『田中一村作品集』[増補改訂版] [大型本]
大矢 鞆音 (監修), NHK出版 (編集)
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大型本: 136ページ
出版社: NHK出版; 増補改訂版 (2013/12/6)
言語: 日本語
発売日: 2013/12/6
寸法: 34.8 x 25.6 x 2.4 cm
3月新着図書 書店にもある。
田中一村 新たなる全貌展は2010年だった。研究が進み、その時からさらに一村に対するイメージがかわる。エピソードなどをまじえ作品を時系列に解説していて一村の人物像も浮かび上がる。特に奄美以前の一村の転機になったと思われる作品を以下に取り合えずメモしておこう。思いつくままに、ほんの一部になるとおもう。
図1 「菊図」~図4 「蛤図」 大正4年4月7歳 色紙 現存最年少の作品に一村の「7歳のプライド」と天才が垣間見える。
図27 四字「道法自然」昭和2年・19歳 は奄美の杜を歩いた一村の姿に繋がる。老子「人は地に、地は天に、天は道に、道は自然に法る(のっとる=手本とする) 一村の遺品に漢文全集がある。
図35 「水辺にめだかと枯蓮と蕗の薹」ふきのとう 昭和6年・23歳 は 南画との決別をはかった一村の転換期とされている時期の作品のひとつ。本書ではこの作品がその代表作との見方についてのあらたな見方も示される。p125
図 57「秋色」昭和13年 千葉引越しの年、裏山の風景を描いたこの作品にも、奄美時代の作品に通じる木々の隙間から向こうを覗き見るような構図がみられる。
図62 「白い花」屏風2曲1隻 昭和22年・39歳 は公募展初入選作品(号を一村に変える・昭和21)
目をこらしてみると葉や花ひとつひとつの描写に通う一村こまやかな神経が伝わる。無数の白い花(ヤマボウシ)緑色の花芯も現実にはありえないほどしっかり描かれてているが、それが全体の中で突出しない。解説を読むと作品の上品さ格調の高さがわかる。
図64 「秋晴」昭和23年・40歳 は美術館で見ると印象が随分異なって見える金箔が背景。奄美で見ても親近感を覚える。しかし、この「秋晴」は、落選。もう一点の出品作「波」の入選を辞退。一村の大きな転機になったものと思われる。
図91「花と軍鶏」襖8面 昭和28(1953)ごろ は、「まぎれもなく一村の代表作」p54
図157「パパイヤとゴムの木」は「奄美での本画作成の嚆矢となった。」
一村50歳で奄美へ。「国立療養所奄美和光園」の松原若安(じょあん)事務局長へ贈られた。この絵も、また和光園の関係者との縁もとに一村の絵にとって大きな意味をもつ。
一村はふらりと奄美にやってきたわけでは決してない。
奄美入りに際し、千葉の支援者が手配してくれた奄美和光園宛ての重々しい2通の紹介状と、名瀬警察署長の誘導、数々の保証人をバックに、国立の施設であった園をあげての受け入れ態勢で迎えられた。
この本に関する新聞の書評 サンケイ 2014.1.26 09:30