■ 今日(30日)の朝カフェ読書。しばらく前に読んだ『都市計画家 徳川家康』谷口 榮(MdN新書2021年)の類書『徳川家康の江戸プロジェクト』門井慶喜(祥伝社新書2018年)を再読する。門井氏はNHKでドラマ化された『家康、江戸を建てる』の作者。
作家だけあって、文章は読みやすい(いや、作家の文章だからといって読みやすいとは限らないか)。例えば、第五章「首都は生き続ける」の第一節「江戸は人工的な町」の次の件(くだり)。**利根川という大河川を曲げたうえに、湿地帯を埋め立てて土地を造成し、町をつくりました。飲み水は遠方から江戸まで堀を建設し、上水を引いて調達しました。食糧は日本海側の諸国や西日本、上方から船で運び込みました。そうすることで、一〇〇万人もの人が住めるようになったのです。**(134頁)江戸が人工的な町であることを簡潔にまとめている。
また、掲載されている図も分かりやすい。例えば家康が江戸に入った1590年ころの海岸線を示す図には国土地理院の空中写真が合成されていて、日比谷入江の最奥部が東京駅と皇居の間にまで入り込んでいることが分かるし、利根川東遷のプロセスを示す図も分かりやすい。
著者の門井さんは**家康が描いた江戸城の縄張りのなかでも、自然の河川を利用して内濠・外濠をつくったことは大ファインプレーでした。**(138頁)と指摘し次のように続ける。
**自然の河川を利用して堀にしたことに代表される自由さが、江戸の町が外に広がることを妨げず、江戸は非常に可塑性の高い町になったのです。それが結果的に、江戸を巨大都市へと発展させる端緒になりました。**(139頁)
本稿で引用した箇所がこの本のポイント、と私は捉えた。
巻末にこの本が著者の講演を元に構成されたことが記されている。読みやすく、分かりやすいのはこのことにも因るのだろう。