「お久ぶりです」
「ほんと、久しぶりだね」
「この間の地震と津波、凄かったですね。テレビで鮮明な映像を見ていると、怖いし、被災者がかわいそう」
「福島第1原発で、津波の想定高さが5.7でしたっけ・・・」
「そう、それ以上高い津波を経験しているのに、なんでそんなに低いんだろうって思う。もちろん津波の高さって場所によって違うからね、V字形の湾内だったら、当然高くなるわけだし、地形によっては低いところもあるだろうけど・・・。その想定って土木学会の指針に拠るって新聞に出ていたね」
「その記事、私も読みました。土木学会というところで決めた値なら、大学の先生とか、専門家が学術的な知見によって決めているわけでしょう? 信頼できる値じゃないかって思いますけど。福島原発のあるところって、リアス式の海岸じゃないですよね。だから、津波もそれほど高くならないってことじゃないかな・・・。それが、今回14メートル。だから想定外ということでは・・・」
「でも、その想定値が低過ぎるんじゃないかと思って、土木学会、津波、基準で検索してみたら、こんな記事がヒットした。これを見て」
「土木学会原子力土木委員会津波評価部会の議事録、ですか・・・」
「土木学会の指針ってどうやら、この部会で決めたと考えられるって書いてある記事もみつかったから出力してみたんだけど」
「そうですか」
「この議事録には難しいことが書いてある。まあ、とにかく土木学会のこういう部会でいろいろ専門的なことを検討しているってことだね」
「何て言うのか・・・、電力会社というのか電力事業者というのか、そういうところの利害とは関係ない研究者が検討しているわけですよね」
「そうだと思うよ。でもね・・・、この評価部会が行われた場所って電力中央研究所っていうところだって、ある。いつもそうなのか、分からないけど。これって、財団法人なんだけど、理事長は電力会社の役員なんだよね、調べると」
「え、そうなんですか。学会とか、大学の会議室のようなところでいつも検討しているんじゃないんですか。津波の高さの想定とかをそういうところでしているとしたら・・・、なんだか、中立的なというか、第三者的な立場で議論しているのかどうか、気になりませんか」
「その辺は、よく分からないけど、気になるよね」
「李下に冠を正さず?違いましたっけ、意味」
「福島第1原発って、海抜どのくらいのところにあるんだろうね。津波の想定高さが5.7メートルなら、安全率を仮に2倍とすると12メートル以上のところになきゃいけないと思うんだけど、違うのかな。まあ、そのくらいの高さのところにはあるんだろうね、当然。女川原発は福島より高いところにあるらしいけど。あと気になるのは、非常用の発電機がどんなところに、どのような状態で設置されているのかだよね。発電機が全部アウト、なんてね・・・。こういうことって、情報公開できないのかな」
「テロとかに備えて秘密にしておく必要があるとか? ところで、復旧作業をしていた作業員が被曝して、病院に搬送されたんですね。大丈夫かな。なんだか、とても気の毒。作業員の奥さん、心配だろうな・・・」
「協力会社の作業員ということだけど、普通の作業靴を履いていたんだね。現場ではそのくらいの危機管理すらできていないってことなのかな。相当量放水しているから地下には水たまりがあるって、予想するよね、普通。でも大変だよね、危険な作業だからね。それこそ不眠不休で必死だろうね。だから、危険だって分かっていても作業を続けたのかもしれないね」
「そうですね、確かに。原発がはやく安全な状態になるといいですね・・・」
「今夜は飲み会は無し。飲んだつもりで募金しよう」
「つもり貯金じゃなくて、つもり募金ですね」
「そう」
以上、某カフェで聞いた会話。
なぜ原発にトラブルが発生し、危機的な状況にまで陥ったのか、何が問題だったのか、様々な観点から詳細に調査して欲しい。