孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

加速する“ギリシャ売り” 支援にドイツ依然慎重姿勢

2010-04-28 22:38:04 | 国際情勢

(ギリシャ 4月22日 財政当局の政策に抗議する公務員デモ隊と機動隊の衝突 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/4545843456/

【迫るデフォルトの危機】
ギリシャの財政危機がいよいよ切羽詰まってきています。
ギリシャは5月19日に85億ユーロ(約1兆円)の国債償還を迎えます。ギリシャ政府は23日、EUと国際通貨基金(IMF)に対し、緊急融資を正式に要請しました。
ドイツなど、ユーロ圏諸国やIMFの支援決定が間に合わなければ、債務不履行(デフォルト)となってしまいます。

****EU:動揺するユーロの信認 ギリシャ売りさらに激化も****
欧州連合(EU)が27日、ユーロ圏諸国(16カ国)緊急首脳会議を開催する調整を始めたのは、米格付け会社によるギリシャ、ポルトガル国債の格下げで、財政危機への不安が拡大する中、欧州共通通貨ユーロの信認を維持する姿勢を示すことを迫られたためだ。
欧州市場では27日、ギリシャの国債が引き続き売られ(利回りは上昇)、10年物国債の利回りは一時、約10%に達した。投資家の「質への逃避」を背景に、欧州ではドイツ国債だけが買われ、ギリシャ国債と欧州の指標となるドイツ10年物国債の利回り差は約7%となった。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、ユーロ加盟国の国債に対して99年のユーロ発足以来初めて、投機級の格付けをしたことで、ギリシャ売りはさらに加速しかねない。

危機的状況を受け、ギリシャ政府は、今週末までに、EU、国際通貨基金(IMF)との協議を終え、最大450億ユーロの支援実施に向けた条件を整える方針を示した。だが、市場では、ギリシャ国債の債務不履行を警戒する声が出始めただけでなく、ポルトガルやスペインなど南欧諸国への信用不安の波及を懸念する見方も強まっている。
ロイター通信によると、ギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は27日、地元メディアで「格下げは経済や財政状況の実情、IMFやEUとの金融支援に関する交渉が合意する見通しを反映していない」と反論。ポルトガルのドスサントス財務相も27日、声明を発表し「財政赤字を削減し、経済の競争力を回復する」としながらも「わが国への市場の攻撃が始まった」と不快感を表明した。【4月28日 毎日】
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短期の2年物ギリシャ国際の利回りは14%以上となっており、市場はギリシャの国家破綻への懸念を強めています。

【一段の緊縮策を求めるドイツ】
EUの支援がスムーズに行われるかどうかは、最大の資金拠出国ドイツの対応にかかっていると言われています。
ギリシャ支援に消極的な国内事情から、メルケル独首相は、一段の緊縮策をギリシャが受け入れた場合のみ、ドイツは支援する用意があると述べるなど、慎重姿勢を崩していません。

****ギリシャ:ドイツが支援に慎重 財政再建策提示が「条件」*****
深刻な財政赤字に陥り、23日に欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)に緊急支援を要請したギリシャへの支援に、ドイツが慎重な姿勢を示している。欧州委員会は緊急対応を各国に要請しているが、最大の資金拠出国となるドイツのメルケル首相は26日、ギリシャ政府が新たな財政再建策を示すことが支援の「条件」だと表明。支援決定が5月中旬にずれ込む可能性も出てきた。ギリシャ国債は同日も暴落しており、ポルトガル、スペインなどの国債も売られた。ギリシャ危機が欧州全体に拡大しつつある。
ギリシャは、5月19日に85億ユーロ(約1兆円)の国債償還を迎える。ドイツなど、ユーロ圏諸国の支援決定が間に合わなければ、債務不履行(デフォルト)となる。
しかしドイツでは、与党内にもギリシャ支援慎重論が根強い上、5月9日に地方選挙が迫っており、メルケル政権は、有権者に不人気な政策を訴えにくい事情がある。
ドイツでの支援決定には、独連邦議会の承認が必要。ショイブレ財務相は5月7日には法案を通過させる意向を示しているが、ドイツのDPA通信は26日夜、審議入りは選挙後の5月17日以降になるとの見通しを伝えた。

こうした動きを背景に、ギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は26日、議会で「現時点で市場からの調達は不可能」と説明。デフォルトを防ぐために、時間がかかるユーロ圏より、IMFとの交渉を急ぐ考えを示した。
ラガルド仏経済相も同日、ドイツに迅速な対応を促したほか、IMFのストロスカーン専務理事と欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は、ともに28日にベルリンを訪問。独連邦議会の各会派に直接、事情を説明して事態打開を図る。
ギリシャ国債は26日も売られ、10年物国債の利回りは、前週末終値比0.8ポイント高い9.5%で取引を終えた。対応の遅さが、危機拡大を招く悪循環に陥っている。【4月27日 毎日】
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ギリシャが米大手金融機関の力を借りて行っていた債務隠し、年金制度を圧迫し財政赤字を招く平均定年年齢の低さ(61歳)など、ドイツ納税者にとってはギリシャ救済は納得できないところです。与党の一部政治家らが「破産者は所有物で金をつくらなければならない。ギリシャには借金の形にできる無人島がある」といった“暴言”まで飛び出して、ギリシャと感情的な対立までになっていることは、3月6日ブログ「ギリシャ 追加再建策でEU支援を求める 国内には激しい反発も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100306)でも取り上げました。事態はあまり改善していません。

