今年は、今日から四旬節(灰の水曜日から聖土曜日まで)にはいります。ようするに、今日は四旬節の初日、灰の水曜日、ということ。バッハには無関係な行事なのですが、今日はせっかくなので、この日にちなんだ作品をきいておきたいと思います。
灰の水曜日ための作品といえば、「エメンデムス・イン・メリウス(よりよき生活のうちに)」(朝課のレスポンソリウム)です。バードやゴンベールの同曲もよいのですが、ひとつ選ぶとしたら、迷わずモラレスのそれ。
モラレスによる5声のモテトゥスは、上の2声と下の2声が、「よりよき生活のうちにわれら正さん、知らずしてわれらが犯しし罪を。……」と歌い、上下はさまれたアルトゥス・セクンドゥス(第2アルト声部)が、同日の式中に司祭のとなえる「人よ考えよ、汝埃なるゆえ、再び埃にもどるゆえ。」を6度くりかえすというもの(歌詞訳は今谷和徳)。
演奏は、マクリーシュとガブリエリ・コンソート(ARCHIV PRODUKTION 449 143-2)。この曲が収録された、「セビーリャの聖イシドロの祝日のためのミサ」というCDは、1590年ごろにトレド大聖堂で挙行されたであろうミサを再構成したもので、これを通してきいたあとの「エメンデムス・イン・メリウス」は、とても感動的です。