孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  「男性嫌悪」と「女性嫌悪」の男女間内戦状態

2021-08-13 22:36:13 | 東アジア
(アーチェリー女子の安山選手(7月30日、AFP時事)【8月2日 読売】)

【ショートカットの金メダリストへのフェミニズム批判】
今回の東京オリンピックに関し、いつもの反日は別として、韓国の反応で興味深かったのは、お家芸テコンドーでも金メダルが取れなかった不振の韓国にアーチェリーで混合団体・女子団体・女子個人の3個の金メダルをもたらした安山選手を巡る「フェミニズム」騒動でした。

本来なら英雄扱いになるところですが、韓国男性から批判・中傷を受けています。その批判の理由は髪形が「ショートカット」だから・・・

****短髪の金メダリストを中傷、韓国 フェミニズムに反発****
アーチェリー混合団体と女子団体で金メダルを二つ獲得した韓国代表の安山(20)に対し、髪形がショートヘアであることを理由に「フェミニストなら金メダルを返せ」などとする中傷がインターネット上で相次いでいる。韓国メディアが30日までに伝えた。
 
韓国では、短髪の女性は男女平等を目指すフェミニストであるとの偏見が根強い。近年のフェミニズム運動の盛り上がりに一部の若年層が反発している。
 
安のショートヘア姿について、会員制交流サイト(SNS)では「ショートカットだけどフェミなのか」「なぜ髪を切るのか」「メダルを返上して謝罪しろ」などの投稿があった。【7月30日 共同】
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ショートカット以外にも、過去のSNSも問題とされているようです。
日本語の感覚としては「フェミニスト」「フェミニズム」はそうネガティブなイメージはありませんが、韓国においては「男性嫌悪的差別主義」のイメージがあるようです。

****過去のSNSが批判の的、男性を卑下するスラング使う…3冠の韓国選手****
東京五輪のアーチェリー女子で、金メダル3個を獲得した韓国の安山アンサン選手(20)が、過去のSNS投稿などを巡って、女性解放運動の急進的な活動家らを指す「フェミ」の呼び名で中傷され、論争になっている。韓国の若い男性が同世代の女性に対して抱く「やっかみ」が背景にありそうだ。(中略)

一つ目の金メダルを獲得した頃から、安選手が過去にSNSで男性を卑下する意味を含むとされるスラングを使ったことを根拠に、インターネット上に非難の投稿が相次いだ。安選手が短髪で、女子大に在学していることも批判の的となり、「メダルを返上しろ」などの声も噴出した。
 
これに対し、有名女優が自身の短髪の写真をSNSに載せて反発を示すと、2日までに22万件以上の「いいね!」が付いた。大韓アーチェリー協会のサイトには「安選手を守れ」などの書き込みが相次いだ。(中略)
 
韓国では、若年層の失業率が高い中、男性は約2年間の兵役義務を課されており、不公平感を抱く男性が少なくない。かつては兵役を終えた男性に公務員試験で加点する制度があったが、1999年に憲法裁判所が「女性らへの差別」にあたるとして違憲と判断し、廃止となった。この頃から「逆差別」を主張する男性が増えたとされる。
 
2017年に就任した文在寅ムンジェイン大統領は「フェミニスト大統領になる」と公言し、女性政策に力を入れてきた。これも男性の不満に拍車をかけ、今年4月には女性を徴兵対象に加えるよう求める請願が大統領府に出され、賛同は29万件を超えた。【8月2日 読売】
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【女性の間でフェミニズムが高揚した経緯】
最近の若い男性からのアンチフェミニズムの話の前に、韓国女性においてフェミニズムが高まった経緯を見ると・・・

****韓国のフェミニズムは盛り上がっているのに、なぜ日本は盛り上がってないの?って言われる件****
2019年の2月は本当に、韓国のフェミニズムについての話題がそこかしこで聞かれたひと月だった。(中略)

韓国では確かにフェミニズムに勢いがある。昨年11月に行われた調査では、「韓国の19~29歳のうち『自分はフェミニストだと思う』と答えた女性は42.7%、男性は10.3%」だったそうだ。

『キム・ジヨン』がヒットしたのに続き、7人の女性作家がフェミニズムをテーマに執筆した短編集『ヒョンナムオッパへ:韓国フェミニズム小説集』も邦訳が出版された。

もちろん文学作品だけではない。今年の3月8日、国際女性デーの画像を検索してみる。集会やデモに集まって声を上げている人の数は、日本とはちょっと桁違いに見える。

 10年前には考えられなかった韓国フェミニズムの盛り上がり
 『私たちにはことばが必要だ』の訳者のひとりである小山内園子さんは、2007年にソーシャルワーカーとして韓国の女性団体に派遣されていた経験もある。当時を振り返って小山内さんは、「女性の約半数がフェミニストを自認するようになるなんて、考えられなかった」と言う。

