(孤児院の障害児 一人っ子政策の結果、障害を持った子供を捨てる親もいるとかで、孤児院は障害児であふれているとの情報も。 もともと中国では環境汚染などのせいか、障害児が多いという話もあります。
“flickr”より By Wen-Yan King
http://www.flickr.com/photos/medapt/436186619/)
【「黒孩子」に戸籍を】
中国は爆発的な人口増加を抑えるため、79年から「一人っ子政策」を実施。自然増加率は1980~2008年の期間で、人口1000人当たり約11.9人から5.2人弱へと減少し、人口爆発が経済成長の足を引っ張ることを防ぐという目的は一定に達成しています。
しかし、その一方で、高齢者に偏った人口構成、いびつな男女間の比率といった重大な問題が派生していることは周知のところです。
また、政府の一人っ子政策に違反して生んだ第2子を戸籍上登録しないことで、政府も把握できない、公的サービスも付与されない子供たち「黒孩子(ヘイハイズ)」の増加も問題となっています。その数は3000~4000万人に達していると言われていますが、“闇”の世界の話ですので、実数ははっきりしていません。
中国政府はこの事態に、違反の子供にも戸籍を付与する方針を打ち出しています。
****<一人っ子>違反の子どもに戸籍を与える方針、初めて明確化―中国*****
2010年6月10日、中国政府は一人っ子政策に違反し戸籍を保有していない子どもに、戸籍を与える方針を初めて明確化した。ラジオ局・中国之声が伝えた。
番組には中国社会科学院人口・労働経済研究所の張翼(ジャン・イー)研究員が出演。まもなく始まる第6回国勢調査についてコメントし、「第6回国勢調査戸籍整備活動プラン」で、一人っ子政策違反で戸籍を保有していない人を速やかに登録するよう定めていると明かした。
戸籍を保有していない人は、病院の出産証明などを参考に登録されることになる。正確な登録を担保するため、病院は一人っ子政策違反を理由に出産証明の発行を拒否することは禁じられた。また河北省はあらゆる地方、企業・機関が一人っ子政策違反を理由に戸籍登録を拒否した場合、行政罰の対象にすることも明記した。
中国では一人っ子政策違反の処罰を恐れ、戸籍に登録しないまま生活している人が少なくない。こうした人々は国勢調査でも把握されないため、統計の信頼性を揺るがす問題となってきた。中国の全国国勢調査条例は、調査と行政は異なるものと定めており、行政罰と切り離すことで正確な統計を得ようとしている。【6月11日 Record China】
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“調査を行政罰とは切り離して・・・”とは言いますが、特に中国のような政府権力が絶対的な社会で、その言葉を信じて進んで申告する者がどれほどいるかは疑問でもあります。ただ、そうは言っても、事態改善に向けた一歩であることは確かでしょう。
【香港ママ】
一人っ子政策逃れのため、香港での出産を仲介する業者の広告もあふれているとか。
****一人っ子政策違反の2人目や愛人の子を「香港で生もう」の広告が氾濫!―中国****
「お子さんの成功の道、その出発点は香港から」「650万元(約8850万円)を節約、移民して香港ママになろう」……。ネットにはこうした香港での出産仲介業者の広告があふれている。2010年3月29日、人民日報が伝えた。
香港で出産した場合、赤ちゃんは香港籍を得ることができる。そのため中国本土から多くの女性が押し寄せ、香港の産婦人科のベッド数が不足するなどの問題が起きているほどだ。仲介業者なしでも香港での出産は可能だが、事情がわからないため依頼する人が多いという。
「(一人っ子政策違反の)2人目出産、未婚での出産、愛人の出産、代理母出産。香港はあなたを歓迎します」とは仲介業者がよく使う宣伝文句。一人っ子政策逃れで香港での出産を選ぶ人も少なくないという。違反金と比べれば、コスト的にも安いのだとか。香港での新生児登録には両親の結婚証明書が必要となるが、ニセ証明書が使われるケースが多い。
中国政府は香港で出産しても一人っ子政策違反であることに変わりはないと強調しているが、現在は把握する方法がないのが実情。国家人口・計画生育委員会のあるスタッフは、「一国二制度」を守りつつ、香港にも中国本土の国民にも受け入れられる法整備が必要だとコメントした。【3月31日 Record China】
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政治的な問題に関してのネット規制が厳しく行われている中国ですが、こうした“香港ママ”の広告があふれているというのは、不思議な感じがします。
【「白髪都市」上海】
一人っ子政策の問題の中核でもある高齢化に伴う人口構成の問題に関しては、人口抑制を進めた結果、2015年頃を境に労働力人口が減少に転じるという統計もあるようです。
高齢化が進めば、社会保障のための経済的負担も増加します。
この問題は、一人っ子政策が早くに普及した上海で全国に先駆け表面化しつつあります。
****<一人っ子政策>全国的緩和へ、1世帯2人出産を提言―上海市****
20日、上海市人口・計画生育委員会が、一人っ子政策緩和の可能性について言及した。全国的に1世帯に2人までの出産を認めても、人口学的にはバランスを崩すことはないという。
2009年4月20日、上海市人口・計画生育委員会の孫常敏(スン・チャンミン)副主任が、一人っ子政策緩和の可能性について言及した。上海で開催された「調和社会と高齢化問題」を主題とした講演でこの問題に触れた。
