透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「オーシャンズ8」

2024-01-05 | E 週末には映画を観よう

 「オーシャンズ8」をレンタルDVDで観た。2018年の8月にシネコンで観て以来4年半ぶりだ。個性的な女性たち7人が狙うのはニューヨークのメトロポリタン美術館で世界最大規模のファッションの祭典・メットガラでハリウッド俳優(アン・ハサウェイというチャーミングな女性)が身に付ける1億5000万ドルの宝石。

デビー・オーシャンが5年8カ月の服役中に考えに考えた周到な計画とそのあっぱれな実行。美術館内で行われる犯罪。監視カメラが全域をカバーしている館内で簡単に外せないような仕掛けのある首飾りをどうやって奪うのか・・・。なるほどね。良くできた娯楽作品。

この映画は夜にウイスキーでもチビチビやりながら観ると楽しいだろう。部屋を適度に暗くして。だがアルコール摂取自主規制継続中(*1)に付き、昼間お茶を飲みながら観た。途中、ロシア革命下での医師とララの悲恋を描いた映画「ドクトル・ジバゴ」のララのテーマが流れる。静かで優雅な曲にアレンジされていた。今度この映画を観ようかな。


*1 アルコール摂取は週三日までと決めている。三が日飲んだから今週はもう飲酒不可。


「シン・ゴジラ」再び

2023-12-24 | E 週末には映画を観よう

 11月に「ゴジラ-1.0」をシネコンで観たが、前作の「シン・ゴジラ」と比べてみようと思って再度DVDで観た。シネコンで「シン・ゴジラ」を観た時はどんなことをブログに書いているだろう・・・。

以下、過去ログ(2016.08.28)からの引用。

**東日本大震災、福島第一原発事故が東京で起こったら・・・。「シン・ゴジラ」は東京大災害シミュレーション映画。その時、政府は対処できる? 自衛隊はどうする? アメリカの対応は?**

**この映画でゴジラは徹底的に災厄の象徴として描かれている。そう、大震災や原発事故のメタファーとして。ゴジラには同情する余地が全くない。ゴジラは核をつくり出した人間の罪の結果として生まれてきた、ある意味かわいそうな存在でもあるのに。** 

なるほど、こう見たか・・・。

今回の感想。

まるで進化するかのように姿を変える(変態ということではないらしい)ゴジラが最初に東京の蒲田に上陸した時の長い尾を振りながら這うように進む姿、まあそれはなんとか良しとしても眼がダメだった。全くまばたきしないまん丸の眼はなんだかちゃっちいおもちゃのようでリアリティなし。体はなかなか好いのに・・・。ゴジラが鎌倉の稲村ケ崎に現れた時は二足歩行、見慣れた姿になっていた。でもやはり眼が動かず、表情がない。

自衛隊が出動して超巨大害獣・ゴジラを駆逐するためにいろんな兵器を繰り出す。その都度、それらの名称が大きく表示される。それもなんだかなぁ。軍事マニア向け映画のようで。

血液凝固剤を投与されて東京駅でフリーズしたゴジラ。**「事態の収束にはまだ程遠いからな」** この台詞、やはりゴジラって福島第一原発?

「ゴジラ-1.0」の方が好きだな。


他にもDVDで映画を観ているのでここでリストアップしておく。

・「点と線」松本清張の代表作の映画化 
・「アンドロメダ」原作マイクル・クライトン
・「あなたへ」高倉 健の遺作 故郷の海に散骨して欲しいという妻(田中裕子)の手紙。ロードムービー ビートたけし、草彅 剛。
・「AALT] フィンランドの建築家の人生
・「カジノロワイヤル」007シリーズに何人のボンドガールが登場しているのか知らないが、仮に1作品に1人としても24人となる。ボンドガールの中ではこの「カジノ・ロワイヤル」のヴェスパー(エヴァ・グリーン)が一番好きだ。他の作品は知らないが、この作品のエヴァ・グリーンは知的美人、どことなく陰があり、時々見せる寂しげな表情が好い。


