孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  IS系テロ攻撃に対し、アメリカとタリバンが「協力」

2021-08-28 23:12:28 | アフガン・パキスタン
(26日、カブール空港周辺の爆発で負傷し治療を求めて病院に着いた女性【8月27日 時事】)

【米 IS系勢力に報復ドローン空爆、立案者殺害】
米兵13人を含む計180人以上が死亡、200人以上が負傷したアフガニスタン・カブールの空港でのIS系組織による自爆テロに対し、バイデン米大統領は“「今回の攻撃を行った者たちへ」として、「我々は許さない。我々は忘れない」と強調。「代償を払わせる」と語気を強めた。テロ攻撃を行った過激派組織「イスラム国」(IS)の支部組織の拠点や指導者に報復攻撃する作戦計画の策定を米軍に命じたことを明らかにした。ドローンなどを使った空爆攻撃を検討しているとみられる。”【8月27日 朝日】と報復を言明していましたが、その第1弾が実行されました。

****米、アフガンIS系勢力に空爆=報復で立案者殺害か―空港テロ、死者180人超に****
米中央軍は27日、アフガニスタン東部ナンガルハル州で、過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力に対する無人機攻撃を実施したと発表した。同勢力は26日に首都カブールの空港で起きた自爆テロで犯行を認めており、空爆はその報復とみられる。
 
米中央軍は声明で「IS系勢力『イスラム国ホラサン州』(IS―K)の立案者に対する対テロ作戦を実施した」と説明。その上で「初期の分析によれば、標的を殺害した」と述べた。民間人の死傷者が出たとの情報はないとしている。
 
ロイター通信などによると、標的となった戦闘員は別のIS関係者と車に乗っているところを爆撃された。将来のテロ攻撃の計画・立案に関与していたとみられる。(中略)
 
一方、米政府は新たなテロが計画されている可能性が高いとみて、最高度の警戒態勢を維持している。
 
サキ大統領報道官は声明で「今後数日間が最も危険だ」と強調。国防総省のカービー報道官も記者会見で「攻撃があることを予想している」とし、「こうした脅威をリアルタイムで厳密に監視している」と述べた。【8月28日 時事】 
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攻撃はドローンが使用されたとのこと。

アメリカは今後も引き続き、この種の攻撃を続けるのでしょうか。そうなると、対中国を重視した軍の再配備という戦略目標からはずれて、テロとの戦いに再び引き戻される懸念もあります。

【米・タリバンの共同作戦? 互いに関係を今後も必要とする両者】
今回の報復で感じたは、「また随分早かったな・・・」ということ。

以前から米軍は“IS系勢力『イスラム国ホラサン州』(IS―K)の立案者”なる人物を特定していたのでしょうか?それなら、どうして今まで野放しにしていたのか?

根拠も何もない私の全くの想像ですが、タリバン側から上記人物に対し何らかの情報提供がアメリカにあったのでは・・・その情報をもとに米軍がドローンで攻撃するという、タリバンと米軍の共同作戦だったのかも・・・・

今回の空港自爆テロではタリバン兵も28名ほど死亡するという大きな打撃を受けています。何より、アフガニスタンの治安は自分たちが担うとしていたタリバンは、敵対組織IS-Kによってメンツを潰された形にもなっており、アメリカだけでなくタリバンにも報復への強い動機がありますでの、その両者が手を組むというのはありうる話ではないでしょうか。