08年末の統計では、中国の総人口に60歳以上の高齢者が占める割合は12%、1億5900万人超となっている。とくに一人っ子政策が早くに普及した上海市の状況は深刻で、2030年までには人口の半分が65歳以上となる見込み。
急速に進む高齢化に対し、孫氏は「従来の計画生育政策(一人っ子政策)は現在の国情にそぐわない。個々の家庭事情や経済力に合わせて世帯規模を指導していく必要があるだろう」と発言した。全国的に1世帯2人までの出産を認めても、人口学的にはバランスを崩すことはないとしている。
中国ではかつて子だくさんがよしとされたが、時代は変わり、子供の養育コストが上昇し続ける中、子だくさんを望む夫婦は現実的には減ってきているという見方も、政策緩和の方向性を後押ししている。1世帯に2人までの出産を許可すれば、高齢化に歯止めをかけるほか、現在不均衡を生じている男女比の問題も解決に向かうとしている。【09年4月22日 Record China】
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上海では以前から「夫婦共に一人っ子の場合、子供は二人まで」が認められており、その成果で人口の自然減少が緩和されてきてはいます。ただ、政府が第2子を奨励しても、上海のような都市部では、ライフスタイルの変化に伴い、教育コスト負担から、人々がそれを望まないという問題もあるようです。
また、上海がこの問題に力を入れるのは、労働人口減少が上海以外から人口流入、つまり“よそ者”の流入を招き、社会を不安定化させることへの懸念があるとも指摘されています。
先進国における“移民問題”と同じです。
【100:119】
男女の産み分けに伴ういびつな男女比率の問題は、背景に家の跡取りとして、また、労働力として男子を望む風潮があります。その結果、“男性余り・嫁不足”も生じ、嫁にする女性を誘拐してくるといった社会問題まで起きているとか。
ただ、最近わずかながら改善の兆しもあると報じられています。
****「男性余り」懸念の中国、新生児の男女比格差に改善の兆し*****
中国の人口の男女比格差に、わずかながら改善の兆しがみられたことが分かった。李斌・国家人口計画生育委員会主任が3日、政府のウェブサイトで明らかにした。
2009年の中国での新生児の割合は、女児100人に対して男児が119.45人。08年は同120.56人で、数年ぶりに差が縮まった。
出生時の自然な男女割合は女児100人に対し男児105人程度とされるが、中国では人口増抑制のため約30年前に導入されたいわゆる「一人っ子政策」の影響で男女比の差が開いた。中国社会科学院の昨年の発表によると、2020年には結婚適齢期の男性2400万人以上が結婚相手を見つけられない可能性がある。
李主任は、確実に格差が縮まるにはあと何年もかかるとして、出生前の性別判断検査や医療目的でない人工妊娠中絶の根絶に向けて一段の警戒が必要との見方を示した。【6月4日 ロイター】
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【違反者に避妊手術】
種々の問題を生んでいる一人っ子政策の是非については、政府部内でも検討が行われていることが数年前ぐらいから報じられています。
****中国、「一人っ子政策」廃止せず=公式サイトで声明発表へ―中国紙*****
2008年3月2日、中国国家人口計画生産委員会が29日、先ごろ一部メディアで報道された「中国は一人っ子政策廃止を検討中」というニュースは事実ではないと否定した。北京紙「新京報」が広州の夕刊紙「羊城晩報」の記事を引用し報じた。
ロイター通信社は29日、同委員会の趙白鴿(チャオ・バイゴー)主任が28日、中国が「段階的に」一人っ子政策の廃止を検討していることを明らかにしたと報じていた。時期や方法、具体的な措置は決まっていないが、「政策決定者にとって大きな課題になっている」と述べたとしている。
同委はこれに対し「事実ではない」と否定し、「現行の人口抑制政策は、これからもさらに推進される」ことを強調した。現在、公式サイトでの声明発表を準備しているという。
中国は1970年代に「一人っ子政策」を導入し、地域ごとに異なるものの原則的に1家族につき子供1人とされている。違反すると年収の数倍の罰金など厳しい取り締りが行われているが、人口の高齢化などの問題も指摘されている。【08年3月2日 Record China】
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上海のような第2子奨励の一方で、こんな話もあるようです。
****「一人っ子政策」、違反者1万人に避妊手術へ 中国・普寧市****
中国南部・広東省の普寧市当局が、「一人っ子政策」の違反者取り締まりの一環として、住民1万人近くに避妊手術を施す運動を始めた。国営英字紙・環球時報などが伝えた。
市当局は、前週より20日間の日程で、「普寧市で一人っ子政策に最も違反している人々」9559人を対象に取り締まりを実施。報道によると、これまでに対象者夫婦の約半数が避妊手術に同意したという。
また、15日付の南方日報の関連紙Nanfang Countryside Dailyの報道によると、普寧市当局はこれまでに、手術の拒否者ら1300人以上を拘束した。手術を拒否した人だけでなくその親族も拘束され、市当局施設で家族計画の規則についての指導を受けているという。(後略)【4月18日 AFP】
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“避妊手術に同意”とは言っても、拘束して同意を求めるのは殆ど“強制”でしょう。