
(雨に煙る盧溝橋 日中戦争勃発の地ですが、観月の名所でもあり、また、マルコポーロが絶賛した美しい橋でもあります。)
先月20日過ぎに北京に数日観光にでかけました。
大韓航空を使用して北京からソウル乗換えで福岡に帰国し、鹿児島に向かう新幹線のなかで中国語と韓国語のアナウンスを聞いていると、旅行中のことが思い出されると同時に、中国・韓国・日本という国の距離的な近さ、ひとつのエリアに包含される国々であることが感じられました。
北京の街角で、あるいはソウルの空港で目にする人々が中国人なのか、韓国人なのか、日本人なのか・・・見ただけで明らかな場合もありますが、まったく見分けがつかない場合ももちろんあります。
自分自身が北京を歩いていると、中国のひとから先ず最初は中国語で話しかけられ外国人としては扱われません。
「日本人なので中国語は分からない・・・」と言って初めて「ああ、日本人か・・・」ということになります。
あるいは中国の古い住宅“四合院”の白壁に墨跡鮮やかに書かれた杜甫の詩を見たりすると、文化を共有する関係にあることが改めて思い起こされます。(詩の中身まではその場では理解できませんでしたが)
一方で、独自性の強い主張も見られます。
大韓航空機内での飛行経路を示す地図は、福岡・ソウル・釜山など大都市が記入されただけのごく大まかなものにもかかわらず、“独島”の表示だけはしっかり記載されています。
仁川の空港では、通路に“五千年の文化が・・・”の表示。
“中国4千年というのはよく聞くけど、韓国は5千年か・・・”
国際関係としては、かなり緊張関係をはらみながら多様な動きをみせています。
最近、目にしたこの地域に関する記事のなかからいくつかピックアップします。
若干古い記事になりますが、
***「日本嫌い」が大幅増=竹島問題影響か-韓国調査****
22日付の韓国紙・中央日報に掲載された世論調査結果によると、「最も嫌いな国」として日本を挙げた回答が昨年の38%から57%に大幅に増加した。日本の中学校社会科の新学習指導要領解説書に日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)が明記されたことなどが背景にあるとみられる。
一方で、日本を「最も見習うべき国」とした回答は24%で1位。このほか、「最も好きな国」は米国(18%)、オーストラリア(14%)、スイス(9%)の順。「嫌いな国」の2、3位は中国(13%)、北朝鮮(10%)だった。 【9月22日 時事】
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「嫌いな国」でもあり、「見習うべき国」でもあり・・・・。
中国は「嫌いな国」ランクで2位になっていますが、中国・韓国の関係も相当にもつれたものがあります。
特に先の四川大地震では、中国国内で日本の評価が上がったのに比べ、地震を揶揄したとして韓国に対してはきつい評価が目立ったようです。
もともと、“歴史認識”で大きな対立がある両国です。
古代、朝鮮半島北部から中国大陸にかけ広大な地域を支配した高句麗(紀元前後~7世紀)については、韓国では昔から韓民族の国家とされています。
しかし近年、中国では「中国の地方政権」として中国史に組み込む作業が進められ、韓国との間で“歴史紛争”になっているそうです。
*****“中国化”加速 「広開土王碑」観光ガイド、韓国語厳禁****
韓国と中国の歴史紛争の現場になっている中朝国境の鴨緑江流域では、韓国色排除で“中国化”が着々と進められている。とくに紛争の焦点になっている高句麗の歴史に関して、有名な「広開土王(好太王)碑」では韓国語(朝鮮語)のガイドが禁止され、不満の韓国人観光客をよそに中国人観光客でにぎわっていた。また中朝国境にまたがる白頭山(中国名・長白山)観光でも、朝鮮族自治州を経由しない西ルートが開発され、あらゆる施設でハングルが消えつつある。【9月29日 産経】
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韓国TVドラマ「太王四神記」は私も観ていましたが、そのモデルと言われる広開土王の業績を記した「広開土王碑」については、その解釈をめぐって日韓でもいろいろ論争もありました。
なお、ドラマの方は、日本での放映に配慮して倭寇に関しては殆ど描いていないとの批評も目にしました。
一方、中国と北朝鮮の関係は、朝鮮戦争を経て「血で固められた同盟」とも表現されますが、実際のところは中国も北朝鮮を厄介視しているとか、金正日は中国首脳を嫌っているとか、いろんな話があります。
偶発事故でしょうが、こんな記事も最近ありました。
****中国漁船:北朝鮮警備艇の銃撃受け船長が負傷…韓国発表****
韓国海洋警察庁は29日、白※島北西の黄海で操業中だった中国漁船が27日、北朝鮮の警備艇とみられる船に銃撃され、船長(44)が負傷したと発表した。船長は仁川に搬送され治療中。漁船が北朝鮮領海を侵犯したのかどうかは不明で、海洋警察庁が漁船の位置特定を急いでいる。
韓国周辺では中国漁船の操業が目立っており、25日には違法操業を取り締まろうとした海洋警察官が、抵抗する中国船員の振り回したシャベルに当たり海に転落、死亡する事件も起きている。(※は令へんに羽) 【9月29日 毎日】
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韓国・北朝鮮関係について最近目にした記事では
*****韓露パイプライン計画:韓国、極東利権に布石 実現難航も*****
9月29日の韓露首脳会談で合意した、韓露の天然ガス連結構想は、資源外交を重視する韓国の李明博(イミョンバク)大統領が東シベリア地域の資源開発に布石を打ったものだ。韓国側は「韓露と北朝鮮による3国エネルギー協力体制も可能になる」と意義を強調するが、実際には北朝鮮抜きで韓露が進めた利権構想の色彩が強い。北朝鮮を経由するパイプライン建設は難航が予想される。
(中略)北朝鮮にとってもメリットがあるので協力するとの前提に立っているが、頭越しの構想に北朝鮮が反発する可能性も排除できない。
また、李政権は北朝鮮への大規模経済協力は「核廃棄段階で実施する」という原則を掲げており、2月の政権発足時に提起した北朝鮮住民1人当たりの年間所得を3000ドルに引き上げる大規模支援構想も具体化がストップしている。2年後も北朝鮮核問題の手詰まり状態が続いていれば、北朝鮮に巨額の現金収入を提供する同構想は国内外から批判を浴びるのは必至だ。
(中略)実現性よりも、韓露共同の資源開発構想を先に打ち出すことにより、同地域の利権を狙う日本や中国をけん制することが実際の狙いとみられる。 【9月29日 毎日】
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近い関係にあれば、領土問題などで摩擦も生じますし、長い歴史のなかでいろんな対立も生じます。
そうでなくても、“ライバル心”みたいなものもあります。
隣接国家間の近親憎悪的な感情は世界共通のもので、むしろお隣同士仲がいいというのが珍しいくらいでしょう。
ただ、そうは言ってもせっかく近くに暮らし、歴史も文化も共有し、現在も将来も経済的に重要な関係にある国々ですから、できるものなら理解しあって仲良く暮らしたいものです。