● 移動美術館のチケット売り場
● パンフレットの表紙
● お台場の移動美術館に関する補稿。
コンテナを積み上げて壁を造っていることは既に書きましたが、上の写真はチケット売り場の様子です。下は電車の吊り広告にも使われていた象と少年の写真。
美術館は展示作品の邪魔をしないように白い壁で囲まれた抽象的な空間が一般的でしょうか。国立新美術館の展示空間も白いパネルで壁が構成されています。金沢21世紀美術館の展示空間はまさにホワイトキューブ。どんな作品も展示できる無難な空間。
ところでこの移動美術館は特定の作品を展示するためのもの。パンフレットの表紙のような作品を展示するのに最も相応しい空間が実現しています。通路の床は板張り、それ以外の床は砂利敷き。かなり暗い照明。静かに流れるBGM・・・。
どの作品も印象的でしたが、私が特にすごいと思ったのは、象が水面を泳いでいて、その下で少年が逆さに漂っているところを撮った水中写真。
グレゴリー・コルベールの作品は独創的でとにかくすばらしい、としか表現のしようがありません。出来ればもう一度観たいと思います。
ところで昨日六本木の東京ミッドタウンがオープンしました。和の美を意識したデザインとのことです。「都会の居間」をコンセプトにしたサントリー美術館もオープン。これで六本木アート・トライアングルが成立しました。
また東京しなくては。
● 松本の桜(070331)
● 春ですね。松本の桜は未開花ですが、例外的にもう咲いているところがあります、一本の樹のほんの一部だけですが。今は共学ですが、かつては憧れの女子高だった松本市内のA校の桜です。
確か桜に限らず花は積算温度がある値に達すると咲くのですが、何故ここの桜が咲いたんでしょう・・・。桜のバック、これはプールの目隠し用の金属フェンスです。晴天時にはこのフェンスが日射を受けて高温になりますから周りより気温が高くなります。それで目隠しフェンスの近傍の桜だけ咲いたということなんでしょう。
ところで、こんなフェンスがあるから他人の視線を気にすることを学習できないんですよね。で、電車の中で平気で化粧するコになっちゃうんですよ。他人の視線を意識することを学習して欲しいから、こんなフェンス撤去ジャ。
● お台場で同行者と別れて、その足で久しぶりに友人の建築スタジオへ。なかなか面白いことを考える友人で、彼の事務所はいつも刺激に満ちている。
現在進行中のプロジェクトのスタディ模型を見せてもらった。守秘義務があるだろうから多くは書かない。薄いシンプルな屋根を、木造でどう解くか。水平力をどう扱い、どう処理するか。空間的にはエントランスから豊かな自然をどう見せるか・・・彼の腕の見せ所だろう。次回事務所を訪ねる時に見せてもらえるのは実施設計図面か、工事写真か、竣工写真か、いまから楽しみだ。
友人は最近自邸「白山道りの家」を完成させた。さっそく案内してもらった。
鉄筋コンクリート造7階建!
最近雑誌に紹介される住宅作品は端正で美しいものが多い。コンクリート造は特にその傾向が強い。彼の作品はそれらの対極にあって職人の手づくり観が強く漂っている。それでいてそれ程「渋く」はないがプロ好みの味がある。石山さんの作品の雰囲気に近いかもしれない(と評したら彼は喜ぶだろうか)。石山さんほどバナキュラーではないな。
彼は左官仕上げがとても好きだと私はみているが、今回は7層もある外壁を左官仕上げとしている。以前、マンションの外壁を同じように仕上げたと記憶している。詳しくは分からないが土を混入させたモルタルを塗って、櫛引して仕上げている。その柔らかな表情が夕景に映えていた。右下の写真は2階のオープンテラス、後方の緑は前面道路の中央分離帯の植栽。
● 友人の事務所の近くの桜の名所はもう花見モード。今回私の訪問に合わせて花見の宴を開いてくれた。彼の人柄か、突然の誘いにも知人、友人が何人も集まって宴は盛り上った。前稿にアップした写真はそのときの酒(会津のうまい酒)。
S君、ありがとう! 最終のあずさでは甲府まで熟睡したよ。
● 駒沢公園、月曜の朝の散歩。芦原義信さん設計のシンボルタワーは確か五重塔をモチーフにしたデザイン、繰り返しの美学。
