孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

太陽がいっぱい  アフリカでの太陽光利用

2008-10-09 17:03:08 | 環境

(スペイン・アンダルシア地方のセビリア郊外にあるタワー式太陽熱発電所「PS10」。地上に配置された624枚の鏡が反射光をタワー上部に集め、その熱で蒸気をつくり発電する仕組みです。“flickr”より By afloresm
http://www.flickr.com/photos/afloresm/2115197141/in/photostream/

【太陽熱発電と太陽光発電】
太陽光の活用の場合、化石燃料のように資源枯渇の問題もなく、今日的課題であるCO2排出の面でも優れていることは素人でも容易に想像できます。
一方で、導入コストや効率の問題がありそうなことも想像できます。
立地条件は?

太陽光発電と太陽熱発電の違いもよく知らなかったのですが、太陽光発電の場合は太陽電池を利用して直接電力に変える、いわゆるソーラー発電であり、一方、太陽熱発電というのは太陽の光を熱エネルギーとして活用する、つまり光を集めて熱を高め、その熱で水蒸気を発生させ発電タービンを回す・・・簡単に言うとそういった仕組みのようです。

太陽光発電の太陽電池は小さなものなら腕時計から、住宅・建物の屋根や壁など、大きさ・場所の制約はあまりないようですが、太陽熱発電の場合はかなり広い場所と大掛かりな設備が必要になります。
その立地も、乾燥・砂漠地帯など、日照時間が長い場所が適地となります。
その点で、日本の場合、太陽熱発電はあまり可能性は高くないようです。
ただ、太陽熱発電の場合、熱としてエネルギーを蓄えることができるので、夜間を含めた24時間発電が可能になります。

太陽熱発電で、多くの鏡で一点に光を集中させるのがタワー式、これに対し、分散配置された鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる液体(オイルなど)を加熱し、その熱で発電するのがトラフだそうです。

【欧州のフライパン、アンダルシア】
写真の施設があるスペイン南部・アンダルシア地方は、「欧州のフライパン」と称されるほど日差しが強く、太陽熱発電には都合がいい土地柄です。
この施設では、タワー式だけでなく、トラフ式などいろんなタイプも建設し、12年には8平方キロの敷地に計30万キロワットの総合発電所をつくる計画です。
これは、黒部第四発電所級の大型水力発電所の出力に相当し、太陽電池のパネルを10万軒の住宅につけた量にあたるそうです。

****太陽光、次代照らす〈環境元年 太陽ウオーズ1〉****
太陽熱発電は太陽利用の幅を広げる先端技術だ。スペインは、光を電気に換える太陽電池による発電でも急伸し、世界を驚かせている。
太陽電池の累積導入量は、05年には6万キロワットだったのが07年には68万キロワットと増え、今年末には180万キロワット、全発電量の0.5%ほどになる見通し。05年にドイツに抜かれて導入量世界2位となった日本では今年、20万キロワットほどの増加にとどまるとみられ、スペインでの増え方は日本の約5倍に達する。
もともとスペインは風力発電が約10%を占める風力大国だった。
欧州では、風力が拡大して一般的な電源の一つとなる一方、立地の制約も出てきたため、支援の力点は太陽光に移りつつある。日差しに恵まれたスペインは、その流れの最前線にある。

発電での二酸化炭素(CO2)排出量は、太陽電池の場合、製造過程で出る分を含めても石炭火力の18分の1ほどでしかない。地球温暖化対策として有効なのに加え、原油の高騰もあり、最近の世界の太陽電池市場は年40%の伸びを示している。07年の生産量は370万キロワットで、03年の5倍に膨らんだ。
「石油が枯渇する時代に、欧州の人は太陽光発電を『現代の油田』と考えている」。日本のトップメーカーであるシャープの浜野稔重(とししげ)副社長は、そう話す。
 
