冨士眞奈美<ふじまなみ>1938年 静岡県の生まれで女優
の前田美波里や岸恵子は遠戚となります。静岡県三島北
高校を卒業し上京。俳優座の養成所に入ります。1957年
NHKのテレビドラマ「輪唱」の三姉妹役でデビュー。こ
の時に共演した馬渕晴子、小林千登勢と共にNHK三人娘
と呼ばれ人気を博します。1960年にスタートしたバラエ
ティ番組「東は東」の司会を務めるなどタレントとしても
活躍。近年はTBS系列の人気番組「ぴったんこカンカン」
俳句の旅コーナーの女優二人組として有名。
「流れ星 恋は瞬時の 愚なりけり」<衾去>
1970年「細うで繁盛記」で意地悪な小姑役を演じ、清純
派からの脱却に成功します。1974年 脚本家の林秀彦と結
婚。10年後の離婚を機に女優と執筆を再開します。現在も
俳句に関する講演や句会の選考委員などを務め、特に京都
教育大学の名誉教授。正岡子規や夏目漱石の研究で知られ
る坪内稔典は、眞奈美の幅広い知識より生まれる俳句を高
く評価しています。
「なにほどの 男かおのれ 蜆汁」<衾去>
「おんなふたり 奥の細道 迷い道」は吉行和子との共著で、
芭蕉の奥の細道をなぞるユーモラスな対談集です。俳句を
基調としていますが、話は芸能界の話にまで拡がり、時を
忘れ完読してしまいます。ちなみに、冨士眞奈美の俳号は
衾去<きんきょ> 吉行和子の俳号は窓烏<まどからす>
「海底のやうに 昏れゆき 梅雨の月」<衾去>
「噛みしめる ごまめよ 海は広かった」<衾去>
「白桃や 優柔不断も やさしさか」<窓烏>
「恋心 消えれば他人 夾竹桃」<窓烏>
眞奈美の句集「瀧の裏」のあとがきには「句友とは言葉を
仲立ちに感性を同じにして遊ぶ仲間」と記してあります。
冨士眞奈美。テレビの創成期より活躍する女優。そして俳
歴30年以上のベテラン俳人。寝間を去るという意味深な俳
号を持つ衾去<きんきょ>。現在82歳。
「逃げ水の 向かふは絶壁 かもしれず」<衾去>
写真と文<殿>