● 月曜休館の美術館が多いが、ノマディック美術館は開館している。午前中に出かけた。外壁は上の写真のように市松状に積み上げたコンテナ。その数152個。妻側に紙管の構造フレームが見えているが、展示空間はこのフレームがいくつも繰り返された回廊。荘厳ささえ漂っていて、外観からは想像もつかない。
タタミ一畳より大き目のサイズだろうか、和紙にプリントされたセピア色の写真は、少年と動物との交流を撮ったものが多い。グレゴリー・コルベールは自分の作品を展示するのに相応しい移動美術館の設計を建築家坂茂に直接依頼したという。
ニューヨーク、サンタモニカ、そして東京。次は確か大阪。何年もかけて世界を巡る作品と美術館。いいものを観た。
● 美術館への最寄駅:りんかい線 東京テレポート駅(6月24日まで)
日曜日上京。早々に用事を済ませて新橋で展覧会へ(前稿)。
その後の足取り。
新橋駅から東京駅までウォーキング。
丹下さん設計のビル。このシステムがいくつか集まると甲府駅前の山梨文化会館。次もユニークな建築(設計者は誰だろう)、そして銀座のコブシ。
有楽町でペコちゃんと「ご対面」。不二家さん、もうペコちゃんを悲しませないでね。
続いてバブルな建築「東京国際フォーラム」、そしてラストは東京駅前オアゾ内の丸善で1冊購入。
月曜日(昨日)の出来事はまた明日。1枚だけ、予告でアップ。
●「ジャポニスムのテーブルウェア-西洋の食卓を彩った“日本”-」
現在 松下電工汐留ミュージアムで開催中の特別展を観る機会がありました。
**NY在住の実業家デイヴィー夫妻が収集した膨大なコレクションの中から19世紀末に欧米で日本文化の影響のもとに制作された装飾美術品を紹介するという企画** リーフレットより。
西洋ではあまりとり入れられなかった「自然」をモチーフにしてきた日本文化。西洋と日本との幸福な出合い。
カップとソーサーがひとつのケースに25組み展示されていましたが、桜花文カップとソーサーの濃いピンクそして華やかな色使い、紅葉文カップとソーサーの濃い赤地に黄金のもみじに魅せられました。
展示品は単なる鑑賞用の美術品ではなくて、日常生活で実際に使われた実用品、驚きです。
食器などのテーブルウェアに関心のある方におすすめの展覧会です。
● 主人公の斎藤慈雨は42歳、独身。友人と花屋を経営している。恋の相手は北村栄、慈雨と同い年。予備校講師、バツイチ。
「衣久ちゃんの思う大人の恋ってどういうの?」と慈雨は姪の衣久子に訊く。
「うーん、バーのカウンターとかで二人でカクテルとか飲んでー、あ、音楽はジャズ?」「女の方は、絶対、ピンヒールのパンプスとかミュールでー、男は、やっぱスーツ(後略)」「それでさー、そういう時に別の客が入って来て、やっぱカウンターに座るの。それは、二人のどちらかの昔の恋人なんだよ。でも、全員、何事もなかったかのように、知らない振りをするの。で、二人のどちらかは、帰る時に相手に気付かれないように、昔の恋人に片目をつぶって見せるの・・・・・きゃー、なんか映画っぽーい」
こんな大人の恋に対するステレオタイプなイメージとは無縁な、ある意味何もない日常の生活が描かれている(下線部分も本文から引用)。舞台も青山や六本木ではなく、吉祥寺や西荻窪など生活感の漂う中央線の街。
「いいねえ、風鈴、栄くんちの軒下にも下げようよ」
「うん、どんなのにしようか」
二人の会話はこんな調子、年を取りそこねた男と女とも思えるが、案外リアルな大人の恋の世界なのかも知れない。この二人にはスポットライトは似合わない。柔らかな光の中の二人が紡ぐ大人の恋。
この小説には恋愛小説21編が引用されている。最後は壺井「栄」の「あたたかい右の手」 調べてみるとこの小説の主人公の名前も「慈雨」。詠美さんは登場人物の名前をここから採ったのだろう。
『無銭優雅』山田詠美/幻冬舎
②
① 何年か前にお台場方面で撮った集合住宅の写真。
② 先日新宿で撮った写真。
●「繰り返しの美学」 いままでは建築構成要素の1方向への直線的な繰り返しをとり上げてきた。直線的な繰り返し、秩序づけられた状態を美しいと感じるのは脳が秩序を歓迎していることの証であろうと考えた。
これからは考察の対象を少し広げようと思う。まず2方向、即ち平面的に繰り返された状態の具体例としてビルのファサード(正面の立面)をとり上げる。
