四旬節の期間中、ライプツィヒでは例外をのぞいてカンタータの演奏がありませんでした。そのため期間中のバッハのカンタータはほとんど伝承されておらず、復活節前第2日曜日用のカンタータも伝承されていません。ないものはしかたがないので、さらに「小川のせせらぎ」週間を延長し、ダニエル・ベーレの「Daniel Behle Bach」(Sony Music 88765477802)から、アリア「心して思いはかれ Erwäge, wie sein blutgefärbter Rücken 」をきくことにしました。
このアリア「心して思いはかれ」は、ヨハネ受難曲第20曲のテノールのアリアで、バロック・オペラのアリアが場(シェーナ)の最後におかれているように、イエスの鞭打ちの場面の最後に歌われます。歌詞は、鞭打たれたイエスの背ににじむ血を虹(神の慈悲や恩寵などの象徴)にみなすという、無信仰の日本人からするとすさまじいものです。ベーレはドイツの若い(経歴からするとたぶん)テノール歌手で、古楽系だとルネ・ヤーコブスとも共演していますね。