孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  復活タリバン“政府は和解したいのなら、米国か我々のどちらかを選ばなければならない”

2008-10-24 16:08:00 | 国際情勢

(アメリカ軍がよく使う無人飛行機プレデター ミサイル搭載も可能で、“The Predator has a wingspan of 48.4 feet, a lenght of 26.7 feet, weights approximatly 1500 pounds cost around 3.2 million USD and flies at an average speed of 70 knots.”だとか。また、12000メートル上空を30時間連続で飛行でき、人工衛星を経由することで、アメリカ本土から操作することも可能だとか。
1機320万ドル、約3億円は、自国兵士を危険に曝さずにすむことを考えると安いものでしょう。
ただ、不正確な情報による誤爆、民間人の巻き添えも絶えません。

もし、戦争がなければ、320万ドルでいろんな復興のための活動ができるはずなのですが。
どちら側がということではありませんが、人間とは愚かしい生き物のようです。
“flickr”より By one size fits all
http://www.flickr.com/photos/15211292@N04/1603385163/)

【サウジが仲介する和解交渉】
アフガニスタン政府のタリバンとの和解交渉については、16日ブログでハリリ副大統領の「戦闘だけでは永遠に勝てない。」という発言とともに取り上げたところで、泥沼にはまりつつあるアメリカも期待をよせています。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081016
この交渉について仲介しているとされていたサウジアラビアのサウド外相が21日、初めて公式に仲介を確認しました。
9月末にメッカで3日間にわたって協議がなされたそうで、サウド外相は、「カルザイ大統領の依頼を受けた」と話しています。【10月22日 毎日】

アメリカが期待を寄せていると書きましたが、カルザイ大統領がタリバンとの戦闘に非協力的であると不満を募らせている向きもアメリカにはあるとかで、アフガニスタンの大統領選で対立候補を擁立する動きもあるとかも報じられています。あまり現実的選択肢とは思えませんが。
また、和解交渉に反発している国もあります。

【敵の敵は友・・・か?】
****イラン:タリバンと対話、失敗避けられぬ…外相が米欧警告*****
アフガニスタン情勢を巡り、イランのモッタキ外相は19日の記者会見で、米欧が治安改善に向け、旧支配勢力タリバンとの直接対話に前向きなことに対し「失敗は避けられない」と警告した。
外相は「(へびの)一つの穴で二度(指を)かまれないよう気を付けるべきだ」とペルシャのことわざを引用。「アフガンでの外国部隊の戦略的失敗は世界中が知っている。新たな試みが失敗しないよう忠告する」と強調した。
イランはタリバンと敵対し、98年には当時、政権の座にあったタリバンとの全面戦争の危機に直面した。01年の同時多発テロ後はタリバン政権打倒に向け、米英軍の軍事攻撃を支援し、カルザイ政権誕生に大きな役割を果たした。
こうしたことから、米欧がタリバンに軟化し、穏健派であれタリバンが政権に参画するような事態になれば「安全保障上の脅威が復活する」と懸念しているのだ。【10月20日 毎日】
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もっとも、イランはタリバンに武器支援していると、アメリカはかねてより主張しています。
“敵の敵は友”ということなのか・・・。
シーア派イランにとっては、スン二派原理主義のタリバン政権も容認できないけど、アメリカが泥沼にはまるのは歓迎・・・ということで、タリバンとアメリカが戦い続ける今の状態がベスト、そのためには宿敵タリバンにも援助するということでしょうか。

イランとタリバンの関係については、上記記事にもありますが、最近のタリバンは麻薬ビジネスで軍資金を得ており、麻薬流出経路になっているイラン東部の国境地帯ではイラン治安部隊が麻薬マフィアとの「戦争」を続けている・・・という側面もるようです。

そのタリバンについて、毎日新聞が“タリバン・ショック”というリポートをここ数日連載していました。
そのなかから、印象に残ったトピックをひとつ、ふたつ取り上げます。

【空爆避難民】
****アフガニスタンの現実/1(その2止)急増する空爆難民******
◇◇1万人、都市部漂流 捨てた村、タリバンの手に◇◇
アフガニスタンの首都カブール北西部チャライカムバール。約2キロ四方に粗末なテント群がひしめく。
1年ほど前から自然発生的にテントが並び始め、今では約1000家族、1万人が暮らしている。
イスラム武装組織「タリバン」の拠点となり、米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の攻撃が続く南部カンダハル州やヘルマンド州からやってきた「空爆避難民」たちのキャンプだ。(中略)
彼ら(避難民)が「空爆をタリバンが巧みに誘導して支配域を広げている」「米軍はうその情報を信用して攻撃する」と主張していることがわかった。

