(米イリノイ州シカゴで、氷点下29度の中、ミシガン湖の湖畔を歩く人(2019年1月30日撮影)【1月31日 AFP】 近未来SF映画の一場面のような光景です。)
【米中西部 南極より寒い大寒波】
週明けには立春、冬の寒さも底を打ち、次第に春の足音も・・・というところですが、アメリカ中西部は“南極の寒さを上回る”記録的寒波に襲われています。
****米に寒波、氷点下41度 中西部、南極より低温****
米中西部は30日、記録的な寒波に襲われ、ミネソタ州パークラピッズで氷点下41度に達するなど各地で数十年ぶりの寒さを記録した。南極点近くのアムンゼン・スコット基地(氷点下31.7度)の気温を下回った場所も多く、強風により複数の地点で体感温度が氷点下50度前後に達した。一部の州は非常事態を宣言した。
寒さは31日以降も続きそうで、CNNテレビは31日のイリノイ州シカゴは「アラスカや南極より寒くなる」と警告した。(後略)【1月31日 共同】
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****気温は南極以下… 米中西部、大寒波で数千万人に影響****
大寒波に見舞われた米中西部では30日、シカゴなどの一部地域で気温が南極大陸以下にまで下がり、多数の航空便が欠航となったほか、休校や臨時閉店が相次いだ。当局や専門家は、数分で凍傷や低体温症につながるとして警戒を呼び掛けている。(中略)
米国の数千万人が影響を受けた今回の寒波は、通常は北極を覆っている極渦から分離した大気の渦によって引き起こされた。米メディアによると、先週末の気温低下と暴風雪、そして現在の寒波により、これまでに少なくとも5人が死亡した。
シカゴでは30日午前に氷点下30度を記録。風速冷却による体感温度は氷点下46度となった。これはアラスカ州の州都よりも寒く、さらには南極大陸の一部よりも低い気温となる。シカゴの主要2空港では1800便以上が欠航となり、全米鉄道旅客公社「アムトラック」は市内からの列車運行を中止した。
天候にかかわらず郵便を届けることで有名な米国郵便公社も、インディアナ、ミシガン、イリノイ、オハイオ、アイオワ、ノースダコタ、サウスダコタ、ネブラスカの各州の一部地域で配達業務を中止した。
ノースダコタ州グランドフォークスでは気温が氷点下37度、体感温度は氷点下52度まで低下。ミネソタ州ミネアポリスでは氷点下32度を記録した。 【1月31日 AFP】
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この記録的な寒波で、寒さが関係したとみられる死者(凍死のほか交通事故死も含まれる)は1月27日から31日までで少なくとも20人に達したとか。“各地の病院には凍傷や低体温症の患者が続々と運び込まれた。”【2月1日 共同】とも。
【警察「外出して犯罪を犯すのだけはやめてくれ」】
凍死者を出す半端ない寒さですが、そんな中でも、警察によるちょっとしたユーモアも。
****大寒波到来の米中西部、警察が犯罪を「禁止」に****
アメリカ中西部全域を氷点下を大幅に下回る記録的な大寒波が襲い、中西部各地の警察は相次いで、犯罪を「禁止」し「無効」にすると発表している。
中西部の一部の地域では今週、気温と体感温度予報が氷点下40度にもなりかねず、「命を脅かす」ほどの低温になるとされ、警察署や郡保安官事務所は「犯罪の休止」を宣言した。
インディアナ州ノーブルズビルとイリノイ州ウェストチェスターの警察はネットで、不法行為をはたらくより「家で読書でもするか、ネットフリックスを見ているように」と呼び掛けたのだ。
ウェストチェスター警察署は1月26日、同署のフェイスブックページにこう書いた。「猛烈な寒さと風のため、わが警察署は、あらゆる軽犯罪および重犯罪活動を無効とする」。「犯罪者諸君、どうか気づいてほしい。いまは犯罪を犯すには寒すぎる。読書をしてもネットフリックスを見てもいい。FBIの銀行強盗犯情報サイトへ行って、容疑者逮捕に協力するのでも構わないが、外出して犯罪を犯すのだけはやめてくれ」
こんな寒さのなかで犯罪者の相手などしたくない、という切実な気持ちがよく表れている。
ノーブルズビルの警察署は、犯罪禁止に違反したら最悪禁固刑を科すという。「(犯罪禁止の通達に)違反した場合は、罰金または禁固刑が科せられる可能性があるから覚悟せよ、とフェイスブックに投稿した。
