「BOOK-○○○」で、100円均一(税は別にかかるけど)の単行本のコーナーを見ていたら、風間八宏氏の「『1対21』のサッカー言論 『個人力』を引き出す発想と技術」(二見書房)という本を見つけた。
風間氏は、J1で、川崎フロンターレ(2012~2016)、名古屋グランパス(2017~2019)の監督を務めた。
川崎をJリーグの上位チームに押し上げ、J2に落ちていた名古屋をJ1に引き上げた手腕を持つ。
その指導力の根底にある考えを知りたくて、買って読んでみた。
この本が出たのは、2010年。
まだ、氏が筑波大の監督を務めていたときの書である。
書名が面白い。
選手一人一人に揺るぎなき個人力がなければ、何も成し得ることができない、と氏は考える。
「1対21」…これは、1人のサッカー選手が強く戦うために大切な心の持ち方を、象徴的に数字で表現したものなのだそうだ。
サッカーをするうえで、選手に必ず必要なのが「個人戦術」。
「個人戦術」とは、読んで字のごとく「選手一人ひとりの戦う術」。
個人戦術を発揮するには、「考える力」(判断力を含む)と「技術」の2つが揃っていなければならない。
そのどちらか一つだけ備えていればよいというわけではなく、2つで一体のものと考える。
「個人戦術が重要だ」ということは、「チーム戦術は必要ない」ということではない。
「この状況下で自分は何ができるのか?」を考えるのが、個人戦術の基本姿勢。
本書を読みながら、これって、人生を生きていくためのことと同じだよな、と思うことが多くあった。
生きていくうえで、人に必ず必要なのが「生きるための力」。
「生きるための力」を発揮するには、「考える力」(判断力を含む)と「(基本的な生活)技術」の2つが揃っていなければならない。
「この状況下で自分は何ができるのか?」を考えるのが、「生きるための力」の基本姿勢。
こんなふうに、言い換える(書き換える)ことができるように思う。
本書では、戦える技術として、「止める・蹴る・運ぶ・外す」を上げ、具体的にそれぞれの技術のコツを簡潔かつ分かりやすく述べてある。
また、日本のサッカーには、一人ひとりを伸ばす「確かな指導力」が必要だとも書いてある。
それは、決して指導者の言う通りに動くことではなく、自分で考えて動くことができるようにすることが大切だということも書いてある。
別なもので見た、氏の考えに、「サッカーで一番大事なのは、状況に合わせて変化する力、駆け引きする力。それが一番面白いところだ。」ということがある。
個人の力を引き出したり高めたりするのは、まさしくそういう局面だということだろうか。
それは、人生でも同じ。
様々なことが起こり、様々な状況の中で、自分で判断して行動していくことが求められる。
そうやって乗り切っていくことが、人生でも最も印象的で面白いことになるのだと言える。
だから、指導する人は、その対象が自分で考えて行動に移せる力をつけていくことができるようにしていかなくてはいけない。
同意できることが多い本だった。
なるほど、個人を強くし、チームを強くしてきた人が書くだけのことはあるなあと思ったのである。