(世界最大級のICT見本市CeBITに出展したファーウェイ(2017年3月)【2月22日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】)
【ファーウェイ創業者「米国は決してわれわれをつぶすことはできない」】
アメリカ・トランプ政権が、台頭する中国に対抗して今後とも世界覇権を維持すべく、今後の安全保障に大きく影響する次世代通信規格5Gから中国通信機器大手ファーウェイを締め出そうと(創業者の娘をイラン制裁違反で逮捕するなど)“狙い撃ち”していることは周知のところです。
(参考 2月13日ブログ“ファーウェイ・5G通信網をめぐる米中の争い つまるところ情報泥棒同士の争い”)
ファーウェイは、これもしばしば報道されているように、実質的に国家・党の支配下にある有力企業が多い中国にあっては、比較的そうした国家権力とは距離を置いて技術力で今の地位を築いた異色の企業でもあります。(その過程で、アメリカの知的財産権の侵害があったかどうかは別にして)
国家の後ろ盾が弱い民間企業ファーウェイが、世界最強国家アメリカの狙い撃ちにあえば、その存続はたちどころに危うくなる・・・・と、素人的には考えるのですが、創業者である任氏は強気の姿勢です。
****ファーウェイ創業者「世界はわが社を手放せない」、米国の動きに反発****
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の創業者である任正非最高経営責任者(74)が英BBCのインタビューに応じ、自社について「われわれはさらに進んでおり、世界はわが社を手放すことはできない」と語った。
また、「米国は決してわれわれをつぶすことはできない」とも述べ、米国を中心とするファーウェイ排除の動きに強く反発した。
任氏は、昨年12月に娘で同社最高財務責任者の孟晩舟氏が対イラン制裁に違反した容疑で逮捕されたことについて、「政治的動機」によるものだと非難。逮捕には反対の姿勢を示したものの、「ここまで来たからには法廷に解決を委ねる」と述べるにとどめた。
さらに情報スパイに対する懸念の高まりや、米国を中心とするファーウェイ排除の動きといった圧力については気にも留めない様子を見せ、「西で光が消えても、東は輝き続けるだろう」「米国は世界の代表ではない」と反論。
また、「われわれの製品を一時的に使用しないよう各国を説得したとしても、わが社はいつでも事業を縮小することができる」と強調した。 【2月19日 AFP】
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実際ファーウェイの技術は世界最先端をいくもので(だからこそ、アメリカが排除に躍起になっているのでしょう)、2月13日ブログでも触れたように、“華為製品がすでに普及した状況では、排除が難しいとの見方も根強い。米メディアは、華為製品を使えなければ、5G整備が「少なくとも2年」遅れるとする独通信大手の内部文書の内容を報じた。”【2月10日 産経】ということで、アメリカからファーウェイ排除を迫られている欧州にはためらいが見られます。
ファーウェイ製品には「バックドア」が設定されており、情報が盗まれる云々については、当然、ファーウェイも中国当局も否定しています。
****米のファーウェイ排除に反論=「バックドア求めず」―中国****
中国の外交を統括する楊潔※(※竹カンムリに褫のツクリ)共産党政治局員は16日、ドイツで開かれた「ミュンヘン安全保障会議」で質問に答え、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の製品を排除する動きに対し、「企業に『バックドア(裏口)』を仕組んだり情報を集めたりするよう求める法律は中国にはない」と強調した。中国国営新華社通信が17日伝えた。【2月17日 時事】
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実際のところはわかりませんが、情報を盗む云々ということであれば、中国だけでなく、アメリカ自身が最大の情報監視国であることは2月13日ブログでも取り上げたところです。
アメリカ世論も、ファーウェイ排除は安全上の配慮というより、米中の覇権争いという政治的なものという見方をしているようです。
****ファーウェイに圧力、米国人の6割超が選んだのは「安全性」ではなく…****
観察者網は21日、米テレビ局が実施した米国政府による中国通信大手ファーウェイ(華為技術)への圧力に関する世論調査で興味深い結果が出たと伝えた。