ゴジラー1.0

2023-11-08 | E 週末には映画を観よう


 ゴジラ-1.0を観た。やはり巨大なゴジラは大きなスクリーンで観るに限る。

舞台は第二次大戦直後の東京。廃墟、即ちゼロと化した都市を更にゴジラが襲う。で、ゴジラ-1.0。主演は朝ドラ「らんまん」の主役のふたり。

驚きのラストにうれし涙。「え、生きていたのか・・・、よかった。」

どう生きるか、いや、そもそも生きるとはどういうことなのか・・・。山崎 貴監督は観る者に根源的な問いかけを発しているのだろう。


 


週末には映画を観よう

2023-09-17 | E 週末には映画を観よう

 週末に(いや、週末に限らないが)観た映画について何か書こうとカテゴリーを設けてある。このところサボっていたので、まとめて3作品を備忘録として載せておきたい。

寅さんシリーズ第7作「男はつらいよ 奮闘篇」

マドンナは旅先の沼津で出会った花子(榊原るみ)。花子には軽度の知的障害がある。そんな彼女に寅さんは優しく接する。旅先の寅さんは本当に人に優しい。なんらかのトラブルを抱えた人と出会うことが多いけれど、寅さんはそんな人たちをいつも励ます。柴又のとらやではおいちゃんやタコ社長とよくケンカするけど。

何かあったらとらやを訪ねるようにと言って、用立てた青森までの汽車賃を花子に渡す。青森に帰るはずの花子はとらやに来ていた。花子のために何かと世話をする寅さん。

何日か経って、青森から福士先生(田中邦衛)がとらやに花子を迎えにくる。花子は先生と一緒に青森へ帰っていく・・・。


マドンナ花子の「寅さん好き度」 花子は寅さんの優しさに惹かれていた。

★★★☆☆ 福士先生と一緒に青森へ


天空の城 ラピュタ

宮崎作品を「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」「風の谷のナウシカ」「風立ちぬ」と観てきた。で、しばらく前に「天空の城 ラピュタ」を観た。宮崎 駿という人は空が好きなんだろうな、飛ぶことが好きなんだろな・・・。これで主な宮崎作品を観たことになるのかな。