凍傷になるぞ、という脅しも
「脅迫」に出た警察署もある。凍傷の写真を掲載したのだ。「風が身体にあたると身体の熱が奪われてより冷える。気温が低下し風速が上がると、体感温度はさらに下がる。今のような寒波のもとでは、実際に負傷したり死亡したりする危険も大きくなる。摂氏マイナス29度なら、皮膚が凍って凍傷になるまでに30分もかからない」と同署は書く。
各地の法執行当局によるこうした冗談まじりの警告は効いているのか。シカゴ発の複数の報道によれば、同市の何カ所かで、銃で脅して防寒着を盗む事件が起きているという。【1月30日 Newsweek】
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日本だったら“不謹慎”との批判も出るでしょうが、そのあたりがアメリカです。
【トランプ大統領「いったい、地球温暖化はどうなったんだ? 戻ってきてくれ、必要なんだ!」】
もうひとり、寒波到来に“はしゃいでいる”のが温暖化に否定的なトランプ大統領。こちらも日本なら「死者も出ているのに・・・」と首が飛ぶところですが、「まあ、トランプだから」で問題にもされないのがトランプ大統領の“強み”です。
****米大寒波と気候変動の関係は 温暖化はどうなったのか***
アメリカの3分の1が大寒波に見舞われている中、科学者たちは気候変動がどれくらいこの現象に影響を及ぼしているのかを調べている。
いったい地球温暖化はどうなったのか。
それこそ、ドナルド・トランプ米大統領が数日前のツイートで知りたがっていたことだ。
トランプ氏は1月29日、ツイッターに「美しいアメリカ中西部の体感気温がマイナス60度にもなって、史上最低を記録した。これから数日でさらに寒くなるようだ。人間は数分も外にいられない。いったい、地球温暖化はどうなったんだ? 戻ってきてくれ、必要なんだ!」と書き込んだ。(後略)【2月1日 BBC】
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もちろん、そのときどきの「天候」と、長期的な「気候」は別物であり、温暖化の進行中に大寒波があっても何ら不思議ではありません。
また、こうした異常な「天候」が起きる背景に気候変動が関係しているのでは・・・との疑問もありますが、今回の大寒波と気候変動の関連については検証中ということで“可能性も否定はされていない”ところのようです。
寒気を北極上空に閉じ込めているジェット気流の変化が寒波をもたらしており、なぜこのジェット気流が変化するのかが問題になります。
****米国を襲った大寒波、気候変動との関連は?****
20年来の寒さに見舞われ、各地で気温が氷点下20度以下まで下がっている米国。北極のような寒さをもたらした大寒波は、気候変動と関係があるのだろうか?
専門家らは、その可能性を否定していない。ただ、今回の大寒波における地球温暖化の関与をめぐっては、議論の余地があるとも指摘している。
■極渦とは何か
AFPの取材に応じたマイアミ大学ローゼンスティール海洋大気科学部のベン・カートマン教授(大気科学)は、「極渦とは北極を覆っている大量の冷たい空気の渦で、普段はジェット気流によって北極上空にとどまっている」と説明する。
通常、この冷気は強い空気の流れであるジェット気流によって北極に閉じ込めているが、ジェット気流がうねったり弱まったりすると北極の外に流れ出る。
「極渦は蛇行することがある。今回の大寒波がまさにそうだ。うねる幅が大きくなると冷気が遠く離れた南方まで到達する」とカートマン氏は話す。(中略)
■なぜジェット気流は蛇行するのか?
ジェット気流の強さは、熱帯と南極・北極の気温差に結びついており、気温差が開くほどジェット気流は強まる。理論上は、北極の冷気は北極にとどまっている可能性が高い。
だが、ジェット気流が強くなり過ぎると不安定になることもあるという。これについてカートマン氏は、「不安定になるとジェット気流がうねり、蛇行が始まる」と説明した。
南極・北極が温暖化の影響を受けると、熱帯との気温差が狭まり、ジェット気流がうねって冷気が北極から流れ出すという指摘もある。北極については、それ以外の地域に比べ、気温上昇が倍のペースで進んでいることが知られている。
■今回の大寒波は気候変動が理由なのか?