記事によると、米CNNはこのほど「あなたは米国がファーウェイに圧力をかける背後にある原因は何だと思いますか」という世論調査を実施し、その結果を19日にツイッター上で発表した。
それによると、「政治的な原因」が61%と最も多く、「安全上の考慮」は24%、「商業的な要因」は13%にとどまった。(後略)【2月22日 レコードチャイナ】
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なお、同記事によれば、“同番組のコメンテーターは、かつて米国政府がWindowsシステムにバックドアを取り付けたという事例を挙げて「米国のデバイスにもリスクはある」と指摘したという”とのこと。
また、商業的な要因の得票率が低いのは、ファーウェイに代わり得る米国企業が存在しないためとも。
【イギリスはファーウェイ容認か? 崩れる「ファイブ・アイズ」】
このような状況で、アメリカ主導のファーウェイ包囲網の一角とみられていたイギリスが、ファーウェイ容認の姿勢を打ち出して注目されています。
****5G華為リスク、英「制御できる」 米との連携影響も****
中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が英国の次世代通信規格「5G」通信網に参入することに関し、華為の製品を使うことによるリスクは制御できると英情報当局が結論づけたと、複数の英メディアが17日に報じた。
米国は、情報漏れなどのリスクから、5Gに華為製品を使わないように同盟国に求めているとされる。米国と諜報(ちょうほう)機関の情報を提供しあう「ファイブ・アイズ」のメンバーでもある英国が利用を認めれば、連携に影響を及ぼす可能性もある。
英政府通信本部傘下の国立サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、5G通信網のリスク管理のあり方などを見直す作業を進めている。
英紙フィナンシャル・タイムズは関係者の話として、NCSCは、華為製品のリスクを抑える方法があると結論づけたと報じている。
米国やオーストラリアは5Gから華為製品を事実上締め出す方針を打ち出しているが、英国ではリスク軽減措置などを取れば、5Gでの華為製品の利用を認める可能性がある。【2月19日 朝日】
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「ファイブ・アイズ」については、以下のようにも。
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ファイブ・アイズとは、「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド」の5ヵ国が加盟する諜報協定の通称で、各加盟国の諜報機関が傍受した盗聴内容や盗聴設備などを共有するために第二次世界大戦中に締結された。
ドイツの通信暗号エニグマを解読するのが初期の目的だった。第二次世界大戦は終結したのだから、今さらファイブ・アイズもないだろうとは思うが、それとなく緩い関係で今でも「同盟国」として幻のようなネットワークを構成している。 【2月22日 遠藤誉氏 YAHOO!ニュース】
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この「ファイブ・アイズ」グループのコンピューターネットワークが「エシュロン」と呼ばれている世界最大の情報監視組織である。
情報の盗み取りは自分たちがこれまでさんざんやってきたことですから、蛇の道は蛇で“華為製品のリスクを抑える方法がある”ということでしょうか。
****英国はファーウェイ排除に不参加か EU離脱と中国の揺さぶり影響?****
ファーウェイのリスクは緩和可能
[ロンドン発]中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5G参入を巡り、アングロサクソンのスパイ同盟「ファイブアイズ」構成国である米国やオーストラリア、ニュージーランドが次々と排除の方針を打ち出す中、英国は隊列に加わらない可能性が出てきました。(中略)
GCHQ(英政府通信本部)のロバート・ハンニンガン前長官はフィナンシャル・タイムズ紙に12日付で「ファーウェイの5G設備を全面的に排除するか否かという議論はサイバーセキュリティーの技術と5G設計の複雑さへの理解を欠いている」と指摘し、次のように断言しました。