①と②の写真に示す例は共に平面的な繰り返しを別の要素を取り込むことで避けている。この場合繰り返しは美しくないのだ。単純に同じデザインを平面的に繰り返すことは均一的、単調でつまらない。1方向に繰り返すと美しいのに2方向に繰り返すとつまらないと感じるのは何故だろう・・・。
今回はこの辺で留めておこう。
● 『著作権とは何か―文化と創造のゆくえ』福井健策/集英社新書
最近、著作権とはなんだろうと気になっていた。昨日書店でこの本を見つけた。
著者の福井さんは弁護士、著作権法が専門だという。
著者によると**著作権の最大の存在理由(少なくともそのひとつ)は、芸術文化活動が活発におこなわれるための土壌を作ること**だという。
「ウエスト・サイド物語」と「ロミオとジュリエット」の類似点、そして実はこのミュージカルは「ロミオとジュリエット」が原作であること。もしこのミュージカルが「ロミオとジュリエット」の数十年後の作品でシェイクスピアの子供が「親父の戯曲を勝手にミュージカルにしたのは許せない!」と訴えを起こしたらどうなるか、というように、この本で著者は興味深い例をいくつも示しながら、著作権について解説している。「ロミオとジュリエット」には種本があって、さらにその種本にも種本があって・・・とこの問題は複雑なのだそうだ。
他にもディズニー映画「ライオン・キング」が手塚治虫さんの「ジャングル大帝」によく似ているという指摘があって論争になったこと、山岳写真家白川義員(よしかず)さんの写真をマッド・アマノさんがモンタージュしてパロディにしたことが著作権と著作者人格権の侵害にあたるということで裁判になったことなどもとり上げられている。これは30年くらい前の裁判とのことだが、問題の写真は記憶にあった(下の写真)。
**著作権をめぐるさまざまな問題は、ひとことで言えば「守られるべき権利」と「許されるべき利用」のバランスという問いに還元できます。** 結局 こういうことだそうだ。
●マッド・アマノさんのパロディモンタージュ 本書より
このように写真を載せることは法的に問題があるのかないのか、そしてその理由は、本書を読了したが分からない・・・。
● 松本市内の亀田屋酒造店の「蔵開き」に出かけてきました。毎年この時期に行なわれる新酒のお披露目。車ですから残念ながらその出来栄えを味わうことは出来ませんでしたが。
かわりに酒蔵と母屋を見学してきました。明治18年から2年がかりで建てられたという立派な母屋。玄関前に吊るされた杉玉は造り酒屋のシンボル。部屋数は20室を越えるそうです。12畳半の「おえ」の吹き抜けは圧巻!天窓から射しこむあかりに小屋組が浮かび上がっています。
毎年元旦には杜氏や蔵人や販売員がこの母屋の広間に集まって漆塗りのお膳を囲んでしぼりたての新酒で新年を祝った、とパンフレットにあります。展示品などからも歴史の重みを感じます。
ところでこの亀田屋酒造店の社長は時々新聞にエッセイを書いておられます。どんな方だろう・・・。今日お見かけしました。きれいな方でした。
高校の一年後輩の方とは知りませんでした。
酒造りは日本の文化です。「亀の世」「アルプス正宗」 を飲みましょう。
● 仕込蔵の外観 桜が咲いたら奇麗でしょうね。
● 展示品 「新少女」新年号の付録の双六(大正5年発行)竹久夢二 画
■「開かれた」をネットで検索してみる。開かれた学校、開かれた議会、開かれた社会、・・・すごいヒット数だ。
国立新美術館のロゴ。「新」という漢字の角を全て「開いた」デザインだという。そう、開かれた美術館を象徴するロゴ。美術館のHPにこのロゴのデザインの説明が載っている。多様な展示空間の構成を可能にするフレキシブルなパーティション・システムも表現しているとのことだ。パーティション、なるほど確かにそう見える。
コンセプトが先にあってデザインが創出されたという説明がなされるのは、建築デザインも同様だ。実際にはデザインが先に出来て上記の説明は後からつけた・・・、そう思う。
この離散的なデザイン、あまり創造性を感じない・・・などと書いたら悪いかな。これが今のセンスなのかもしれない。ということはボクのセンスが古いのかも。
● おめでとう
作家 川上弘美さんが芸術選奨の文部科学大臣賞を受賞した。
