(10日、元閣僚の脱税問題を受け対策を発表するオランド仏大統領 【4月11日 AFP】http://www.afpbb.com/article/politics/2938166/10563277?ctm_campaign=txt_topics)
【報道官より収入が少ないプーチン大統領】
政治家とカネの話は今更の感がありますが、オバマ米大統領やロシアのプーチン大統領の収入となると多少は興味もわきます。
****オバマ夫妻の年収61万ドル…プーチン氏は?*****
オバマ米大統領とミシェル夫人は12日、2012年の確定申告書を公開した。
大統領としての給与は39万ドル(約3800万円)で、これに著書の印税などを合わせ、夫妻の年収は計約61万ドル(約6000万円)だった。うち15万ドルは寄付したという。
大統領に就任し、著書がベストセラーになった09年の年収は550万ドルに達していた。その後、印税が減り、年収は11年の約79万ドルと比べ2割減った。
一方、ロシア大統領府は12日、プーチン大統領の2012年の所得を発表した。首相だった前年より200万ルーブル(約660万円)増え、約579万ルーブル(約1910万円)になったことがわかった。入れ替わりに、大統領から首相になったメドベージェフ氏の所得は581万ルーブルで、プーチン氏よりやや多かった。【4月15日 読売】
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アメリカ大統領の場合、選挙に要する巨額の費用がどのようにまかなわれているのか、寄付金だけで足りているのか・・・そのあたりはよく知りませんが、大統領を辞めてからの回顧録出版で相当の収入も見込めるのではないでしょうか。
ロシアのプーチン大統領については、大統領報道官より収入が少ないそうです。
****2012年のプーチン大統領の世帯収入、報道官より低かった****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の2012年の年収は570万ルーブル(約1800万円)と、ドミトリー・メドベージェフ首相とほぼ同水準だったものの、大統領報道官と比較すると大幅に低かったことが、ロシア政府が12日に公開したデータで明らかになった。
年収が最も多かったのは、政権の中でも有数の資産家で、経済政策を担っているイーゴリ・シュワロフ第1副首相。クレムリン(大統領府)のウェブサイトで公表されたデータによると、同副首相が申告した2012年の世帯所得は4億4840万ルーブル(約14億2000万円)で、その約半分は妻の所得だった。
メドベージェフ首相の年収は580万ルーブル(約1800万円)で、妻の所得申告はなかった。一方、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、妻と合計した世帯収入が1110万ルーブル(約3510万円)だった。
ロシアでは昨年から政府高官の所得の公開が義務付けられたばかり。シュワロフ第1副首相は昨年、その高額の所得で国民を驚かせ、自身の利害がロシアの法律に一切抵触していないことを明らかにせざるを得なくなった。
シュワロフ第1副首相の報道官が12日語ったところによると、同副首相は政府高官が海外で銀行口座や資産を保有することを禁じる法改正に対応するため、自身の資産を海外の口座や信託からロシア国内に移しているところだという。【4月14日 AFP】
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プーチン大統領については、その“お友達”が長者番付に名を連ねています。
“米フォーブス誌がまとめた13年版の長者番付によると、推定10億ドル(約945億円)以上の個人資産を持つ「ビリオネア」はロシアに110人おり、米国と中国に次ぐ3位。今回は、プーチン大統領の旧友として知られる石油トレーダーのティムチェンコ氏が、初めて十傑に入ったことが注目された。
同氏はプーチン氏がサンクトペテルブルク副市長だった1990年代からの親友で、独立系天然ガス企業「ノバテク」の大株主でもある。4年前に4億ドルだった推定資産は今や141億ドルに膨れ上がった。ノバテクの共同保有者であるミヘリソン氏も国内3位に順位を上げた。
十傑圏外ではあるが、60年代からプーチン氏の柔道仲間だったロテンベルク氏(パイプライン建設会社など保有)も資産33億ドルで31位につけている。”【3月30日 産経】
ロシアの政治・経済システムでは、権力との近さが何よりもものを言うようです。
その権力の中枢にいるプーチン大統領自身の収入はそんなに大きなものではない・・・ということですが、まあ、プーチン大統領なら咳払いのひとつでもすれば何十億ぐらいはすぐに誰かが持ってくる・・・とも思われますので(あくまでも想像ですが)、そんなに蓄財に励む必要もないのでしょう。
いくら蓄財に励んでも権力を失い失脚すれば、石油王手ユコスの元社長で、脱税などの罪で2003年に投獄されたミハイル・ホドルコフスキー服役囚のような立場になります。
蓄財よりは、少しでも長く権力を維持し、辞めてもなお影響力を失わないことが重要です。
【“シャンパン社会主義者”】