その根底には、アメリカもタリバンも、“ケンカ別れ”ではなく、今後に向けて互いに相手を利用しあう関係を望んでいることがあります。

タリバンとしては、今後の国家統治に国際的な承認が是非とも欲しいところで、なんだかんだ言っても国際社会をリードするアメリカとの関係は断ちたくないところでしょう。

****タリバン、アフガンの米大使館存続を望むと明確に表明=米国務省報道官****
米国務省のプライス報道官は27日、イスラム主義組織タリバンが米政府に対し、アフガニスタンの大使館の存続を望むと明確に示したと明らかにした。

プライス報道官はこのほか、米国はアフガニスタンの人々に対する人道支援を継続すると表明。ただタリバンの財源にならないようにすると述べた。【8月28日 ロイター】
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アメリカとしても、撤退後に残された協力者などの処遇といった「残務整理」でタリバン側に配慮を求めたいといということもありますし、今後のタリバン統治において女性の人権などで国際社会の価値観に合わない事態が表面化すれば、「米軍撤退はやはり間違いだったのでは」という議論にもなりますので、一定にタリバンに対し影響力を行使できる立場にありたいという希望もあるでしょう。

【米財務省 アフガニスタンへの人道支援を非公式許可】
上記記事にもある人道支援については、「非公式の許可」という扱いのようです。

****アフガン人道支援、米が非公式に許可 タリバン制裁で例外措置****
米財務省は人道支援組織に対し、アフガニスタンへの支援提供を許可した。事情に詳しい関係者が明らかにした。

イスラム主義組織タリバンがテロ組織として制裁対象になっていることが障害となり、アフガニスタンに食糧などの物資が届けられなくなるとの懸念が高まっていた。
 
援助団体や銀行からは、アフガニスタンへの人道支援や関連した金融取引を行っても罰せられない保証を求める声が高まっており、財務省は今週、プライベートの会話の中で許可を出した。

ただ、援助団体などは財務省に対して制裁からの正式な例外措置を求めており、今回の非公式な指針で懸念が払しょくされたどうかは明らかではない。
 
米国は2001年9月11日の同時多発テロ後、攻撃を実行したアルカイダ要員をかくまったとして、タリバンをテロ組織に指定した。これ以降、米国を拠点とする団体はタリバンにいかなる支援を行うことも法律で禁じられている。
 
タリバンは今月、政府機関や民間部門の大半を含め、アフガニスタンを全面的に掌握。このため、人道支援の取り組みに支障が出るとの懸念が高まった。
 
アフガニスタンでは治安が悪化し政府は崩壊したため、多くの国際援助団体が活動を停止。国際通貨基金(IMF)のエコノミストなどの専門家は、アフガニスタンは深刻な経済危機に陥る危険性があり、人道的危機が悪化する恐れがあると警告している。
 
開発援助・人道支援団体の主要ネットワークであるインターアクションとアライアンス・フォー・ピースビルディングはジャネット・イエレン米財務長官に対し、タリバン支配下のアフガニスタンへの人道支援に正式な許可を出すよう要請してきた。
 
インターアクションは「アフガニスタンの状況は悲惨であり、日々悪化している」としている。【8月27日 WSJ】
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アフガニスタンの食糧事情が極めて厳しい状況にあることは言うまでもありません。

****アフガン、深刻な飢餓に直面 WFPが警告****
国際赤十字社(IRC)は23日、アフガニスタンの人々が情勢不安定、食糧危機、コロナの感染拡大という3つの脅威に直面していると述べた。国連世界食糧計画(WFP)は19日までに緊急援助資金がなければ、同国は早ければ9月に食糧不足に直面するだろうと警告した。

IRCのグレゴリー・マシューズ氏は、アフガニスタンの政情不安、55万人の避難民、そして大干ばつ後の7月に政府が危機宣言を出したことで、食糧不足が高まっていると指摘した。さらに、コロナの感染拡大も、同国の医療システムを危機に陥入れている。世界保健機関(WHO)は23日、カブール空港が商業便の運航を停止しているため、重要な物資の輸送ができなくなっていると明かした。
 
WFPのアフガンの事務担当のアンドリュー・パターソン副局長は、「アフガン人口のほぼ半分であらる約1,850万人が援助に依存しており、今年の干ばつやコロナ禍による社会経済的影響で、作物の約4割が失われたため、多くの家庭が必要な食糧を入手できない状況にある」と述べた。
 
