孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  ベトナム戦争参戦の残した傷跡 歴史に向き合うこと難しさ

2019-04-17 23:01:39 | 東アジア

(サッカー・ベトナム代表監督の朴恒緒。20179月に就任後、ベトナム国内で英雄となっている【124日 YAHOO!ニュース】)

 

【ベトナム戦争参戦の“落とし子” ライダイハン】

朴正煕政権下の韓国がアメリカに追随してベトナム戦争に参戦し、住民に対する多くの虐殺・暴行や女性への性的暴力に及んだことは周知のところで、その象徴的な存在が、下記の「ライダイハン」と呼ばれる韓国人兵士と現地ベトナム人女性の間に生まれた子供たち(今では50歳前後になっていますが)です。

 

今回、この種の問題を取り上げたのは、当時および現在の韓国の対応を非難するためではなく、人権などに対する意識が希薄な時代の戦争・支配といった環境下における自国の歴史に向き合うことの難しさをくみ取るためです。

 

韓国政府や現在の韓国内ネットのこの種の問題に対する反応に「身勝手さ」を感じるとすれば、韓国・中国との間に同種の歴史を有する自分たち日本の反応についても、同種のものが潜んでいないのか・・・ということの参考にするためです。

 

****ライダイハン****

ライダイハンとは、大韓民国(以下、韓国)がベトナム戦争に派兵した韓国人兵士と現地ベトナム人女性の間に生まれた子供、あるいはパリ協定による韓国軍の撤退と、その後のベトナム共和国(南ベトナム)政府の崩壊により取り残された子供のことである。

 

郷新聞によれば、ベトナム戦争が終わって残された子供は少なくとも3000人以上、23万人との推算もある。ベトナム人女性が韓国兵や会社員などと結婚し生まれた子どももいるとされるが、韓国兵による強姦によって生まれた子どもも多数存在し、国際問題となっている。(中略)

 

ライダイハンの正確な数は、諸説ありはっきりしない。1500人(朝日新聞199552日)、2千人(野村進)、500万人(産経新)、最小5千人・最大3万人(釜山日)、7千人、1万人以上(名越二荒之助など)などの説がある。

 

出産者数だけでもこの人数であり、実際の強姦の被害者数はこの数倍だと考えられる。

 

彼らの中には父親の記憶を持たず、朝鮮語を話せず、写真だけが唯一残された思い出という者がいる。韓国との混血児は名乗りでないとの主張もある。正確な調査が行われないまま、援助団体が支援を主張したため、数が膨れ上がったとの批判もある。

 

ライダイハンの原因

原因については韓国軍兵士による強姦、兵士や民間人が「『妻』と子供を捨てて無責任にも韓国に帰国したこと」とする現地婚、「ベトナム人には美人が多いので、女は皆、慰安婦にさせられた。」とする慰安婦(非管理売春)などと複数のことが言われている。

 

ただし、南ベトナム解放民族戦線が放送によって、韓国軍による拷問や虐殺事件、あるいは婦女子への暴行事件を連日報じていたことは事実であり、各地の韓国軍による虐殺、暴行事件の生存者の証言に共通する点としても婦女に対する強姦が挙げられている。

 

戦闘終了後の治安維持期に入って、ようやく韓国軍は表向きに兵士の行動を律したが、その後も猛虎師団青龍旅団白馬師団などの兵士が、村の娘を強姦して軍法会議にかけられる事件が頻発している。

 

他方、韓国軍の兵士がベトナム人の母と子を置き捨てて帰国したため、軍司令部が再志願させてベトナムに戻し、結婚式を挙げさせた旨が伝えられている。

 

背景

当時、韓国の朴正煕政権は反共を国是とし、分断国家としての共感を訴えて派兵を推進した。安聖基は「参加する方では『男に生まれたからには、一度は戦場に赴かねば』という気風がありました」とも指摘している。

 

南ベトナムに派兵された韓国軍は、2個師団プラス1個旅団の延べ3.1万名。最盛期には5万名を数えた。また、「ベトナム特需」を当てこんだ産業資本や出稼ぎの民間人も進出し、これも最盛期には2万人近くがベトナムに赴いた。(中略)

 