カートマン氏はこう説明する。「ジェット気流が弱まると、極渦は勢力を強め、さらに南下するのかとの疑問が浮かんでくる。これが正しければ、極端な寒波は気候変動と結びついていると言える」
そして、この仮説を検討するため、研究者らがまだデータを調べている最中であることに触れながら、「気候変動との結びつきをほのめかすものもあるが、まだ判断は下されていないことを強調したい」と続けた。
科学者らはこれまで、気候変動が特定の異常気象に果たす役割を解明してきた。今のところ、豪雨、干ばつ、熱波、山火事は気候変動と明確な関連があることが判明している。だが、突然の寒波については、関連性は依然として不明だ。 【1月31日 AFP】
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【底堅いトランプ支持 再選も濃厚?】
大寒波はともかく、暴言・失言・不謹慎な発言、嘘八百・・・なんでも「トランプだから」ですまされてしまうトランプ大統領については、そうした状況を意図的に作り上げたとしたら、なんとも恐るべき狡猾さです。
そのトランプ大統領を支える岩盤支持層および共和党内部については、先の政府機関閉庁騒動で揺らぎが出ているとの指摘はありました。
****トランプ大統領、一般教書演説を断念へ 政府閉鎖が影響****
(中略)長期化する政府閉鎖の影響で、トランプ氏の支持率は下落している。米CBSが23日に発表した世論調査では、トランプ氏を「支持する」と回答したのは36%、「支持しない」は59%で最悪となった。
国境の壁建設は、政府機関が閉鎖に追い込まれても実現するに値する政策と思うか、との問いに対し、「政府閉鎖に値する」はわずか28%で、「値しない」は71%にのぼった。
トランプ氏が今すぐやるべきことは、「壁建設費のない予算を受け入れ、政府を再開させる」が66%で、「政府閉鎖が続いてでも、壁建設費のない予算を拒否する」の31%を大きく上回った。
政府閉鎖は、トランプ氏の支持を押し下げている実態が改めて浮き彫りになった。【1月24日 朝日】
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****トランプ氏、壁建設巡り苦境 共和党内からも疑問噴出****
トランプ米大統領は27日、自身が公約に掲げるメキシコ国境の壁建設を目指す考えを重ねて表明し、建設費用捻出のための国家非常事態の宣言や、連邦政府機関の再閉鎖も辞さない姿勢を示した。
だがトランプ氏の手法には足元の共和党からも疑問の声が噴出、同氏は苦境に立たされている。
政府閉鎖が長期化したことで、共和党議員の反発も招いている。コリンズ上院議員は同日のテレビ番組で「閉鎖で達成したことは全くない」と断言。政府職員が一時帰休や無給勤務を強いられたことを挙げ「目標がどれほど重要であっても、使われるべき手段でない」と述べた。【1月28日 共同】
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しかし最新世論調査では、トランプ大統領支持率は40%を維持しており、“底堅さ”があるようです。
****トランプ大統領支持率 40%前後 底堅さ維持****
アメリカのトランプ大統領の支持率は、29日時点で41.5%となっていて、歴代大統領と比べて低い水準ながらも、4年の任期の折り返し点である現在も40%前後を維持しています。
アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと各種世論調査のトランプ大統領の支持率の平均値は、メキシコとの国境沿いの壁の建設費をめぐって野党・民主党と対立して新たな予算が成立せず、政府機関の一部閉鎖が続くなか、今月初めからは低落傾向を見せ、逆に不支持率は上昇しました。
一方で、去年3月上旬以降は40%を割り込むことはなく、底堅さを維持しています。
ただ、政府機関の閉鎖が続いていた今月21日から24日にかけてワシントン・ポストとABCテレビが行った世論調査では、トランプ大統領の支持率は37%と、この2年で最低水準に落ち込みました。
また、政府機関の一部閉鎖について「主に誰に責任があるか」を尋ねたところ、半数以上にあたる53%がトランプ大統領と共和党、34%がペロシ下院議長と民主党と答えました。
さらにメキシコとの国境沿いの「壁の建設」については、全体の半数以上にあたる54%が反対、42%が賛成と答えました。