ブルージャスミン

偶々、TSUTAYAのレンタルDVDのコメディの棚で目にした。予備知識は全く無かったがコメディ作品なら笑ってしまうような場面が頻出するだろうと思って借りた。

ニューヨークでセレブな生活をしていた女性の転落物語で、笑う場面など無かった。なんだか期待外れだなと途中で思ったけれど、最後までなんとか観た。


3作品ともおもしろいと思わなかったのはこちらの心模様故か。たぶんそうだろう。


寅さんシリーズ3巡目

2023-08-14 | E 週末には映画を観よう

 寅さんシリーズ3巡目。第1作から見始めて第6作「男はつらいよ 純情篇」を見た。ここで第1作から第5作まで、マドンナの「寅さん好き度」を振り返りたい。

マドンナの「寅さん好き度」


第1作「男はつらいよ」   
御前様の娘・冬子(光本幸子) 
★☆☆☆☆(本当は★半分だけど)婚約者出現


第2作「続・男はつらいよ」 
寅さんの恩師の娘・夏子(佐藤オリエ) 
★☆☆☆☆ 病院の医師と恋仲になるマドンナ


第3作「フーテンの寅」   
旅館の女将・志津(新玉三千代) 
☆☆☆☆☆ 恋仲の大学教授と結婚することに


第4作「新・男はつらいよ」 
幼稚園の先生・春子(栗原小巻)    
☆☆☆☆☆ 恋人出現  


第5作「男はつらいよ 望郷篇」
浦安の豆腐屋の娘・節子(長山藍子)
★☆☆☆☆ マドンナ恋人と結婚決意


※ 冗長な文章にするより表にした方が分かりやすいと思って上掲のようにまとめた。

さて、第6作「男はつらいよ 純情篇」
あらすじは省略。過去ログ

第4作のマドンナ幼稚園の先生・春子(栗原小巻)さんはとらやに下宿していたけれど、本作のマドンナ、夫と別居中の夕子(若尾文子)さんも下宿している。

*****

長崎港。寅さん、赤ちゃんを背負った若い女性に声をかける。なんだか薄幸そうな雰囲気のこの女性、宮本信子が演じる絹代。絹代は遊び人の夫に愛想をつかして故郷・五島列島の福江島に帰るところだった。宿代が足りないことを寅さんに告げて、お金を少し貸して欲しいという。寅さん「来な」と一言。寅さんは幼い子どもを連れた絹代と鄙びた旅館に同宿する。

寅さんが隣の部屋で寝ようとした時、絹代は服を脱ごうとしている。
「泊めてくれて、何もお礼できんし・・・」
この後の寅さんの台詞に、今回も泣いた。

そしてラスト、翌年の正月、絹代は幼い子どもと夫と共にとらやを訪ねる。絹代はとらやから福江島でひとり暮らしをしている父親(森繁久彌)に電話する。娘からの電話に涙する父親。このシーンでも泣いた。

このシリーズのベスト5に次ぐ佳作だと思う。

第6作「男はつらいよ 純情篇」
作家の夫と別居中の夕子(若尾文子)
★☆☆☆☆ 夫がとらやに迎えにきて、ジエンド。

大阪生まれの山田洋次監督は父親の仕事の関係で2歳で旧満州へ。山田監督は、内地はどんなところだろうといつも思っていたそうだ(*1)。

寅さんの旅は山田監督のふるさと探しの旅


*1 このことをNHKラジオの番組で聞いた。
 


「風立ちぬ」

2023-08-05 | E 週末には映画を観よう

 朝カフェ読書の前にTSUTAYAで「ルパン三世 カリオストロの城」のDVDを探したが、見つからなかった。で、「風立ちぬ」を借りた。このアニメ映画の予備知識は全く無く、堀辰雄の同名小説が映画化されたもの、と思っていた。でも違っていた。ストーリーに反映されていたから、全く外れというわけではなかったが。

この映画には黄緑色を多用した背景(風景)が多いと感じた。彩度が高すぎかなとも感じたが、総じて美しい風景だった。動画では列車や飛行機などのパースペクティブなアングルも、登場人物の動きもなかなか好かった。細部にまできちんと手が入っていることにも気が付いた。

茅葺きの民家が点在する田舎の風景が列車の窓外を流れる(屋根の棟の納まりの特徴から北関東辺りではないかと思う)シーンでは民家の横に背の高い火の見櫓が立っていることに気がついた。 余談だが、朝ドラ「らんまん」にも小屋の屋根に立つ簡易な枠火の見がちらっと映ったことがある。

「風立ちぬ」に描かれているのは、主人公・堀越二郎の懸命な生き様。飛行機好きな少年・二郎はやがて飛行機を設計する技術者になる。関東大震災の時、列車の中で二郎が出会った少女・里見菜穂子。何年か後、堀越は偶然菜穂子と再会して、ふたりは互いに惹かれ合うように。二郎が菜穂子に結婚を申し込んだとき、彼女は結核に冒されていた・・・。

ただ、美しい飛行機を設計したいと願っていた二郎だったが、時代的に設計するのは戦闘機だった。映画では観光用(?)の飛行機が描かれているが、戦争では攻撃用に改変できるということも観る者に伝えられる。海軍の艦上戦闘機の設計チームのトップに抜擢され、二郎はそれを受け入れる。戦争に加担することに苦悩する二郎を描いたらこの映画の雰囲気、印象がかなり変わっただろう。まあ、このようなことを考えないで恋愛物語として観るのがよさそうだ。

