撮影日:2020.01.05
撮影日:2020.02.09
■ この秋に引退することが決まっている初代「なぎさTRAIN」。その日がいつなのかは分かりません。10月下旬ではないか、と思いますが。載せたのは大庭駅で撮った写真です。「なぎさTRAIN」の窓越しに駅近くの火の見櫓が見えています。なぎさちゃんと火の見櫓のコラボ。
■ 8月に読んだ本6冊。その内の2冊、浅田次郎の『帰郷』と『長く高い壁』は図書館本。
『水中都市・デンドロカカリヤ』安部公房(新潮文庫1973年発行、1993年25刷)
**人間存在の不安感を浮び上がらせた初期短編11編を収録。** そう、既に書いたけれど、人間が存在することとはどういうことなのかという問いかけ、これは安部公房がずっと問い続けたテーマ。
『老化と寿命の謎』飯島裕一(講談社現代新書2024年)
信濃毎日新聞の科学面に2023年1月から2024年4月まで連載された記事「老化と寿命の謎を探る」を基に書籍化された。本書の最後(第3章 第24節)の見出しは「人生の実りの秋(とき)を豊かに過ごすために」。これは高齢の読者へのエール。
『無関係な死・時の崖』安部公房(新潮文庫1974年)
この文庫には短編10編が収録されている。通読すると、安部公房がいかに発想力・構想力に優れていたか、よく分かる。印象に残ったのは表題作の「無関係な死」、それから「人魚伝」と主人公が建築士の「賭」。
『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり(新潮選書2023年)
大塚ひかりさんには源氏本が何冊かある。これまでに3冊読んでいる。先日書店で目にした本書を買い求めて読んだ。
**時に作家は、登場人物に自己を仮託しながらも、その登場人物が作家の思想を超えて、思いも寄らぬ境地に達することがあるものだ。その境地に達したのが、最後のヒロイン浮舟ではないか。**(242頁)
**誰の身代わりでもない自身の人生を、心もとない足取りながらも歩もうとする様は、今に生きる私にとっては、不思議なすがすがしさと開放感を覚える。**(243頁)
自分だけは自分を見捨てるべきではない。大塚さんが紫式部メッセージだとするこの言葉、覚えておきたい。
『帰郷』浅田次郎(集英社2016年 図書館本)
表題作の「帰郷」ほか5編を収める小説集。印象に残ったのは「帰郷」だった。
復員して神戸港から名古屋へ。そして中央線に乗り継ぎ、松本駅に着いた庄一は義兄(二番目の姉の亭主)の三郎に声をかけられる。
庄一は西太平洋のテニアン島で戦死を遂げたと戦死広報が伝えた。庄一の家では葬式を出し、墓石も建てた。妻の糸子は庄一の弟の精二と再婚していた・・・。
松本駅で説得される庄一。**(前略)糸子をねぎらい、夏子を膝に抱き、まだ見ぬ雪子に頬ずりをしたかった。**(44頁)
ああ、これを戦争の悲劇と言わずして何と言う。
三郎に説得され、新宿に出てきた庄一は綾子に声をかけた。綾子は終戦直後の新宿で体を売って日々を食い凌ぐ女だった・・・。
この先、庄一と綾子はどう生きて行くのだろう。ふたりが歩む人生物語を読みたかった。短編なのは残念。
『長く高い壁』浅田次郎(角川書店2018年、図書館本)
昭和13年秋、日中戦争下の張飛嶺(万里の長城)。
大隊主力が前線に出た後、張飛嶺守備隊として残ったのは小隊30人、その第一分隊10人全員が死亡する。戦死か? 従軍作家の小柳逸馬が検閲班長の川津中尉と共に北京から現場に向かい、10人怪死の真相を解き明かす。ミステリー仕立ての小説
9月に読む本は既に決まっている。
360
■『城の日本史』内藤 昌 編著(講談社学術文庫2011年8月10日第1刷、2020年9月23日第4刷)を読み始めた。お城大好き、という訳ではないけれど、興味が全く無いわけではない。松本には国宝松本城があるし。
