(“flickr”より By UNHCR UN Refugee Agency http://www.flickr.com/photos/25857074@N03/9709322380/in/photolist-fMYPh1-cWAhfs-bojbyW-dqdxgc-cWAgzh-eqKrbG-eeNkf9-f45KVn-f46rXn-f467NZ-f43pX6-f45KZv-f454Me-f46rZM-f45mbk-bq78WA-efj4Ja-eeGAUp-dW6bfF-dtyBPA-fc9cTj-eeMTyY-bq7rRq-dCKpsS-e3mzdc-e3mzJc-e3sg7w-e3mzRe-e3sgem-e3sgg9-e3N1mT-aoAR6X-dfNiJL-efpNKS-dSy1zL-dSy2Po-dSxZSN-dSxZt5-dSspjF-dSsq2M-dSsr1e-dSsqdt-dSsqb8-dSsp3k-dSy1D3-dSy245-dSsqnp-dSsqQT-dSsruP-dSspYg-dSxYp5)
【シリア難民は200万超・・・現実は更に厳しく】
内戦が続くシリアからは200万人を超す難民が国外に脱出したと言われていますが、当然ながら、国外での難民生活は厳しいものがあり、シリア国内へ戻ることを希望する難民も多いようです。
****シリア難民キャンプで見た5つの事実****
アメリカのジョージ・メイソン大学のシンクタンク、「宗教および外交と紛争解決に関する国際研究センター(CRDC)」のディレクターであり、ナショナル ジオグラフィックの探検家でもあるアジズ・アブ・サラ氏は先月、シリア難民の子どもたち数百人のためにサマーキャンプを開催する目的で、現地スタッフとボランティア数人とともに、トルコとシリアの国境沿いで数週間を過ごした。
現地は予想以上に深刻で、一触即発の状況を迎えているという。サラ氏に、その問題点を挙げてもらった。シリア、トルコ、ヨルダンで暮らすシリア難民を訪ねたのはこれで3度目。訪問する度に視野が広がり、現地でしか知り得ない現実がいくつか見えてきた。
◆1. 数に入っていない難民が大勢いる
シリア難民の実際の数は、国連の公式発表よりはるかに多い。隣国で暮らす難民は200万超とされているが、これはシリアの出国時、または亡命先の国に到着した時点で、国連に登録された数に過ぎない。
しかし、筆者はトルコとヨルダンを訪れた際、難民登録を済ませていない多くのシリア人に出会った。国連の統計に含まれない人々だ。
例えば、10日前にシリアのホムスから、トルコ南部、ハタイ県の難民キャンプに到着したばかりの貧しい家族は、ほかの多くの同胞のように、トルコに不法入国している。
◆2. 受入国も危機にある
多数の難民を受け入れる隣国は、インフラ不足に直面している。難民の状況や受入能力の欠如の深刻度は、レバノンの現状が物語っている。
レバノンが受け入れたシリア難民は71万6000人に上り、420万人の人口がわずか12カ月で17%増加した。世界中を見渡しても、この状況に対応できる国はどこにもない。
以前から水に関する大きな問題を抱える隣国ヨルダンも、危機的な状況に陥っている。
難民が殺到してから1年後、14万4000人が集中するザアタリキャンプを訪れた5月には、水くみの長い列ができていた。キャンプ外のヨルダン国民も、水不足に不平を募らせている。
◆3. 子どもの教育が無視されている
難民の半数以上を占める子どもへの対応にも、受け入れ国は苦労している。現地の子どもが通う学校への編入は不可能な上、これだけの人数を収容する施設の新設も極めて難しい。
筆者が訪れた国で出会った子どもの大部分は未就学で、どのような形の教育も受けていない。武力紛争が勃発し、緊急の人道支援が求められる段階では、残念ながら教育は二の次となる。
しかし今、見通しを誤れれば5年後には、教育を受けておらず、おそらく公民権すら奪われ、いつ過激派になってもおかしくない世代に世界は対応を迫られることになるだろう。
◆4. 多くのシリア難民はいまだ自国にとどまっている
シリア国内には、住む場所を失った国民が400万人以上もとどまっている。国境越えの困難さに直面し、対立に巻き込まれ、または祖国を捨て去るべきでないと信じる人々。さらに、未知の世界への恐れもある。
シリア国内の難民キャンプの生活環境は、トルコやレバノン、ヨルダンよりはるかに劣悪だ。食糧や薬、水は明らかに不足しており、しかもキャンプで暮らしているかどうかに関わらず、常に銃弾が飛んでくる危険にさらされている。
◆5. 難民キャンプは監獄に似ている
キャンプに入った難民は、登録後に門とフェンスで囲まれた空間に閉じ込められる。武装警官が警護する中、自由意志の外出は許されず、日常生活も管理される。
働く機会を奪われ生産活動に関われない生活は、一番の精神的ダメージを被る。1日分の食料と水を受け取って、希望もなくただ待つしかない。まるで監獄だ。
このような生活に耐えられず、危険を犯してでもシリアへの帰還を選択する者もいる。
筆者がザアタリ・キャンプを訪れたとき、ヨルダン側の管理事務所の前に100人ほどの列ができていた。危険を知りながら、今すぐキャンプを出てシリアに帰国する許可を求める人々が並ぶ。
シリアの未来が決まるのは戦場だけではない。何百万もの難民、住む場所を失った人々も、戦後の国の行く末を左右することになる。
国際社会は、教育や医療、心的外傷の治療に重点的に取り組むべきだ。
武力紛争の終結後、シリアがより良い未来を築けるかどうかは、こうした人々にかかっている。【9月24日 ナショナルジオグラフィック】
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【拡大するシリア国内の食糧危機】