「日本よりも“フェミニスト”のイメージが悪かったと思う。“どうでもいいことを騒ぎ立てる女”というレッテル貼りが強くて、フェミニストって言った途端に親が怒る、みたいなところがあった」(小山内さん)

イ・ミンギョンさんも来日した際に、「少し前までは、フェミニストといえば一生結婚するつもりのない女性というようなイメージで語られていた」と話していた。

けれど今は、10代、20代が率先して「自分はフェミニストである」と声を上げている。

韓国で女性たちが声を上げ始めたのは、いくつかの事件がきっかけだったという。
もっとも有名なのは、2016年の江南駅女性殺害事件。共同トイレの中に潜んだ男が見ず知らずの女性を殺害した事件だ。(編集部注:2016年5月17日、韓国のソウル市・瑞草洞で営業するカラオケ店の男女共有トイレ内で20歳の女性客が刺殺された。犯人は殺害動機を「普段から女性に無視されていたから」と語った)

犯人の男は男性の利用客を何人も見送った後で女性を狙った。「女性嫌悪」の感情(ミソジニー)によって引き起こされた殺人だという声が上がり、事件現場は被害者を追悼する言葉を書き込んだポストイットであふれたが、警察はわざわざ「女性嫌悪殺人」であることを否定する発表を出した。このことが、女性たちの心に火をつけた。(中略)

また、イ・ミンギョンさんは、近年、韓国で起きたフェミニズム関連のもっとも大きなデモは2018年夏に約7万人が集まった「盗撮事件」への抗議だったとも話していた。

韓国で盗撮事件が相次いで発覚していた時期に、女性が男性を盗撮し、ネット上にアップする事件が起きた。すぐに女性が逮捕されたことについて、「男性が犯人の場合は迅速な捜査をしない警察が、女性が犯人だとすぐに動く」と女性たちが怒りの声を上げたのだ。

「当事者意識を持つ」きっかけとなった、セウォル号沈没事故
しかし、これらのいくつかの事件が続いたことだけでは、今の韓国でフェミニズムを支持する人が増えている理由にはならないかもしれない。(中略)

「韓国は植民地時代を経験し、軍部政権がありました。つまり何かと戦わなければいけなかった歴史を持つ国なのです。それからセウォル号沈没事故(中略)も大きかった。

あの事故は、安全を蔑ろにして経済を優先するとか、それを知っているのに目をつぶるとか、そういった韓国の社会問題が凝縮されていた。そして、もしかしたら自分も死んだかもしれない、自分も加害者かもしれないって当事者感覚を主に若い世代が一気に共有しました」

 自分も社会の構成員であり、当事者のひとりである。その感覚をセウォル号事件で共有したからこそ、江南事件が起こったときに「これは私の話かもしれない」と当事者意識を持って問題に飛び込んだ女性が多かったのではないかと、すんみさんは言う。(後略)【2019年04月04日 小川たまか氏 HUFFPOST】
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上記のように韓国女性の間でフェミニズムが燃え上がった根底には、(同じ儒教社会日本にも共通する部分が多いと思いますが)韓国社会における男尊女卑的な基本的風潮があってことでしょう。

そんな男尊女卑的風潮の一端を示す事件・・・

****韓国軍でまた性的被害訴えた女性自殺 文大統領が激怒****
韓国海軍で女性下士官が上官から性的被害を受けたと訴えた後、自殺したとみられる事件が発生した。青瓦台(大統領府)の朴ギョン美(パク・ギョンミ)報道官によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は13日、事件の報告を受けて激怒し、国防部に対して疑惑解明に向け徹底的かつ厳正に捜査するよう指示した。

軍関係者によると、海軍の女性下士官は5月27日、飲食店で上官から性的被害を受けたことを明かにした。だが被害届は出さず、今月7日、部隊長との面会で改めて被害を訴え、9日にようやく正式な報告が行われた。島にある部隊で勤務していた女性は同日、陸上の部隊に移された。

女性は12日、部隊内の官舎で遺体で発見された。海軍関係者は自殺したとみられると明らかにした。

韓国では上官から性的被害を受けたと訴えていた空軍の女性下士官が自殺したとされる事件が起きたばかりだ。当時、文大統領は厳正な捜査と措置を数回にわたって指示。?成?(イ・ソンヨン)空軍参謀総長は辞任に追い込まれた。

