規制値超え6市8カ所 県、ごみ焼却灰調査まとめ 2011年8月27日 東京新聞
県は二十六日、一般ごみの焼却灰について、市町村などが行った放射性物質の調査結果をまとめて発表した。
これまでに六市にある八カ所の清掃工場で暫定規制値(一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出された。
セシウム濃度が最も高かったのは、柏市第二清掃工場(南部クリーンセンター)で、六月二十七日に測定された一キログラム当たり七〇八〇〇ベクレル。
柏と松戸市の各二カ所、流山、我孫子、千葉市、印西市の各一カ所で計十六回にわたって規制値を超えた。
千葉県関係記事2件
資源化できず、廃棄物に 放射性セシウム現状は 2011年8月26日 東京新聞
福島第一原発事故による放射性セシウム問題は、県内の上下水道の汚泥処理にも影響を及ぼしている。
本来は再利用されるはずの資源が、行き場を失った単なる廃棄物と化し、関係者を悩ませている。 (堀場達)
Q 上下水道の汚泥とは。
A 水処理の過程で汚れなどが沈殿して発生する。大半はコンクリート原料や培養土などに再利用される。汚泥が大量に発生する県内の主な施設としては、
下水道では県が管理する四カ所の終末処理場と、市町村などが運営する二十三の処理場がある。上水道では県営水道など計十三カ所に浄水場がある。このほか工業用水の浄水場が四カ所ある。
Q 国は一般ごみと同様、一キログラム当たり八〇〇〇ベクレルの暫定規制値を超えると、埋め立てに回さず、施設内などで一時保管するよう求めているはずでは。
A その通り。汚泥から暫定規制値を超える放射性セシウムを検出したのは、県内では下水道の「手賀沼終末処理場」(我孫子市)だけだ。
五月の最初の採取分で二万五〇〇ベクレルだったのをはじめ、八月に行った六回目の検査でも規制値を超えた。
Q 浄水場はどうなのか。
A 県が管理する松戸市の「ちば野菊の里浄水場」で、五月に五三九〇ベクレルが出たのが最高だ。他の浄水場も含め、規制値超えは出ていない。
Q 下水道処理場の汚泥の方が、高濃度になるのはなぜなの?
A 大半の下水道の終末処理場には、汚泥の焼却施設があり、汚泥を焼却灰にするためだ。単なる汚泥より重量が軽くなるが、放射性物質の総量は変わらないので、
当然一キログラム当たりのベクレル値は高くなる。終末処理場の高濃度の汚泥は、すべて焼却灰で、浄水場では焼却灰にしていない。
剪定(せんてい)枝などを燃やした一般ごみの焼却灰のケースと同じだ。
Q 暫定規制値を超えた焼却灰汚泥はどうしているのか。
A 手賀沼終末処理場では、二百二十六トン(八月十五日現在)の焼却灰汚泥が行き場を失い、場内で仮置きされている。
県は焼却前の脱水した状態の汚泥(脱水汚泥)に戻し、最終処分場に埋め立てたい考えだ。脱水汚泥の状態に戻せば、放射性セシウムの濃度は低減されるからね。
Q 暫定規制値を下回れば、問題はなくなるわけでしょ。
A ところが、汚泥を引き取って、再利用可能な状態にする再生業者の受け入れが難航している。それに最終処分場の手当てが、すぐにつくわけではない。
受け入れ先が見つからないため、県では手賀沼終末処理場の焼却灰汚泥のほか、規制値を下回っている三つの浄水場で、現在も約九千トンの脱水汚泥の仮置きを余儀なくされている。
Q 置くところがなくなってしまうのでは。
A 手賀沼終末処理場以外は、仮置き場は緊急課題になっていない。それより「有効利用してきた汚泥がごみになってしまう」
(県企業庁の担当者)ことを問題視する。県下水道課によると、二〇一〇年度は県営の下水道終末処理場で、脱水汚泥約二十二万トンが発生したが、85%を再利用した。
この数値は大きく下がるだろう。
放射性セシウム 現状は 一時保管、間もなく限界 2011年8月25日 東京新聞
福島第一原発の事故を受けた放射性セシウムの検出問題が、県内でも続いている。
農畜産物だけでなく、ごみの焼却灰や上下水道の汚泥処理へも問題が波及し、一般ごみの収集にも影響が出始めた。現状と課題を二回にわたってまとめてみた。
初回は、市民から収集される一般ごみの焼却灰問題を整理してみた。 (吉田昌平)
Q 一般ごみの焼却灰問題の発端は。
A 県内では柏市や松戸市などの清掃工場の焼却灰から七月上旬、国の暫定規制値(一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル)を超える放射性セシウムが相次いで見つかった。
全国的には六月下旬、東京都江戸川区の清掃工場から見つかったのが、問題の発端になっている。
Q 県内の他の自治体にも及んでいるようだ。
A 県によると、これまでに暫定規制値を上回る焼却灰が見つかったのは両市のほか、流山、我孫子、千葉の三市と、印西、白井両市などで作る広域事業組合の清掃工場だ。
いずれも「飛灰」と呼ばれる、焼却した際に舞い上がって集じん機などに集められた煤塵(ばいじん)から見つかっているものが多い。地域的にはやはり、空間放射線量が相対的に高い東葛地域が中心だ。
Q セシウム濃度はどの程度なのか。
A 柏市では、七月に一キログラム当たり最高で七万八〇〇ベクレルの放射性セシウムが検出された。暫定規制値の八倍を超えている。一部では暫定規制値を下回り始めたが、八月に入ってからの検査でも、松戸、流山両市などで同二万ベクレルを超えている。
Q 原因は剪定(せんてい)枝や落ち葉を燃やした灰と言われているようだけど。
A 空気中の放射性セシウムが付着した剪定枝などを燃やした場合、剪定枝は灰になるが、セシウム自体の量は減らないため、灰に濃縮された結果と言われている。
Q 処分は大変そうだ。
A 農林水産省は暫定規制値を超えた焼却灰は、ドラム缶などで保管するよう、各自治体に通知している。例えば柏市には十日時点で三百トン近くが、松戸市には約三十三トンがそれぞれ、
一時保管されている。ただ一時保管も限界があり、松戸市は「今月中には保管場所がいっぱいになる」と悲鳴を上げている。
Q 対策は検討されていないのか。
A 環境省の検討会が八月に入って、処分方法に関する原案を提示した。それによると、一キログラム当たり八〇〇〇ベクレルを超えても一〇万ベクレル以下は、
一定条件の下で埋め立て処分は可能としている。
Q 一定条件とは。
A 地下水などへの汚染を防止する必要があるとし、(1)雨水が浸入しない屋根付き処分場での埋め立て(2)焼却灰を耐久性のある容器に入れて埋める(
3)焼却灰にセメントを混ぜて固めて埋める-などを例示している。
Q 自治体の対応は可能なのか。
A 県内自治体の担当者に聞くと、こうした措置ができたとしても、埋め立てする最終処分の「受け入れ先が見つかるかどうか」を懸念材料に挙げている。
市内に最終処分場がない松戸市は、秋田県小坂町に持ち込んだ暫定規制値未満の焼却灰を返却されたばかりだ。暫定規制値未満の焼却灰であっても、
柏市も市内の最終処分場での埋め立ては周辺住民に理解を得るのが難しく、県外の処分場に持ち込んでいるのが現状だ。
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