透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

漱石を読む

2021-09-28 | A 読書日記

■ 既に何回か書いているが、文庫本の大半を昨年の5月に松本市内の古書店に引き取ってもらった(過去ログ)。 その際、いつか再読することがあるだろうと、夏目漱石と安部公房、北 杜夫の小説は自室の書棚に残した。


大半が新潮文庫だが、なぜか『吾輩は猫である』と『坊ちゃん』は別の出版社の文庫

このところ寅さんシリーズを観ることに時間を割いていたので、その分読書の時間が少なかった。『門』(新潮文庫1948年発行、1994年100刷)をようやく読み終えたが、直ちに再び読み始めた。



**二人の間には諦めとか、忍耐とか云うものが断えず動いていたが、未来とか希望と云うものの影は殆んど射さない様に見えた。彼等は余り多く過去を語らなかった。時としては申し合わせた様に、それを回避する風さえあった。**(35頁)

この理由(わけ)はずっと後になって明らかにされるが、既に一度読んでいるので分かっている。なぜだろうと、読み進む楽しみはなくなってしまっているが、二度目で気がつくこともある。久しぶりの漱石、文体に慣れたためか、二度目はずいぶん読みやすい。

この秋、漱石の作品を集中的に読むのも良いかもしれない。寅さんの次は漱石。 過去ログ


 


「13 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」

2021-09-26 | E 週末には映画を観よう

 スタバで朝カフェ読書。雨の朝には読書が相応しい。漱石の『門』(新潮文庫1948年発行、1994年100刷)を読み終えた。スタバを出て隣接するTSUTAYAへ。DVDの寅さんコーナーに今までなかった第13作「寅次郎恋やつれ」があった。この作品は第9作「柴又慕情」の続篇だから、第9作を先に観る方が好いのだろうけれど、第9作が棚にないから、やむなく第13作を借りてきて観た。

寅さんシリーズは家族愛、家族の絆がテーマだと書いた。本作はこのテーマがきっちり描かれた作品。

旅から柴又に帰ってきた寅さん、「重大発表」があるなどと言うものだから、とらやでは寅さんの結婚相手が決まったのかと大騒ぎ、大喜び、前祝。さくらとタコ社長が寅さんと一緒に相手の女性に会いに行くことに。女性は島根県の温泉津(ゆのつ)の窯場で働く絹代(高田敏江)さん。ところが寅さんたちが絹代さんに会うなり蒸発していた亭主が戻ってきたことを聞かされて・・・、寅さん早くも失恋。3人で泊まった宿から寅さんはひとりで翌朝早く旅に出る。

津和野の食堂で寅さんは2年前に別れた歌子(吉永小百合)さんと超偶然な再会。歌子さんは夫と死別してからも夫の実家で姑と義姉と暮らしている。その後、歌子さんは東京で職を得て暮らしたいととらやを訪ねてくる。

ここからは娘と父親との和解の物語。ふたりの間を取り持ったのはもちろん寅さん。ある日、歌子さんの父親がとらやを訪ねてきて娘と再会、そしてお互いに謝罪。この場面では涙もろいおばちゃんはもちろん、おいちゃん(松村達雄)もさくらも涙、寅さんも。生みの母親の愛情を知らず父親とも不仲で家を出た寅さんが深い絆で結ばれている父親と娘を見て流した涙、それはもちろんうれし涙、それと自分の不幸な生い立ちを想っての涙でもあるだろう。寅さんが店先で戸に寄りかかりうつむいて泣く姿に僕も泣いた。今こうして書いていても涙が出る。

寅さんは父親と暮らすようになった歌子さんを訪ねる。縁側で遠くの花火を見るふたり。

場所が変わってとらや。みんなが裏庭で花火をしている。寅さんが2階からカバンを持って降りてくる。ひとり静かに旅に出て行こうとする寅さんに電話に出ていたさくらが気がついて言う。「お兄ちゃんどうしているかな~って、いつだってみんなそう思っているのよ」お兄ちゃんを見送るさくら・・・。さくらのこのことばは寅さんがとらやの家族と強い絆で結ばれていりことを示している。寅さんは決して根無し草ではない。

