この川の橋を渡る時には必ず川に降りたカラスの群れが水浴びをしている光景が見られる。
海から200メートルほどの河口付近だからカモメの領分ではないかと思うのだが何時もカラスがいる。
小さい頃、お風呂へ入ったかと思うと、あっという間に出て来るものだから、母から「カラスの行水はだめ!よく洗いなさい!」と叱られたものだ。
カラスを観察していると、一瞬づぶんと羽まで水に浸けて、くちばしを上に向かって突き上げるようにして水から出ると、ぶるぶると羽を震わし水を切って、ハイ終わり、といったような仕草をしたようだった。
確かに、ざぶんと浴槽に浸かって、手で顔をぶるぶると洗って、もう一度どぶんと入って出ていた。
だが実際は60年以上も前の我が家の風呂は五右衛門風呂で、さな板(底が熱いので直接足が釜に触れないようにする板)を巧く案配しながら沈めて入るのだから、上の表現のように、ざぶん、どぶん、とはいかなかったのが真相だ。
しかし、気持ちやイメージはざぶん、どぶんのカラスの行水だったように思う。