透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「9坪の家」

2010-04-28 | A 読書日記


 『9坪の家』萩原 修/廣済堂(右)を読んだのは10年前のことでした。

ある展覧会に展示された戦後住宅史に残る名作 増沢洵(まこと)さんの自邸「最小限住居」の軸組に魅せられた著者はその軸組を使って自邸を建ててしまいます(リ・デザインしたのは小泉誠さん)。本書にはその顛末が綴られています。過去ログ

巻末には「実験住宅における実験生活の試み」という柏木 博さんの文章が載っています。文庫本の解説文にあたる文章です。**この住まいをどのように住みこなし、さまざまな問題に対応していくのか、ひとごとながら、実に興味深い。実験住宅に生活するとはそうしたことなのだろう。**と文章は結ばれています。

先日雑誌で目にした『9坪の家 つくって住んだ、こんなに快適!』(左)は同じ著者による10年間の生活記録だと思って注文しました。柏木さんと同様の興味を持って読み始めたものの、なかなかそのような内容が出てきません。先の本のレビューから書き始めたにしては随分長いな、と思いつつ読み進みました。

最後の2章だけが新たに加えられていました。書店で手にとって少し立ち読みして、このことに気がつけば、購入しなかったかもしれません。そう、本書は10年前の本の改訂版だったのです。

でも帯の室内写真や本文中に載せられている写真から10年間の9坪(*2)ハウスの経年変化を知ることができました。フローリングは随分色が変化し、2階はふたつの個室に変わっていました。その様子を知ることができただけでも、よかった、と思います。

*1 増沢 洵さんの最小限住居の紹介は省略します。興味のある方はネットで検索してみて下さい。
*2 延床面積15坪(1階の床面積(建坪)9坪+2階の床面積6坪=15坪)

繰り返しの美学 春の風景

2010-04-27 | B 繰り返しの美学



 繰り返しの美学  山形村にて 100427

ここ、信濃の山里では桜も梅も桃もみんな一斉に花が咲きます。福島県の三春町、町名の由来はやはりこの3つの花が同時に咲くことによる、ということは既に書きました。   過去ログ

形のよく似た桃の木が直線的に並び、濃いピンク色の花が咲いています。繰り返しの美学な風景です。 


「春の祭典」

2010-04-27 | A あれこれ

 

 

 

 

 

 

 

春のフォトアルバム 「春の祭典」上條俊介 1961年 
朝日美術館にて  100427

「春の祭典」、ストラヴィンスキーの
派手な曲想の例の曲が浮かびますが、
この彫刻のタイトルも同じです。

ふたりの少女が待ちわびた春到来の喜びを、
体全体で表現しているかのようです。





よく晴れた春の日に

2010-04-25 | A あれこれ

「だめでしょ、美人を待たせちゃ」
「ごめん・・・」

「このカフェ、桜がきれいだからしてあげる」
「そう、ここは窓から桜並木がよく見えるからね。だから桜の季節はここがいいと思って。ん?紅茶を頼んだの?」

「今日はコーヒーより紅茶の色がいいかなと思って」
「色がいい?」
「そう、コーヒーより紅茶の薄い色の方が桜によく合うと思って」

「・・・? よく分からないけど、ま、いいか」

「ちょうど光が桜のスクリーンを透過している。きれい!薄いピンクの泡がプクプク空中に浮かんでいるみたい」
「あの桜を泡に喩えたか・・・、なるほどね。逆光で花びらの透明感が強調されてきれいだし、泡と言われてみれば確かにそう見える。それに遠くの山々の緑との対比がいいね」
「立体的というか、遠近感が強調されている」

「与謝野晶子だっけ? 金色の小さき鳥の形して・・・」
「え、突然何? え~と、いてふ(いちょう)散るなり夕日の丘に でしたっけ。でも秋でしょ」
「そうだけど、ここの桜がひらひらと散る光景ってこの短歌の春バージョンって感じだと思うな、きっと」
「あ、そうかも知れない。明るい陽射しにきらきら輝いて散る花びら・・・」

「尾形光琳の屏風絵の世界のような・・・、ね。ところでヨーロッパの光ってさ、人工的にコントロールされた光というイメージがあるんだけど、たとえばステンドグラスとか、聖堂のトップライトから射す光とか」
「宗教的な光というイメージ。でも日本の光って、え~と、自然のままの光って感じね」
「そうだね。向こうは光は神って考えているからね。でも日本ではあまり演出していることを感じさせないね。この間、龍安寺の石庭のことをテレビでやっていて、石庭に敷き詰めた白砂って、光を反射させて方丈の奥の襖絵を明るくするためだって説明していたけど、そんなことに普通気がつかない・・・」

「障子を透過する光と、ステンドグラスの光とは対照的」
「そうだね。それに下からの光と上や横からの光の違いもあるかな。日本は軒の出が大きいから、光は地面で反射して下から室内に入る。さっきの龍安寺の石庭がそうだし、忘筌って茶室もそう。それに対してヨーロッパは上とか横、フェルメールの絵のようにね。まあ、上方からかな。それに自然と共生するという考え方と、自然と、なんていうのか・・・、対峙するという考え方の違いが建築空間の光の扱いにもはっきり出ているとも言えるね。日本では屋内まで自然光が入り込んでいる。まあ、もともと壁がないから。ヨーロッパって、よく言われるけど、昔は壁に穴をあけるのが大変だったということもあるかもしれないけど」