寅さんが会いに行ったのは伊豆大島の福祉施設で働く歌子さんではなく、温泉津の絹代さんだった。寅さんは絹代さん一家が海水浴場で楽しそうに遊んでいることに気がつくのだった・・・。そう、ラストは家族愛のシーン。


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第4作  「新・男はつらいよ」栗原小巻 
第9作  「柴又慕情」吉永小百合
第24作「寅次郎春の夢」香川京子
第45作「寅次郎の青春」風吹ジュン
第49作「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」浅丘ルリ子


生活雑記 庭の草取り

2021-09-26 | A あれこれ

庭の雑草とりの記録

 家の周りを次のように6つのエリアに分けて、草取りをしている。
西 南1 南2 東1 東2 北  
基本的には西から南1、南2へと左まわり(反時計まわり)に各エリアの草取りをするが状況により、変えることもある。

4月
10日(土)南1 南2
24日(土)エリア不明

5月
  9日(日)エリア不明
15日(土)同上

6月
  5日(土)エリアの記録なし
13日(日)同上
20日(日)同上

7月
  3日(日)同上
10日(土)南1 南2 東1
11日(日)東2 北
18日(日)西   南1
22日(木)南2 東1 東2
24日(土)東2 北
31日(土)西   南1

8月    
  8日(日)南2 東1
16日(月)西
22日(日)東1 東2
28日(土)東2
29日(日)南1

9月
  7日(火)西 南1
11日(土)南1
12日(日)北
19日(日)南2 東1
23日(木)東2
25日(土)西 南1

毎回朝8時頃始めて11時、11時半ころまで予定のエリアの草取りをする。こうして記録を書き出してみると自分を褒めたくなる。よく頑張った。これからは雑草の勢いも真夏ほどではなくなるだろう(期待を込めて)。

庭の草取りをしていると、鳥の鳴き声が聞こえてきたり、チョウやトンボが飛んできたり(オニヤンマをずいぶん久しぶりに見た)、日が射して暑かったり、日が陰って風が吹いて涼しかったりと、ああ、自分は鄙里で自然と共に生きているのだなぁ、と感じる。エアコンした部屋で過ごすより健康的だ。

予定していたエリアの草取りが終わった時の達成感! ああ、終わった! といい気分になる。でも、雨降りで中止する時、良かったという気持ちにもなるからできれば草取りはしたくないというのが正直なところ。

そろそろ雑草たちも、この庭で繁殖するのは無理だと諦めてくれないかなぁ。このおじさんはめげずに君たちと戦うぞ。


 


「48 男はつらいよ 寅次郎紅の花」寅さんシリーズを総括する

2021-09-25 | E 週末には映画を観よう

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寅さんシリーズ全50作品のうち、下記の作品はまだ観ていない(2021.09.24)。
第4作  「新・男はつらいよ」栗原小巻 
第9作  「柴又慕情」吉永小百合
第13作「恋やつれ」吉永小百合
第24作「寅次郎春の夢」香川京子
第45作「寅次郎の青春」風吹ジュン
第49作「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」*1


 寅さんシリーズ全50作品(寅さんを演じていた渥美清さん亡き後制作された49、50の2作品をカウントしないで全48作としている寅さんファンも少なくないようだ)を今年の5月からDVDで観始め(過去ログ)、これまでに44作品観た(第50作「お帰り寅さん」は2020年1月13日にシネコンで観た)。