欧州には、日差しの強い北アフリカ諸国で発電して南欧に電気を送る「スーパー送電網」計画もある。次に狙うのは「サハラ砂漠の太陽」だ。
石油にどっぷりつかってきた米国でさえ、エネルギー省が太陽電池の技術開発支援などに乗り出した。エネルギー資源の中東依存からの脱却という意味もある。州レベルでも「100万戸ソーラー・ルーフ計画」(カリフォルニア州)といった強力な支援策を設ける動きが続く。
欧州の業界団体などの推計では、世界の発電量のうち太陽光は30年には最大14%を占め、関連産業の市場規模は、デジタルカメラや携帯電話などデジタル家電全体に匹敵する約70兆円にのぼる。 【10月6日】
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記事にも「サハラ砂漠の太陽」とありますが、サハラ砂漠地帯が太陽光の活用にうってつけなのは、これまた素人にも想像できます。
しかし、電力が不足しているアフリカでは、太陽光は殆ど活用されていません。

【太陽エネルギーが手つかずのアフリカ】
******太陽光にあふれたアフリカ、ソーラー発電にはほど遠く****
家庭のソーラーパネルから大規模な発電機に至るまで、太陽光発電は世界中で爆発的な成長を遂げている。だが太陽光の宝庫であるはずのアフリカは、こうしたブームから取り残されている。
1平方メートルあたり平均して1時間5-7キロワットの太陽光を受けているアフリカ大陸は、オーストラリア北部とアラビア半島に並ぶ世界最大の太陽エネルギー生産地となる可能性を秘めている。しかしアフリカ大陸における生産量は微々たるもので、しかも太陽光発電が行われているのは南アフリカ1国のみというのが現状だ。

国連環境計画の専門家は、「アフリカでは従来の送電システムが不安定なこともあり、太陽光発電の潜在的な利点に注目が集まりつつある」と指摘する。
実際、エネルギーの整備は急を要する問題だ。現在、電気を利用できる人は、サハラ以南では4人に1人、サハラ以南の農村部に限ると10人に1人という割合だ。

アフリカで太陽エネルギーが手つかずとなっている原因は、「コスト」だ。太陽電池を使用するソーラーパネルも太陽熱発電システムも、裕福な国々の産物であり、関税優遇や値下げをもってしても最貧国には手が届かない。
また、アフリカでは、太陽光発電には「小規模、限定的」というイメージがあるほか、「太陽光発電を導入すると村に電気を引いてもらえなくなるのでは」との懸念から、導入に反対する村落もある。
だが、電話線を引くよりも費用効率が高い「携帯電話」が、爆発的に普及したという先例がある。

一部の国は、村落レベルでの太陽エネルギーの活用を推進するための政策を打ち出している。
たとえば西アフリカのブルキナファソは、ソーラーパネルを購入するためのマイクロクレジットを政府が提供している。返済は2-3年以内に行えばいいというシステムだ。ガーナも、太陽エネルギーに関する奨励金制度の導入を検討している。
また、大陸レベルでは、地中海周辺諸国とEUが参加する地中海連合が、サハラ砂漠に巨大太陽光発電機を設置する計画を発表している。2050年までに100ギガワットを生産する予定で、北アフリカ一帯と欧州の一部に供給されるという。
一方、サハラ以南の地域は、インフラの不備や一部の国々における慢性的な政情不安により、こうした投資を呼び込むことは難しいだろうと、専門家は口をそろえる。【9月29日 AFP】
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【こんなときこそビジョンを】
記事にある携帯電話の例は非常に参考になります。
個人的に観光旅行で訪れる多くの国々で携帯電話は驚くほどの普及を見せています。
設備投資が必要な固定電話を飛び越えて、一気に携帯電話の時代へ突入しています。

電気が普及していない多くの地域で、分散的・小規模な太陽電池の活用はメリットも大きく、実現可能性において現実的でもあります。
問題はメンテナンスの仕組みをどのように構築するか・・・ということでしょうか。

サハラから南欧への「スーパー送電網」もいいですが、電力消費国のヨーロッパだけでなく、現地住民にとってどのようなメリットがあり、どのような問題が生じるのかという点をきちんと整理して進めてもらいたいところです。

日本も金融不安の波に呑み込まれ、景気の先行きに暗雲が垂れ込めています。
こうした従来型のシステムが揺らいでいるときこそ、将来に向けた明確なビジョンが政治に求められます。
太陽光発電などの分野は、技術的にも実績があり、今後日本が力を入れていくことが期待されるところでしょう。
日本国内における自然エネルギー活用という観点だけでなく、上記のような電力不足地域への利用可能な安価で堅固な技術の提供が出来れば、大きな国際貢献になります。



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