「でも、じゃないか、だからと言うべきかな、夜の光の演出って断然ヨーロッパね。映画を観てもそのことがよく分かる」
「確かに。今の日本だと、天井照明で部屋全体を均一に明るくしてそれでおしまい。普通、居間にフロアスタンドなんて無いよね。でも昔はもっと明るさ、というか暗さを演出していたんだよね。そこに繊細な美意識を感じるよね。谷崎の陰翳礼讃とかね」
「行灯のもとで愛を語るとか・・・?」

「いいね、それ。それがいつの間にか、ね・・・。どう?そろそろ黄昏の街にくり出しましょう。続きは飲みながら」



 


「日本の伝統建築の構法」

2010-04-24 | A 読書日記



■ ときには建築関係の本も読まなくてはと、雑誌で目にした『日本の伝統建築の構法 柔軟性と寿命』内田祥哉/市ヶ谷出版社 を購入した。

「構法」は建築基準法にも出てくる言葉だが、一般にはあまりなじみがないと思う。「工法」と表記されることが多いが両者意味が違う。「構法」は建築のスタティックな成り立ち、システムを指すが「工法」は建築をどのように造るかという施工方法まで含む概念だと私は理解している。

本書の章立ては以下の通り。

第1章 木造建築の多様性
第2章 和風伝統住宅のフレキシビリティー
第3章 構法から見た桂離宮
第4章 戦後の伝統木造建築の流れ
第5章 文化財建造物みてあるき
第6章 建築の寿命
まとめ 構法の技術と建築物の寿命

第1章に「龍馬伝」の建築考証担当の平井 聖氏の味わい深いスケッチが載っている(平井氏は長年大河ドラマの建築考証を続けてこられた)。


 


繰り返しの美学 傘

2010-04-22 | B 繰り返しの美学

 海こそなけれ物さわに 万ず足らわぬ事ぞなき 

信濃の国は南北に長く(確か200km位)、標高差もかなりあるので地域によって桜の開花状況が違います。松本市内では満開を過ぎ、落花が盛んです(前稿のなごり桜)。私が住む山里では満開です。新聞によると大町方面ではようやく咲き始めたところだそうです。


ところで、信濃毎日新聞では長野県内の38市町村の3時間きざみの天気予報を載せていますが(どうでもいいようなローカルな話題です)、今朝はその全てが傘マークでした。

長野県は面積が広く、地形も山あり谷ありで天気も地域によって違うことが多いように思いますが、今日は全県的に雨という予報で、「繰り返しの美学」なグラフになっていました。



今日(22日)の朝刊の天気欄  


 


うつむいて・・・

2010-04-19 | A あれこれ



 金子みすゞに「夕顔」という詩があります。私の好きな詩です。

空の星が夕顔にさびしかないの訊くと、夕顔はさびしかないわ、と答えるのですが、ほんとうはさびしかったんですね。星がそれっきり夕顔のことを気にかけないでキラキラ光っていると、夕顔はさびしくなって下をむいてしまうという内容の詩です。**さびしくなった夕顔は、だんだん下をむきました。**ここが好きなんです。

かたくりのひかえめでどこかさびしそうな姿や昨晩(18日)の龍馬伝で佐那が見せた表情は私にこの詩を連想させました。


山形村の道祖神

2010-04-18 | B 石神・石仏



路上観察 山形村の道祖神  撮影100418

 松本市の西隣、東筑摩郡山形村には40体もの道祖神があります。かつて村は高遠藩の飛び地であったことから、高遠の石工が彫ったものと聞きます。

これは同村小坂の道祖神です。真円の大きな中区に平安装束の狩衣、十二単衣の双体像が彫りこまれています。お互い相手の肩に手をかけ、握手というか男神が女神の手をしっかり握っています。

柔和な表情をしていますね。下の道祖神と比べると衣装を繊細な線で表現していることがよく分かります。

裏面に彫られた文字は嘉永五年と読めます。あのペリー提督浦和入港の前年の作、ということになります。



山形村の隣、朝日村針尾の道祖神 天保四年、こちらのモダンな印象の道祖神の方が20年以上古いです。 ちなみに朝日村も高遠藩の飛び地でした。

 


今日は何の日?

2010-04-16 | A あれこれ
 NHKラジオの早朝番組、ラジオあさいちばんに「今日は何の日」という過去の出来事を伝えるコーナーがあります。いろいろな出来事を毎朝いくつか紹介しています。今朝は聞きそびれましたが、13日は喫茶店の日とのことでした。明治21年の4月13日に上野で日本初の喫茶店が開業したことに由来するのだそうです。

さて、今日はこのブログを始めた日です。そう、今日は「透明タペストリー」の誕生日です。4年前の2006年4月16日(日)に始めたのでした。アナログ人間を少しでもデジタル化できたら、との思いからおそるおそる手続きをして、始めました。このことはダイアリーにも記録してあります(写真)。飲酒したことも記録してあります(小さなコップが描いてありますね)。降雪があったことも。

当初は写真を載せる方法も分からず、文章だけのブログがしばらく続きました。雨の日も風の日も(天候は関係ないですね)よく続けてきたものだと思います。テーマは趣味の建築と本にほぼ限定していますが、まあ、あまりこだわらずにいろんなことをこれからも書いていこうと思います。

拙ブログを閲覧していただいている方々に感謝します。