兵士や出稼ぎの民間人による本国への送金は、年に12千万ドルを数え、1969年の韓国の外貨収入の2割に達した。65年から72年までのベトナム特需の総額は102200万ドルにのぼる。これはアメリカによる軍事・経済援助、日韓基本条約による莫大な援助と合わせて、漢江の奇跡の基礎となった。

 

韓国政府の対応

韓国の民間団体や韓国のキリスト教団体とベトナム政府の支援により、支援施設(職業訓練学校)が設立され、無償での職業訓練と朝鮮語の教育が行われた。(中略)

 

ライダイハン自身が、韓国人である父親に対して実子であることの認知訴訟を起こし、判決により韓国国籍を取得する動きもある。盧武鉉政権は2006年に、写真など客観的に立証できる手段があれば韓国の国籍を付与する法案を検討するとした。

 

なお、韓国政府は2009年にベトナム戦争の解釈をめぐってベトナム政府と衝突するという事件があった。

 

2009年に韓国の国家報勲処が国家報勲制度の改定作業を行い、国会に法案改正の趣旨説明文書を提出した。この文書でベトナム戦争参戦者を「世界平和の維持に貢献したベトナム戦争参戦勇士」と表現したことにベトナムが、「我々は被害者。ベトナム戦争の目的が、なぜ世界平和の維持なのか」と猛反発し、予定された李明博大統領のベトナム訪問も拒否する方針を伝えた。

 

韓国側は、柳明桓外交通商相をベトナムに派遣し、外相会談で「世界平和の維持に貢献」の文言を削除することを約束し、李のベトナム訪問を予定通り実現させた。

 

一連の外交交渉で、ベトナム政府は「侵略者は未来志向といった言葉を使いたがり、過去を忘れようとする」と批判した。

 

韓国兵の行為にはメディアも人権活動家も目を向けなかった。その根底には、韓国人の、ベトナム人に対する人種差別意識が原因との見方もある。

 

韓国マスメディアの反応

後の韓国大統領である全斗煥は白馬師団第29連隊長として、と同様にベトナム派兵で活躍した指揮官だった。最大の圧力団体である軍部の存在もあって、韓国ではベトナム戦争を批判的に取り上げることをタブー視する雰囲気が存在した。

 

しかし後年、徐々に国民の意識が変わり、SBSでライダイハンをテーマとしたドキュメンタリー『大韓の涙』が放送された。

 

リベラル紙を発行するハンギョレ社は、19995月に自社の週刊誌『ハンギョレ21』にて掲載した記事を皮切りに、ベトナムでの韓国の戦争犯罪やライダイハン問題をたびたび取り上げ、韓国の世論に衝撃を与えた。

 

これに対し、韓国の海兵隊の退役軍人にて組織される「枯葉剤戦友会」などの団体は、2000627日に2400名という大集団を率いてハンギョレ社を襲撃した。彼らは同社内のあらゆる事務機器を破壊し、同社幹部を監禁し、同社の従業員十数名を負傷させた。(後略)【ウィキペディア】

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1975年にベトナム戦争終結後、南ベトナム政府の崩壊により、共産党政権下でライダイハンは「敵国の子」として迫害され、差別されてきたとされています。

 

「ライダイハン」の問題を追及する英民間団体「ライダイハンのための正義」は韓国政府に公式な謝罪を求めています。【110日 zakzakより】

 

【「十分反省した」「ベトナム経済を発展させたのは韓国企業ということを忘れないで」】

「ライダイハン」の問題に代表されるように、韓国とベトナムの間には国民感情のわだかまりがありますが、最近では韓国人・朴恒緒氏がベトナムサッカーチームの監督に就任して、チームが活躍したことで、多少の改善も見られているとも。それでも・・・

 

****ベトナムに深く残る「韓国軍のベトナム戦争参戦」の傷、韓国ネットはどう考える?****

2019214日、韓国メディア・韓国日報は、いわゆる「朴恒緒(パク・ハンソ)マジック」によりベトナム国民の韓国に対する認識は大きく改善したものの、ベトナム戦争など不幸な歴史に根差す感情のわだかまりはいまだ残っていると伝えた。

韓国の朴恒緒監督は昨年、東南アジア選手権(スズキ杯)でベトナム代表を10年ぶりの優勝に導いた。AFCアジアカップ2019UAEでもベスト8に入る活躍を見せ、ベトナムでは「朴恒緒ブーム」が起きていた。