国外の難民生活も厳しいものがありますが、国外に出られない、あるいは国内にとどまった人々の生活も、戦禍による生命の危険に加えて、食糧確保などの面でも困難に直面しています。
****WFP:600万人以上の緊急支援必要…シリア担当調整官****
来日中の国連世界食糧計画(WFP)シリア危機担当地域緊急調整官、ムハナド・ハディ氏(47)が20日、東京都内で毎日新聞のインタビューに応じ、シリアで年末までに人口の約3分の1にあたる600万人以上の緊急支援が必要になるとの見通しを示した。ハディ氏は「食糧危機が拡大している」と国際社会の支援を求めた。
ハディ氏によると、シリアでは農作物の収穫が内戦前から半減し、食糧価格は2〜3倍に高騰。国内避難民は500万人を超えた。
WFPスタッフが武装勢力に誘拐されたり、政権側や反体制派に支配地域での活動を拒否されたりするケースもあり、食糧を配布できたのは目標の約8割にとどまっているという。
WFPは現在、毎週3000万ドルの活動資金が必要とされるが、ハディ氏は「来年にはさらに増える可能性がある」と指摘。「紛争を政治的に解決し、直ちに戦闘を終わらせなくてはならない」と訴えた。【9月20日 毎日】
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また、同氏は、「内戦前は女子教育促進のための食料支援を行っていたが、その同じ少女が戦災で家を失い、希望を失い、WFPの食料に頼って生きているのが今のシリアだ」「家を破壊され、女性や子どもが路上生活を余儀なくされている。それさえできなくなり、東西南北シリア中を逃げ回った揚げ句、疲弊し切って周辺国へ押し出されてくる」【9月22日 時事】と、特に子供の窮状を訴えています。
男たちは義憤に駆られ、あるいは犠牲になった家族・友人・仲間の復讐を誓い、銃を手にして銃弾が飛び交う戦場へ出て行きます。
それは命を懸けた決断ですが、一種の高揚感もあります。
しかし、後に残された女性や子供たちは、毎日の暮らしをどうすればいいのかという真綿で首を絞めるような問題に直面します。
【将来的な安定を確保するために重要な“教育”】
また、前出【9月24日 ナショナルジオグラフィック】にあるように、混乱の中に捨て置かれ、教育の機会もない子供たちのなかから、数年後、現状を全面的に否定する過激な行動に走る者がうまれてくることは容易に想像できます。
国内外の難民の生活の安定、教育の機会の提供は、現在の人間らしい暮らしを守るうえでも、将来的な安定を確保するうえでも重要です。
****シリア難民の子ども40万人に教育を、マララさんが国連で呼び掛け****
シリア内戦を逃れて国外に避難した約40万人の子どもに教育の機会を与えようと、パキスタンでタリバン勢力に銃撃されて頭部に重傷を負ったマララ・ユスフザイさん(16)らが23日、国連総会で米ニューヨークを訪れた各国首脳らに総額1億7500万ドル(約170億円)の支援金を呼び掛けた。
女性が教育を受ける権利を訴えたマララさんは昨年10月、その権利を否定するタリバン勢力に銃撃されたが、その後、英バーミンガムの病院で治療を受けて回復した。
マララさんと国連教育特使のブラウン前英首相は、プロジェクトの立ち上げに当たり、支援団体から100万ドルの寄付金を受け取った。
国連児童基金(ユニセフ)によると、教育が必要なシリア難民の子どもはレバノンだけで25万7000人に上り、来年には40万人に増える見込み。
ブラウン前首相はこの日、シリア難民の教師が子ども40万人の教育に当たるという英シンクタンクによる計画を発表。レバノンに施設を作り、給食も提供するという。【9月24日 ロイター】
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安倍首相も27日の国連演説で、シリア難民対策などで6千万ドル(約60億円)の追加支援を柱とする人道支援策を表明するそうです。
****シリア難民支援60億円 首相、国連総会で表明へ*****
安倍晋三首相が27日(現地時間26日)に米ニューヨークで行う国連総会での一般討論演説の概要が22日、分かった。シリア問題では、難民対策などで6千万ドル(約60億円)の追加支援を柱とする人道支援策や化学兵器廃棄に向けた技術支援策を表明する。
首相は、演説の半分以上を「女性と人権」のテーマに割く一方、昨年の総会で激論が交わされた対中国・韓国の懸案にはほとんど触れず、「法の支配」の重要性のみを訴える予定だ。
日本はシリア支援をめぐり、6月の主要国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)で、難民支援策として1千万ドルの緊急無償資金協力を表明。これまでの支援総額は約9500万ドルに達している。
しかし、8月にシリアで化学兵器が使用された後、難民が激増。今月には200万人を超えたとの指摘もある。
日本は難民キャンプの食糧や医薬品など支援策をさらに拡充することで、積極的に人道支援に関与する姿勢を打ち出す考えだ。
また首相は演説で、シリアの化学兵器を国際管理下に置き、2014年半ばまでに廃棄するという米露合意を支持し、支援する意向を表明する。
日本は中国国内に旧日本軍が遺棄したとされる化学兵器を処理する技術と設備を有しており、このノウハウをシリアで活用する考えを示す。(後略)【9月23日 産経】
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国連UNHCR協会 シリア特別支援
https://www.japanforunhcr.org/syria/action.html
ユニセフ シリア緊急募金
http://www.unicef.or.jp/kinkyu/syria/?utm_source=googlea&utm_medium=cpc&utm_campaign=syria