孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港  “おしっこ騒動”の背景にある本土との溝 今後香港はどうなるのか?

2014-04-26 21:26:55 | 東アジア

(“おしっこ騒動”のトラブル現場写真 背中を見せている子供を抱いた男女が問題となった中国人観光客 【4月23日 Record China】)

脅かされる「言論の自由」】
香港における「一国二制度の形骸化が急速に進み、香港が“中国化”してきた」(香港紙記者)という状況については、3月8日ブログ“香港 「一国二制度」の幻想」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140308で取り上げたところです。

特に、「言論の自由」における制約・圧力が強まっています。

****香港「言論の自由」に危機感 記者の解雇・襲撃相次ぐ****
 ■「一国二制度」きしみ象徴
香港で、1997年の中国返還後も保障されていた「言論の自由」をめぐる危機感が強まっている。

中国や香港の政府に批判的な香港メディアの記者らが解雇されたり暴漢に襲われたりする事件が相次ぎ、反発した香港記者協会は先月まで2回にわたり、「言論の自由」を訴えてデモを行った。

事件に政府側が関与した証拠はないが、香港終審法院の李国能・前首席法官(最高裁長官に相当)は先月、「言論の自由への懸念」を表明するなど、事件の背後関係への疑念をにじませた。

香港では今年に入り、民主派寄りテレビ局の新規免許申請を拒否した政府を批判した有力紙、明報の劉進図氏が1月、編集長の職を追われた上、2月に2人組に刺されて重傷を負った。

また、民放の商業ラジオに出演していた民主派ジャーナリストの李慧玲氏が2月に突然解雇された。李氏は「香港政府が解雇するよう圧力をかけた」と主張している。

英国から中国に主権が移った後も、言論の自由を含む高度な自治による民主主義社会が保障されていた香港。だが、今年7月で返還から17年となる中で、「一国二制度の形骸化が急速に進み、香港が“中国化”してきた」(香港紙記者)という指摘がある。

香港政府は「干渉はあり得ない」と否定するが、テレビ局への免許発給拒否をめぐっては昨年10月、2万人以上が参加したデモが起きるなど、政府批判は強まっている。

民主派寄りの香港メディアは、香港政府トップを選ぶ行政長官選で、中国政府寄りの人物だけが候補者として間接的に選ばれる現行制度を批判。2017年の次期選挙から普通選挙に移行するよう論陣を張っている。

中国共産党を美化した教科書の使用や中国国旗の掲揚を求める「愛国教育」への反発も強まっている。
香港記者協会は3日、産経新聞の取材に、「今後は香港の中学校で『言論の自由』を生徒に教える講座を拡大する」と強調し、「愛国教育」に対抗して民主主義社会の価値を教育する活動も行っていく方針を明らかにした。【4月6日 産経】
*****************

【“そもそも社会主義と資本主義制度のもとで育った人間の考え方は根本的に違う”】
また、中国との人・カネの繋がりが強まるにつれて、粉ミルク買占め問題、家賃などの不動産上昇といった市民生活を圧迫する問題も出てきています。
本土から主産のために香港へやってくる妊婦も多く、市民のための病院サービスが低下するという問題もおきています。

更に、本土からの旅行客の増大につれて、マナーの悪さ、“「成り金」たちの「洗練されていない」社会的習慣”といった文化的軋轢も強まっています。

こうした“本土の中国人への「否定的な」感情”を背景に、様々なところで問題が噴出します。
以前は、電車内での飲食が騒動なったことがありますが、今回は子供のおしっこです。

****2歳男児のおしっこが発端 中国と香港のユーザーが激突****
4月下旬、2歳の中国人男児が香港の街頭でおしっこをしたことをきっかけに中国人と香港人の衝突事件が発生、インターネットで大きな波紋を広げた。

香港人は「中国人のマナーが悪い」と批判し、中国人は「香港人は小さなことで騒ぎすぎ」などと反論し、双方の感情的な対立まで発展した。

中国メディアの報道によると、4月21日、観光目的で香港を訪れた中国人夫婦が、市中心部の街頭で、2歳の男児を抱えておしっこをさせていたところ、通りかかった香港市民の男女に注意されたうえ、その様子を撮影された。

夫婦が激高し、父親はカメラとメモリーカードを奪いとり、母親は注意した香港市民の足にベビーカーをぶつけるなど暴れだした。その後、警察が駆けつけ、父親は釈放されたものの母親は暴行の容疑で一時拘束された。

夫婦の主張によると、子供が「おしっこしたい」と言い出し慌ててトイレに連れて行ったが、長蛇の列だった。子供が尿意をがまんできなくなり仕方なく街中でおしっこをさせたが、母親がわざわざ紙おむつで受け止めており、地面を濡らしていないという。

