孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカは“exceptional”か? アメリカ国民の抱く自画像

2013-09-19 23:06:18 | アメリカ

(“That’s what makes America different. That’s what makes us exceptional.”と国民に訴えるオバマ大統領 “The White House Blog”http://www.whitehouse.gov/blog/2013/09/10/president-obama-will-address-nation-syria

オバマ大統領「That’s what makes us exceptional.」】
アメリカ・オバマ大統領が、シリアの化学兵器使用疑惑に関して「アメリカは世界の警察官ではない。だけど・・・」といった演説を行ったことは、9月11日ブログ“アメリカ  オバマ大統領「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」”(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130911)でも取り上げました。

この部分はスピーチの最終部分にあたりますが、elkoravoloさんの「あつし@草莽 日記 」(http://d.hatena.ne.jp/elkoravolo/20130913/1379001598)によれば、以下のような内容です。

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America is not the world’s policeman. Terrible things happen across the globe, and it is beyond our means to right every wrong.
But when, with modest effort and risk, we can stop children from being gassed to death, and thereby make our own children safer over the long run, I believe we should act.
That’s what makes America different. That’s what makes us exceptional. With humility, but with resolve, let us never lose sight of that essential truth.
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アメリカが世界の警察官ではないことは自明のことですが、アメリカ大統領が敢えてそのことを、世界の悪をすべて正すことなど手に余ることを明言しなければならないこと、その背景に国民の内向き志向が強まっていること、アメリカが内向きを強めることに伴う国際社会の問題等々については、前回ブログで触れたとおりです。

ただ、オバマ大統領が強調したかったのは、「アメリカは世界の警察官ではない。だけど・・・」の“だけど・・・・”以下の部分です。
警察官ではないけど、すべでの悪を正すことなどできないけど、それでも子供たちが毒ガスで死に追いやられることを止めることはできるし、そうすべきであると信じる。
そして、そのような行動とることこそが、アメリカを“different”で“exceptional”にするのだ。・・・・と主張しています。

“exceptional”(特別な、例外的な)という表現は、「抜きんでていて特別」という文意で、アメリカにおいてアメリカ自身を表現する言葉としてしばしば使用されるそうです。

プーチン大統領「自分たちが特別だと人々に考えさせるのは、極めて危険だ」】
このようなアメリカの抱く自画像に噛みついたのが、ロシア・プーチン大統領です。
そしてそのプーチン大統領のアメリカ批判は、アメリカ国内で強い反発を招いているとのことです。

****米で際立つ「我々は特別」 プーチン氏かみつき、ヒートアップ****
アメリカは「特別」なのか――。シリア情勢が混沌(こんとん)とする中、こんな議論が米ロの対立を際立たせた。議論の背景を探ってみた。

きっかけはオバマ米大統領の10日夜の演説。シリアでの化学兵器使用に対し行動を呼びかけ「それが米国と他が異なるところだ。それが我々を特別(exceptional、エクセプショナル)にする」と語った。

ロシアのプーチン大統領が反発し、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で「自分たちが特別だと人々に考えさせるのは、極めて危険だ」と批判した。

今度は米国で猛反発が起きた。ベイナー下院議長は「侮辱された」、メンデネス上院議員は「吐きたい気分になった」。カーニー大統領報道官も「米国がなぜ特別なのか、ロシアは好対照を示す」とした。

「本当に特別か」は意見が分かれるが、米国内では自国を指して「エクセプショナル」という表現がしばしば使われる。「例外的」という意味もあるが、「抜きんでていて特別」という文脈が多い。

米誌アトランティックによると、最初に「米国の例外主義(エクセプショナリズム)」という表現を使ったのは皮肉にも旧ソ連の最高指導者だったスターリン。1929年に米国で共産革命が起きる可能性は低いと聞き、「米国の例外主義という異端を終わりにしろ」と怒ったという。

「特別」の意味合いを強めて使われるようになったのはもっと最近。レーガン元大統領は米国を「丘の上の輝く都市」にたとえた。ここ数年は米国の存在感の低下と反比例するかのようにさらに目立つ。

オバマ氏も就任直後のインタビューで「米国が特別だと信じている」と発言。ところが「他の国もそうだと思う」という趣旨の発言をしたこともあり、共和党からの批判は絶えない。
昨年の大統領選で共和党候補になったロムニー前マサチューセッツ州知事は「オバマ氏は米国を普通の国だと思っている」と繰り返し発言。党大会ではマケイン上院議員ら登壇者が次々と「米国がいかに特別か」を強調した。

10年の世論調査でも国民の80%が「米国は特別だ」と考える一方、37%は「オバマ氏はそう思っていない」と答えた。昨年はオバマ氏も対抗するかのように「特別さ」を強調していて、シリアを巡る今回の発言もその延長線とみられる。【9月19日 朝日】
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日本では、安全保障問題などで「普通の国」になることが論議されていますが、アメリカ国民の8割が「アメリカは特別だ」と考えていることは驚きでもあります。

この強烈な自負心があって、これまで「世界の警察官」に自らを任じてきた訳でもありますが、極めて個人的で卑近なレベルで言えば、自己主張が強く、自分を“特別な存在”と意識しているよな人物にはあまり近づきたくない・・・というのが正直なところです。謙虚さを美徳とする日本人ですから。

ロシア・プーチン大統領に他人・他国をとやかく言う資格があるのか・・・という話は別にして、プーチン大統領の「自分たちが特別だと人々に考えさせるのは、極めて危険だ」という発言には共感するものがあります。

アメリカの行動が往々にして“アメリカ的価値観の押し付け”として現地で摩擦を引き起こすのも、アメリカが自らを“exceptional”と考えているあたりに原因があるのではないでしょうか。

われ必ず聖なるにあらず。彼必ず愚なるにあらず。共にこれ凡夫(ぼんぷ)のみ
自らを“exceptional”と捉える考えの対極にあるのが聖徳太子の教えでしょうか。

*************** 十に曰わく、忿(こころのいかり)を絶ち瞋(おもてのいかり)を棄(す)て、人の違(たが)うを怒らざれ。
人みな心あり、心おのおの執(と)るところあり。
彼是(ぜ)とすれば則ちわれは非とす。われ是とすれば則ち彼は非とす。
われ必ず聖なるにあらず。彼必ず愚なるにあらず。共にこれ凡夫(ぼんぷ)のみ。
是非の理(ことわり)なんぞよく定むべき。
相共に賢愚なること鐶(みみがね)の端(はし)なきがごとし。
ここをもって、かの人瞋(いか)ると雖(いえど)も、かえってわが失(あやまち)を恐れよ。われ独(ひと)り得たりと雖も、衆に従いて同じく挙(おこな)え。

(十にいう。心の中の憤りをなくし、憤りを表情にださぬようにし、ほかの人が自分とことなったことをしても怒ってはならない。人それぞれに考えがあり、それぞれに自分がこれだと思うことがある。相手がこれこそといっても自分はよくないと思うし、自分がこれこそと思っても相手はよくないとする。自分はかならず聖人で、相手がかならず愚かだというわけではない。皆ともに凡人なのだ。そもそもこれがよいとかよくないとか、だれがさだめうるのだろう。おたがいだれも賢くもあり愚かでもある。それは耳輪には端がないようなものだ。こういうわけで、相手がいきどおっていたら、むしろ自分に間違いがあるのではないかとおそれなさい。自分ではこれだと思っても、みんなの意見にしたがって行動しなさい。)【金治勇『聖徳太子のこころ 』、大蔵出版より】http://www.geocities.jp/tetchan_99_99/international/17_kenpou.htm
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もちろん、“子供たちが毒ガスで死に追いやられることを止めることはできるし、そうすべきである”との主張は、そのとおりだと思います。その方法がシリア爆撃なのかどうかは別として。
また、“われ独(ひと)り得たりと雖も、衆に従いて同じく挙(おこな)え”というのには抵抗も感じますし、現実の問題が改善されません。

“われ必ず聖なるにあらず。彼必ず愚なるにあらず。共にこれ凡夫(ぼんぷ)のみ”という心を持ちながら、そのうえで何をなすべきか、何ができるかを考える・・・ということでしょうか。

【“different”な銃規制問題への対応
確かにアメリカが“different”だと言えるのは、銃規制問題です。

****惨事「何度も、何度も、何度も」…米紙が無力感****
ワシントンの海軍施設で16日に起きた銃乱射事件は、首都の軍施設でも銃犯罪を阻止できない現実を浮き彫りにした。
多くの死傷者を出す乱射事件が相次いでも銃規制が進まないことに、米社会では無力感が漂っている。

オバマ大統領は16日の演説で「我々は再び、銃乱射事件に直面している。今日は首都の軍施設で起きた」と沈痛な表情で語った。

警察との銃撃戦で死亡したアーロン・アレクシス容疑者(34)が犯行に及んだ動機は不明だが、AP通信によると、ライフルとショットガンに加え、現場で警官から奪った拳銃も所持していたという。
同容疑者は軍施設への入館に必要な国防総省の身分証を持っていたとはいえ、銃の持ち込みを許してしまった警備上の課題が浮上した。

ワシントン・ポスト紙によると、同容疑者はこれまでも銃関連の問題を起こしていた。2004年、自宅近くに駐車していた建設業者の車に発砲し、警察に逮捕された。10年9月には、アパートの自室で階下の部屋に向けて発砲し、逮捕された。当時、テキサス州フォートワースの海軍航空基地に勤務していたが、この事件によって11年1月に解雇されたという。

同容疑者は、こうした前歴がチェックされないまま、犯行に使った銃を入手した可能性が高い。海軍勤務を解雇された人物がなぜ海軍の情報技術を担当する民間会社への就職を果たし、海軍施設に出入りできたのかという問題も残る。

AP通信によると、同容疑者は8月から被害妄想や幻聴などの症状を訴え、治療を受けていたという。

オバマ大統領は昨年12月にコネティカット州の小学校で児童ら26人が死亡した銃乱射事件を受け、銃購入時の身元確認を義務化する法案を推進した。
「ガン・ショー」(銃の展示即売会)やインターネットを通じた取引なら、犯罪歴のチェックなしで銃を購入できる抜け穴を防ぐ狙いだった。
世論調査では90%が支持していたが、法案は今年4月、上院本会議で否決された。

大統領は16日の演説で「再発防止に向けて最善を尽くす」と語るだけで、銃規制強化には踏み込まなかった。
乱射事件が起きるたびに銃規制を求める世論が高まっても、銃擁護のロビー団体、全米ライフル協会(NRA)が議員に働きかけ、法制化を阻止する構図は変わらない。

ワシントン・ポスト紙は社説で、惨事が「何度も、何度も、何度も」繰り返されていると指摘し、無力感をあらわにした。【9月18日 読売】
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この問題は、このブログでも“何度も”取り上げた話なので、今日は止めます。
シリアの悪に立ち向かうのと同様の勇気と熱意を、国内の病巣にも向けることを期待したいものです。
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