
“2012年11月19日、中国大手ポータルサイト・新浪(SINA)の関係者は同社の微博(中国版ツイッター)ユーザー数について、「新浪微博のユーザー数は約3億6000万人で、男女がそれぞれ半分ほど占めている。うち80年代生まれのユーザーが全体の52%を占め、90年代生まれが37%と、約90%が若い世代のユーザーだ。70年代生まれのユーザーは僅か6%で70年代よりも前の世代は2%しかいない。また、大卒レベルの学歴を持つユーザーは全体の80%に及ぶ」と伝えた。”【2012年11月21日 Record China】 写真は【11年12月22日 KINBRICKS NOW】より
【「取材・編集者のネット活動管理強化に関する通知」】
広東省の週刊紙・南方週末の新年号でも注目された中国の情報管理は今更の話でもあります。
****IFJ報告書:「中国のメディアは氷河期」****
国際ジャーナリスト連盟(IFJ、本部ブリュッセル)は4日、昨年の中国における報道の自由に関する報告書を発表した。中国当局は昨年、情報統制や検閲を強化しており、調査を始めた2008年以来メディアへの抑圧が最も厳しかった11年と同様に「氷河期」が続いていると指摘している。
報告書は、中国当局が国内メディアに1日に十数項目にもわたる通達を出して調査報道などを禁じたと批判。報道内容が問題視され、多くの記者らが処分されたという。【2月4日 毎日】
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そうした情報管理になかにあって他のメディアに比べると政府批判などの生の声が反映しやすい形となっているネット世論空間についても、共産党による管理・規制強化が行われているとのことです。
****中国、情報統制を強化=海外サイトの引用制限―記者の「微博」も徹底管理****
中国メディアを管理する国家新聞出版放送総局は16日までに「取材・編集者のネット活動管理強化に関する通知」を国内報道機関向けに出し、海外メディア・サイトの情報を無許可で使用してはいけないと指示した。また記者・編集者が仕事上の情報を発信するためミニブログ「微博」(中国版ツイッター)を開設する際には、所属機関の許可を義務付けるなど、情報統制を一段と強化した。
中国では、広東省の週刊紙・南方週末の新年号の社説が共産党宣伝当局の指示で改ざんされるなど、習近平指導部になってもメディアへの引き締めが強化されている。今回の通知には、微博利用者が5億人を超える中、社会安定を最優先に「ネット世論空間も共産党が管理する」(中国メディア関係者)狙いがありそうだ。【4月16日 時事】
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当局の意図については、“うわさやデマなど「有害情報」がインターネット上で拡散するのを防ぐのが目的としている。世論形成に影響力を持つ記者が微博などを通じて当局に不都合な海外の報道を発信するのを阻止する狙いもあるとみられる。”【4月16日 毎日】と指摘されています。
【“不都合な海外の報道”】
“不都合な海外の報道”ということでは、粉ミルクに関する下記報道なども、政府の失政・中国社会の歪みを如実に示すもので、中国国内での報道は制約されるのでしょう。
なお、粉ミルクに関しては、以前も取り上げたように、すでに香港で欧州と同様の問題・軋轢が起きています。
****欧州のスーパーから粉ミルクが消えた、中国向けの大量購入で****
欧州やオーストラリアのスーパーマーケットや商店で粉ミルクの棚が空っぽになる事態が相次いでいる。国産の粉ミルクに不安を持つ中国人の母親たちの需要に応じて、バイヤーたちが欧州ブランドの粉ミルクをまとめ買いしているためだ。
まだ2008年の化学物質メラミン入り粉ミルク事件の記憶も新しい中国で、乳児を持つ親たちは国産粉ミルクの3~4倍もの金額を払ってでも欧州からの粉ミルクを入手している。これに対し欧州の店舗も、粉ミルクの品切れを防ぐため粉ミルクの購入数に制限を設けるなどの対策に乗り出した。
ドイツに住む中国人女性シャオさんは、ドイツで購入した粉ミルクをインターネットを通じて中国の母親たちに販売している。
シャオさんのような欧州に住む多数の中国人たちが、地元で粉ミルクを大量に購入しスーパーなどの棚を空っぽにしているのだ。
中国ネットオークション最大手「淘宝(タオバオ)」ではドイツ、英国からそれぞれ4000点、フランスからも3000点の粉ミルクが出品されている。(中略)
■尾を引く国産粉ミルク不信
2008年のメラミン入り粉ミルク事件に加え、昨年にも国産の粉ミルクから発がん性物質が発見されており、国民の国産粉ミルク不信は高まるばかりだ。
それでも、2012年の国連児童基金(ユニセフ)報告書によれば中国での母乳率はわずか28%だ。産休期間が短いことや粉ミルクメーカーの宣伝攻勢が背景にある。
だが、購入者たちは中国市場で販売される商品に不信感を抱いている。欧州ブランドの粉ミルクでも中国市場向けパッケージで販売されているものは信用できないという。
消費者調査企業ユーロモニターによれば、中国は間違いなく世界最大の粉ミルク市場だ。「中国の若い親たちは国際的な粉ミルクメーカーの商品、特に製造国と同じパッケージのまま輸入されたものが、より安全だと考えている」とアナリストのベラ・ウォン氏は話す。
こうした中国で高まる海外ブランド粉ミルク志向が、欧州各国で粉ミルク不足を引き起こしているのだ。
■欧州では怒りの声も