観ていて気になったのは二郎が設計した飛行機の主翼が逆への字形に折れていたこと。この形って航空力学的にありなんだろうか、と思って、ネットで調べてみた。逆ガル翼と呼ばれる主翼で、実際にあることが分かった。知らなかった・・・。いくつになっても知らないこと、解らないことばかり。


 


「風の谷のナウシカ」

2023-07-19 | E 週末には映画を観よう

「風の谷のナウシカ」を観た。

 巨大産業文明が崩壊してから1000年 
錆とセラミック片におおわれた荒れた
大地にくさった海・・・腐海(ふかい)
と呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類の
森がひろがり 衰退した人類の生存を
おびやかしていた

冒頭この映画の状況設定が示される。人間の愚行によって破壊し尽された地球の自然、文明。火の7日間というのは核戦争を意味している。核戦争が起きてしまうという悲劇的な未来・・・。

この映画の見方は人によって様々かもしれない。主人公のナウシカが人間と自然の折り合いをつける主導者となって、自然再生、人間社会の再興を目指す姿が描かれている。ぼくはこの映画をこのように理解した。

余談だが、見始めて、あれ手塚治虫の絵と雰囲気が似ているなぁ、と思った。また、後半になって腐海の底に落ちこんだナウシカが見上げる大木が立ち並ぶ光景はガウディのサグラダ・ファミリアに似ているな、と思った。

「もののけ姫」では山犬(オオカミ)に育てられたサンを自然の代表として、アシタカを人間の代表として描き、ふたりの関わりを通して自然と人間とが共生するに至る過程が描かれた。ナウシカはサンとは違い、自然と人間を共生に導く、どちらにも属さないそれこそ神のような存在として描かれていると思う。ラストはそのことを示す象徴的で印象に残るシーンだった。

宮崎作品を「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」、そしてこの「風の谷のナウシカ」と観てきた。さて次は何を観よう・・・。


 


「となりのトトロ」

2023-06-24 | E 週末には映画を観よう

 松本のなぎさライフサイトのTSUTAYAで映画のDVDを金曜日には無料で借りることができる。で、週末には映画を観よう。ただし年齢制限があって、無料になるのは私のような高齢者。歳を取るのも悪くないと、借りる時だけ思う。

23日の金曜日に借りたのは「となりのトトロ」。この映画が公開されたのは1988年とのことだから、35年も前の作品だ。テレビでも何回か放送されているが、観たことがなく、初めて観た。「え、トトロを観たことがないなんて、信じられな~い」と驚きの声が聞こえそう。

おとうさんと一緒に田舎の一軒家に越してきた小6の女の子・サツキと4歳の妹・メイ。サツキとメイ、ふたりとも5月生まれなのかもしれない。この映画では幼い姉妹の「ひと夏の冒険」が描かれる。

しばらく前に観た「もののけ姫」では畏怖すべき森が描かれていたけれど、トトロでも緑豊かな森が描かれている。ただし、もののけ姫とは違って、怖い森ではない。森のトトロとの交流はファンタジック。ネコバスも楽しいキャラクターだ。

「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」とは違って、おどろおどろしい生き物が出てこないのは好ましい。

歳をとって感性が鈍ったか、感動することもなかった・・・。


 


「千と千尋の神隠し」

2023-06-19 | E 週末には映画を観よう

 宮崎駿監督の「もののけ姫」に続き、「千と千尋の神隠し」を初めて観た。

「もののけ姫」は人と自然の共生がテーマ、と私は理解した。山犬(オオカミ)に育てられたサンは自然の代表、アシタカは人間の代表。自然と人との関係のあるべき姿がふたりの関わり方によって描かれる。では「千と千尋の神隠し」のテーマは? ぼくは分からなかった。小学生の千尋が両親と一緒にトンネルを抜けるとそこは雪国、じゃなかった異界だった。異界で千尋が活躍して成長する姿を描いている。これがテーマ? 違うだろうなぁ。環境問題?