今回の事件を受け、徐旭(ソ・ウク)国防部長官の責任を求める声が高まる可能性がある。

徐氏は「あってはならないことが発生したことについて、遺族と国民の皆さんに申し訳ない」と謝罪し、特別捜査チームを設置し、徹底的な捜査を行う方針を示した。【8月13日 聯合ニュース】
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【男性からのアンチフェミニズムと徴兵制を巡る議論】
一方で前出【8月2日 読売】にもあるように、女性の間でのフェミニズムの高揚が、高い失業率の中で約2年間の兵役義務を課される男性の被害者意識・「女性嫌悪」に火をつけることにも。

****20代男性の6割が「女性が憎い」と答える韓国で起きたフェミサイド「女性嫌悪」が刺殺事件にも発展***
韓国では、20代男性10人のうち6人が「反フェミニズム的」という調査結果がある。韓国の若者に取材をしてきたライターの安宿緑さんは「若い男性を中心に女性嫌悪が拡大している。特に20代の男性たちは『女性のほうが自分たちよりも優遇されている』と感じている」という――。(中略)

女性嫌悪の核にある「恋愛と結婚」
なお慶熙キョンヒ大学校がソウル市内の男性大学生270人を対象に行った調査研究では、女性嫌悪の核に恋愛と結婚があることが示唆されていた。

現在の韓国社会では、階層がほぼ固定化し、経済的に同じレベルでしか結婚しにくい状況にある。そうして経済構造的に劣位におかれた若年層男性が無気力感、劣等感を募らせた結果、女性嫌悪が増大しているのでは、と分析している。

そもそも韓国の20代の男性たちが「女性のほうが自分たちよりも優遇されている」と感じていることは否めない。

たとえば韓国女性政策研究院が2018年、19歳以上60歳未満の男性3000人(うち20代男性1000人)を対象にしたオンライン調査では、20代男性の半数が敵対的性差別意識および反フェミニズム意識を持っているとされ、彼らが女性に対して「平等という言葉を盾に多くを要求し、男性嫌悪をしている」と認識していることが分かった。

さらに彼らは徴兵に対する被害者意識を持ち、軍隊は時間の浪費で、損失と捉えており、結果として「男性だけ軍隊に行くのは男性差別で、女性も行くべきだ」という認識を強く持っていた。

また他世代に比べて、性風俗などに興味を示さない傾向がみられ、逆にオンライン上での女性嫌悪的書き込みに接する機会が多かったとされる。【2020年9月30日 PRESIDENT Online】
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****女性の成功を敵視****
インターネット暴徒の多くが若い男性だ。彼らが激高するのは、女性の成功は自分たちの犠牲の上に成り立っていると、信じ込んでいるからだ。

「男性ばかりが集まるオンライン・コミュニティーは、君たちが抑圧されているのは女のせいだと、若者に教え込む。たとえば、女性は試験で良い点を取り、君たち男性の席を奪っているのだ、などと」と、ハン博士は言う。

韓国では大学入試や就職活動が熾烈(しれつ)を極めている。一部の男性は、自分たちが不公平で不利な立場に置かれていると主張する。

たとえば、韓国ではすべての男性に18カ月間の兵役が義務付けられているが、これがキャリア形成を遅らせるという指摘だ。

また、韓国には数十の女子大学があり、中には需要が非常に高い学科を設置しているところもある。一方、男性には同じような仕組みが提供されていない。

しかし、韓国の女性の給与は男性のわずか63%に過ぎず、先進国の中でも最も給与格差が大きいのが現実だ。英誌エコノミストの「ガラスの天井(実績があっても性別や属性を理由に越えられない障壁を指す言葉)指数」でも、韓国は働く女性にとって最も環境の悪い先進国となっている。【8月12日 BBC】
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韓国にいまだ徴兵制があるというのは、日本からすると奇異な感もありますが、朝鮮戦争の苦難の歴史、「休戦」状態の分断国家ということを考えれば、当然と言うべきか・・・

北朝鮮に極めて融和的とされる左派・文政権ですら、その廃止を言い出さないというあたり、日本からはうかがい知れない分断国家・韓国の特殊事情でしょう。

廃止できないなら、男性だけでなく女性も・・・というのが男性アンチフェミニズムの主張・・・と言うか、女性フェミニズムに対する「やれるものなら、やってみろ」という物言い。