今日(24日)第48作「寅次郎 紅の花」を観た。

寅さんとマドンナのリリー(浅丘ルリ子)、満男とマドンナの泉(後藤久美子)、二つの恋物語の行方は・・・。

寅さんとリリー。ふたりは奄美大島で一緒に暮らしている。一緒に柴又に帰ってきて、また二人で奄美大島に帰る。ある夜リリーと喧嘩した寅さんは置手紙を残して翌朝島を離れる。その後ふたりがどうなるのか、分からない。さくらに宛てた手紙でリリーは寅さんとの再会を暗示と言うか予想しているが。

満男と泉。満男は泉との結婚を決める2回の決定機を逃す。だが、その後もふたりの恋は続く。しかし、ふたりは結婚しなかったことが第50作「お帰り寅さん」で明らかになる。


以下、8月22日の記事を再掲する。

□ 第10作「寅次郎夢枕」。この作品のマドンナは幼なじみの千代(八千草薫)。 ふたりが亀戸天神でデートする場面は印象的。お千代さんが寅さんにもう4時間も経っているけれど、話しがあるのなら話して欲しいという場面。その後、寅さんに結婚を申し込まれたと勘違いしたお千代さんはいいわよと答える。過去ログ

□ 第11作「寅次郎忘れな草」。マドンナはリリー(浅丘ルリ子)。リリーが夜遅くに酔っぱらってとらやを訪ねてきて、寅さんと飲みながら今から旅に出ようと誘う。でもこんなに遅い時間だともう夜汽車もないと寅さんは断る。この時の寅さんは理性的で良識あるおとなの振る舞いをする。寅さんには家があり、家がなくて根無し草の自分とは違うことに気がついたリリーが寂しさに耐えかねて涙する場面。過去ログ

□ 第28作「寅次郎紙風船」。ラスト、マドンナの光枝(音無美紀子)を柴又駅まで送る寅さん。駅前で光枝は俺が死んだら寅の嫁になれって亡くなった旦那から言われ、寅さんにも話してあると聞いているけれど、と寅さんに伝え、寅さんの気持ちを確認する場面。誠実で優しい寅さんに惹かれていた光枝は、寅さんから本気で約束したという返事を期待していたけれど、相手が病人だから適当に相槌を打っていただけだと聞かされる。この時の淋しそうな光枝の表情。過去ログ

□ 第29作「寅次郎あじさいの恋」。マドンナのかがり(いしだあゆみ)と寅さんがかがりの実家の居間で酒を飲む場面と、その後、離れの2階の寅さんが寝ている部屋にかがりが入ってくる場面。それから鎌倉デート、あじさい寺(成就院)で待ち合わせたふたり。かがりが寅さんに気がついたときのうれしそうな表情。過去ログ

□ 第32作「口笛を吹く寅次郎」。マドンナは結婚に失敗して実家の寺に戻っていた朋子(竹下景子)。第28作と同じような場面。やはりラスト、柴又駅のホームで朋子は父親から今度結婚するならどんな人が好いのか訊かれて・・・、寅さんみたいな人がいいって言っちゃたんでしょと寅さんが朋子に代わって答えた後、朋子は頷く。この後の寅さんの答えを聞いた朋子の悲しそうな表情。過去ログ


第48作「寅次郎 紅の花」で満男がリリーさんを前に寅さんの恋の過去ログを挙げる。

まず挙げたのがかがりさん。いしだあゆみが演じたかがりさんと寅さんの鎌倉デートに満男は寅さんに乞われて一緒に行ったからよく覚えているのだろう。次はデパートの店員・螢子さん(田中裕子)、それから朋子さん(竹下景子)、寅さんにぞっこんだった朋子さんが再婚したことを寅さんが明かす。それから女医の真知子さん(三田佳子)、で最後に挙げたのがリリー。

満男はぼくが印象に残るマドンナとして挙げた5人のうち、3人を挙げている。

リリーがひとりで奄美大島に帰ると知ったさくらは寅さんに言う。「今だから言うけど、お兄ちゃんとリリーさんが一緒になってくれるのが私の夢だったのよ。お兄ちゃんみたいに自分勝手でわがままな風来坊に、もし一緒になってくれる人がいるとすれば、兄ちゃんのダメなところがよ~く分かってくれて、しかも大事にしてくれる人がいるとすればそれはリリーさんなの、リリーさんしかいないのよ。そうでしょ兄ちゃん」 