騒動の一部始終を撮影した映像がインターネットに出回ったことで、中国と香港で物議を醸した。
中国と香港の各ポータルサイトには十万件以上の書き込みが寄せられた。

些細なことから大騒ぎとなった背景には、近年、中国人の観光客が香港へ大量流入したことに伴い、街の秩序が乱れ、香港市民の生活に影響が及んだことがある。

一方、中国人たちは、「中国の観光客によって香港経済が潤い、私たちのおかげで香港人が良い生活を続けられている」と思い込んでいる。

中国国内のネットユーザーには夫婦を支持する声が圧倒的に多い。「香港にトイレが少ないことが原因だ」「香港人のわれわれに対する偏見が根底にある」といった意見が多かった。

特に香港市民が無断で子供がおしっこしている姿を撮影したことに対する不満が大きく、「香港人こそマナーが悪い」といった意見もある。

一方で、香港のインターネットでは夫婦を批判する書き込みがほとんどを占める。
「中国人が増えてから香港が住みにくい街になった」「中国人は香港から出て行け」といった過激な意見も多かった。

香港人にとって最もショックだったのが、当事者の中国人夫婦も、中国の一般ユーザーも、子供に街頭でおしっこをさせたことを当たり前と思っており、カメラを奪ったなどの違法行為に対しても全く反省していないことだ。

ある香港人記者は「今回の事件は今の中国と香港の関係を象徴する出来事だ。1997年の香港返還以降、一国二制度が採用されたが、そもそも社会主義と資本主義制度のもとで育った人間の考え方は根本的に違う。今後、香港を訪れる中国人の観光客の増加にともない、こうしたトラブルはますます増えるだろう」と話している。【4月26日 産経】
*********************

“当事者の中国人夫婦も、中国の一般ユーザーも、子供に街頭でおしっこをさせたことを当たり前と思っており”という表現はどうでしょうか?
当事者も中国ネットユーザーも「子供の話であり、仕方がないじゃないか」と言っているだけではないでしょうか。

香港側の反応にはやや過剰なところはありますが、互いの言い分はともかく、日本でもありそうなささいな出来事が大きな騒動に拡大する背景にある不満・鬱屈・不信感・・・そういう両者の溝が問題なのでしょう。

中国は何回か旅行していますが、23年前、シルクロードを汽車で旅行した際、満員で車内に入ることもできず、車両を連結するデッキ部分で十数時間すごしたことがあります。

トイレからは汚水があふれてくる、子供を連れた母親が目の前でデッキの隙間からおしっこをさせる・・・大変な旅でした。

それを思うと、“母親がわざわざ紙おむつで受け止めており、地面を濡らしていない”というのは驚異的な変化であり、にわかには信じ難いほどです。(行為中の写真で見ると確かにオムツのようなもので受けています)

なんだかんだ言われつつも、中国の人の意識も変わってきているのだろうか・・・と、問題の本筋とは関係のないところで感心してしまいました。

1997年に返還された香港は、返還後50年間は一定の自治権の付与と本土(中国大陸)と異なる行政・法律・経済制度の維持が認められていますが、そのあとは中国側としては本土制度へ一体化していくつもりなのでしょう。

「今後、香港を訪れる中国人の観光客の増加にともない、こうしたトラブルはますます増えるだろう」というのは仕方ないにしても、本土側が一体化を迫るときまでにこうした意識の溝が埋められるのか?香港は共産党一党支配を受け入れるのか?というのは深刻な問題です。

本土側が香港的な民主化を受け入れル形に変化していく・・・というのも、今後10年後、20年後に中国共産党を揺るがす政治的大変動が起きればありえますが、現在のところはなかなか想像しがたいところです。

少なくとも現在は、本土でタブーとなっている天安門事件についても香港では批判することもできます。

****六四記念館、香港で開設=中国・天安門事件25年****
中国民主化運動が武力弾圧された天安門事件(1989年6月4日)25年を前に、香港で26日、事件の犠牲者を追悼する「六四記念館」がオープンした。

記念館は民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」(支連会)が九竜地区の繁華街にある雑居ビル内に開設した。

支連会の李卓人主席は「25年間準備してきた記念館の開設は、われわれが(中国本土の)民主化と天安門事件の評価見直しを主張する立場を堅持していることを示す」と強調。「記念館を通じて、89年の民主化運動の精神を継承していきたい」と述べた。【4月26日 時事】
***************

いつまでこういう共産党批判が許されるのか・・・心配です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする