「かぞく」
ぼくはチチがきらいだ とアニがいう
わたしはハハがきらい とイモウトがいう
ぼくみんなすき とオトウト
チチはみんなのためだというけど
かえってくるのは つきにいっかい
チチはだれもあいせないのよ とハハはいう
そんなことない とわたしはおもう
もうハハをあいしてないとしても
チチはわたしたちこどもをあいしている
ゆうがた アネのわたしはカレーをつくってる
ハハはまだかえってこない
アニはむっつりメールをうってる
これがいきてるってことなのかな とおもう
ライオンやちょうちょやまつのきやくらげ
みんないきてるってこういうことなのかな
「ハハのむすめ」
わたしはハハのむすめです
つまりはバアバのまごむすめ
アネからみればイモウトですが
わたしはまだまだわたしじゃない
わたしはわたしになっていきます
まいにちまいにちすこしずつ
ハハがしってるわたしのおくに
ハハもしらないわたしがすんでる
わたしはそこではただのいきもの
わけもわからずいきているだけ
うめきもするしうたいもします
ことばにならないたましいだいて
そっくりだっていわれるけれど
わたしはハハとはちがうにんげん
でもいつかはハハになるかもしれない
わたしによくにたむすめのハハに
「まいにち」
いつのまにか
きのうがどこかへいってしまって
きょうがやってきたけど
どこからきたのかわからない
きょうはいつまでここにいるのか
またねてるあいだにいってしまって
まっててもかえってこないのか
カレンダーにはまいにちが
すうじになってならんでるけれど
まいにちはまいにちおなじじゃない
ハハがしんでチチがひとりでないていたひ
そのひはどこへもいっていない
いつまでもきょうだ
あすがきてもあさってがきても
「そのあと」 詩集『悼む詩』
そのあとがある
大切なひとを失ったあと
もうあとはないと思ったあと
すべてが終わったと知ったあとにも
終わらないそのあとがある
そのあとは一筋に
霧の中へ消えている
そのあとは限りなく
青くひろがっている
そのあとがある
世界に そして
ひとりひとりの心に