新聞によると大臣賞、新人賞とも演劇や映画、美術、芸術振興など十部門ある。文学部門が川上さんだった。受賞対象作品は「真鶴」だという。建築は確か美術部門だが、今回受賞者はいなかった。
『真鶴』については以前ここに書いた。それまでの川上さんの作品とはかなり印象が違っていて、ことばを選んでゆっくり書いた小説、文章も推敲を繰り返したのではないか、読了した時そう思った。
川上さんはこの作品のあとまだ長編を発表していない、と思う。私は「 yom yom 」で短篇を読んだだけだ。
川上さん、受賞おめでとうございます。『真鶴』に続く力作を期待しています。
● 電車の中で↑の写真を見かけた。象と少年の交流。先週末 東京でのことだ。グレゴリー・コルベールという写真家の作品。探した資料によると、氏はカナダ生まれで、現在フランスで活動している。
この写真家の作品展が東京お台場で始まったとテレビで知った。私の注目は会場の「移動美術館(ノマディック・ミュージアム)」。坂茂さんの設計。坂さんはポンピドーセンターの別館の設計者として日本より海外でよく知られている建築家。
坂さんは紙管(トイレットペーパーの芯を太く長くしたものと思えばいい)を柱や梁に使う。阪神大震災の直後につくられた教会に紙管が使われて、その独創的な構造システムは広く知られるところとなった。
「移動美術館」がニューヨークにつくられたときの様子が一昨年「新建築」にとり上げられていた(2005/4号)。柱に直径が75cm、小屋組みに30cmの紙管が使われ、外壁はコンテナが市松状に積み上げられている。 コンテナ等は開催国で調達するとのこと、なかなか面白いシステムだと思う。
この写真展は美術館と共に世界各国を巡回するという試み。どうやら写真家が既存の美術館での展覧会を望まなかったらしい。
「新建築」の写真を見ると繰り返しの美学な展示空間だ。展示作品にも関心はあるが、ユニークな構造を是非見てみたい。
●「相互和音」カンディンスキー
国立新美術館のパンフレットより
●「異邦人たちのパリ1900-2005」は展示作品が約200点という大規模な展覧会。藤田嗣治、ピカソ、シャガール、モディリアーニなど有名な画家の作品が数点ずつ並んでいました。盛り沢山な内容は、喩えはよくありませんが「幕の内弁当」のようです。一通り何でも食べたいという発想。私はひとりの画家の展覧会の方が好きです。
ミロやカンディンスキーのグラフィックデザインのような抽象画は前から好きでした。で、今回の注目はこの作品、「相互和音」。ミロの場合は子供のように絵の構成も自由奔放に見えますが、カンディンスキーの場合は緻密に考えて構成しているような気がします。この絵からもそんな印象を受けます。
先日この絵に付いていたキャプションが展覧会場の国立新美術館にもそのまま当て嵌まる、と書きました。右側のブルーの部分の縦のウェーブ、なんだか美術館の特徴的なガラスの曲線のようにも見えます。
ところでカンディンスキーとシャガールとでは作風は全く異なりますが、豊かな色彩は共通しています。ふたりともロシア出身の画家です。ロシアというと私はどうしても例えば映画「ドクトルジバゴ」に出てくるような、荒涼とした冬の大陸を想起してしまいます。そういう風土があの色彩を生んだのかもしれない・・・、雪国石川で九谷焼が生まれたのも同じ理由だったりして。
● 一時期 建築雑誌によくこんな写真が載りました(「住宅建築」1996/10より)。食堂の椅子の定番、Yチェア。デンマークのデザイナー ウェグナーの50年以上も前の作品です。この椅子は今でも大変人気があって、新宿伊勢丹の家具売り場で先日偶々見かけました。
ウェグナーは500種類以上の椅子をデザインしたそうですが、国立新美術館の例の椅子もその内のひとつであることが分かりました。「シェルチェア」という椅子だと知りました。Yチェアと同じデザイナーの作品だとは知りませんでした。
国立新美術館には他にもセブンチェア、アントチェア(ともにヤコブセンのデザイン)、それからMoMAにもあるというスツール(名前は覚えていませんが・・・)などがあります。椅子に興味のある方なら座り心地の確認に出かけてみるものいいかもしれません。
この椅子は六本木のテレビ朝日のロビーのバルセロナチェア スツール(ミースの作品)です。美術館からテレビ朝日まで路上観察しながら徒歩で往復しました。