この本を何年も前に読んでいれば、33会の旅行で今年(2024年)1月に行った松山城や同じく33会で2019年に行った松江城の見方が違っただろうに・・・。来年1月には33会の旅行で小倉城に行くから、その時は今までとは違う見方ができるだろう。
しばらく前に本書のことを知り、行きつけの書店で注文していた。文庫本で1617円(税込)は高いけれど、その分中身が濃い。この本の構成は明快だ。総論から各論、そして事例紹介。このことが目次に表れている。
第一章 城郭の歴史 ― その変遷の系譜
第二章 城郭の構成 ― その総体の計画
第三章 城郭の要素 ― その部分の意味
第四章 日本名城譜 ― その興亡の図像
第一章「城郭と歴史」の中に「城」の訓読みの「シロ」は「シリ(領)」の古い名詞形と推定されているという説明がある(47頁)。で、この領は**「領有して他人に立ち入らせない一定の区域」を示すわけで、たとえば、苗を育てるところを「苗代」(『播磨風土記』)といい、矢を射るための場所を「矢代」(『出雲風土記』、(後略)**(47頁)と説明は続く。「シロ」の源意は「領域を区切る」ことだという。
そうか、城と代はもともと同義なのか。ということは・・・、綴じ代、のり代の「代」もある用途のために決められた(区切られた)エリアのことなんだ、と合点がいく。なるほど!
知らないことを知ることは嬉しい、というか楽しい。いくつになっても知的好奇心は失いたくないものだ。
第二章「城郭の構成」は城郭の配置計画、平面計画に関する論述。例えば郭の縄張は「梯郭式」「連郭式」「環郭式」「渦郭式」というようにタイプ分けされ、それぞれについての説明がなされている。
第三章「城郭の要素」は城郭の構成要素、例えば天守台や櫓、堀、塁などに関する詳しい説明。
第四章「日本名城譜」は全国各地の29城を取り上げて、城の歴史や、特徴などの解説。
しばらくは本書を楽しみたい。
■ 知人から送られてきた絵画展の案内カードに貼られていた切手。
調べると2024年7月23日(毎月23日はふみの日)に発行されている。郵便に関係する10種類のイラストの切手で1シートになっている。この切手はその内の1枚で郵便用指示ばかりが描かれている。他には制帽や郵便物集配用かばん、通信日付印など、昭和期以前のものが描かれたイラストがある。
10月1日から郵便料金が変わる。定形郵便物は50gまで110円(現在は25gまで84円、50gまで94円)、通常はがきは85円(現在は63円)になる。
手元にある切手を複数使って変更後の金額にぴったりなればいいけれど、ならなければうまく組み合わせて超過金額を出来るだけ少なくして出すことにするしかない、かな。
『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫2002年)
『源氏物語の教え もし紫式部があなたの家庭教師だったら』(ちくまプリマ―新書2018年)
『やばい源氏物語』(ポプラ新書2023年)
■ 源氏物語について書かれた本はできるだけ読もうと思っている。大塚ひかりさんにも源氏本が何冊かあるが、これまでに3冊読んでいる。先日書店で目にした『嫉妬と階級の『源氏物語』』(新潮選書2023年)を買い求めて読んだ。
『嫉妬と階級の『源氏物語』』 なるほど、確かに『源氏物語』の長大な物語は「嫉妬」で始まる。光源氏の生母・桐壺更衣は身分が低いけれど帝の寵愛を受ける。そのために上位の女性たちから嫉妬され、陰湿ないじめもされて、病に臥して亡くなってしまう・・・。
『源氏物語』には多くのヒロインが登場するけれど、「嫉妬」という言葉からまず浮かぶのは六条御息所。身分も高く、美人で教養もあるのに、光源氏の正式な妻にはなれず、嫉妬から生き霊となって夕顔を変死させてしまうし、正妻の葵の上も取り殺してしまう。大塚さんは他の嫉妬例をいくつも挙げている。因みに六条御息所は女性に人気があるようだ。また、夕顔は男性に人気のあるヒロインとのこと(確か瀬戸内寂聴さんの本に出ていたと思う)。
