心優しいブータンの人々は、山々に取り囲まれて、静かに暮らしている。日本の人々は物に取り囲まれて騒々しく暮らしている。

この違いは一体・・・。


 


豊かな住環境とは

2008-01-23 | A あれこれ考える


■ 建築家の坂茂さんは阪神淡路大震災の直後に仮設の教会を設計したことで知られています。紙管構造の教会。

坂さんは以前ここに書いた移動美術館(この美術館も仮設)にも構造フレームに紙管を用いています。紙管って読んでの通り、紙で出来た管です。そう、トイレットペーパーの芯の大きなものをイメージしてもらえればOKです。その直径は50cmとか70cmもあります。

今月の「新建築」には坂さんがスリランカに設計したキリンダ・ハウスが載っています。2004年の12月26日、世界有数の地震多発地帯のスマトラ沖で発生した地震による津波に襲われたスリランカ、その南部に位置するキリンダの復興住宅です(写真)。

雑誌に掲載されている写真を見ていると「豊かな住環境とは一体なんだろう」という思いに駆られます。

土とセメントを混ぜて固めて作ったブロックを積み上げた内外の壁。仕上げを施すことなくブロックが即仕上げ(内観写真に写っています)。

木のシンプルな小屋組みをそのまま表しにした天井。床はコンクリート直仕上げ。屋外、つまり自然とストレートに繋がった住まい。自然素材をそのまま使った簡素な住まいですが、なんだかとても豊かな空間です。

対照的なのが自然との繋がりを断ち切った高層マンション。石膏ボードにビニールクロス貼りの壁が一般的かと思いますが、「高級家具」などに囲まれてはいるもののなんとなくチープ、そう感じてしまうのは何故でしょう・・・。


たくさんの物に囲まれているかどうか・・・、そんなことは豊かさの指標には決してならないということをこの写真は表現しているかのようです。

週末東京

2008-01-23 | A あれこれ考える

■ 今週末東京する予定です。東京都現代美術館で開催されていた企画展が今月20日で終ってしまったのは残念です。

アトリウムに浮かんでいた「四角いふうせん」は建築家石上純也さんの作品。厚さが0.2mmのアルミで出来た四角いふうせん、サイズは資料によると14m×7.3m×12.3m。

充填されたヘリウムガスによって重量が910kgもあるこのふうせんが浮かんでいる様子が雑誌「新建築」に紹介されています。

東京都写真美術館で開催中の斬新な「文学の触覚」展(川上弘美さんがこの展覧会にどう関っているのかにも注目)や横山大観展@国立新美術館、上野の国立博物館の企画展にも注目です。

アートな週末の報告が出来れば・・・。


で、それがどうしたの? 

2008-01-20 | A 本が好き 



 この手の新刊は一応チェックする。『新・都市論TOKYO』集英社新書
著者のひとりは建築家の隈研吾さん。隈さんといえば六本木のサントリー美術館や吉永小百合さんが出演している薄型テレビのCMに使われている竹の空間(中国は万里の長城の麓のリゾート施設)の設計者。バブル期には今にして思えば信じられないようなポストモダンな建築も設計しているが敢えてその作品は挙げない。

もうひとり、清野由美さんは都市開発やライフスタイルなどを取材しているジャーナリストとのことだが、知らない方。

ふたりは汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、町田そして北京を訪ねる。そこで交わす建築・都市論。隈さんの発言がなんだかおとなしくて面白みに欠ける。六本木のミッドタウンについては、清野さんの**とっても洗練されている。とってもスタイリッシュである。とっても居心地がいい。とっても安全だ。で、それがどうしたの?**という発言に対して沈黙の後、さらっと**東京論をミッドタウンで締めても意味はないと思います。(後略)** と交わしてしまっている。で、締めくくりの都市として北京に誘ってしまう。東京論だったはずじゃ・・・。

隈さん、人生守りに入ったのかな。


都市の構造を読み解く

2008-01-20 | A 本が好き 



『江戸の大普請 徳川都市計画の詩学』タイモン・スクリーチ/講談社 読了。

江戸は京のコピーとして計画されたと著者は指摘する。長い歴史と文化を誇る京。ナンバー2に甘んじていた江戸は富士山、そう不二の山を都市計画に取り込むことによって新たな京としてのステータスを得たのだという。これはなるほど!な指摘。