****韓国男性「女も徴兵されろ」と主張。それに対しフェミニストたちは****
韓国で女性の徴兵制を求める請願が約30万票

韓国大統領府のHPに、女性の徴兵制を求める請願が約30万票も集まった
「Kフェミニズム」と称され、男女同権の実現に向けた女性たちの運動が盛んな韓国で、若い男性たちによる「反逆」が企図されている。徴兵制が実施されている韓国で、男女が同権ならば、女性も徴兵されるべきだというものだ。  

男性たちの反逆が表面化したのは、大統領府(青瓦台)への国民請願サイト。韓国では文在寅大統領就任後、大統領府のHP上に国民の誰もが請願出来るサイトを公開しており、1カ月で国民20万人以上の支持を得た請願に関しては、大統領府が公式に意見を表明するというシステムを採用している。  

その国民請願サイトに登録されたのが「女性も徴兵対象に含めてください」という請願。  
この請願は先月4月19日の登録後、3日で4万5千人の支持を集め、一気に世論の注目を集めることになった。  

請願サイトに登録された「請願内容」によれば、「韓国では年々出産率が下がり、国軍の兵力補充に困難をきたしている。そのような状況で男性の徴集率は9割に迫り、様々な理由で軍服務に適切ではない人までもが徴兵されている現状である」としながら、結論的に「女性も徴兵対象に含めるべき」であるとしている。  

そしてこの請願は、5月17日現在29万人の支持を得ており、大統領府も無視できない「国民の声」となっている一方、韓国内では老若男女間で賛否両論の議論が戦わされている。

「女も兵役に行け」と主張する男性たちの言い分とは
韓国での「女性徴兵制」について、男性側の意見は「賛成」と「反対」に両分される。  

まず反対意見としては、この問題は「差別」ではなく「差異」であるとし、男女の身体的な問題や、セクハラが起きやすい環境を醸成する、そもそも女性がいることを前提としていない軍設備が多い等の意見が聞かれた。  

賛成意見としては、身体的な特徴の問題であれば、周辺業務でも十分に対応出来るし、そもそも軍内でも旧時代文化は一掃されたと聞いている。これからの国防を考えるのであれば女性の募兵も必要だろうという意見が多い。  

特別な意見としては、韓国は「休戦国家」であり、男女区別なく国軍に動員している北朝鮮に対抗するためには、韓国でも、女性を軍に含め(北朝鮮との)兵力数の均衡を保たなければならないという過激な発言もある。

若い女性「行くのは構わない」
しかしこの議論が男性陣の中で活発化するのには、韓国のフェミニズム運動への反抗心も窺われる。要は普段、男女平等を叫ぶのなら、まずは軍に服務してみろ、出来ないだろうというのが男性陣の本音として垣間見える。フェミニストたちへの痛烈な皮肉というところか。  

では一方で、問題の「当事者」でもある若い女性たちの意見はどうか。  
この「女性徴兵(募兵)」問題については過去に何度も話題になった話ではあるが、大学通りの20代の女性は「行けと言われれば行くのは構わない」とあっけらかんと答えている。(中略) 

「女性が徴兵されても女性差別はなくならない」
実際、2019年に韓国女性政策研究院が男性1036人、女性976人を対象に行ったアンケートによれば、女性の53.7%が軍服務に対して肯定的な意見を述べており、対象となる20代~30代の女性も50%以上が賛成している。  前段にもあったが、これが「休戦国家」のリアルなのだろうか。

しかしこの問題を議論するSNS上には、そんな女性たちの声も散見される。 
「女性徴兵制は構わないけど、女性が軍隊に言ったからって、今の社会の女性差別が無くなりはしない」、「男性は、差別問題というと、すぐに自分たちの徴兵の問題を持ち出してくるが、普段の女性差別問題にはまったく関心をもつことは無い」  

韓国社会における男女同権の問題は、伝統的な儒教国家である分、日本よりも根深く深刻であると言われている。韓国軍の話で男女が内戦状態では、仮に男女混成軍でも統率は取れないのだろうが…【5月26日 吉田サラバ氏 SPA!】
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なお徴兵制をめぐる矛先は女性だけでなく、オリンピック野球チームにも向けられているとか。
韓国野球チームが3位決定戦に破れてメダルなしになったことへ、多くの「いいね!」が集まっているとか。

五輪メダリストになれば兵役免除になりますが、出場国がたった6カ国しかない野球で銅メダル取って兵役免除というのは許せない・・・という話のようです。【8月13日 デイリー新潮より】
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