*****

このところ火の見櫓のある風景を描いていて、緑色の表現が気になっている。それで、背景の山や木々の緑色が両作品でかなり違うことに気が付いた。一言で言えば「もののけ姫」は地味、「千と千尋の神隠し」は鮮やか。ぼくの好みは「もののけ姫」の背景画。山の遠景表現や木の立体的表現は多いに参考になる、と思って観た。

宮崎作品は、あと「ルパン三世 カリオストロの城」と「となりのトトロ」を観たら終りにしよう。どうもぼくの好みではなさそう・・・。


 


4「新 男はつらいよ」

2023-06-17 | E 週末には映画を観よう

 「男はつらいよ」シリーズを再び見始めた。昨日(16日)見たのは第4作「新 男はつらいよ」。

競馬で大穴を当てた寅さんが、おいちゃん、おばちゃん孝行を考えてハワイ旅行を計画するも、納めた旅行代を旅行会社の社長に持ち逃げされしまう。近所の手前、羽田まで行き、深夜にとらやに帰る。ひっそり隠れていると、泥棒(財津一郎)が・・・。そのドタバタ騒動が前半で描かれる。

マドンナの春子さん(幼稚園の先生、栗原小巻)は後半になってようやく登場する。ハワイ旅行の件でおいちゃんたちともめて、とらやを飛びだしていった寅さんがひと月後にとらやに帰ってくると、春子さんが2階に下宿していて、寅さん一目惚れという展開。

寅さんとマドンナが言葉を交わすことはあまり無い。マドンナには恋人がいて、あっけない幕切れ。春子さんの「寅さん好き度」は☆☆☆☆☆。一緒にボートに乗ったりもするけれど、寅さんが好きだからという訳ではなく、偶々下宿をしているとらやのおいちゃんの甥っ子だから、無下に断るわけにもいかなくて、という感じ。まだシリーズ4作目で、寅さんとマドンナとのやり取りをストーリーの中心に据える、というパターンになっていないように思う。

寅さんとマドンナがどのように出会うか、ということにも注目していきたい。第1作、第2作はマドンナがとらやから徒歩圏内に住んでいる。ちなみに第1作のマドンナ・冬子さん(光本幸子)は御前様の娘、第2作のマドンナ・夏子さん(佐藤オリエ)は寅さんの恩師の娘。第3作のマドンナ・志津さん(新玉三千代)は旅館の女将、旅先で出会う。ぼくは旅先で出会うパターンが好き。


1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39   40   41   42   43   44   45   46   47   48   


「もののけ姫」

2023-06-06 | E 週末には映画を観よう

 アニメ映画を観ることはあまりない。宮崎駿監督の「もののけ姫」が大ヒット作だということは承知していたが、いままで観たことがなかった。で、6月2日(金)にDVDで初めて観た。

登場人物や動物の台詞がよく聞き取れず(特定の周波数域の音が聴こえにくくなってきているのだろう。確実に老人力がついてきていることを自覚する)、翌3日に改めて字幕付きで観た。台詞に出てくる名前などの表記まで分かって、ものがたりの理解の助けにもなった。

自然と人間がどう折り合いをつけて共に生きていくのか・・・。この映画の大きなテーマは自然と人間との共生だとぼくは理解した。山犬(オオカミ)に育てられたサンは自然の代表であろうし、アシタカは人間の代表だろう。自然と人間を代表するふたりの主人公を中心にものがたりは進行していく。

エボシ御前は神宿る自然を恐れない現代の人間の姿だろう。自然を破壊し続けるとどうなるのか、デイラボッチャの不気味な振る舞いがそれを暗示する。デイラボッチャの動きは実に上手く表現されていた。