本書を読むと「嫉妬」は『源氏物語』を読み解くのに実に有効な切り口だということがよく分かる。
以前書いた記事から引く。**『カラダで感じる源氏物語』(ちくま文庫)の解説文に小谷野 敦(比較文学者)さんは**その解釈には専門家のなかにも一目置いている人たちがいる。**(292頁)と書き、さらに**『源氏物語』などおそらく全文を諳んじているはずだし(後略)**(292頁)とまで書いている。**
大塚さんは『源氏物語』を中学生の時に読んでいたということだし、個人全訳もしている(ちくま文庫全6巻)から、長大な物語を細部まできちんと把握しているだろう。だからこそ、縦横無尽な論考ができるのだ。
大塚さんは本書の「おわりに」で、浮舟を取り上げて、次のように書いている。
**時に作家は、登場人物に自己を仮託しながらも、その登場人物が作家の思想を超えて、思いも寄らぬ境地に達することがあるものだ。その境地に達したのが、最後のヒロイン浮舟ではないか。**(242頁)
**誰の身代わりでもない自身の人生を、心もとない足取りながらも歩もうとする様は、今に生きる私にとっては、不思議なすがすがしさと開放感を覚える。**(243頁)
自分だけは自分を見捨てるべきではない。大塚さんが紫式部メッセージだとするこの言葉、覚えておきたい。
国文学者で平安文学、中でも「源氏物語」と「枕草子」が専門だという三田村雅子さんは、NHKの100分de名著「源氏物語」の解説で物語最後のヒロイン浮舟が好きだと言っていた。浮舟には紫式部の願いが投影されているとも。そう、浮舟は紫式部が望んだもう一つの人生を歩んだ女性だった。
■ 朝、上高地線の奈良井川橋梁西側の踏切で列車の通過待ちになると、その日は好いことがあると思うことにしているってしばらく前に書きました。
■ 今年2024年は安部公房生誕100年。『芸術新潮』は3月号で安部公房の特集を組んだ。「わたしたちには安部公房が必要だ」と題して。今年は安部公房を読もう!と思い、3月から手元にある新潮文庫を読み始めた(現在手元にある新潮文庫は新たに買い求めたものを含めて23冊)。
『無関係な死・時の崖』(新潮文庫1974年)を読み終えた。今からちょうど50年前に読んだ文庫。
この文庫には短編10編が収録されているが、安部公房がいかに発想力・構想力が優れていたか、よく分かる。印象に残ったのは表題作の「無関係な死」、それから「人魚伝」と主人公が建築士の「賭」。
「無関係な死」
ある日、アパートの自分の部屋に死体が置かれていた男が、あれこれ考える。**犯人が、計画的に彼の部屋をねらったのか、それとも行き当たりばったりに、彼の部屋がえらばれたのか、その点はまだよく分からない。**(178頁)
男は死体を他の部屋に運ぶことにする。自分とは無関係な死とするために。
**そうだ、彼の部屋にこの死体を持ち込んで来たものだって、案外同じように誰かから押しつけられた組だったのではあるまいか。死体は、アパートの中を、ぐるぐるたらい廻しになっているのかもしれないのだ。**(182,3頁)
部屋には男の無罪を証明してくれるような証拠があった。男がそのことに気がついたのは、その証拠を消してしまった後だった・・・。推理小説として、おもしろい。
「人魚伝」
沈没船の中で出会った人魚に恋した男が、彼女を連れて帰り同棲生活を一年以上続けるという話。
**なにしろ彼女の下半身は魚なのだ。下腹部に、産卵用とおぼしき穴はあいていたが、そんな穴なら、耳にだって、鼻にだってあいている。**(234頁)**ぼくたちの性は、眼と唇の接触をつうじて、満たされていたようなものだった。**(234頁)
この辺りまでは大人のファンタジー(かな?)といった趣だが、この後はホラーな展開になる。
「賭」
**「しかしですねえ、この社長室は、三階にあるわけですな。そして十七号室は、二階なんですからね。」
「そうですか・・・・・二階と三階の部屋を隣りあわせにするのは、相当にむつかしい技術でしょうな。」**(101頁)
