孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  困窮する市民生活 問題が多いタリバン支配 今後に向けて欧米諸国との協議開始

2022-01-24 21:53:37 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタンの首都カブールにある虐待被害を受けた女性向けのシェルターで祈る女性(2021年12月11日撮影)【1月22日 AFP】)

【困窮する市民生活 栄養失調で死亡 わが子を売らなければ生きられない】
アフガニスタンではイスラム原理主義勢力タリバンによる支配のもとで社会・経済は混乱し、女性の人権を認めないなどその統治に問題が多いタリバンに対する欧米諸国の経済制裁によって、市民生活は困窮を極めています。

****今年、栄養失調で子供75人死亡=アフガン南部の病院****
アフガニスタンのメディアは17日、南部カンダハルの病院関係者の話として、この病院で今年に入り、子供少なくとも75人が栄養失調で死亡したと報じた。

アフガンでは、イスラム主義組織タリバン暫定政権への制裁などで経済が混乱。0度前後の気温下で人々が十分な食料を得られず、国際機関などが支援を急いでいる。
 
複数の地元報道によると、この病院関係者は、今年に入り子供約1900人が栄養失調で搬送されてきたと証言した。世界食糧計画(WFP)は昨年、アフガン人の95%が十分な食料を得られていないと警告している。【1月17日 時事】
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*****「わが子売れば…」タリバン下で生活困窮 追い詰められるアフガン市民****
アフガニスタンで、イスラム原理主義勢力・タリバンが実権を掌握して5カ月がたった。
人々の生活は厳しさを増し、わが子を売らなければ生きられないほど、追い詰められた家族もいる。

2021年8月、タリバンがアフガニスタンで実権を掌握し、かつての恐怖政治の記憶から、国内は混乱した状況になった。
今も人権侵害などへの懸念から、国際社会は、タリバンによる統治を承認せず、経済制裁を科していて、市民の生活は厳しさを増している。
市民「状況は最悪で、みんな仕事がない」

カブール近郊の町で暮らす、ナーザニンさん(12)。4人姉妹の長女として、家事を手伝うなど、シングルマザーである母親を支えている。
ナーザニンさん「勉強したいができない。生活のために、水や油が必要」

しかし、病気を抱えながら清掃の仕事と子育てをしてきた母親は、雇い主の経済状況が悪化し、職を失った。
誰からも助けを得られず、生きるために、母親は、ナーザニンさんを売ることを決めた。
母・マルジエさん「何もできることがなかった。1人を売れば、自分も病気の治療ができて、3人の子どもを餓死から守れる」

その金額は、日本円でおよそ11万円。ナーザニンさんがその後、どうなるのか、母親は「何も知らない」と答えた。
しかし取材後、支援団体から援助を受けることができたとの報告が。ナーザニンさんは、今も家族と生活することができているという。

アフガニスタン情勢にくわしい東京外国語大学の講師・登利谷正人さんは、「現地では、子どもを売らなければ食べていけない人が増えている。“タリバン政権”を承認できるかは、ひとまず棚上げにしてでも、命を守るため行動しなければならない」と話している。【1月18日 FNNプライムオンライン】
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****アフガン 仕事失った人たちの食糧難深刻化****
イスラム主義勢力タリバンが実権を掌握したアフガニスタンでは、本格的な冬を迎え、仕事を失った人たちの食糧難が深刻化しています。

17日のアフガンの首都カブールの映像には、雪がしんしんと降る中、路上に座っている人がいます。仕事を失い、物乞いをするほか生活のすべがない人たちです。

カブール市民「子どもたちのためのお金をもらうため、ここに座っているしかありません。油、コメ、小麦粉が必要です。できるなら助けてください」

カブール市民「夫が亡くなって30年、私は一人です。この服は人からもらったものです。お茶もパンもなく、神様の助けがなければ食べ物が見つかるまで歩き続けなければなりません」

男性は、雪の寒さを防ぐためか、ビニールをまとっています。

カブール市民「仕事が見つかる日があっても、その後は仕事がありません。私のような労働者はたくさんいます。1日の稼ぎは90円ほどです。それで我慢しなければならないのです」

