ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「あさ/朝」(谷川俊太郎:詩・文、吉村和敏:写真、アリス館)を読む

2019-05-09 22:34:52 | 読む


10年ほど前に買った本の中から、「あさ」という本が出てきた。
谷川俊太郎/詩・文、吉村和敏/写真でできている。

読んでみると、改めて素敵な本だなと思った。

左から開いていくと、写真が主役で文がそこについている感じ。
朝の写真一つ一つに文がついている。
続けると、夜明け前から次第に朝になるように写真が続いている。
それを続けていくと、詩になるようだ。

「あさ」

だれよりもはやく めをさますのは 
そら

おひさまのてがふれると
よるははずかしがって あかくなる

ゆめのくにへ かえっていく
ゆめのこどもたち

みんなまっている
いきをひそめて

ちきゅうがまわっている
ゆっくり とてもしずかに

はじめての おはようのまえの
かすかなものおと

あんなにとおいのに
こんなにちかい おひさま

ひかりが そっとはいってくる
ゆめでまいごになった
こころのなかへ

まぶしい まぶしい まぶしい
きょう はじめてのきょう

だれのものでもない ほうせきが
いっぱい

はっぱもくきも ねっこまでわらってる
ひかりにくすぐられて

もう とりたちはおきている
ありもおきている たぶんもぐらも

おわってしまうものは ひとつもない
すべてがはじまり

くさのかおり かぜのかおり
いのちのかおり

おはよううみ
おはようそら

おはようきょう


右からページをめくっていくと、今度は「朝」という詩集になっている。
ここでは詩が優先し、写真は後からつけた感じ。
いくつかある詩の中から、一番気に入った詩を一つ選ぶとすると、これ。

「朝のリレー」

カムチャッカの若者が
きりんの夢をみているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交代で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ


…右から開いても、左から開いても楽しめる。
その工夫がいい。
コメント
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