宣伝事業をしている社屋の設計を担当している主人公が、依頼主の仕事の実情を知るために、その会社を訪ねる。会社で見聞きした不思議なというか、風変わりなできごと・・・。
**こうした風変りな体験が、依頼主の注文を理解するうえで、すこぶる有意義な、みのり豊かなものであったことは、あらためて説明するまでもないだろう。おかげで私は、三階の部屋が、六階の部屋と壁を接していようと、また階段を降りて上階に達することになっていようと、すこしも意に介さないまでになっていた。仮に、天井と床とを逆さにしなければならないような羽目におかれたとしても、たぶん平然として応じていたに相違ない。**(136頁)
三次元的な空間では実現できない。そこで設計を担当する主人公が採った方法・・・。これはSF、それも50年も前の。
推理小説、ホラー小説、そしてSF小説。10編も収録されている傾向の異なる作品たちが、冒頭に書いたように安部公房が発想力・構想力に優れた作家であることの証左だろう。短編集の魅力はこういうところにもある。
この文庫のカバーには**未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。**と書かれている。
やはり安部公房は凄い作家だったと思う。文庫本の大半を処分した時、再読するなら安部公房と思って、夏目漱石、北 杜夫の文庫と共に残しておいたが、正解だった。
手元にある安部公房の作品リスト
新潮文庫23冊 (文庫発行順 戯曲作品は手元にない。2024年3月以降に再読した作品を赤色表示する。*印の5作品は絶版)
今年(2024年)中に読み終えるという計画でスタートした安部公房作品再読。8月24日現在15冊読了。残り8冊、9月から月2冊。
『他人の顔』1968年12月
『壁』1969年5月
『けものたちは故郷をめざす』1970年5月
『飢餓同盟』1970年9月
『第四間氷期』1970年11月
『水中都市・デンドロカカリヤ』1973年7月
『無関係な死・時の壁』1974年5月
『R62号の発明・鉛の卵』1974年8月
『石の眼』1975年1月*
『終りし道の標べに』1975年8月*
『人間そっくり』1976年4月
『夢の逃亡』1977年10月*
『燃えつきた地図』1980年1月
『砂の女』1981年2月
『箱男』1982年10月
『密会』1983年5月
『笑う月』1984年7月
『カーブの向う・ユープケッチャ』1988年12月*
『方舟さくら丸』1990年10月
『死に急ぐ鯨たち』1991年1月*
『カンガルー・ノート』1995年2月
『飛ぶ男』2024年3月
『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集』2024年4月
■「後遺症 今も悩む人多く 症状さまざま 特効薬なく」という見出しの記事が2024年5月8日付 信濃毎日新聞に掲載された。この記事から引用する。
**新型コロナウイルスの後遺症に悩む人は、5類以降から1年たつ今も多い。(中略)病原体から体を守る免疫の異常が関係するとの指摘もある。(中略)京都大の上野英樹教授(ヒト免疫学)は免疫細胞の一種「ヘルパーT細胞」(*1)に着目する。(中略)後遺症との関連を調べるため患者血液を分析すると、動悸や呼吸困難の症状がある女性グループは、(中略)ヘルパーT細胞が過剰にあり、(中略)ブレインフォグの症状がある男性グループはヘルパーT細胞が少なくなっていた。上野教授はこの現象を「免疫の乱れ」と指摘。** そして**発症メカニズムに謎は多く、特効薬もない状態が続いている。**
上掲の記事は新型コロナウイルスの後遺症について報じているが、新型コロナウイルスワクチンの後遺症について報じていると読み替えることも出来るのではないか、と思った。というのも2022年9月18日付同紙に次のような記事が掲載されたから。
「免疫機能 過剰反応か 新型コロナワクチン 接種後死亡の4人」