今朝のTVニュースを横目で眺めていたところ、フランス・オランド社会党政権の閣僚のなかに富裕税の対象となる資産家が少なくとも3名いるとかで、オランド大統領が対応に苦慮している・・・といった内容のニュースがありました。
資本主義を攻撃し、金持ちは何らか不正を働き、貧しい労働者を搾取することで資産を増やしていると考える従来の左翼的発想からすれば、口では労働者の味方を標榜しながら、自身は資産をため込んでいる“シャンパン社会主義者”“キャビア左翼”とも揶揄されるような存在というのは位置付けが難しいところがあります。
ただ、中国共産党に金持ち資本家が入党できる現代ですから、社会党政権閣僚に金持ちがいたとしても驚きでもなんでもありません。
主義・主張の問題と、自身が資産を持っているどうかとういうことは別物なのでしょう、きっと・・・・恐らく・・・・多分。
もっと言えば、自分を含めてみな多かれ少なかれ“口だけ”のところはあって、普段言っていることと、日頃の行いに乖離があるのはごく普通のことです。
【清廉さ売りの社会党政権、スキャンダルでダメージ】
しかし、カユザック予算相が脱税疑惑で辞任に追い込まれ、支持率が急落するオランド大統領にとって対応が難しいというのもわかります。
****オランド仏政権、支持率急落 脱税疑惑で予算相辞任****
オランド政権は政治的にも難しい局面に立たされている。失業増に国民の不満は高まり、支持率は30%台に低迷。19日には、カユザック予算相が脱税疑惑で辞任に追い込まれた。
脱税疑惑はネット新聞「メディアパルト」が昨年末に報じて表面化した。スイスの大手銀行の口座を使い、その口座を閉じた後はシンガポールに資金を移したという内容だった。潔白だと主張してきたが、パリ検察当局が捜査に着手する意向を発表すると一転した。オランド氏も辞意を受け入れざるを得なかった。
幕引きを急ぐのは、いっそうの緊縮型となる予算案づくりが避けられないからだ。担当閣僚が捜査への対応に追われれば、ユーロ危機からの出口を示せない政権に風当たりが強まるのは必至だ。
18日のオピニオンウエー社の世論調査ではオランド氏の支持率は31%と前月から8ポイント急落した。西アフリカ・マリへの軍事介入でやや上向いた支持はしぼんだ。
最大野党の民衆運動連合(UMP)は20日、オランド政権の経済運営を批判して、下院に内閣不信任案を提出した。与党・社会党が単独過半数で否決したが、政権の衰えを印象づけた
【3月25日 朝日】
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オランド大統領は国民の信頼回復のために、公務員の監視や脱税の取り締まりの強化などの対策を発表しています。
****「租税回避地の根絶を」、元閣僚の脱税問題を受け対策発表 仏大統領****
フランスの元閣僚がスイスに脱税用の隠し口座を持っていた疑いで訴追された問題で、フランソワ・オランド大統領は10日、租税回避地(タックスヘイブン)の「根絶」を目指すとともに、公務員の監視や脱税の取り締まりの強化などの対策を取ると述べた。
ジェローム・カユザック前予算担当相は、国外口座に約60万ユーロ(約8000万円)の資産を隠し持っていたことを認め、先週訴追された。このスキャンダルの収拾に奔走しているオランド大統領は、「過剰な金、欲、隠し資産に対する容赦なき戦い」を挑むと述べた。
オランド大統領が閣議後の記者会見で明らかにした一連の対策には、銀行が国外で行っている活動を明るみに出すことによってタックスヘイブンの利用を制限することも含まれている。
大統領は「タックスヘイブンを欧州、そして世界から根絶しなければならない」と主張し、フランスの銀行に対し、世界各地に持つ子会社の一覧の公表と活動内容の報告を毎年求めていくことになると述べた。オランド大統領は、この対象を欧州連合(EU)全域の銀行と大手企業にも拡大したいとしている。
大統領はまた、公務員への国民の信頼を回復するため、閣僚や議員などの資産や利害関係を監視する「完全に独立した政府機関」を設立するとも述べた。脱税対策の強化を目指す新法の法案は今月24日までに議会に提出される見込み。【4月11日 AFP】
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カユザック予算相の案件が表ざたになったのは、だいぶ以前、昨年12月のことです。
以来ずっと本人が潔白を主張し、大統領・首相もその説明を受け入れてきただけに、逃げ切れなくなって「いや、実は・・・」という展開には国民も失望・怒りを感じているようです。
派手で攻撃的なサルコジ前大統領にいささか辟易して、カリスマはないものの誠実・清廉そうなオランド氏を選択したフランス国民からすれば、「結局、同じじゃないか・・・」といった感もあるようです。
更に、オランド大統領は本当に真相を知らなかったのか、知っていて隠し通そうとしたのでは・・・という疑念も一部からは持たれています。
今朝TVで報じていたオランド政権閣僚の話が、“閣僚や議員などの資産や利害関係を監視する「完全に独立した政府機関」”絡みの話なのか・・・そこらの詳しい話は知りませんが、こういう政治不信・社会党政権への失望が高まっている政治状況で金持ち閣僚の処遇に苦慮・・・ということのようです。