京の三十三間堂を模したお堂が江戸にも造られたそうで、広重が描いた「深川三十三間堂」が載っている。この浮世絵は『謎解き広重「江戸百」』集英社ヴィジュアル新書にも、もちろん載っているが、そんな事情があったとは・・・。



『謎解き広重「江戸百」』に掲載されている「深川三十三間堂」

著者は日本美術史、江戸文化論を専門とするロンドン大学教授。広重の「名所江戸百景」などの浮世絵や江戸文学を注意深く読み解いて独自の江戸論を展開している。

富士山を江戸の都市計画に取り込んだという指摘・・・。建築家の槇文彦さんがかつて指摘していたことを思い出した。『見えがくれする都市』鹿島出版会(SD選書)は1980年に刊行されている。槇さんが事務所のスタッフと共に都市の構造を論じた名著だ。

**周囲の山は場所の位置関係を知るうえで重要なランドマークであり、なかでも富士や筑波は江戸名所図絵に見られるように、町の遠景に数多く描かれている。(中略)日本には古くから周囲の山を生けどって借景とする造園手法があった。(中略)こうした庭づくりの感覚が江戸市街地の町割にも生かされたのではないかと思う。**(若月幸敏)

「江戸の大普請」とは論考の「厚み」が違う。やはり遠い異国の歴史・文化を研究することには様々な点でハンディがあるのだろう。

『見えがくれする都市』 再読したい一冊。 

 昨日行なわれた大学入試センター試験の国語の問題文「住居空間の心身論/狩野敏次」にこの本からの引用があった。


 


「(仮称)市民交流センター」

2008-01-20 | A あれこれ考える


 市民交流センター(応募案)


市民交流センター(最終案)

(仮称)市民交流センターの実施設計が終ったと数日前に新聞が報じていた。模型が塩尻市役所向かいの総合文化センターのホールに展示されていることを知って、早速行ってみた。

この審査は一般公開された。当日私も会場でプレゼンテーションを聞いた(当日のブログにそのときの様子を書いた)。

伊東豊雄さんの事務所のOB、柳沢潤さんの当選案はPC版の薄い壁柱をランダムに配置して(但し向きは直行軸に沿っている)床を支え、構造的に成立させると同時に、その壁柱によって空間を構成するという案だった。このようなシステマチックな構成は審査員長だった山本理顕さんの好み、このことが当選につながったのだろう。

その後、基本設計の段階でワークショップが何回か開催されて、部屋の配置などが検討された。
当初案では、屋上に箱型の住戸がいくつも配置されていたが、プログラムの変更によって最終案では無くなっている。屋上の雰囲気がだいぶ変わった。

4つの大きな吹き抜けはこの計画案の空間的な魅力だったが、最終案でもきちんと残っている。設計者はこの空間には最後までこだわったのだろう。

プロポーザルの審査の際、図書館は無柱空間が望ましいという見解を図書館の専門家が述べていた。壁柱の数が当初案より減ってすっきりしているのはあるいはこの指摘を踏まえてのことかも知れない。

構造的にはPC版の壁柱と床との接合部をどのように処理するかがポイントだと私は応募案を見て思ったが、実施設計ではどのように扱ったのだろう。各階同じ位置に配置していることは模型を見てわかったが、構造的な詳細までは読み取れなかった。

施設の愛称を募集していたので、模型の前の投票箱に1案投じた。見学の機会がもしあれば是非参加したい。



 


繰り返しの美学 高山市の郊外にて

2008-01-19 | B 繰り返しの美学






 安房の長いトンネルを抜けると凍結道路だった。

今日、所用で高山まで出かけた。車を停めて路上観察したのがこの美しい繰り返し。飛騨高山の民家に見られる繰り返しの美学は既に何回も取り上げたが、しつこく繰り返す。

上の写真:持ち出し梁の下に付けられた力板に施された意匠。構造的にはこの力板は不要かもしれない。だが、職人の美意識がこの力板を必要としたのだろう。

下の写真:ごく最近完成した立派な住宅。伝統的な意匠が引き継がれている。持ち出し梁や垂木の小口を全て白く塗装している。等間隔に繰り返すということにこだわっていることが分かる。

出し桁を勝たせて梁の小口を隠すことも出来るが、それをしていない。窓台の受け梁も小口を出して白く塗っている。職人のこだわりに拍手!