「中国のテクノロジー会社に対し拡大するヒステリーが分かりにくくしている点は、NCSCはこれまでファーウェイを通じて中国が国家として実行したサイバー攻撃に関係する証拠を何一つ見つけていないことだ。国家関与のサイバー攻撃は中国企業を経ずに行われている」 (中略)
英国が米国のファーウェイ締め出しと一線を画したことでドイツなど欧州の主要国が英国に追従する可能性があります。
対中警戒を強める米国
今回の報道が本当なら米国のドナルド・トランプ大統領を激怒させるでしょう。
シギント(電子情報の収集)を担当する米安全保障局(NSA)はファーウェイ設備のリスクを証明するためファイブアイズ構成国や同盟国、友好国と情報を共有してきました。
これを受け、ファイブアイズに加盟するカナダ政府は昨年12月、ファーウェイの孟晩舟最高財務責任者(CFO)兼副会長を逮捕しました。米国政府は、イランとの違法な金融取引に関わったとしてファーウェイと孟氏を起訴し、身柄の引き渡しを正式に求めています。
マイク・ペンス米副大統領はポーランドで「通信セクターを中国から守れ」と呼びかけ、ミュンヘン安全保障会議でも「中国の法律は中国企業に対し、ネットワークや設備を通るいかなるデータにアクセスできる装置を提供するよう求めている」「我々は重要な通信インフラを守らなければならない」と訴えました。
ペンス米副大統領は昨年10月、ワシントンの保守系シンクタンク、ハドソン研究所で「トランプ政権の対中政策」と題して演説し、中国は陸・海・空・宇宙で米国の軍事的な優位を崩す能力を身につけることを最優先にしていると警鐘を鳴らしました。
この演説は、米ソ冷戦の始まりを告げた故ウィンストン・チャーチル英首相の「鉄のカーテン」演説を思い起こさせ、「米中冷戦」時代の到来を告げたととらえられました。
AIIB参加で米国を激怒させた英国
親中派ジョージ・オズボーン前財務相は「英中黄金時代」を掲げ、欧州では真っ先にアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明し、日米を激怒させたことがあります。2015年秋には中国の習近平国家主席が英国を公式訪問、大歓迎を受けました。(中略)
欧州は対中ソフトアプローチ
欧州連合(EU)から離脱する英国にとって中国は頼みの綱の一つです。日立製作所が英国における原発新設計画を凍結してから、新規原発を手掛ける仏電力公社EDFと中国広核集団(CGN)の存在感が増しています。(中略)
EUから離脱する上、中国にまでそっぽを向かれると、英国は立つ瀬がありません。(
スマート工場で協力する独中
米国からの圧力を受け、ドイツでもファーウェイへの懸念は強まっています。しかし「米国第一!」のトランプ大統領とは一線を画し、あくまで中国との公正な通商関係を築くことに主眼を置いています。
習主席の掲げる「中国製造2025」はドイツの第4次産業革命「インダストリー4.0」に倣った産業政策です。中国をはじめ新興国でインダストリー4.0を無人・自動化工場のスタンダードにするため、アンゲラ・メルケル独首相は中国と合同閣議を開き、積極的に対中協力を進めてきました。
しかし16年の中国美的集団による産業用ロボット世界大手、クーカ買収をきっかけに安全保障や技術流出への懸念が強まり、ドイツ政府もEU域外の企業による買収規制を強化しました。
独シンクタンク、MERICSによると、中国製造2025は非関税障壁や補助金を駆使して国内から外資系企業の駆逐を図っています。世界市場で中国系企業の競争力を向上させる狙いもあります。
その影響をまともに受けるのは韓国、そしてドイツ、アイルランド、ハンガリー、チェコ。次のグループが日本、スロバキア、スロベニア、オーストリア、ルーマニア、デンマークだそうです。 【2月18日 木村正人氏 YAHOO!ニュース】
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各国が“生き残り”をかけてしのぎを削っており、そうそうアメリカの思惑どおりにも動かなないということのようです。
なお、中国内部事情に詳しい遠藤誉氏は、今回イギリスの対応の背景には、イギリスに対する強い影響力を持つ華人大富豪・李嘉誠氏のファーウェイ応援があると指摘しています。
(2月22日 YAHOO!ニュース 「Huaweiめぐり英中接近か――背後には華人富豪・李嘉誠」)
【インドでも・・・】