以下はこの記事からの引用。**(前略)ウイルスを攻撃する免疫調節機能が過剰反応(暴走)し、患者の身体を攻撃する「サイトカインストーム」が起きて死亡した可能性があるとみており(後略)**
ヒトは体内に入り込んだウイルスに感染した細胞を攻撃する自然免疫システムを備えている。その免疫システムがワクチン接種によって混乱してしまい、過剰に反応して本来攻撃対象ではないウイルスに感染していない細胞まで攻撃してしまう・・・。このことで、細胞の集合体である臓器にダメージを与えて機能不全を起こす「サイトカインストーム」。最悪死に至るワクチン接種の負の側面。
最近、流行している手足口病やエムポックスというウイルス感染症は免疫システムが必要な反応をしないことによるのではないか、そしてその一因として新型コロナワクチン接種があるのではないか・・・。そう、コロナワクチンによる免疫システムの混乱。
感染予防を謳ったコロナワクチン接種の効果はその後重症化リスク低減に変った。コロナワクチンの効果について検証が行われているのだろうが、メディアが報じないので分からない。厚労省にもその責務があるのでは。
*1 免疫反応を促して病原体を排除したり、反応を抑えて過剰な攻撃を防いだりする免疫の司令塔
『新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体』宮坂昌之(講談社ブルーバックス2020年)
『ルポ 副反応疑い死 ワクチン政策と薬害を問いなおす』山崎淳一郎(ちくま新書2022年)
『コロナワクチン 失敗の本質』宮沢孝幸・鳥集 徹(宝島社新書2022年)
『免疫「超」入門』吉村昭彦(講談社ブルーバックス2023年)
08.22 05:09AM
08.22 05:13AM
刻々と変わる朝の空
この日この時は二度と来ないんだなぁ・・・
激しく燃えた早朝の空、数分後には静かな空に変わった。
今日8月22日は藤村忌
1515 松本市洞 火の見梯子控え柱付き 2024.08.21
■ 今や絶滅危惧種の火の見櫓はいつ解体撤去されてもおかしくない状況だ。この火の見梯子のことは1年くらい前に知ったが、どうやら解体が予定されているらしい。ようやく今日(21日)の午前中に見にいくことができた。鋼管で構成されている。高さはおよそ5m。
残念ながら半鐘が撤去されていた(2023年5月に撮影されたSVには半鐘が写っている)。
簡易な消防信号板だけが残されていた。
基礎は直径45cmのコンクリート製
■ 我が村で今年度10回予定されている「カレー大作戦」、7月20日の初回を担当した二八会。このことを地元紙「市民タイムス」が大きな見出しで報じた。
昨日(19日)の夕方5時半からカレー大作戦の慰労会があった。
参加したのは8人。写真に納まっているのは7人(遅れてきたTN君は写っていない。残念ながらNN君は体調不良で不参加)。
夕立が心配されたけれど屋外でジンギスカンをした。とても信じられないが、みんな日頃の行いが良いらしく、雨は降らなかった。
毎回買い出しなどの準備をしてくれるMS君と場所を提供してくれるFM君に感謝。新鮮野菜を提供してくれるMT君、TD君にも感謝。
MS君が作成したカレー大作戦の収支報告書が配布されて、みんなで確認した。いつもこのようなことはキッチリする。豚肉などの食材が昨年よりだいぶ高くなっている。
気の置けない仲間と食べて飲んで、語らうこと3時間。楽しい時を過した。火を囲むとなぜか心が和む。
先日暑気払いをした33会の仲間、そしてこの28会(正しくは漢字表記らしい)の仲間。それから24会の仲間・・・。
上掲写真(もちろんトリミングはしていない)をグループラインで送った。「好い仲間に恵まれて幸せです」というメッセージを添えて。
■ 浅田次郎の『長く高い壁』(角川書店2018年、図書館本)を読んだ。(以下、ミステリー小説のネタばらしにはならないように配慮したつもりですが・・・。)