多くの寅さんファンの気持ちもさくらと同じだと思う。でもぼくは違う。敢えて理由は書かないが、ぼくは光枝(音無美紀子)さんが一番相応しいというか、合っていると思う。


山田洋次監督は寅さんシリーズを通じて家族愛、家族の絆の尊さを観る者に伝えたかったのだろう。このことで印象的なのは第11作「寅次郎忘れな草」、リリーが夜遅くに酔っぱらってとらやに寅さんを訪ねてきて一緒に旅に出ようと誘うと、寅さんがやんわり断る。すると、リリーが「そうか・・・、寅さんにはこんないいうちがあるんだもんね。あたしとちがうもんね、幸せでしょ」という場面。リリーは根無し草の寂しさに泣く。

この作品で寅さんはリリーと出会うが、「兄さん、何て名前?」と問われて「おれは葛飾柴又の車寅次郎って言うんだよ」と名前だけでなく、居所まで答えているのに対し、リリーは「故郷(くに)はどこなんだい?」と問われて、「故郷(くに)? そうねえ、ないね、あたし」と答える。このようにふたりが対比的に描かれていることも、家族の絆というテーマにおいて見逃せない。

また、満男君が寅さんを「伯父さんは他人の悲しみや寂しさが理解できる人間なんだ」と言うが、確かに寅さんは旅先で知り合う人に優しい。第15作「寅次郎相合い傘」では家出した中年サラリーマン(船越英二)と一緒に旅をするし(この作品で寅さんはリリーと再会する)、第41作「寅次郎心の旅路」では自殺未遂したサラリーマン(柄本 明)に優しく接し、その後一緒にウイーンまで行くことになる。マドンナは観光ガイドをしている久美子(竹下景子)。

他人の悲しみや寂しさを理解して優しく接すること、これも監督が観る者に訴えたいことだろう。

寅さんが全国を旅するのは山田監督の故郷さがしでもある。このことはだいぶ前にラジオで聞いた(過去ログ)。


印象に残る作品として上に挙げた5作品はもう一度観たい。もちろんまだ観ていない作品も観たい。
*1 第49作は第25作『寅次郎ハイビスカスの花』のリニューアル作品


1307 上田市塩川の火の見櫓

2021-09-24 | A 火の見櫓っておもしろい


1307 上田市塩川 4脚4〇型 撮影日2021.09.20

 久しぶりに背の高い火の見櫓と出会った。梯子段の段数から推測するに見張り台の高さは17m近く、屋根のてっぺんまでは20m近くありそうだ。櫓はなだらかな末広がりのカーブを描いている。崇高な、と形容したくなるような雰囲気が漂っている。この火の見櫓には踊り場が2カ所ある。



 
3カットに撮り分けた画像を適当にトリミングしてうまく繋ぐという遊びをしてみた。上々の出来、と自己満足。

下の簡素な踊り場にも半鐘を吊り下げてある。これだけ高いと見張り台まで上って半鐘を叩くのは大変だから、当然ともいえる対応だ。



上の踊り場の造形はユニーク、美しい。


本稿で09.20の火の見櫓巡りで出会った火の見櫓(1296~1307)の紹介終了。


1306 上田市塩川の火の見櫓

2021-09-24 | A 火の見櫓っておもしろい


1306 上田市塩川 4脚4〇型 撮影日2021.09.20

 県道147号と県道81号の交差点(信号:坂井)の脇に立つ火の見櫓。



平面形が4角形の屋根に円形の見張り台、下方に直線的に広がる櫓、踊り場はカンガルーポケット、アーチ部材と柱部材を束ねて基礎まで伸ばした脚。平鋼と丸鋼2種類の交叉ブレース、この火の見櫓も東信地方ではごく一般的なタイプ。部材接合にはリベット、ボルトを用いている。溶接接合より見た目の安心感がある。