画面を一時停止して印象的なジコ坊の台詞をメモした。「天地(あまつち)の間にあるすべてのものを欲するのは人の業というものだ」

もののけ姫・サンとアシタカ、ふたりには結婚という選択肢もあったが、最後、それぞれ別々に暮らすという選択をする。時々会うことを約束して。

ふたりの結論が人間と自然の折り合いの付け方を示しているとすれば、それは具体的にどうすることなんだろう・・・。確実に言えるのは、人間は自然に対する畏怖の念を抱き続けなければならない、ということだろう。


 


「サロゲート」を観た

2023-05-20 | E 週末には映画を観よう

 男はつらいよの第4作を借りるつもりだったが、SFコーナーを覘いて「サロゲート」を借りた。ブルース・ウィリスが主演の映画ならおもしろいだろう、と思って。「サロゲート」は2009年に公開されたアメリカ映画。

サロゲートは身代わりロボットのこと。本人(オペレーター)に代わって社会生活を送る。サロゲート所有率98%の社会。街なかを歩く者、車を運転する者、地下鉄に乗っている者、働く者、みんなオペレーターに繰られているサロゲート。サロゲートはオペレーターの望み通り性別も年齢も容姿も自由に変えることができる。

サロゲートが殺されても安全装置が作動してオペレーターは傷つかないはず、だった・・・。ところがある夜、サロゲートを開発した男の息子のサロゲートが何者かに殺されると、息子まで死んでしまう事件が発生する。

この映画は、星 新一の『ボッコちゃん』(新潮文庫)に収録されている「肩の上の秘書」の延長線上にある近未来を描く。

体が不自由な人の分身のサロゲートが自由に走り廻る。人に代わってサロゲートが危険な作業をする。SFの世界のことだと思っていたことが現実になりつある。

「サロゲート」は観た者に問う、人の代わりをどこまでAIにさせるのか、どこまで許容されるのか、を。


 


「男はつらいよ」シリーズ再び

2023-05-14 | E 週末には映画を観よう

 月1,2回、週末にDVDで映画を観ているのにここ数カ月「週末には映画を観よう」に記事を書いていなかった、外ればかりで。

寅さんシリーズの全48作を観てブログに書いた。中には2、3回観た作品もあるが、また観ようと思っている。で、第1作「男はつらいよ」、第2作「続・男はつらいよ」、第3作「フーテンの寅」を続けて観た。


第1作「男はつらいよ」、20年ぶりに柴又に帰ってきた寅さん。とらやで妹のさくらやおいちゃん、おばちゃんと涙の再会。さっそく寅さんはさくらの見合いに同席する。見合いの様子を描いた部分は飛ばした。見合いの席での寅さんの振る舞いが観るに堪えないので。

上手くいかなかった見合いの直後、博が想いを寄せていたさくらにプロポーズ。ふたりは結婚して翌年に満男が生まれる。第1作は中身が濃い。

寅さんと言えばマドンナ。第1作のマドンナは御前様の娘・冬子(光本幸子)。だが、冬子には婚約者がいて・・・。ある日、寅さんは冬子と釣りに行こうと帝釈天に行き、冬子が婚約者と親しそうにしているところを見かける。茫然自失の寅さんが憐れで、観ていて悲しくなる。

マドンナ・冬子の「寅さん好き度」は★☆☆☆☆。本当は★半分だけど。


第2作「続・男はつらいよ」は寅さんの恩師・坪内逍遥じゃなかった、坪内散歩先生の娘・夏子(佐藤オリエ)がマドンナ。20年ぶりに散歩先生を訪ねた寅さん。歓待されて食べつけない料理を食べたせいか、胃けいれんを起こして救急車で病院へ。病院を抜け出して警察沙汰になり、柴又を後にする。もめ事を起こして柴又を去るというその後のシリーズのお決まりのパターンが第1作、2作で早くも出てくる。

この第2作では寅さんが生みの母親(ミヤコ蝶々)と再会するところが描かれる。旅先の京都で偶然散歩先生と夏子に会った寅さんは夏子と一緒に母親に会いに行く。母親はホテルはホテルでもラブホテルのオーナーだった。そこで親子喧嘩をするふたり。

