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小さい子ども向けのアニメだと思いつつ、アンパンマンのテレビ番組を見ることがある。
毎回ゲストのように出てくるキャラクターが豊富だなあと思う。
そして、定番の悪役ばいきんまんの出現も、その退場(?)の仕方も、決まってはいるのだが、見ていて案外あきない。
数年前のポプラ新書に、アンパンマンの作者やなせたかし氏の「わたしが正義について語るなら」というものがあった。
外側の帯の表側だけではなく、裏側にも、「正義」について、本書の内容にふれてあった。
正義はかっこよくない
正義はあやふやである
正義を行うのは弱い人だ
正義はある日突然逆転する
正義は悪人の中にもある
正義は感謝されない
正義でいばっているやつは嘘くさい
正義のための戦いなんてない
正義とは孤独だ
傷つくことなしには正義は行えない
こうしてみると、正義についてのことしか書いてないようだけれど、それだけではない。
やなせたかし氏が、幼いころからの自らの経験や戦争体験を含めて、知ってきたこと・得てきたことを、書いている。
とくに、アンパンマンの作者として、「正義」をどうとらえるかを語っている。
それで出てきているのが、冒頭に書いた、青字の部分である。
読んでいると、私自身の子どもの頃に味わったいやな経験や、この年まで生きてくる中で味わったことなどと重なる部分が多く、何度もうなずいてしまった。
アンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」の中に、「愛と勇気だけが友だちさ」という歌詞がある。
やなせ氏がここに込めた思いというのは、
戦うときは友だちをまきこんじゃいけない、戦うときは自分一人だと思わなくちゃいけないんだということだという。
お前も一緒に行けと道連れをつくるのはよくないとも言っている。
誰にだって良心と悪心があります。いつもは良心が悪心を抑制してるんですね。そのバランスが崩れて悪の方が強くなると悪い奴になる。
こんなふうに、やわらかい表現の中に、真実がこめられているなあと思うものが多かった。
このような真実が作者の心に流れているから、アンパンマンのキャラクターは豊かであり、愛くるしいのだろう。
やなせ氏が亡くなって7年になるが、キャラクターたちは、今日も元気に活躍している。