孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  中国政府と民主派最大政党が協議、選挙制度改革案可決 民主派は分裂

2010-06-25 22:30:22 | 国際情勢

(香港2010年1月1日 主催者の発表で約3万人、警察の推計で約9000人が参加し、行政長官・立法会(議会)全面直接選挙の早期実施や中国の反体制作家、劉暁波氏の釈放などを求める民主派のデモが行われました。た。 劉氏が年末に中国の裁判所で懲役11年の有罪判決を受けたことから、香港返還記念日(7月1日)以外のデモとしては比較的大きな規模となりました。しかし、最近の情勢は民主派には厳しい流れがあるようにも見えます。“flickr”より By Charles Mok http://www.flickr.com/photos/charlesmok/4233608419/

【直接選挙枠増加へ】
中国から「高度な自治権」を認められている香港では親中派と民主派の主導権を争っていますが、今回、民主派の要求を一部容れる形で、直接選挙を拡大する選挙制度改革が行われました。

****選挙制度の改革案 香港議会で可決****
香港立法会(議会)は24日、香港特区政府が提出した12年の行政長官と立法会の両選挙制度改革案を可決した。行政長官を選ぶ選挙委員を増員し、立法会の直接選挙枠を条件付きで10議席増やす。
05年には選挙制度改革案が民主派の反対で廃案となった。中央政府は先月末から、天安門事件(89年)以来初めて民主派との直接対話を行い、改革案への理解を求めていた。【6月25日 毎日】
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香港は1997年に中国に主権移譲されましたが、「一国二制度」の採用で2047年まで50年間、自治権の付与と中国本土と異なる行政・法・経済制度の維持が認められており、資本主義のシステムをとり続けることとなっています。
“しかし、香港は「高度な自治権」を享受しているが、「完全な自治権」を認められているわけではない。首長である行政長官は職域組織や業界団体の代表による間接選挙で選出されることになっており、その任命は中央政府(国務院)が行う。
現在、行政長官ならびに立法会議員の「直接選挙(普通選挙)による選出を何時からにするか」が議論の焦点になっており、民主派は2012年からを、親中派は2024年からを主張している。長官選については、2007年12月29日に全国人民代表大会(全人代)常務委員会が2017年に実施される選挙において「直接選挙を先行実施してよい」と容認姿勢を表明、一方で立法会議員の直接選挙については時期は定めていない。”【ウィキペディア】

【捨て身の議員辞職・補欠選挙作戦“失敗”】
立法会議員については、定数60のうち半分の30議席は直接選挙で選ばれますが、残り半分30議席は職能代表に割り振られています。
08年9月の選挙では、民主派は直接選挙枠で30議席中の19議席、親中派に有利な職能代表枠で4議席、合計23議席でした。残り37議席が親中派となっています。
世論調査でみると、香港市民の多くが直接選挙の早期実施を支持していますが、最近、北京との良好な関係を望む声が高まり、民主化や直接選挙への社会的関心が低下していることも指摘されています。

行政長官ならびに立法会議員の12年選挙からの直接選挙を求める民主派は、世論動向への危惧もあり、5名の立法会議員が辞職することで補欠選挙を行わせ、その補欠選挙を事実上の直接選挙実施を求める住民投票にしようという捨て身の作戦にでました。
しかし、5月に行われた補欠選挙に親中派は敢えて候補者を立てず、民主派の思惑を封じ込めました。
また、投票率は17・1%と97年の中国返還以来、最低となったことで、民主派の作戦は“不発”というより“失敗”に近いものでした。

【中国 穏健民主派に接近】
そんな状況で、民主派と中国政府との交渉が報じられていました。
****天安門事件後初の公式会談=香港民主派と中国当局*****
香港民主派最大の政党・民主党の何俊仁主席ら幹部3人は24日、当地で中国政府の出先機関である連絡弁公室の李剛副主任(次官級)と公式に会談し、香港の選挙制度改革について話し合った。
香港民主派が全面支援した本土の民主化運動が武力弾圧された天安門事件(1989年)で同派と中国当局が決定的に対立して以来、両者の公式接触は初めて。
中国はこれまで、本土の社会主義体制に批判的な香港民主派全体を敵視してきた。しかし、香港政府が進める立法会(議会)と行政長官の選挙制度改革を後押しするため、民主党などの穏健民主派に接近する方針に転換したとみられる。【5月24日 時事】
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この接触を受ける形で、香港の曽蔭権行政長官は6月21日、政府の選挙制度改革案に対して民主派最大の政党・民主党が提示した修正案を受け入れると発表しました。
香港両政府は当初民主党案を拒否していましたが、中国政府が容認の姿勢に転じたことから、香港政府もこれに従ったものです。そしてその結果が、冒頭記事にある選挙制度改革案可決という訳です。

【「裏切り者」批判】
一連の流れ、特に、民主派の補欠選挙作戦の“失敗”という状況で、敢えて中国が民主派に一部歩み寄ったとも見える動きについては、その意図がよくわかりませんでした。
しかし、下記記事で、中国による民主派切り崩しの実態が観て取れます。

****選挙制度改革案を表決へ=民主派は分裂―香港立法会****
香港立法会(議会)は23日、本会議を開き、政府が提出した選挙制度改革案の審議を開始した。同案は親中・親政府派全員と民主党など穏健民主派の賛成で可決される見込みだが、まず多くの議員がそれぞれ意見を表明するため、表決は24日に持ち越される可能性もある。
社会民主連線(社民連)などの急進民主派は、民主党案を取り入れて修正した政府案にも反対し、同党を「裏切り者」と非難。民主派は完全に分裂状態となっている。【6月23日 時事】
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先の議員辞職・補欠選挙作戦についても、辞職届を提出したのは公民党と社会民主連線(社民連)の議員で、民主派の最大政党・民主党はこの動きに同調していませんでした。
これで香港民主派の分裂が鮮明になり、中国が主導権を持ってリードする形が見えてきたようです。

コメント
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