(07年1月1日の香港での民主化要求デモ 香港のデモと言うと天安門事件のときの百万人デモの記憶もあります。しかし、中国の存在感が増すなかで、香港・民主派の今後については厳しいものがあるようです。“flickr”より By The-Wu
http://www.flickr.com/photos/the-wu/684492543/)
【民主派:事実上の住民投票を狙う】
行政長官選挙と立法会選挙での全面的な直接選挙実施を求める、香港立法院のいわゆる民主派議員5名が敢えて辞職し、補欠選挙を実施し、直接選挙の実現など民主化要求の是非を民意に問う形で事実上の直接選挙早期実施に関する住民投票としようという“捨て身”の作戦は、失敗に近い不発に終わりました。
****香港補選、再出馬の民主派5人当選…投票率最低*****
民主派議員5人の辞職に伴う香港立法会(議会=定数60)の補欠選挙が16日行われ、辞職、再出馬した5人がそのまま当選した。
香港政府に選挙制度改革進展を促そうとする民主派は、今年1月、辞職による補選を仕掛けて世論喚起を図る戦術を採った。しかし、議会で過半数を占める親中派各党は候補者を立てず、投票率は17・1%と1997年の中国返還以来、最低となった。
民主派は今補選を「事実上の住民投票」と位置づけたが、失敗に終わった。【5月17日 読売】
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香港の現在の選挙制度では、トップの行政長官は間接選挙によって選ばれ、立法会の議席も半分は商業、漁業など各業界代表から選ばれています。いずれも親中派が選ばれやすい仕組みで、民主派は12年に行われる次回の選挙で全面的な直接選挙の実施を強く求めています。
香港特別行政区政府は昨年11月、行政長官を選ぶ選挙委員の増員などを含む2012年の両選挙の制度改革案を発表しましが、それには全面的な直接選挙は含まれておらず、民主派は反発を強めていました。
“これまでの世論調査では、香港市民の多くが直接選挙の早期実施を支持しているが、最近、北京との良好な関係を望む声が高まり、民主化や直接選挙への社会的関心が低下している。民主派としては、直接選挙枠のある5つの選挙区で有力議員5人を辞職させ、補欠選に立候補させて再当選を目指し、直接選挙の早期実現に道筋を付けたいところだ”【1月23日 産経】という狙いでの、辞職・補欠選挙実施でした。
【親中派:候補者を立てず】
民主派の焦りも感じさせる、思い切った“賭け”のような作戦でしたが、親中派は「社会を混乱させる行為だ」と猛反発、中国政府は議員辞職について「香港は中国の一つの行政区域であり、住民投票制度を創設する権利はない」と反対する声明を発表、1月の辞職当時は“阻止しようとする親中派による必死の抵抗は不可避で、芸能人など強力な候補者の擁立で対抗することが予想される。香港メディアは、辞職した5人が再び当選できるかどうかは微妙な情勢だと伝えている。”【1月23日 産経】とも報じられていました。
また、香港の中国系メディアからの、「1億香港ドル(約12億円)を超える補欠選費用は税金の無駄遣いで、福祉にまわすべきだ」といった批判もありました。
結局、親中派は候補者を立てずに選挙をボイコットする形で、事実上の直線選挙早期実施を問う住民投票としようという民主派の目論見を封じ込める作戦をとりました。
民主派候補は泡沫候補相手に再選ははたしたものの、投票率は17・1%と1997年の中国返還以来、最低となり、民主派陣営の基礎票とされる20%にも満たなかったことから、「完敗」との指摘もあります。
親中派の中央政府寄りの政党が対立候補擁立を擁立せず、曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官はじめ政府高官は投票棄権を宣言するなど、周到な封じ込めが成功した形となりました。
【厳しい民主派の今後】
“このため、補欠選挙は意味がなかったとして、議員を辞職させた民主派に対する市民の批判が強まっており、中国政府などに対して直接選挙の実施を求める民主派の政党は、今後の活動の見直しも迫られる形となっています”【5月17日 NHK】と、民主派の今後について厳しい見方がされています。