ドイツメディアは空っぽになった粉ミルクの棚の写真を掲載。欧州最大の発行部数を持つビルト紙は1月、「アプタミル(ドイツの粉ミルクブランド)の棚の前でドイツの母親たちが『私たちの粉ミルクを中国人が買い占めた!』と怒っている」と報じ、アプタミルを製造するMilupaは、「アジア向け輸出」が原因だとしてアプタミルの品切れを謝罪した。
ただしMilupaは直接、アプタミルをアジアに輸出しているわけではなく、購入者はドイツ国内の商店で直接アプタミルを買っていると説明している。
こうした事態に欧州の各店舗は粉ミルクの購入数に制限を設け始めた。
ドイツの薬局チェーンDMはアプタミルの購入数を1回3箱までに制限。英国でも各スーパーがメーカーからの要請に応じて粉ミルクの購入数を1人あたり1日2缶までとした。Milupaの親会社ダノン(Danone)は「中国への非公認輸出」による粉ミルクの大量買いを防ぐための措置だと説明している。
中国経済紙「21世紀経済報道」によると、英国のスーパーマーケットで1週間に粉ミルクを100箱以上購入した中国人が入店を拒否されたという。
ドイツ・フランクフルト(Frankfur)近郊を拠点に中国人への粉ミルク販売を続けていた中国人男性はAFPに対し、最近は粉ミルクの入手が難しくなったため中国への粉ミルク販売業を止めてしまったと明かした。
だが粉ミルクの品切れや購入制限にも関わらず、シャオさんは諦めていない。「あるスーパーで粉ミルクが売り切れていたら、別のスーパーを探します。私がやっていることは(中国の)母親や子供たちのためなんです。私自身も母親なので、どんなに粉ミルクが大事か身をもって知っているから」【4月16日 AFP】
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【ネットアンケートで共産党政権に否定的な答えが7~8割】
ネット上での情報公開と規制に関しては、共産党一党独裁を否定するアンケート結果が公表されて話題となっています。
****8割が共産党に否定的 中国ネット調査、すぐ削除****
中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の論壇誌「人民論壇」が、習近平(シーチンピン)国家主席が提唱する「中国の夢」に関するネットアンケートを実施したところ、共産党政権に否定的な答えが7~8割を占める事態になった。回答は15日に突然締め切られ、サイト上の回答結果も見られなくなった。
設問は4問。3千人以上から回答があった。「共産党に改革を進める勇気と知恵があると思うか」という問いでは、「完全に同意」「同意」は合わせても1割強だったのに対し、「同意しない」は7割を超えた。
さらに「中国の特色ある社会主義を守り発展させることは、人民の利益にかなうと思うか」「共産党だけが、中国の特色ある社会主義の道を人民がよく進むよう導けると思うか」「(共産党)一党が政権を担う制度をどう思うか」といった問いに対し、「同意しない」が約8割にのぼった。
中国版ツイッター「微博」では削除前の回答結果の画像が次々に転載され、「公開した担当者は勇気があるな」などと書き込みが続いている。【4月16日 朝日】
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アンケート結果内容も、それが公表されたことも驚きです。
ただ、ネットアンケートは統計的な手法に基づいた世論調査とはかなり乖離した結果が出やすい性格があります。
特に、サイトを見る人に一定の傾向がある場合は、そのサイト上でのアンケートはその傾向に沿ったものになりますから、国民全体の意見という訳ではないでしょう。
そうは言うものの、7~8割が現行政治体制を否定する回答をしたというのは興味深いところです。
そうした結果が公表されたというのは、もっと驚きですが、南方週末以来の政府による報道規制への反発が背景にあるようにも思えます。
そもそも、習近平国家主席が提唱する「中国の夢」をアンケート対象にすること、アンケートの選択肢からして、政府に対する相当な不満があるようにも見えます。
ネット世論を当局が管理しきれるか・・・という問題は、「中国の特色ある社会主義」が今後も持続できるかという問題にとって重要な影響を持つ問題です。
昨年末も、インターネットユーザーの「実名登録制」などの管理・規制強化が行われています。
****中国、ネット実名を義務化 市民の言論に影響も****
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)常務委員会は28日、インターネットユーザーの「実名登録制」など、ネットの管理強化の義務化を決定した。個人情報の保護が目的だが、権力の監視役を担っている「ネット世論」を萎縮させかねないとの懸念が出ている。
「ネット情報保護の強化に関する決定」によると、ネット上に企業の顧客名簿が流出したり、個人のプライバシーが暴露されたりする問題が深刻化しているとして、ユーザーの身元管理を強化するため、メールやサイトを利用する際、実名で登録することを義務づけた。今後、関連法規が整備される見通しだ。
中国のネットユーザーは5億人超。市民がネットを通じて官僚の不正や腐敗を告発する動きが加速している。匿名性が奪われれば、ネット上での市民の言論活動が鈍る可能性がある。
告発メールを毎日平均2千件受けているサイト「人民監督網」の朱瑞峰氏は「実名制だと、当局に目をつけられた人がブログなどに登録できず、発言の場を失う恐れがある」と指摘している。 【2012年12月28日 朝日】
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