■ 月末の日をつもごりといい、一年最後の日をおおつごもり(大晦日)ということは知っていた。樋口一葉に「大つもごり」という作品がある。このつもごりが月隠(つきごもり)が変化した言葉だと、昨日(30日)の信濃毎日新聞朝刊で知った。そうか、つきごもりか、なるほど。
さて、今年最後のブックレビュー。12月に読んだ本は7冊。以前は毎月このくらいの本を読んでいたけれど、このところ4、5冊ということが多かった。
この中では『脳には妙なクセがある』池谷裕二(新潮文庫2018)が興味深い内容だった。脳科学の最新の知見を分かりやすく説いている。
『本所おけら長屋 一』畠山健二(PHP文芸文庫2013)。シリーズ累計100万部突破と大きく表示カバーが目を引く。今は右のようなカバーが好まれるのだろう。確かに面白そうだな、読んでみようと思わせるのは右だ。来年はこのシリーズを読もう。
『ことばの教育を問いなおす―国語・英語の現在と未来』鳥飼玖美子・苅谷夏子・苅谷綱彦(ちくま新書2019)。大学入試、特に英語の入試問題について何かと話題になった今年。国語(日本語)重視の教育でないと、思考力の低下を来す、と私は思っている。
『「歴史認識」とは何か』大沼保昭(中公新書2015)はメディアが報ずる日韓、日中問題を自分なりに考える上で大いに参考になるだろう。
『日本人はどう住まうべきか?』養老猛司・隈 研吾(新潮文庫2016)。養老さんは解剖学者だが、建築について広い知識をお持ちで、隈さんとの「建築放談」は読んでいて面白かった。ビルの足元を花屋さんやカフェにしたら街の雰囲気がガラッと変わるという隈さん提言に、なるほど。
『火の見櫓の上の海 東京から房総へ』川本三郎(NTT出版1995)「火の見櫓」付きの書名に以前から気にはなっていた。先日友人の書評で紹介されていたので、買い求めて読んでみた。房総への紀行文。鄙びた漁村に出かけてみたくなった。「火の見櫓のある漁村の風景」が描けたらいいなあ、と思う。
『「松本清張」で読む昭和史』原 武史(NHK出版新書2019)。松本清張の作品には大いに関心がある。私が読書の楽しみを知ったのは中学生の時に読んだ『砂の器』だった。
これは松本清張の『砂の器』の出てくる「日本方言分布図」。出雲地方の一部でも東北と同じズーズー弁が使われている。このことが事件の謎を深めることになる。この小説を中学生のとき読んだが、いまだにこの図のことを覚えている。
**小説でありながら、ある種ノンフィクションの要素が混じっている。(中略)多かれ少なかれ、清張作品に共通して見られる一つの特徴だと思います。**(33頁) そう、この特徴にこそ清張作品の魅力がある、と思う。
これからも松本清張作品論が出たら読みたい、いや、読む。