昭和11年(1936年)2.26事件、昭和12年(1937年)盧溝橋事件、日中戦争勃発。
昭和13年秋、日中戦争下の張飛嶺(万里の長城)。大隊主力が前線に出た後、張飛嶺守備隊として残ったのは小隊30人、その第一分隊10人全員が死亡する。戦死か? 従軍作家の小柳逸馬が検閲班長の川津中尉と共に北京から現場に向かい、10人怪死の真相を解き明かす。
ミステリー仕立てのストーリーの大要はこの通りだが、この小説は単なる謎解きの娯楽作品ではない。作者・浅田次郎がこの小説で書きたかったことは、作品の中に見出せる。当然のことではあるが。
**探偵小説を好んで書くのは、そうした人間の本性を堂々と開陳できるからだ。読者にしたところで、何も人殺しを面白がっているわけではあるまい。他人を恨み、妬(ねた)み、嫉(そね)み、あげくには殺してしまう人間の怖ろしさ ―― むろんおのれのうちにも確実に存在する魔性を、小説の世界に垣間見ている。**(259頁)
**君は今、苦悩している。戦場に正義はあるのか、と。敵という名の人の命を奪い、またみずからもいつ殺されるかわからない戦場に、殺人を事件とするだけの正義がはたしてあるのか、と。**(267頁)
**どれほど腹が立とうと、当たりどころがない。だから得体の知れぬ泥のような怒りが、胸の中に澱り嵩んでゆく。(後略)**(270頁)
**正義感に燃えたのではない。義侠心でもない。我慢のならぬ理不尽がとうとう腹の中で膨らみ切って、反吐のようにせり上がってきたのだった。**(272頁)
従軍作家は事件の真相を明らかにする。だが「嗚呼忠烈 張飛嶺守備隊の最期」と題する報告レポートには真相とは異なることが書かれていた・・・。
浅田次郎は上手い。文中に織り込まれている中国語も難しい単語も効果的だ。こういうラストの構成は他に知らない。なかなか好い。
読了後、ふと松本清張なら終盤をどんな展開にしただろうなと思った。代表作の『砂の器』や『ゼロの焦点』のようにタイムスパンの長い小説にしたのではないか。事件後、何年も先のことが描かれる。
松本清張のようには構想できないけれど・・・。小柳逸馬には当時5歳のひとり娘がいた。時は流れ、太平洋戦争後、昭和32年。年頃になった娘にはフィアンセの新聞記者がいた(好きな作品の『球形の荒野』の主人公のフィアンセも新聞記者だった)。
病に伏せた父親が最期に二人に明かした手記の存在。葬儀を済ませ、二人が開封した手記には「張飛嶺守備隊最期の真相」という見出しが付けられていた・・・。
■ 昨夜(14日)33会の暑気払いをした。集まったのは7人。一時激しい夕立(*1)。雷鳴が轟き、停電して店内が真っ暗になるというハプニングも。店でロウソクを用意してくれたけれど使うことなく電力復旧。ロウソク宴会、楽しかったかも。
**老化に伴って生じる身体機能、精神機能、社会的機能の低下をフレイルという。**と『老化と寿命の謎』飯島裕一(講談社新書)にある(216頁)。フレイルの予防の柱は運動、栄養、社会参加だと同書。社会参加として就労やボランティア活動、友人との交流などが挙げられている。24会、28会、33会・・・。友人に恵まれていて、時々このような交流の機会があるのは幸せだと思う。
33会の仲間とは今年1月に松山旅行をした(過去ログ)。昨夜、早くも(あれこれ段取りを考えると早いこともないか)来年の旅行の話が出た。行先として九州が候補に挙がった。九州の指宿、別府、博多、小倉・・・。TN君の推薦で別府と小倉に絞られた。小倉でまず浮かぶのは松本清張記念館。松本清張は森鴎外の小倉日記を題材にした『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞している(過去ログ)。それから小倉城。
ネットで調べると旦過(たんが)市場がある。みんなで食事をするのに良いかもしれない。それから門司港ビール工房。個人的には神社仏閣にも行きたい。篠崎八幡神社に福聚寺・・・。