WFPによると、アフガンの3人に1人が飢えに苦しみ、子どもは200万人が栄養不良の状態にある。数十年にわたる紛争だけでなく、深刻な干ばつや新型コロナウイルスの感染拡大による貧困が原因だ。タリバンの進攻によって多くの人々が避難を余儀なくされ、食料不足に一段と拍車がかかる可能性がある。
 
WFPでは、2,000万人もの人々が食糧を必要とし、9月までに現在の備蓄が不足する可能性があるとしている。アフガニスタンの人々を12月末まで支援するためには、54,000トンの食糧が必要で、食糧の購入には約2億米ドル(約220億円)が必要である。
 
国際連合児童基金(UNICEF、ユニセフ)事務局長のヘンリエッタ・フォア氏も23日、アフガンでは約1,000万人の子供たちが人道的支援を必要としており、治療を受ける前に100万人が死亡する可能性があり、状況はさらに悪化すると予想されていると述べた。
 
WHOの地域緊急局長であるリチャード・ブレナン氏は、電子メールの声明で次のように書いた。「世界の目は今、避難者と飛行機に向けられており、残された人々を助けるための物資を送り込まなければならない」【8月26日 看中国】
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【アメリカ中央軍司令官 タリバンとの情報共有・共同でのテロ防止活動を認める】
話をアメリカとタリバンの対テロ協力に戻すと、アメリカ中央軍の司令官を務めるフランク・マッケンジー将軍がそのような協力が行われていることを発言しているようです。

****タリバンと米軍が「反テロ」で協力か──カブール空港テロと習近平のジレンマ****
中国はタリバンを支援する交換条件としてテロの撲滅を絶対条件とした。今般のテロでタリバン兵士28人が犠牲になっており、タリバンはアメリカと協力してテロ組織をつぶそうとしている。これは習近平に痛手か?(中略)

タリバンが米軍と協力して過激派ISISを打倒する
アメリカ中央軍の司令官を務めるフランク・マッケンジー将軍は、空港を標的としたロケット弾や車両爆弾の可能性を含め、ISISによるさらなる攻撃を警戒している」と述べ、「一部の情報はタリバンと共有している」とした上で、「タリバンによっていくつかのテロ攻撃が阻止された」と付け加えた。つまり、タリバンはテロ集団と戦っているということだ。

何よりも驚くべきは、マッケンジー将軍が「米軍の司令官はタリバンの司令官と協力してさらなる攻撃を防いでいる」と語ったことである。
つまり、「米軍がタリバンと協力してテロ活動を防いでいる」というのだ。

中国共産党が管轄する中国の中央テレビ局CCTVも8月27日正午のニュースでカブール空港テロ事件に関する特別番組を組んだのだが、そこで中国国際問題研究院の研究員である崔洪建氏が「米軍とタリバンが協力して共にテロと戦う」という可能性を排除できないと解説していた。

そうなると、アメリカがここに来て、初めて「反テロ」に向けてタリバンと共闘するという、前代未聞の事態が現れるということになる。(中略)

バイデン大統領は必ず米軍を8月31日までに撤収させると言っているのだから、米軍がタリバンと協力してテロ組織撲滅に従事することなどできないと思うのが常識的な反応だろう。

しかし、おそらくタリバンもピンポイント的に「テロ組織撲滅」という目的にのみ特化した部隊を残すことには賛同するだろうし、遠隔操作という方法もある。何らかの方法を考えるのではないかと推測される。(後略)【8月28日 遠藤誉氏 Newsweek】
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今回の「報復攻撃」がアメリカ・タリバンの共同作戦だったかどうかは知りませんが、今後の話で言えば、ドローンなら、タリバンからの情報提供に基づいて周辺国の基地から飛ばし、操縦などはアメリカ本土から行うということも可能です。

もっとも、現地に情報機関要員がおらず、情報を全てタリバンに頼るというのは、非常に危険な側面もありますが。
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