 


1305 東御市滋野乙の火の見櫓

2021-09-23 | A 火の見櫓っておもしろい


1305 東御市滋野乙片羽(滋野小学校、片羽区公民館)4脚4〇型 撮影日2021.09.20

 前稿に載せた東御市滋野甲の火の見櫓を見て、そのまま旧北国街道を上田方面に向かった。交差点で一時停止、右を見てこの火の見櫓が目に入った。で、右折してこの火の見櫓を観察した。火の見櫓は国道18号(国道141号との重複区間)の交差点の脇に立っている。


国道18号から火の見櫓を見る。



東北信の火の見櫓は総じてスレンダーだが、この火の見櫓は背は高いが、櫓の下半分が太目。





なぜか、脚が極端に短い。フェンスで囲ってあるのは、火の見櫓に登れないようにするためだが、このようにしてあるのを見るのはたぶん初めて。


 


1304 東御市滋野甲の火の見櫓

2021-09-23 | A 火の見櫓っておもしろい


1304 東御市滋野甲赤岩 4脚4〇型 撮影日2021.09.20

 国道18号の南側を平行に通る旧北国街道を西(上田市)に向かって進む。

この火の見櫓は東信地方では一般的な4脚4〇型だが、踊り場はバルコニーのように櫓の1面だけ外に張り出したカンガルーポケットではなく櫓内に納めたごく小さなもの。見張り台にスピーカーがないのは見た目が実に好ましい。

ガセットプレートがなぜかすっきりしていると思ってよく見ると、リベットもボルトも使わず、溶接接合している。柱材の接合部も溶接接合。




上下分けて撮った2カットを適当にトリミングして繋げてみた。割とうまく繋げることができた。 


ガセットプレートとブレース材の丸鋼、脚部のトラス部材は溶接接合、火打ち部材の平鋼と水平部材はボルト接合。ふたつの接合方法をどのように使い分けているのだろう・・・。


 


1303 小諸市滝原の火の見櫓

2021-09-23 | A 火の見櫓っておもしろい


火の見櫓のある風景 1303 小諸市滝原 4脚6〇型 撮影日2021.09.20

 浅間山の麓に広がる小諸は藤村ゆかりの地。郊外では千曲川へと続くなだらかな南斜面に住宅が点在している。この写真からもその地形的な特徴が見て取れる。偶々ここを通り掛かり、車を停めて写真を撮った。このような風景に出会えたのは幸運だった。火の見櫓のところまで、坂道を下って行った。


火の見櫓を通り過ぎてから見返して撮った写真(上の写真のオレンジ色の屋根の住宅のところから)

東信でよく見かける4脚4〇型とは姿形が違う。具体的には屋根、踊り場、脚が違う。ブレースも違う。取り付けてある銘板には建設年月日(昭和34年12月10日)と東京の施工会社名が記されている。姿形が違うのは施行したのが地元ではなく東京の業者だからか。



東信の火の見櫓では平面が4角形の屋根が多いが、この火の見櫓は6角形。屋根のてっぺんに注目、珍しい形だ。軒の蕨手も屋根面に付けた丸鋼をくるりんと曲げてつくっているが、一般的には屋根の補強下地材を伸ばしてつくっている。また、ブレースはすべてリング式ターンバックル(輪っか)付きの丸鋼でつくっているが、この点も違う。



踊り場は実に簡素なつくりでカンガルーポケットではない。上の写真では分かりにくいが半鐘の外側に木槌が吊り下げてある。木槌が風で揺れて時々半鐘を叩いていた。その度に今では聞く機会が無くなったカ~ンという音が出ていた。



脚部。やはり東信地方の一般的な形とは違う。


 