ただ、ギリシャがデフォルトなどの事態になれば、ポルトガル・スペインに危機は波及し、ドイツを含めたEU・ユーロ圏全体の屋台骨を揺らすことになるのは必定です。ドイツもギリシャを見捨てることもできませんから、どこかでは救済に出るのでしょうが。

【緊縮策への反発強まるギリシャ国内】
ドイツ・メルケル首相は“一段の緊縮策”をギリシャに求めていますが、すでにギリシャは財政赤字削減のための改革を打ち出しており、それだけでも国内の反発は相当なものになっています。
****ギリシャ空軍パイロット100人「病欠」 事実上のスト****
財政危機に陥り欧州連合(EU)のユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請したギリシャで、同国空軍のパイロット100人以上が26日、訓練飛行をキャンセルした。政府の財政再建策の一環による給与削減に抗議した事実上の「ストライキ」という。
空軍では、諸手当などが最大で35%カットになり、年収が約6千ユーロ(約75万円)減るパイロットもいる。関係者によると、パイロットらは「肉体的にも精神的にも飛べるような状態ではない」として、訓練飛行を拒否したという。法律上、軍隊にはスト権は認められていないため、表向きは「病気」を理由にしている。
ベニゼロス国防相は声明を出し、「職業的責任感のない恥ずかしい行為」と批判した。しかし、海軍と陸軍のパイロットも同様の抗議行動を計画しているという。
またアテネ近郊にある同国最大のピレウス港では同日、船員・港湾労働者組合が24時間ストを行った。大型客船など約20隻が港内に閉じ込められたまま出航できず、観光客ら数千人が影響を受けた。政府の緊縮策や金融支援要請などに対する国民の反発が本格化し始めた。【4月27日 朝日】
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国民生活に大きな負担・犠牲を強いる“一段の緊縮策”が容易ではないことは当然ですが、財政危機を放置し、放漫な財政支出からのメリットを享受してきた以上、再建のためには避けて通れない道です。

【ポルトガル、スペインそして“飛べる豚”アイルランド】
財政状態が悪いポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をとって“PIIGS”とも呼ばれていますが、ギリシャの次に危ないとされているのがポルトガル、スペインです。
ポルトガルは09年の財政赤字はGDP比で9.4%となっていますが、13年に対GDP比で2.8%に削減することを目指しています。(かなり無理がある目標にも思えますが・・・)
欧州委員会のバローゾ委員長は23日、「ポルトガルの状況は深刻だ。しかし様々な理由からギリシャとは異なる」と、対応することは可能との認識を示しています。
09年の財政赤字が11.2%のスペインについては、今年第1・四半期の失業率は20.05%(461万人)にものぼっていると報じられています。こうした状態での緊縮財政は厳しいものがあります。

EUで財政赤字が最もひどいのがアイルランドの14.3%ですが、アイルランドに関してはやや将来が期待できるとの指摘もあります。
****現実派アイルランドは復活できる 官民一体で捨て身の改革*****
・・・・しかしここにきてアイルランドは、いまだ泥まみれの豚仲間を尻目に、汚い小屋から抜け出そうとしている。先週ギリシャ国債の価格が急落して世界の注目を集めたが、10年物のアイルランド国債は人気を保っている。財政赤字の解消に真拳に取り組む同国の姿勢が支持される理由の1つだ。欧州中央銀行(ECB)のジャンクロード・トリシエ総裁は3月25日、ギリシャはアイルランドを「手本」にすべきだと語った。
・・・・それでもアイルランドがギリシャと違うのは、連立政権が真拳な姿勢で勇気ある解決策を提示している点だ。数字をでっち上げたり、アングロサクソン型資本主義に責任を転嫁したりしない。
アイルランドが取った緊縮経済政策は驚くほど厳しいものだった。個人所得税を引き上げ、財政支出を削減。社会福祉予算は今年、3分の1削られた。好景気でうなぎ上りだった公務員の給与を平均で7%程度カットし、公共部門の新規採用も凍結。さらに多額の税金を投じ、極めて有毒な不良資産を金融機関から買い取る「バッドバンク」制度を設ける予定だ。・・・・どうやら世界には、飛べる豚もいるらしい。【4月21日 Newsweek】
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当然ながら、話は「じゃ、借金大国日本はどうなるのか?」というところになるのですが、22日夜の先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席した菅直人副総理兼財務相は記者団に、「ギリシャを他山の石として、しっかりやらねばならないと感じた」と感想を漏らしたとか。
本気でやってもらわないと困るのですが・・・。

コメント
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