幹事として、昨夜参加できなかった仲間の希望も確認して行先を決めたいと思う。楽しみができた。
*1 松本市今井では午後6時45分までの1時間に90ミリと観測史上最大の雨を記録 と15日付信濃毎日新聞(27面)が報じた。暑気払いをした居酒屋から4,5キロの距離のところに松本空港がある。降雨量の計測は松本空港付近で行われているものと思われる。
■ 信濃毎日新聞の科学面に2023年1月から2024年4月まで連載された記事「老化と寿命の謎を探る」を基に書籍化された『老化と寿命の謎』飯島裕一(講談社現代新書2024年)を読んだ。ぼくはこの新聞連載記事を毎回読んでいて、本になればいいな、と思っていた。
この本は次の3章で構成されている。
第1章 寿命をめぐって
第2章 なぜ老いるのか
第3章 健康長寿への道 ― 加齢関連疾患とつきあう
第1章 寿命をめぐってでは寿命400年とされるニシオンデンザメや寿命30年のハダカデバネズミなどの長寿動物を取り上げて、寿命を左右する代謝量について解説している。
この中で、なぜ大人になると子どもの時より1日が短く感じるのか、という疑問にも答えている。
代謝量の変化で説明がつきそうだとして、**体温が共通しているヒト同士の代謝量の比較は、体重の違いだけで割り出される。渡辺教授(筆者注:渡辺佑基 総合研究大学院大学統合進化科学研究センター教授 32頁)は、「25キロの子どもと65キロの大人を比較すると、時間の濃度は子どものほうが1.3倍も濃い。大人の1日24時間に換算すれば、子どもの1日は31時間で、7時間も余分にあることになる」と説明した。**(35頁)
哺乳類では世代時間も寿命も、体重の4分の1乗に比例して増える(34頁)という説明から上記のことを計算してみると、時間濃度≒1.2697倍となった(計算違いをしていなければ)。
第2章 なぜ老いるのかでは老化のメカニズムに関する最先端の研究を紹介している。専門的で難しい内容だが、新聞連載中も興味深く読んでいた。残念なことに新聞記事ではカラーだった説明図が本ではモノクロ(白黒)になっている。
自然免疫:好中球 マクロファージ 樹状細胞 ナチュラルキラー細胞
獲得免疫:ヘルパーT細胞 キラーT細胞 制御性T細胞 B細胞
ミトコンドリア、サイトカイン、アポトーシス、オートファジー、ルビコン、エピゲノム・・・
例示したような専門用語は、例えば今年の1月に読んだ『免疫「超」入門』吉村昭彦(講談社ブルーバックス2023年)にも出てきたと思うが、その意味は既に忘れているが、ヒトの体の加齢に伴って自然免疫も獲得免疫も働きが低下するということ、いや免疫機能だけでなくあらゆる機能が低下するということはさすがに知っている。
実に用心深くできている免疫システムの解説を読んでいて、コロナワクチンって免疫システムを混乱させるんじゃないのかなと思った。必要な免疫反応をしなかったり、過剰に反応したり(サイトカインストーム)。『免疫「超」入門』を読んだ時も同じ様に思ったけれど。手足口病などのウイルス性疾患が流行しているのはそのせいじゃないのかな、などと考えてしまう・・・。
第3章 健康長寿への道 ― 加齢関連疾患とつきあうでは、加齢とともに老いる体に表れる様々な病状の解説と、それらと如何につき合うかが論じられている。
2024年1月22日付信濃毎日新聞科学面(9面)より
上掲した新聞記事には「睡眠時間 年齢とともに短く」「無理に寝なくてもいい」という見出しで睡眠時間やその質が加齢に伴って変化することについて書かれている。ぼくはこの記事を読んで、そうなんだと安心感を覚えた。それで記事を取っておいたが、この本でも第3章の17節「眠りをそれほど必要としていない高齢者」に掲載されている。新聞連載時と同じ構成ということが判る。
本書の最後(第3章 第24節)の見出しは「人生の実りの秋(とき)を豊かに過ごすために」。これは高齢の読者へのエールだろう。