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■ 明日はもう師走! もう何回も書いているけれど、時の経つのは本当に早い。
11月のブックレビュー。
『火の路 上下』松本清張(文春文庫)
古代日本、飛鳥の謎の石造物はペルシャの拝火的宗教・ゾロアスター教と関連するのではないか。松本清張の古代史に関する「論文小説」。初読は1978年7月、45年前。
『暗幕のゲルニカ』原田マハ(新潮文庫)
ピカソの「ゲルニカ」を巡るアートサスペンス。11月は原田マハ月間、6作品読んだ。
『本日は、お日柄もよく』原田マハ(徳間文庫)
スピーチを題材にした小説。結婚式のスピーチに涙し、衆議院選挙の決起集会のスピーチに感動。原田マハさんの文章力、表現力に拍手!
『たゆたえども沈まず』原田マハ(幻冬舎文庫)
アートの世界、史実に虚を加えて浮かび上がらせたゴッホの生き様。
『カフーを待ちわびて』原田マハ(宝島社文庫)
原田マハさんのデビュー作にして第1回「日本ラブストーリー大賞」受賞作。沖縄の小島、与那喜で繰り広げられるラブストーリー、と書きたいところだけれど、どうもストーリーの展開に馴染めなかった。物語の最後に手紙で明かされる幸の過去。幸の行動から感ずる性格であれば、明青に会った当日に明かすだろうと。でもそれでストーリーが全く違う展開になってしまう・・・。
『職人たちの西洋建築』初田 亨(ちくま学芸文庫)
2002年の発行で1200円(税別)の文庫。読みたい本は高くても購入したい。何年ぶりかの再読。久しぶりに建築関係の本を読んだ。西洋からもたらされた新たな建築材料、新たな工法、新たなデザイン。これらを取り込んだ職人たちの心意気、技術力。
**(前略)建築生産に直接たずさわってきた棟梁・職人たちがいてはじめて、日本近代の建築をひらいていくことができたのも事実である。**(315頁)
『デトロイト美術館の奇跡』原田マハ(新潮文庫)
中編のアート小説。デトロイト美術館(DIA)に展示されているセザンヌの「画家の婦人」に魅せられたある夫婦の物語。原田マハさんはアートが友だちのような身近な存在になって欲しいと願っているのだろう。
**――友人たち? いったい誰のことだい?
フレッドが尋ねると、ジェンカは、少しだけてれくさそうな笑顔になって、
――アートのことよ。アートはあたしの友だち。だから、DIAは、あたしの「友だちの家」なの。
うれしそうに答えたのだった。**(26頁)
『リーチ先生』原田マハ(集英社文庫)
イギリスの陶芸家バーナード・リーチの生涯。バーナード・リーチについては名前と松本にも来たことがあるということくらいしか知らなかった。本書を読んで、ロンドン留学中の高村光太郎と知り合ったことがきっかけで来日することになったこと、陶芸を始めることになった経緯、それから柳 宗悦や後に人間国宝になった陶芸家をはじめ、何人もの人たちと交流し、活動したこと、帰国してセント・アイヴスでリーチ・ポタリーを開設し、陶芸をイギリスに根づかせていったことなどを知った。
このような史実を架空の人物を加え、リアルな小説にして多くの読者を得ている原田マハさん。読みたい作品で未読なのは『リボルバー』と『風神雷神』。12月に読もう。