国連機関によりますと、アフガンでは現在、人口の半数以上にあたる2440万人が人道支援を必要としています。【1月18日 日テレNEWS24】
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【懸念を深める情報が多いタリバン支配の実情】
“タリバン政権を承認できるかは、ひとまず棚上げにしてでも、命を守るため行動しなければならない”・・・それはそうです。実際、国際支援も動いてはいます。

しかし、タリバン支配が容認できるものかどうかで疑念がある状態では支援もフル稼働とはいかないのが現実でしょう。

現地から伝えられる情報は、タリバン支配への疑念を深めるものがほとんどという状況です。

****女性の遠出、男性伴わねば禁止 タリバン****
アフガニスタンで実権を握るイスラム主義組織タリバン暫定政権は26日、近親男性が同伴しない限り女性の遠出を禁止すると発表した。勧善懲悪省がソーシャルメディアに新指針を投稿した。
 
タリバンはさらに、全ての車両所有者に対し、髪をスカーフなどで覆っていない女性の乗車を拒否するよう求めた。車内で音楽をかけることも禁止される。
 
勧善懲悪省の報道官はAFPに対し「女性が45マイル(約72キロ)以上移動する場合、近親者が同伴しなければならない」と説明した。近親者は男性に限るという。女性が移動する場合、「ヒジャブ」の着用が求められるとも述べた。
 
タリバンは8月15日に実権を掌握すると、公的部門で働いていた女性の復職を禁じた。また、大半の女子生徒が中等教育を依然受けられていない。 【12月27日 AFP】
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****タリバン、女性にヒジャブ着用命じるポスター掲示****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権の勧善懲悪省は今週、女性にヒジャブ(頭と首を覆うスカーフ)の着用を命じるポスターを首都カブール各地に掲示した。同省報道官が7日、明らかにした。
 
タリバンは昨年8月に政権に返り咲いて以来、シャリア(イスラム法)の厳格な解釈に基づく統治を強化。特に女性や少女の自由を厳しく制限している。
 
ポスターはカフェなどに張り出された。「シャリアに従い、ムスリム女性はヒジャブを着用しなければならない」と書かれているほか、ブルカ(全身を覆う衣服)も描かれている。
 
宗教警察の役割を担う勧善懲悪省の報道官は7日、同省が命じたとAFPに認めた。「たとえ従わなかったとしても、罰を受けたり殴打されたりするわけではない。ムスリム女性にシャリアに従うよう促しているにすぎない」と述べた。
 
カブールの女性は既に、ヘッドスカーフで髪を覆っている。カブール以外では、タリバンが1990年代の第1次政権時代に着用を義務付けていたブルカが一般的となっている。 【1月8日 AFP】
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ブルカ強制ではなくヒジャブであれば、イスラム諸国においては程度の差こそあれ着用が要請されていますので、タリバンがヒジャブ着用命じること自体は驚きではありません。

「ヒジャブでもなんでも着けるから、生きていくための食べ物が手に入るようにしてくれ!」というのがアフガニスタン女性の現在の叫びでしょう。

上記記事で問題なのは「たとえ従わなかったとしても、罰を受けたり殴打されたりするわけではない。ムスリム女性にシャリアに従うよう促しているにすぎない」という言葉が全く信用できないところです。ムチで人々を抑圧した旧政権時代の勧善懲悪省の姿が蘇ります。

タリバン支配のもとでは、タリバンのやり方に異を唱えることは許されません。

****タリバン批判の教授拘束 アフガン、言論弾圧に市民抗議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は9日までに、会員制交流サイト(SNS)でタリバンを批判したとして、大学教授の男性を拘束したと明らかにした。首都カブールでは9日、言論弾圧を懸念する市民らが「教授の声は人々の声だ」と抗議し、釈放を求めた。
 
地元メディアによると、男性はカブール大のファイズラ・ジャラル氏。8日にカブールで治安当局に拘束された。テレビの討論番組にたびたび出演し、圧政や食料不足などを非難してきた。【1月9日 共同】
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【最大のポイントは女性の権利保護】
いろいろ問題があるなかで、食料問題は現実的には国際援助がない限りタリバンに改善能力はないので、そうした国際援助が受けられるようにするための「女性への対応」がポイントでしょう。

