昨年から今年にかけてきいてきた、ゲルハルト・シュミット・ガーデンたちによる「クリスマス・オラトリオ」。このアルバムの特色はなんといっても、合唱のみならず独唱まで、声楽をすべて男声でまかなっているところです。バッハを歌うよい女声歌手がふえたことで、近年はめっきり男声のみのバッハ録音は減っています。合唱のみ少年合唱団起用も一時にくらべるとやはり減ってきています。
それはさておき、テルツ少年合唱団の美質は、「アーノンクール2度目の『クリスマス・オラトリオ』」でもふれましたが、やはりディクションの美しさでしょう。また、そのディクションの美しさからくる、少年合唱団としては辛口ともいえる歌唱もすぐれています(さらにいえばレパートリーもおもしろい)。少年合唱だと、もわもわした甘口の歌唱もある中で、芯がしっかりしており、安定感もあります。
「クリスマス・オラトリオ」では、いかにも幼い感じのハンス・ブッフヒール(ソプラノ)と、ちょっとおとなびた感じのアンドレーアス・シュタイン(アルト)が独唱していますが、ともにしっかりした歌唱をきかせてくれます。しかし、二人とも変声してからの情報がなく、テルツ少年合唱団にのこって歌っていたのか、それとも別の道は選んだのかは定かではありません。
なお、創設者のゲルハルト・シュミット・ガーデンはすでに芸術監督から退いていますが、Youtubeでの動画などからは高い水準を保ち、活発な活動をしていることがわかります。ちなみに、テルツ少年合唱団は、アウクスブルク大聖堂少年合唱団、レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊、ヴィンツバッハ少年合唱団とともに、ユネスコのバイエルン州無形文化遺産に登録されたようです。