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(東エルサレムでのユダヤ人入植地建設 Har Homa 09年4月
“flickr”より By activestills
http://www.flickr.com/photos/activestills/3595565199/)
【「何の約束もしていない」】
“パレスチナ自治政府とイスラエルは9日、米国が仲介する間接的な形で和平交渉を再開した”とされていますが、“具体的な進展はほとんど期待されていない”というのが実情のようです。
パレスチナ・イスラエルの間接交渉は、イスラエルのガザ侵攻で中断してから1年半ぶりとなります。
イスラエルとパレスチナは3月8日にも間接交渉に合意しましたが、その直後にイスラエルが東エルサレムへのユダヤ人入植計画を承認したため、パレスチナ側が交渉開始を拒否していていました。
****中東和平間接交渉が再開、開始直後から亀裂あらわ*****
パレスチナ自治政府とイスラエルは9日、米国が仲介する間接的な形で和平交渉を再開した。だが、開始からわずか数時間で双方の亀裂があらわになった。
交渉再開に向け、数か月にわたり双方の間を行き来する「シャトル外交」を重ねてきた米国は、「信頼関係をひどく損なう」行為をした場合は責任をとるよう双方に警告し、交渉の再開を宣言した。
危うい状況を象徴するかのように、米国が発表した信頼醸成措置に関する声明をめぐり、すでに波紋が広がっている。
米国務省のフィリップ・クローリー次官補(広報担当)は「交渉の成功に寄与する雰囲気づくりのため、双方がそれぞれ尽力してくれた。(パレスチナ自治政府のマフムード)アッバス議長はいかなる扇動行為にも反対すると表明し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は(東エルサレムの)ラマト・ショロモでの住宅地建設は2年間はないとしている」と述べた。
これに対しイスラエル当局者は、ネタニヤフ首相は米政府に対し、通常の住宅建設計画では着工までに数年かかるというプロセスを説明しただけで、(凍結については)何の約束もしていないと即座に否定した。
間接交渉は当初、3月に始まる予定だったが、イスラエル側がラマト・ショロモでの住宅1600戸の建設計画を発表したことを受け、パレスチナ側が交渉に応じない意向を示した。
パレスチナ側はイスラエルが交渉を台無しにしようとしていると非難。アッバス議長の側近Nimr Hammad氏はAFPに対し、「イスラエルの声明は、米政府を辱めるためか挑発するためのものだ」と語った。
交渉再開後、いったん帰国したジョージ・ミッチェル米中東和平担当特使は来週、同地域に戻る予定だが、直接交渉の再開の可能性を除き、具体的な進展はほとんど期待されていない。【5月10日 AFP】
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ユダヤ人入植地建設計画については、パレスチナ側は新規建設が実態として止まっていることから、またイスラエルは対米関係の改善を目指す思惑から、交渉再開に応じたものと見られています。
ただ、イスラレル側は、着工まで当初から2年以上かかる見通しで、「入植凍結」を拒否する首相の姿勢に変わりはないという姿勢です。
このあたりは、アメリカ側は“イスラエル首相が住宅建設は2年間しないとしている”と、イスラエル側は“実態として着工まで2年間はかかると言っただけ”と、双方が都合のいいように解釈する形で、当初から玉虫色にされていた部分でしょうか。
まあ、これでは具体的な進展は期待できません。
【信用醸成措置】
“信用醸成措置”としては、“イスラエルは、拘束しているパレスチナ人数百人の解放▽西岸内での検問所の削減と自治政府の管轄地域拡大--などの「信頼醸成措置」を近く実行する見通しだ。しかし、ネタニヤフ首相は「互いに遠く離れたまま交渉していては和平に達することは不可能だ」と話し、国境や入植地などの中核的な問題については直接交渉に委ねたい従来の姿勢を示した。”【5月9日 毎日】
【領土交換案】
PLOのエラカト局長は、直接交渉に移る条件として、ユダヤ人入植地建設計画の完全凍結の発表、第3次中東戦争(67年)での占領地返還を原則としつつ一部の領土を等価交換することで将来のパレスチナ国家の国境を画定--などを提案したことを明らかにしています。
領土交換案については、“エルサレムの最終地位問題を棚上げすれば、比較的合意に達しやすい議題とみられている。交換で、占領地・ヨルダン川西岸内の既存入植地をイスラエル領へ一部併合することを認めることになる。しかし、パレスチナ側外交筋によると、イスラエルが交換を求める対象面積はパレスチナ提案の4倍以上だという。”【5月9日 毎日】とも報じられています。
【オバマ大統領の対イスラエル姿勢】
交渉が進展するかは、アメリカがイスラエルにどれだけ圧力をかけられるかということにかかっています。
最近のアメリカ・イスラエル関係については、こんな記事も。
****イスラエル:オバマ氏腰低く?地元紙が写真で分析*****
中東和平の間接交渉が近く始まるのを前に、オバマ米大統領は3日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で対話した。イスラエル紙「イディオト・アハロノト」は4日付朝刊で、電話する大統領の新旧写真を2枚掲載し、ボディーランゲージ(身ぶり)の変化から、米政権が対イスラエルの厳しい姿勢を和らげようとしているのではないかと読み解いた。
1枚は、占領地へのユダヤ人入植を巡り両国関係が悪くなり始めていた昨年6月の写真。大統領は靴を履いた足を机に投げ出し、まるで首相に指示を与えているかのようだ。当時、「無礼だ」とイスラエルのメディアをにぎわした。3日の写真では、姿勢正しく足を床に置いている。
記事の見出しは「もしもし、オバマです」。写真下に「無礼ではなくなった。今回は床に足を置いている」との説明書き。自国の首相に、米大統領がどう接してくれるか、気になるのは日本とそっくり?【5月4日 毎日】
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一国の首相に電話するのに机に足を投げ出して・・・というのは、いかにも無礼です。
そもそも、机に足を投げ出す行為自体が無作法です。しかし、よくそんな写真が公表されるものだと不思議でもあります。
【ガザ地区の困窮】
まあ、そんなことは大した話ではありませんが、下記の記事はもっと切実です。
****電力不足のガザ地区、発電機事故で死者100人を超える*****
パレスチナ自治区ガザ地区では、発電機による死者が100人を超える事態となっている。
パレスチナ自治区には、頻繁かつ長期にわたる電力不足のため、多くのディーゼル発電機がエジプトから密輸トンネルを通じて運びこまれている。停電は長い時には16時間も続き、ガザの人びとたちは中国製発電機からの電気で小さな灯りをつけている。
だが、多数の悲劇も起こっている。
発電機の安全な使用法をガザに人びとに教えている国際NGOオックスファムのカール・シェンブリ氏は、「人びとは、発電機のそばでタバコを吸っている時にスイッチを入れ爆発したとだか、一酸化炭素の危険性を認識していない」と語る。
ガザ地区の救急当局者によると、前年だけで発電機が原因の火事や一酸化炭素中毒によって87人が死亡しているという。今年に入ってからの4か月だけでも23人が死亡している。
オックスファムは、病院や学校、公的機関などに2万部のパンフレットを配るなど、発電機の安全な使用方法を伝える取り組みを行っている。ガザのほとんどの人は、電力不足が深刻化するまでは発電機など使ったこともなかった。
ガザ地区では電力不足は日常的なことだが、今年の状況は特にひどいという。そのため、比較的安い発電機に人気が集まっているという。【5月8日 AFP】
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砲弾が飛び交わなくても、こうした形で生活は困難になり、多数の死者もでます。
事態の改善が望まれますが、最初に書いたように、今回の間接交渉はあまり期待できません。