「灯りをつけましょ ぼんぼりに 今日は楽しい雛祭り 」
雛祭りの歌が思わず口をついて出てくる、メイン会場へ先ず行った。17段約500体のお雛様が飾られている。天段のひなと呼ばれている。
今年もまた3月になるのを待ちかねて、高取町へやってきた。もう8回目である。あちこちで開催されるイベントに、「一度行ったらもういいわ。」というのと何か新しいものを見つける楽しみのあるイベントには、「今年もまた行こう。」と訪れる春を待つイベントの二通りがある。勿論私見である。
今年の新しい出会いのお雛様は、「700年の伝統の一閑張りのジャンボ雛」だ。
『一閑張(いっかんばり)とは、諸説では江戸時代に明の学者・飛来一閑が創始した漆工芸技法です。
木型や木材や土などの原型に和紙を張り重ねて型抜きし漆加工をして仕上げる工芸品です。
和紙を張り重ねた竹の籠に文字や絵を描き、柿渋を塗り固めて籠を完成させるものです。
柿渋には、防虫・防腐・防水効果があり、思いを込めて作った籠は時間とともにその風合いを増して行きます。もし破れてしまっても修復することが出来るので、是非日常の中で長く使ってあげて下さい。
壊れた籠など竹製品に和紙を張り重ね、柿渋で固めて再生する一閑張。ものを大切にしてきた先人の知恵から生まれた技術であり、工芸品です。
奈良一閑張(ならいっかんばり)は、奈良吉野の手漉き和紙や柿渋など、奈良の素材にこだわり、そこに一閑張アートを組み入れた、奈良地方固有の素材を活かした工芸品です。』
興味深く一閑張りのお雛様を見つめる私に、上のようなことを説明してくださって「このお雛様の作者は私です」と仰った北原秀郎氏にお雛様と一緒に入っていただいた記念写真である。
とてもユニークで温かみのある作品に、北原氏のお人柄が表れているように、親切に説明していただくことができた。
このお雛様を見て、子供たちの素直な思いのままを絵手紙のように北原氏へ送ったのが会場に公開してあって、とても好ましい気持ちで眺めた。 次の世代に引き継いでいく芽生えがこうして培われていくのだろうなぁと感心する。
ボランティアガイドの地元の方が、天段の雛について、また雛祭りのもろもろの歴史的なことなど、分かりやすくいい語り口調で説明していらっしゃった。説明の1段落が済むと、聴いていた人や見ていた人が「ありがとう」のお礼を言う前にさきに「ありがとうございました」と深々と頭を下げて挨拶されているのには、感動した。このようなおもてなしの心が、高取町の町興しの根底にあるように思う。
少し寒い日であったが、お雛様や、町をあげての歓迎の心に温もりをいっぱい頂いてきた。
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