「47 男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」

2021-09-22 | E 週末には映画を観よう

 寅さんシリーズ第47作「拝啓車寅次郎様」を観た。

本作も寅さんと甥の満男、ふたりの恋の同時進行で物語は進む。ただし寅さんの恋は恋とは言えないほど淡いというかあっさりしたもの、相手の名前すら知らないままだったのだから。恋の舞台は滋賀。

満男は既に大学を卒業して靴の卸会社で営業の仕事をしている。だが、自分には営業は向いていないと思っていて、寅さんに愚痴る。シリーズ最後、第50作で満男君は作家になっているから、会社を辞めてしまったのだろう。

ある日、満男のところに大学の先輩・川井信夫からはがきが届く。長浜(*1)に遊びに来ないかという誘い、相談もあるという文面だった。信夫の実家で妹の菜穂(牧瀬里穂)と出会った満男は次第に菜穂に惹かれ始める。菜穂も満男に。

信夫の相談事というのは、妹の菜穂と結婚しないかということだった。信夫が勝手に結婚話を持ち出したことに怒る菜穂。数日後上京してきた信夫から結婚話は無かったことにして欲しいと言われ、満男のことは嫌いだという菜穂のことばも聞かされて、満男は落ち込む。

一方の寅さん、例によってとらや(正しくはくるまや)で大喧嘩して旅に出ている。旅先は滋賀。琵琶湖のほとりで撮影旅行をしているという女性(かたせ梨乃)に声をかける。女性が岩場で転ぶ。寅さんは痛がる彼女を接骨院に連れていく。その後同じ民宿に泊まることになったふたりは身の上話をする。彼女は鎌倉に住む主婦。翌日、ふたりが連れ立って曳山祭りを見に行こうとしているところへ、女性の夫が迎えに来る。で、鎌倉に帰っていく。寅さんの恋とも言えない恋はこれでオシマイ。実にあっさりというか、あっけないというか・・・。

*****

その後、女性は世話になった寅さんにお礼を言いにとらやを訪ねる。そう、マドンナはとらやを訪ねるのが約束事。だが、あいにく寅さんは留守。自分の名前を寅さんは知らないかもしれないと名刺をさくらに渡す。

翌日寅さんは満男が運転する車で鎌倉まで出かけて行く。彼女の家のすぐ近くに車を停めて、様子をうかがう寅さん。娘と出かける典子を見て、声もかけずにその場を後にする。

その後、江ノ電の駅で寅さんは、恋することは疲れる、菜穂にフラれてほっとしているなどという満男を叱る。「燃えるような恋をしろ! 大声を出してのたうち回るような、恥ずかしくて死んじゃいたいような恋をするんだよ。ほっとしたなんて情けないことを言うな。さみしいよ俺は」 そして寅さんは江ノ電に乗って旅立っていく。これは珍しい、いつも柴又駅から旅立つのに。

正月。諏訪家に朝日印刷のタコ社長や従業員が集まっている。満男は社長に嫁さんを世話すると言われたことに腹を立て、家を飛び出す。このあたり、伯父さんと同じ。家のすぐ近く、江戸川堤に菜緒が立っているのを見つけて、走っていく。そう、満男の恋は終ってはいなかったのだ。満男、満面の笑み。菜緒もにこやか。マドンナの登場に態度を急変させるのも伯父さんと同じ。寅さんのマドンナがとらやを訪ねるように、満男のマドンナは満男の家を訪ねる、アポなしで。

流れる満男の伯父さんへのメッセージ「伯父さんは他人の悲しみや寂しさが理解できる人間なんだ」。そう、これこそマドンナが寅さんに惹かれる理由。

本作のタイトル「拝啓車 寅次郎様」はラストのこのメッセージに因るのだろう。


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*1 「琵琶湖 周航の歌」(三高)小口太郎作詞 二番 波の間に間に漂へば 赤い泊火懐しみ 行方定めぬ波枕 今日は今津か長浜か