これから楽しむのは、タチアナ・ニコラーエワ(タチヤーナ・ピェトローヴナ・ニカラーイェヴァ)の「ゴルトベルク変奏曲」(Hyperion CDA66589)です。ニコラーエワの「ゴルトベルク」初録音は1979年。それから録音をかさねて、ここできくのは5度目となる1992年1月22日と23日の録音です。ニコラーエワは1993年11月22日に亡くなっており、この「ゴルトベルク」は死の2か月まえの録音ということになります。わずかなアゴーギグをつけたニュアンス豊かなアリア、そこから30の変奏をへてもう一度アリアにもどるわけですが、こちらはくり返しなしで静かにおわります(最後の1音が印象的)。感傷的にきけば、なんだか死を予感したかのようにも思えます。