これを受け韓国日報とコリアタイムスは、ベトナムの韓国に対する意識の変化を分析するため、ベトナム国民1000人を対象に調査を行った。

 

その結果、ベトナム国民の985%が朴監督を知っており、738%が「朴監督のおかげで韓国の印象が良くなった」と回答したという。

 

韓国日報は「201712月の第1次調査で『韓国文化に共感する』と回答したのが61%だったことを考慮すると、朴恒緒マジックは韓国に対する認識の改善に大きな効果をもたらした」と説明している。

 

また、「韓国人とは友達になれない」と考える割合も184%から136%に減少。韓国人との国際結婚に反対する割合も213%から72%に減少したという。

ベトナム国立大学ハノイ校のジャーナリズムコミュニケーション学科教授は「ベトナム人の韓国に対する認識は朴監督の登場前と後で変化した」とし、「音楽やドラマ、映画、グルメ中心のベトナムの韓流がスポーツにまで広がった」と分析したという。

一方で、韓国軍のベトナム戦争参戦による不幸な歴史と韓国・ベトナム間の非対称的な経済関係に基づく否定的な認識には「変化が見られなかった」という。

 

中でも、「韓国軍のベトナム戦参戦の事実が韓国に対する否定的な認識に影響を与えているか」との質問に対して「はい」と答えた割合は50代以上(150人)で32%を占め、第1次調査(206%)より大幅に増加したという。

 

これについてユ・テヒョン元駐ベトナム大使は「朴監督の一時的かつ大衆的な人気では、彼らの脳裏に深く刻まれた傷を癒すのは難しい」と指摘したという。

これに、韓国のネットユーザーからは「当然では?韓国が日本を好きになれないのと一緒」「韓国も被害者だから理解できる」「朴監督とベトナム戦争は全く別物。朴監督の活躍で過去を消そうだなんて、多くを望み過ぎ」など、理解を示す声が数多く寄せられている。

また「解決法は心からの謝罪のみだ」「韓国が許しを請うべき」「文大統領が現地に行って謝罪しないと」「韓国が公式に謝罪しなければならない。日本のようにならず、韓国によって被害を受けた人たちに補償し、慰霊碑も建てよう。わだかまりが消える日まで謝罪し続けるんだ。そうしなければ、世界の前で日本の態度を批判できない」など、ベトナムに対する韓国政府の謝罪や補償を求める声も多い。

一方、これに対し「韓国は歴史を歪曲(わいきょく)していない。十分反省した」「ベトナムは過去を忘れたがっているのに、文大統領が無理に蒸し返そうとして反感を買っているといううわさもあるよ」「ベトナム経済を発展させたのは韓国企業ということを忘れないで」「韓国は参戦させられたんだ。むしろ被害者。謝罪する必要はない」と反論する声も見られた。【25日 Record china

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ベトナム側からの韓国政府への訴えも続いています。

 

****「日本の前に韓国が謝罪を」ベトナム戦争被害者らが韓国に初の請願書****

201944日、韓国・聯合ニュースによると、ベトナム戦争当時に韓国軍から被害を受けたと主張するベトナム人らが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に真相究明を求める請願書を出した。

記事によると、民主社会のための弁護士会(民弁)と韓ベ平和財団は同日午後、ベトナム・フォンニィ村虐殺の生存者とハミ村虐殺の生存者とともに、韓国大統領府の噴水前で記者会見を開いた。請願書は民間人虐殺の真相調査と公式謝罪、被害復旧措置などを要求している。

会見に出席したイム・ジェソン弁護士は「これまで韓国軍の民間人虐殺に対する真相究明や被害復旧などいかなる手続きも行われていない。情報公開請求を通じて、国家情報院にベトナム戦争当時の民間人虐殺に加わった軍人らを調査した文書の公開を数回要求して勝訴までしたが、依然として(文書を)隠している。国家情報院は必ずこの文書を公開すべきだ」と話したという。

生存者らは「韓国政府は日本政府に謝罪を要求している。韓国とわれわれが経験した苦しみは同じ。日本に謝罪を要求するなら、まずわれわれに謝罪するべき」などと主張したという。