ただ、共和党支持層のあいだでは83%が「賛成」、15%が「反対」と答えた一方、民主党支持層では14%が「賛成」83%が「反対」としていて、支持政党によって賛否が明確に分かれていることがわかります。【1月30日 NHK】
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****トランプの底力、なお恐るべし、一般教書延期、民主党に返り血****
本来なら本1月29日に行われるはずだった。米大統領の一般教書演説。政府機関の閉鎖(シャットダウン)の余波で来月までもちこされた。
メキシコ国境への〝壁〟建設をめぐる大統領と民主党の対立から、民主党が演説の延期を大統領に通告した。役所の閉鎖はとりあえず解除され、大統領演説も来月5日に行われることが決まったが、双方からは根本的に矛を収めようという気配は感じられない。
〝ロシア・ゲート〟疑惑とも相まって、大統領にとっては決して楽な政権運営とはいえないが、一部世論調査では支持率に何ら変化はみられず、シャットダウン前と同じ水準をたもっているという。混乱の影響などどこ吹く風といった体というからびっくりする。
取りざたされている弾劾など実際は現実味に乏しいとみられ、次期大統領選で再選濃厚との見方すらなされはじめている。トランプの底力、まさに恐るべしだ。(中略)
大統領支持率には影響なし
壁の建設は移民排斥、人種偏見にもつながりかねない政策だけに、一連の混乱をめぐっては大統領の非を鳴らす声が高まると予想された。
事実その通りになり、1月27日にNBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナルが行った世論調査によると、政府機関閉鎖による混乱そのものの責任は大統領の政治姿勢にあるとする人は50%にのぼり、下院民主党に責任ありという人は37%にとどまった。APなどの調査では、大統領の支持率が34%、不支持は65%にのぼった。
ところがだ。NBCの調査で、大統領の支持率を聞いたところ、43%にのぼり、不支持率は54%。43%という数字は高い支持率ではもちろんないが、政府機関閉鎖前の昨年12月と同じ水準、大統領就任後の平均支持率35%ー45%に比べて遜色がないことに驚く。
シャットダウンの責任があるとみていながら、それでもなおトランプ氏を支持する人が多いことを示している。
APの調査にしても、経済を取ってみると、支持は44%と10ポイントも跳ね上がり、支持せずーは55%に低下する。共和党支持者の間の評価はいぜん圧倒的で、80%台後半から90%にものぼる。
トランプ氏の支持基盤が〝低空飛行〟とはいえ、きわめて強固であることが、当初「一般教書演説ではなく文書を出してくれてもいい」と強硬姿勢を見せていたペローシ議長に妥協の道を選ばせた理由の1つかもしれない。(中略)
一般教書演説は毎年、夜のゴールデンアワー(東部時間午後9時、日本時間翌朝午前11時)から放映される。国会論戦を通じて首相の発言に触れる機会に恵まれている日本とちがって、大統領の言葉を直接聞くことの少ない米国民が関心を持っている政治的イベントだ。それを政争に利用したとなれば。かえって民主党がしっぺ返しを食うことになりかねない。【2月1日 WEDGE】
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国民の最大の関心事である経済は好調を維持しています。
外交面でみると、撤退をあきらかにしているシリアやアフガニスタン、非核化を求める北朝鮮などに関する今後の動向は不透明ですが、もともとアメリカ国民はそんな遠い世界のことなど大した関心をもっていません。
それよりは、中国との交渉で強い姿勢を見せて譲歩を引き出し、INF全廃条約撤廃でロシアにも対抗し、ついでに南米という身近にありながらアメリカにたてついてきたベネズエラ・マドゥロ政権を引きずり倒すことができれば、その実態がどういうもので、今後にどういう影響があるかは別にして、アメリカ国民は留飲を下げて、トランプ支持率も上昇という局面も想像されます。
“米国の選挙専門家の中にも、前回の大統領選、昨年の中間選挙の結果の分析などから、トランプ大統領はジョージア、ノースカロライナ、テネシーなどの州で勝利が濃厚で、すでに総選挙人538人の過半数270人にあと100超にまで迫っていると分析する向きもある。”【同上】ということで、再選の可能性も濃厚とか。
大寒波はいずれ去りますが、「ドナルド・トランプが大統領になることを神が希望した」(サンダース大統領報道官)とのことで、世界を凍えさせる大統領は8年間居座るということにも。めまいがしそうです。