(イタリアの街角で偽造のブランドバッグを売るアフリカ系移民 その多くは不法移民であるとも言われています。 “flickr”より By John Rohan
http://www.flickr.com/photos/johnrohan/2209783982/)
【収入の半分がミルク代】
金融危機に関するニュースは欧米や新興国からのものが殆どですが、金融危機によって加速される実体経済の悪化が最も大きな打撃を与えるのは途上国であり、生活に困窮する貧しい階層です。
****金融危機、小国カメルーンにも波及=NGO資金に不透明感*****
世界的な金融危機の余波が、アフリカ中部の小国カメルーンにまで及んでいる。同国で草の根活動を続ける非政府組織(NGO)の多くは、運動資金のほぼすべてを先進国の政府や民間企業の寄付に頼っており、景気減速に伴いその先行きには不透明感が漂い始めた。食料やエネルギー高の影響も深刻だ。
カメルーンの首都ヤウンデに事務所を置き、エイズウイルス(HIV)の感染者や母子の健康支援などを行っている同国の民間組織カムナファウのンガペ事務局長は、欧米を中心とした金融混乱のため、「(各国政府や民間からの)資金援助への中長期的な影響は避けられない」と顔を曇らせる。
また、同国ではこの1年でガソリン価格が4割値上がりし、ミルクの値段は2倍となった。同国最大都市ドゥアラ北部のダイドーで4カ月の息子を抱えるNGO職員のベスさん(30)は「収入の半分がミルク代になってしまう」と嘆く。
ヤウンデの診療所の医師らによると、交通費が払えず治療が受けられない患者が増えている上、ミルクが高価で買えず、授乳によるHIVの母子感染が広がる可能性もあるなど、NGOの支援活動も困難さを増している。【10月18日 時事】
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こうしたことがカメルーンだけでなく、今後世界中で、飢餓といったようなもっと深刻なかたちで、見られるようになることが懸念されます。
これまでリスキーなマネーゲームに明け暮れてきた資産家がその富を失うのは自業自得ですし、先進国などの体力のある国ではそこそこの対応も可能でしょうが。
おりしも、2000年に国連で採択された世界の貧困を15年間で半減する「ミレニアム宣言」の達成を、各国首脳に訴える目的で06年から始まった、一斉に立ち上がることで貧困をなくす意志をしめす世界的な運動「スタンドアップ・テイクアクション」が17日から始まりました。
昨年も同じような記事を目にしましたが、この1年事態が改善されたようには思えません。
確かに途上国の中でも一部の国々、主に資源に恵まれた国々は相当の発展を遂げてはいるようです。
しかし、その発展から取り残された人々の生活は、食糧・燃料価格高騰で更に悪化したようにも見えます。
今後その全容を次第に見せるかもしれない、世界的な実体経済の悪化はそうした人々に更に厳しい試練を与えるのでは・・・。
【外国人と融和する包容力を持たない弱い文化】
日本や欧米先進国においても、不況は社会の余裕を失わせ、摩擦を激しくします。
いやなニュースがイタリアから。
****イタリア:外国人襲撃相次ぐ 噴出する「人種差別」論****
イタリアで9月以降、アフリカ人や中国人が被害に遭う殺人、傷害事件が連続して発生している。激しやすい加害者による衝動的な暴力という面もあるが、経済悪化も重なり「ラチズモ(人種差別)」という言葉がマスコミで多用され、人種差別に反対するデモが各地で起きている。
事件はまず9月14日未明、北部ミラノの雑貨店で起きた。イタリア人店主の父子(51歳と31歳)が、店に来たアフリカ系の男性(19)の万引きを疑い、口論の末、鉄パイプで頭部をめった打ちにし殺害した。父子は男性を殴る際「汚い黒人泥棒」などと叫んでいたとの目撃証言がある。
4日後の18日、今度はナポリ北方のカステル・ボルトゥルノで、路上にいたガーナ、トーゴ、リベリア出身の男性7人がバイクで近づいた男たちに銃撃され死亡した。
地元警察は犯罪組織カモッラによる麻薬密売の縄張り争いと発表したが、地元住民が「アフリカ人差別だ」と怒り、暴動になった。
今月2日には、ローマ郊外で、中国人男性(37)が10代前半の少年7人に殴られた。
加害者がイタリア人、被害者が外見の違う外国系という構図から、国内メディアは一斉に「人種差別」と結論づけた。しかし、事件には、商売上のトラブルや縄張り争い、少年の非行という側面もあり、憎悪や恐怖が絡む「人種差別」と結論づけるのはそう簡単ではない。(後略)【10月17日 毎日】
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記事の中で、カルロ・モンガルディーニ・ローマ大サピエンツァ校教授(政治科学)はこうした現象について、
“イタリアでは人種絡みの事件の裏で、ファシズムを見直す声が聞かれる。アレマノ・ローマ市長が「ファシズムには良い面もあった」と発言するなど、ムッソリーニ政権を再評価する言動が目立つ。
これは、現状をまともに語れない政治家がファシズムを持ち出し、大衆の関心を引いているだけだ。ファシズムや人種差別についての軽はずみな議論が、国民に将来への不安や脅威をもたらし、差別的な事件を起こさせている。
イタリア人は内向的な性格で、すぐによそ者を恐れる。統率力のあるドイツ的な強い文化ではなく、外国人と融和する包容力を持たない弱い文化だ。”と述べています。
不況のなかで自分に襲い掛かる不幸・不運に対するやり場のない怒りの発散、次第に小さくなるパイの奪い合い・・・経済の悪化はそれまで覆い隠されていた私たちの社会の醜悪な部分をさらけ出す事にもなります。
“外国人と融和する包容力を持たない弱い文化”・・・日本はどうでしょうか?
【コスト負担増 緩和から規制へ】
金融危機、経済悪化のその他の重要課題への影響、たとえば温暖化対策などはどうでしょうか。
伝えられるニュースのなかで、ふたつの流れが目につきます。
ひとつは“温暖化対策どころではない”といった反応。
EU首脳会議において“温室効果ガスの削減に関するEU全域での協定を12月に締結することについては、各国の対応が分かれた。強い抵抗はなかったものの、多くのEU諸国は、金融危機の深刻化で世界経済が景気後退に直面するなか、関連するコスト負担や産業への影響に尻込みし始めている。”【10月17日 AFP】
もうひとつは昨日もとりあげた“緩和から規制への動き”。
“加えて、規制強化を容認する機運が「他の分野にも広がる可能性がある」(ニューヨーク・タイムズ)。中国からの有害製品輸入で問題化した食品安全管理制度や、ブッシュ政権が消極的だった温室効果ガスの排出規制などで、政府の関与や責任強化の動きに弾みをつける可能性があるという”【10月17日 産経】
どちらの流れが強まるのでしょうか。
景気後退の程度が深刻になればなるほど、最初の“温暖化対策どころではない”という動きが加速されるのでは。