アメリカのファーウェイ包囲網は、将来的世界最大市場インドでも崩れる可能性があるようです。
****ファーウェイ包囲網、米国の思わぬ誤算 ****
ネット経済が爆発的に伸びるインドではファーウェイの安さと技術力が必要とされている
中国の華為技術(ファーウェイ)を締め出すための包囲網を世界的に広げる米国が、意外な障害にぶつかっている。世界最大の民主主義国インドだ。
米国はインドに対し、通信網のアップグレードにファーウェイの機器を使えばサイバーセキュリティーに重大な脅威を及ぼすと警告している。
しかし複数の政府当局者や業界幹部によると、今のところインドの政策担当者や通信会社はほとんど耳を傾けていない。ファーウェイが提供する割安な価格や高い技術力はそうしたリスクを上回るとの主張が多いからだ。
インド携帯電話事業者協会のラジャン・マシューズ事務局長は「ここでは、米国の措置はどちらかというと外交政策の問題だと受け止められている」と述べた。
こうした懐疑的な見方は広範にわたっているため、ファーウェイによる次世代通信規格「5G」制覇を阻止しようとする米国の戦いで、インドが想定外の戦場と化しつつある。
アナリストらによると、米国は態度を決めていない国に対する中国の影響力を排除しようとしているが、その成否はインドが選ぶ方向で決まる可能性がある。
インドの5G展開はまだ初期段階だが、同国は急成長が見込まれる重要な市場だからだ。(後略)【2月22日 WSJ】
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インド政府高官は「ファーウェイは現在、5Gで最先端にいるため無視できない」とし、「全ての技術にはセキュリティーの懸念やぜい弱性があるのだから、ファーウェイのみを名指しするのは正しくない」と述べています。
【日本市場でもファーウェイのスマホが急拡大】
なお、ファーウェイは日本のスマホ市場でもシェアを急拡大しているようです。
****保守的な日本でファーウェイ製スマホがシェア急拡大、韓国サムスンを抜くのは時間の問題=中国メディア****
中国メディア・環球網は14日、日本におけるファーウェイのスマートフォンのシェアが、間もなくサムスンを抜きそうであるとする記事を掲載した。
記事は、ファーウェイのスマートフォンの販売台数が日増しに増えていると紹介。同社は昨年よりNTTドコモ、ソフトバンクとの提携による商品を発売しており、これまで主な販売チャネルだったSIMフリー機種以上に日本の消費者から認められるようになったとした。
そして、日本の調査・コンサル企業による昨年の日本国内のスマートフォン販売台数で、ファーウェイが198万1000台で5位に入ったことを伝えた。
1位は7年連続でアップルとなったものの、昨年に比べて1%減の1543万8000台に留まったほか、2位はシャープで同6.9%増の413万3000台、3位は前年比30.6%減と苦戦を強いられたソニー、4位が同8.1%増のサムスンだった。ファーウェイは昨年よりも販売台数が2.3倍になっている。
記事はまた、市場シェアで見るとファーウェイのシェアは6.4%だったのに対し、サムスンは6.7%となっており「これは、ファーウェイが日本市場でサムスンを超えるまで、ほんのあと一歩のところまで来ていることを意味する」と伝えた。
さらに、短期間でこれだけ日本市場で大きく販売台数を増やしたことについて「相対的に保守的かつ排外的とされる日本市場においてはとても得難いことだ」との見方を紹介した。(後略)【2月17日 Searchina】
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個人的な話ですが、私はつい先日、遅ればせながらようやくガラケーをスマホに切り替えましたが、機種はファーウェイの最新機種「Mate 20 Pro」です。
大幅に割り引きになると店で勧められたことと、カメラ機能が優れていることが理由ですが、情報が盗まれる云々については、別にファーウェイだろうが何だろうが、ネット接続したスマホを使用していれば“ダダ洩れ”状態でしょうから、今更・・・といったところです。
現代社会においてスマホ等の機器を使用する以上は、一定に覚悟のうえのことです。
位置情報取得を許可していますので、どこかの店で買い物などしていると、スマホに「○○でのお買い物はいかがでしたか?」とメッセージが入ります。
最初は監視されているようで気持ち悪い感じもありましたが、すぐに慣れてしまいました。