
(Photographer: Anuj Chopra
Description: Addicted beggar in his Kabul 'pad.'
ISN Security Watch: Addicted in Afghanistan
カブールの街角の麻薬中毒患者 街で唯一の中毒リハビリ用の病院は10床しかなく、いつも空き待ち状態だそうです。
“flickr”より By ISN Security Watch
http://www.flickr.com/photos/securitywatch/2489629880/)
【DHL幹部殺人事件】
先日25日、アフガニスタン・カブールの中心部にある国際流通大手DHLのオフィス前で銃撃戦が発生し、外国人2人とアフガニスタン人1人の計3人が死亡する事件がありました。
この事件については、麻薬取引との関連が報じられています。
****カブールのDHL幹部殺人事件、麻薬対策への腹いせか
殺害されたのは同社アフガニスタン支店長だった南アフリカ国籍のジェイソン・ブレスラー氏と、副支店長だった英国籍のデービッド・ガイルズ氏で、両氏を射殺したのは護衛していたボディガードだった。犯人も直後に自殺した。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、現地治安当局は、アフガニスタンから国外へのヘロイン密輸に利用されないようDHL側が対策を立てていたことから、この動きに反発した密売人たちの関与を疑っている。
同紙は、ブレスラー氏が配送物の中にあったキルト布に縫いこまれていたヘロイン約3キロの廃棄に立ち会ったことがあったほか、現在使用している麻薬探知犬が配送物に隠されたドラッグを発見できなかったため、新しい麻薬探知犬を手配していたと報じた。DHLの広報担当者は、捜査中であるとして報道についてのコメントを拒否した。
国連の国際麻薬統制委員会によると現在、アフガニスタン産のアヘンは、全世界の流通量の93%を占める。【10月27日 AFP】
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“ヘロイン密輸に利用されないようDHL側が対策を立てていたことから”・・・実際の事件の背景がどうなっているのかは全く知りません。
これが映画・小説あるいは“ゴルゴ13”の世界の話なら、立場を利用して密輸に便宜を図っていた業者が何らかの事情で態度を変え、密売組織とトラブルが起こり・・・といったところでしょう。
繰り返しますが、現実の事件の背景は全く知りません。
【全世界の流通量の93%】
アフガニスタンではタリバンの攻勢の前で、和解交渉への期待が語られることが多くなっています。
今日も、“米政府がアフガニスタン戦略を大幅に見直し、アフガニスタン政府とタリバンの一部との協議に、参加を検討している”というニュースが報じられていました。
ただ、“タリバンの攻勢”と言っても、そのためには武器が、つまり資金が必要になります。
その資金源となり、タリバンの攻勢を支えているのが、ケシ栽培・麻薬(ヘロイン)製造・密輸によって生み出されるお金であることは周知のところです。
冒頭記事にも“アフガニスタン産のアヘンは、全世界の流通量の93%を占める”とありますが、今や麻薬ビジネスはアフガニスタン国内総生産の半分近い40億ドル(約4040億円)を稼ぎ出しているともいわれます。
考えてみるとこれはとんでもない数字で、アフガニスタンの麻薬を根絶できれば、タリバンの活動も抑えられますし、世界の麻薬汚染の状況もドラスティックに変わります。
アフガニスタンでのケシ栽培は90年代、軍閥が資金源として奨励。
2000年にタリバン政権が禁止し一時的に減少しましたが、タリバン政権崩壊後は再び増加。
かつてケシ栽培を禁止したタリバンは今では、ケシ栽培を認める代わりに農民に税金を課し、ヘロイン製造・密輸に絡んで利益を上げているといわれます。
アフガニスタン政府やアメリカ軍がケシ栽培根絶に躍起になっても事態は改善しません。
アフガニスタンでのケシ栽培が減らない理由は、乾燥し、灌漑施設が紛争で破壊された土地ではケシぐらいしか育たないこと、小麦などに比べケシ栽培から得られる利益がはるかに大きいこと、政府の転作補償が十分に機能していないこと・・・などがいつも挙げられます。
素人考えでは、これだけ影響の大きさがわかっていながら、いくら困難な事情があるとは言え、これを放置したままというのは理解できないところです。
タリバンとの戦闘に勝利しようと言うのであれば、まっさきに本腰を入れて対応すべき問題のように思えますが。
現実には、タリバン以外にも、政府関係者、地元部族勢力などが入り乱れ、国際犯罪組織と結託して麻薬ビジネスに群がっているのが実態のようです。
【ヘロイン中毒の母子】
そして、当然の帰結として、麻薬はタリバンの活動資金源となるだけでなく、生産国アフガニスタンの国民、戦争で生活の糧を失い、明日への希望を持てない人々の心と体を蝕みます。
***タリバン・ショック:第2部・アフガニスタンの現実/4 ヘロイン加工国へ変貌****
(国内の貧困層むしばみ)
戸別訪問で麻薬の害毒を説き続ける政府関連団体職員、ナウロジャーさん(30)は8月、カブール西部の自宅でヘロインを吸引していた母子4人を見つけた。4人は03年にイランから帰国した帰還難民だ。親類宅の一室を間借りしている。
母マフトップさん(25)は難民時代にヘロイン中毒となった夫に勧められた。「貧しく、苦しい生活を忘れることができた」。マフトップさんは言う。
「ある日、夜泣きする子供に与えたら泣きやんだ。むずかる子供に吸わせたら、機嫌を取り戻した」。以後、子供たちにも時折分け与え、一家で1日1グラムを消費する。害毒は知っているが、「やめたら体がばらばらになる」とやめられない。
1グラムの値段は、路上で靴を売る夫の1日の稼ぎと同じ3ドル。生活は借金まみれだ。
「教育の遅れが、麻薬のまん延につながった。国や国際社会は麻薬栽培の根絶に力を入れているようだが、消費や患者対策はほったらかしだ」。ナウロジャーさんはため息をつく。【10月21日 毎日】
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むずがる子供に麻薬の煙を吹きかけると泣き止むので・・・と言う話は、麻薬汚染の実態としてときどき聞く話です。
なんともやりきれない話ですが。