これまで読んだ西郷本のなかではやや異色。
堅苦しい歴史の厳密な論証を離れ、「政治とは感情が動かすものだ(おわりに)p181)という観点から、著者の歴史感によって、西洋音楽の話をまじえながら、西郷の人となりに迫る。
音楽の話はだいぶ飛ばしたが、それなりの「西郷と大久保」の実像、薩摩の社会の像が浮かび上がる。ちょっとした歴史通(西南戦争)になった気分を味わえる。
名瀬市誌からの引用もあり、砂糖の自由売買を求めて立ち上がった奄美島民の「勝手世嘆願ねがい」の陳情団の西南戦争への強制従軍、そして、その後の彼らの行動についても少しではあるが触れらているp190。
薩摩士族の異常な高さの人口比。それでも領内で過半を占める農民たちの中に「かくれ念仏」を唱え、命脈を保てえた事実。
「西南戦の役を振り返ると、士族たちが依存し、侮辱してきた農民たちが官軍の兵士となり、ついに薩摩武士の根を枯らしたとも言えるだろう。P193
奄美で過ごした経験もある、「西郷はこのことをよくわかっていて自ら重しとなって、彼らとともに歴史の水底に身を沈めたのではなかったのか。P193
砂糖の自由売買を求めて立ち上がった奄美島民の「勝手世嘆願ねがい」の陳情団の西南戦争への強制従軍、そして、その後。彼らの中には私学校を尻目に上京し、大久保利通の奨学資金を得たり、官軍のスパイを引き受けたりした人物もいた。P190(この出典を知りたい)
「惜別譜」の推理を楽しみながら、最後に、奄美や本土の農民たちの命がけの行動に「薩摩武士の美学よりさらに根源的な歴史の問いかけ」を聴いた気がした。
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amazon 内容(「BOOK」データベースより)
“吾は官軍我敵ハ天地容れざる朝敵ぞ敵の大将たる者ハ古今無双の英雄で…”日本国内最後の武力衝突である西南戦争で幕末明治維新の2人の大立物西郷と大久保は最後のたたかいに臨む。明治10年9月23日夜、城山に立篭もる西郷隆盛に対して、官軍軍楽隊は惜別の曲を演奏した。amazon 登録情報
単行本: 211ページ
出版社: 朔北社 (2004/03)
発売日: 2004/03
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西郷隆盛 惜別譜 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2004-03 |