孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  タリバンの「春の作戦」と“外交努力”

2013-04-28 22:19:22 | アフガン・パキスタン

(南部ヘルマンド州の州都ラシュカルガーで当局指示により毎月行われる住民全員参加の清掃活動 衛生改善のほか、堆積したゴミに仕掛けられる爆発物防止にも役立つとか “flickr”より By FMT Helmand http://www.flickr.com/photos/93172215@N05/8670795241/in/photostream/

アフガニスタン軍制服組トップのカリミ陸軍参謀長は、かつて政府の権限が及ばなかった南部カンダハル州やヘルマンド州ですら「軍の掃討作戦で多くのタリバン指導者が殺害され、数年前と比べ大きく治安が改善した」と発言しています。上記の清掃活動などはそうした治安改善の結果のようにも見えます。

しかし、タリバン側は西部ファラー州の裁判所を狙った大規模襲撃などで、カルザイ政権の正統性を否定しようと活動しています。)

メンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃
アフガニスタンでも厳しい寒さの冬が終わり、戦闘再開の季節となっています。
タリバンは「春の作戦」で攻勢をかけることを明らかにしています。
何やら「春の大感謝市」みたいな感じもする作戦名ですが・・・。

****きょう「春の作戦」開始 アフガンのタリバン*****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは27日、同国に展開する国際治安支援部隊(ISAF)やアフガン政府の高官らを攻撃する「春の作戦」を28日から開始すると宣言した。報道機関に声明文を電子メールで送信した。

タリバンは降雪の多い冬と比べ、春から秋にかけて攻撃を増加させる傾向がある。ISAFの戦闘部隊が撤退を本格化させる中、タリバンが国民に影響力を誇示するため例年より攻勢を強めるとの見方も出ている。声明でタリバンはメンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃する戦法を続けると強調した。

一方、タリバンのメンバーは、アフガン中部ロガール州で21日に拉致したトルコ人8人を含む11人を隣国パキスタン北西部の部族地域で監禁していると明らかにした。部族地域、北ワジリスタン地区にはタリバン内の強硬派ハッカニグループの拠点がある。【4月27日 共同】
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上記記事にある“トルコ人など11名を監禁している”というのは、21日にトルコ人建設労働者を乗せたロシア人パイロットの民間ヘリコプターが緊急着陸し、これをタリバンが包囲して拘束したと報じられている事件です。

春の攻勢は例年のことですが、“メンバーを国軍兵や警察官に紛れ込ませて、ISAFの隊員を攻撃する戦法を続けると強調した”と、具体的戦術に言及しています。
これはISAF内部で疑心暗鬼にさせる心理戦ともとれますが、ISAF・アフガニスタン軍と正面からぶつかるような戦闘ではないということでは、タリバンの戦闘力・組織力が低下してきているとも言われていることを裏付けるものにも思われます。

【「大事なときなのでわれわれの戦略を台無しにしないでほしい」】
一方、タリバンは、アメリカのボストンマラソン・テロ事件に関して早い段階で、事件に関与していないことを表明しました。

****ボストンテロはタリバンの「大迷惑*****
アメリカを再び襲ったテロに、意外な勢力が意外な反応を見せている。
先週、ボストンーマラソンのゴール付近で爆弾テロが発生。3人が死亡し、100人以ヒが負傷したが、この事件で、敵対するアメリカの悲劇を喜ぶどころか懸念を高めたのが、イスラム原理主義勢カタリバンだ。

彼らはこうしたテロがタリバンの評判を損なうことを案じている。国際テロ組織アルカイダをかくまい、同組織に触発された勢力もテロを容認している集団、というイメージを助長するからだ。「われわれはボストンのテロと何の関係もない」とタリバンの元閣僚は本誌に語った。

タリバンは約1ヵ月前に、攻撃を自重するようアルカイダに呼び掛けてさえいる。あるタリバン高官によれば、彼らはアルカイダの最高幹部アイマンーアルーザワヒリに書簡を送付。タリバンはイスラム諸国や世界との関係を改善しようと外交努力を重ねており、「大事なときなのでわれわれの戦略を台無しにしないでほしい」と伝えた。

だが、忠告どおりアルカイダがテロ攻撃を差し控えるかは疑わしい。これまでのところ、ザワヒリからの返答はないようだ。【4月30日号 Newsweek日本版】
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“タリバンの評判”というのも奇妙な感がありますが、一般市民を対象にしたテロで全世界を敵にまわすようなことは考えていないとのことのようです。
“イスラム諸国や世界との関係を改善しようと外交努力を重ねており”ということの中には、アメリカやアフガニスタン政府との交渉も含まれているのでしょうか。

オマル師の生存が確認されてない中で、タリバン組織内は統一がとれていないとの報道もあり、上記 Newsweek記事にあるよなタリバンの意向がどの程度組織内でオーソライズされたものかはわかりませんが、タリバンも14年末の米軍撤退をにらんだ“外交努力”に力を入れ始めているようにも思えます。

前述のようにタリバン側に戦闘力・組織力の低下があるのであれば、タリバンの選択肢も限られてきますので、“外交努力”は今後の具体的和平交渉につながっていくことが考えられます。
コメント
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