民弁と韓ベ平和財団は先月115日、ベトナム戦争当時に韓国軍が駐留した中部地方を回り、請願への署名を集めた。16の村から103人のベトナム人が参加したという。

なお、ベトナム戦争の民間人虐殺被害者とその遺族が、韓国政府に対し公式に真相調査などを要求する書面を提出したのは今回が初めて。

これを受け、韓国のネット上では「これはわれわれの過ち。他国の内戦になぜ韓国が参戦したのだろう。恥ずべき歴史」「痛ましい過去。解決して前を向いていこう」と過去史を受け止める声が上がっている。

一方で「ベトナム政府が真相調査をもみ消したって聞いたが?だから韓国に要求したわけであって。それに韓国は何度も(ベトナムに)謝罪している」

「ベトナム政府は謝罪を求めてないのに、どうやって韓国が個人に謝罪したらいいの?」

「それなら米国は?米国は相当なものだと思うけど、なんで韓国?」

「日本に謝罪を要求したいのなら、まずはわれわれがベトナムに謝罪しなければならないって?韓国はかつて軍がベトナムの虐殺を認めて謝罪して反省もした。でも日本は韓国人を虐殺したり侵略したことを否定し、謝罪や反省もない」など反論コメントが多く寄せられている。【45日 Record china

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*****「ベトナム戦争まだ終わってない」地雷被害者の訴えに、韓国ネット「なぜ」****

2019410日、韓国・KBSは「特派員レポート」として、ベトナム戦争の地雷被害者たちの現在を伝えた。

ベトナム戦争は1975年に終結したが、その後もベトナムでは地雷と不発弾により少なくとも4万人が死亡、6万人が負傷したとされている。まだ把握されていない被害も多く、実際の規模はこれよりもはるかに大きいと見られているという。

KBS
の記者は、かつての激戦地だった中部クアンビン省を訪れ、地雷被害者の男性を取材。男性は、9歳の時に地雷事故に遭い破片が脊椎に刺さったが、貧しさから満足に治療を受けられず、「骨の成長とともに苦しみを味わった」と話している。(中略)

専門家によると、ベトナム戦争当時、米軍が投下した砲弾・地雷は合計1500万トンに及ぶと推定される。このうち80万トンほどが今も不発弾として地中に存在するという。ベトナム国防省は、このうち除去できたのは32%とみている。記事は「ベトナム国土の1882%が、今も地雷や不発弾に汚染されている」と指摘している。

記事によると、韓国政府は来年まで2000万ドル(約22億円)の予算を投じる計画で、国連開発計画(UNDP)、ベトナム国家地雷対策センター(VNMAC)とともに不発弾、地雷除去事業を進めている。

 

先月にはクアンビン省に、地雷探知機200個を追加支援した。キム・ドヒョン駐ベトナム韓国大使は「ベトナムと韓国はどちらも戦争を経験し、その後に発展を遂げてきたという共通点がある。この地域の発展のために、安全問題の解決が必要だ」とコメントしている。

記事は「19年続いたベトナム戦争は44年前に終わったが、住民たちはまだ地面に埋まった地雷におびえている。彼らは戦争の破片が安全に取り除かれることを願っている」と伝えている。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「過去の過ちを謝罪し、ベトナムとの友好のために支援を」との声が寄せられ、多くの共感を得ている。

しかし、一方で「ベトナム戦争に対する謝罪と補償、そして復興支援は、反戦と平和を目指す広い意味でも必ず必要なこと。しかし、参戦した国は韓国以外にも多数あるのに、まるで韓国がベトナムを侵略でもしたかのような報じ方をしている」

「ベトナムの地雷は全部、韓国が設置したとでも?」

「韓国は参戦したが、米軍が主だった。なのに韓国に全てをかぶせるのか?」

というような反対意見や、

「韓国にも地雷被害者はたくさんいるのに、彼らには見向きもせず、何をしているのか」

「朝鮮戦争の虐殺と地雷被害者たちは米国、北朝鮮、中国、そして韓国に謝罪を求めろという報道はなぜ出ないのか?」などの声も多く見られた。【411日 Record china

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繰り返しますが、今回、この種の問題を取り上げたのは、当時および現在の韓国の対応を非難するためではなく、人権などに対する意識が希薄な時代の戦争・支配といった環境下における自国の歴史に向き合うことの難しさをくみ取るためです。

 

もし、韓国側の対応・反応に違和感を感じるものがあるとすれば、同種のものが自分たちの中にもないのか・・・と、自らを省みるためです。

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