散歩先生が亡くなって、葬式の日。寅さんは入院した病院の医師と夏子さんが恋仲であることを知ってしまう。寅さん、惨め・・・。

映画の最後で、寅さんが母親と仲良く嵐山の渡月橋を歩いていくところを新婚旅行に来ていた夏子が見かける。このあたりに山田監督の優しさが出ている。

マドンナ・夏子の「寅さん好き度」は★☆☆☆☆。優しい女性なんだけど。

3作品ともマドンナに恋仲の男性がいるという設定が同じ。


第3作「フーテンの寅」の監督は山田洋次ではなく森崎 東。監督が代われば作品の雰囲気が変わるのは当然だ。

柴又に帰ってきた寅さんに見合いの話が待っていた。見合いの相手は、仙台の焼き鳥屋にいた顔見知りの駒子だった。寅さんは駒子を元亭主と復縁させて、旅に出る。

旅先の湯の山温泉で出会った旅館の女将・志津に惚れた寅さん番頭に。旅行でこの温泉に来たおいちゃんとおばちゃんが旅館に泊まって寅さんと偶然の再会。寅さんシリーズには偶然がつきもの。

マドンナ・志津の「寅さん好き度」は☆☆☆☆☆。全作中唯一ゼロ。やはりマドンナも寅さんに好意を寄せていないと。初期の作品はあまり好きではない。


 


「ラーゲリより愛を込めて」

2022-12-22 | E 週末には映画を観よう

 来週観ようと思っていた映画「ラーゲリより愛を込めて」を昨日(21日)観た。

この映画の原作、『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』辺見じゅん(文春文庫2021年23刷)を6月に読んだ。文庫本には帯が付いていて**珠玉の人間賛歌、心震わす感動巨編、映画化決定! 監督・瀬々敬久 主演・二宮和也 2022年公開予定**と大きな文字で書かれていた。このノンフィクションを読み終えた時、映画が公開されたら是非観ようと思った。山本幡男という人の人間性に強く惹かれたので。こんな素晴らしい人が実在したんだ、という驚きと感動。

カテゴリーを「週末には映画を観よう」としたのは、金曜日にはDVD(*1)を無料で借りることができるために映画を観るなら週末だ、と考えたから。でも映画館で観るなら平日の方が空いているだろうと思って昨日観た。カテゴリーは直さないでおこうと思う。

さて、映画「ラーゲリより愛を込めて」。

1945年(昭和20年)8月敗戦。シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に収容された男たちの中に山本幡男がいた。極寒の地での過酷な労働、ひどい食事、栄養失調・・・。劣悪な状況下、死んでゆく仲間たち。だが、山本は決して希望を捨てることなく、仲間を励まし続けた。そんな山本を病魔が襲う。癌だった、それも末期の。余命3カ月という診断。彼は遺書を書くことを勧められる。

帰還が認められた時、書かれた遺書をどのようにして日本に持ち込み家族の手に渡すか・・・。紙に書かれた遺書を持ち帰ることはできない。見つかればスパイ行為として再び収監され、帰国(ダモイ)できなくなる。そこで彼らが考えた方法、それは遺書を暗記することだった。妻に宛てた遺書、子ども達に宛てた遺書、母親に宛てた遺書・・・。映画では分からないが、原作によると遺書の全文は字数5400字。一字一句確実に覚える・・・。

映画では山本幡男が収容所の仲間たちから人望を得ていく過程や、特にぼくが関心を持っていた、厳しい監視下で遺書を暗記する何人かの仲間たちの苦労、努力の様子の描写が思いの外、少なかった。

帰国(なんとそれは敗戦から11年後、1956年(昭和31年)12月のことだった)を果たした彼らが、家族の住まいを尋ね当て、奥さん、子どもたち、母親の前で暗唱、書き起こした遺書を手渡す。