半年前にサンギン地区で起きた米軍の空爆。村外から四輪駆動車で来たタリバンのメンバーが、アフガン軍の車列を攻撃した。その30分後に米軍のヘリが飛来して、空爆を始めた。しかし、ヘリが到着したのはタリバンが逃走した後。空爆された村はほぼ全滅し、生き残った人々はタリバンに参加したり、都市部に避難民として流出する。そうして米軍が壊滅させた村にタリバンが進出し、支配地域の拡大に利用しているというのだ。(後略)【10月18日 毎日 栗田慎一】
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【偽情報に踊る米軍】
対立する部族が、対立相手をタリバンと偽って米軍に報告し、その情報提供を信じて行われる空爆で多数の被害者がでている現状も報告されています。

****アフガニスタンの現実/1(その1) 偽情報に踊る米軍******
アフガン政府軍幹部によると、米軍は各地で地元住民を情報提供者として使い、敵対するタリバンの情報を集める。だがヘラート州の警察幹部は「米軍は地域の複雑な対立関係を知らない」と指摘。氏族間の争いが絶えないアフガンで、ナワバード村同様の誤認はいつでも起こりうる。

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」によると、米軍などの空爆による民間人の死者は、06年116人▽07年321人▽08年7月までに119人に上る。
カルザイ・アフガン大統領は9月、ニューヨークでの国連総会での演説で「市民の犠牲が増えることで、テロとの戦いの正当性に傷が付く」と厳しく批判した。
誤爆事件は、米軍が正確な情報も得られないまま、住民を巻き込む恐れのある激しい攻撃をする、「対テロ戦」の危うい現状を浮き彫りにする。【10月18日 毎日】
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【「我々の側に付くか、それともアメリカの側に付くか」】
攻勢を強めるタリバンは、散発的な軍事行動だけではなく、その影響下にある地域に「影の政府」を置いて“面”的支配を広めています。

****アフガニスタンの現実/5止 幹部が「復活」を豪語*****
男(タリバン幹部)によると、最高指導者のオマル師は政権崩壊後の02年、軍事委員会と政治委員会を新設し、それぞれ10人のメンバーを選出した。軍事委は、パキスタンの武装勢力や中東、中国のイスラム勢力との関係を構築。政治委は、イスラム諸国との交渉窓口を築いた。
二つの委員会は、パキスタン南西部クエッタに拠点を置く。ただし「オマル師はアフガンにいる」という。

一方、国内では、カンダハル、ヘルマンドなど南部から東部にかけてのタリバンの影響力が強い各州に、「影の政府」とも呼べる独自の行政組織を整備している。州ごとに両委員会直属の知事を任命。その下に「地区委員会」が置かれ、地域の武装集団を統括する。
現在、北部などでも「影の政府」設置を進めており、「近くカブール以外の全土にタリバン政府が根を張る」と豪語する。

アフガン政府はいま、本格的にタリバンとの和解を模索し始めている。だが男は「(政府とタリバンの)妥協は困難だろう」との見通しを示した。
「オマル師は純粋なイスラム国家建設を目指しており、外国軍の駐留や現憲法は認めない。政府は和解したいのなら、米国か我々のどちらかを選ばなければならない」
   ◆  ◆
「我々の側に付くか、それともテロリストの側に付くか」。01年の米国同時多発テロ事件後、ブッシュ米大統領は世界にそう迫り、アフガンでの対テロ戦を開始した。だが目的の国際テロ組織アルカイダ壊滅は果たせず、タリバンは勢力を回復した。
いま、タリバンは、ブッシュ氏と逆の要求をアフガン政府と国民に突き付ける。出口を失い、出発点に逆戻りしつつある対テロ戦。間もなく選ばれる米国の新大統領は、この現実にどう向かい合うのか。【10月22日 毎日 栗田慎一】
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「影の政府」や「地区委員会」がどの程度の機能を持ったものなのかはわかりませんが、事態は想像を超えて進行しているように見えます。
一昨日も、誤爆だか同士討ちだかのニュースが。
“アフガニスタン国防省当局者によると、東部ホスト州で22日未明、米軍機が検問所のアフガン兵を誤って爆撃し、9人が死亡、3人が負傷した。米軍側は、別の戦闘から戻ってきた米軍車両と検問所のアフガン兵が互いを敵と見誤って交戦に発展したと説明している。”【10月22日 毎日】
なんだか現場は混乱しているようです。



コメント
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