その場面は感動して泣いたけれど、その後には不要ではないかと思われるショットがあったりした(言うまでもないことだが、これはあくまでもぼくの個人的な感想に過ぎない)。

映画の中では今現在、2022年に物語を直接的に繋ぐ場面があったが、この辺りは観客を信頼して表現しなくても良かったのではないか。観客はこの映画をそれぞれの想いで今現在に繋げたと思うから。

山本幡男の妻・モジミは夫の死を知った時、庭にとび出して慟哭する。この場面は部屋に座ったまま、静かに、理性的にと言っていいのかどうか分からないけれど、深い悲しみをぐっとこらえて、下を向いて嗚咽するというような表現でも良かったのではないか、と思う。観客はモジミと同じように嗚咽するから。同じような泣き方をすることで観客の心はモジミの悲しみにより共振するのではないかと思う。ぼくはそのような表現であれば、もっと泣いたと思う。

エンドロール。ここは出演者たちや映画製作に関わった多くの人たちの名前がゆっくり下から上へ流れていくような表現が似つかわしいと思ったなどと書けば生意気かな。流れる音楽は静かなピアノ曲だったら良かったなぁ、と感じた。もちろんこれもあくまでも個人的な感想だが、表現者の手を離れた作品を観客はどのように観賞してもよい、と言い訳めいたことも書いておこう。

*****

拙ブログを閲覧していただいている方にこの映画をお薦めしたいと思いますし、出来れば原作も読んでいただきたいと思います。


*1 先日の記事でVDVなどと書いてしまったが、なぜそんな間違いをしたのか分からない。DとVの組合せで、脳が視覚的なイメージ、同じアルファベットの間に別のアルファベットが入っているというイメージだけで、間違えた並びでの入力をぼくに指示した、ということなのかもしれない。


「アバウト・シュミット」

2022-12-21 | E 週末には映画を観よう

 週末には映画を観よう。先週の土曜日(17日)にジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」をDVD(*1)で観た。

保険会社を66歳で退職したシュミットはネブラスカ州オマハで奥さんとふたり暮らし。さて、ネブラスカってどのあたりだっけ? ネット検索してアメリカのほぼ中央に位置する州だと分かった。デンバーに暮らす一人娘は結婚間近。

退職後、特にすることもないシュミットは退屈な日々。ある日、テレビでアフリカの子どもたちの支援プロジェクトを知り、6歳の少年の養父になる。で、少年に手紙を書くことでうっぷん晴らし。

ある日、シュミットが出かけている間に(郵便局に行っていたんだっけかな)、奥さんが急死してしまう。

孤独・・・。シュミットは奥さんと一緒に旅行に行こうと買っていた大型のキャンピングカーで娘を訪ねていくことにする。孤独を癒す旅。

娘の結婚相手の男も気に入らないし、男の家族も気に入らないシュミットだったが、結婚式ではきっちりスピーチ。でも孤独は癒えず。

ラスト、アフリカの少年から届いた手紙には少年が描いた絵が同封されていて、その絵を見たシュミットは涙する。人と人との繋がりって、とても大切なんだ、ということがストレートに伝わる絵。絵を見て僕もウルっときた。

ジャック・ニコルソンが定年退職した男を演じているなら、おもしろいというか、共感することもあるだろうと思って見たけれど、ストーリーは起伏に乏しく、ジェットコースター的なストーリー展開の映画に慣れてしまった者としては物足りなかった。次はあり得ないほどハッピーなストーリーの映画を観たいなぁ。そんな映画、何かあるかな。

そして、来週は「ラーゲリより愛を込めて」を観よう(原作は感銘を受けた『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』辺見じゅん(文春文庫))。

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*1 まったく気がつかなかったけれど、DVDをVDVと書いていた。なぜだろう。ある方に指摘していただいたので訂正した。どうやら老人力がついてきたようだ。

ご指摘ありがとうございました。