欧米諸国が求めるものとタリバン支配の現実には大きな溝があります。

****タリバン政権下で消える女性シェルター 虐待受けても行き場なし****
フェテマさんは7歳の時、曽祖父ほどの年齢の男性と結婚させられた。レイプされ、殴る蹴るの暴行を受け、飢えにも耐え忍んだ末、ついに自らの命を絶とうとした。
10歳の時には壁にたたき付けられたと言う。「頭が釘にぶつかって(中略)もう少しで死ぬところでした」
 
フェテマさんが身を寄せているのは、虐待された女性のためのシェルターだ。イスラム主義組織タリバンが昨年8月に実権を掌握したアフガニスタンで今もなお、女性たちを受け入れている数少ないシェルターの一つだ。だがフェテマさんは、いつここを追われるかもしれないとおびえている。
 
シェルターが閉鎖されれば、フェテマさんには行き場がない。実家との連絡は途絶えているし、嫁ぎ先の家族は名誉を汚したと言って、フェテマさんを殺すと明言している。
 
アフガニスタンでは、フェテマさんのような経験をしている女性が何百万人もいる。家父長制を伝統とするこの国では、貧困と教育の欠如により、女性たちが何十年にもわたって権利を奪われてきた。
 
国連によるとアフガン女性の87%が、何らかの形で肉体的・性的・精神的な暴力を体験したことがある。
 
にもかかわらず、人口3800万人のこの国で、タリバン復権以前に運営されていた女性保護専門のシェルターは、わずか24か所だった。そのほぼすべてが国際組織の資金によるもので、国内では多くの人から冷ややかな目で見られていた。
 
タリバンはイスラム教の聖典コーランの厳格な解釈に基づき、女性の権利を認め保護していると主張するが、現実には公的な場から徐々に女性が締め出されている。

■タリバンの視察
だが、ほのかな希望の光もある。
 
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は今月初め、強制結婚を非難する立場を表明した。
またタリバン暫定政権が国連大使に指名したスハイル・シャヒーン氏は、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルに対し、暴力の被害を受けた女性は裁判所に訴えることができると語った。
 
タリバン政権はシェルターの今後について何ら公式に発表していない。だがその存在が見過ごされているわけではない。
 
フェテマさん他約20人が身を寄せるシェルターの職員によると、タリバンの戦闘員や幹部が数回にわたりシェルターを訪れた。

「彼らは入って来て各部屋を見て、男性がいないことを確かめていました」とある職員は言う。「そして、女性にとってここは安全な場所ではない、女性の居場所は家庭だと言いました」
 
それでも、希望を感じた女性もいた。職員は「(タリバンの訪問は)思っていたよりもずっと良かったのです」と語った。

■頼る先がない
タリバンが政権を掌握する前でさえ、家庭で虐待されている多数の女性が頼れる先はほとんどなかった。
殺してやると義父に脅されたザキアさんは女性問題省(現在はタリバンによって閉鎖)に問い合わせ、家を逃れる方法について助言を求めた。だが、ザキアさんの状況はそれほど悪くないと言われ、「話も聞いてもらえませんでした」。
 
ミーナさんも7年前、虐待する叔父の元から妹と一緒に逃げ出し、女性問題省に駆け込んだが、同じような扱いを受けた。そして「私が話す内容にうそがあると非難されたのです」。
 
アフガン女性の権利を訴えて長年活動し、シェルターを運営しているマブバ・サラジャさんにとって心配なのは、家庭で虐待を受けていながら、他に行き場のない女性たちだと言う。
 
ザキアさんには、少なくとも今のところシェルターがある。だが、いつまでここにいられるだろう。「実の父にも、おまえのことなんかどうでもいいと言われたのですから」 【1月22日 AFP】
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家庭内での暴力から逃れてきた女性に「女性にとってここは安全な場所ではない、女性の居場所は家庭だ」というのは“悪い冗談”です。

ただ、“女性保護専門のシェルターは、わずか24か所だった。そのほぼすべてが国際組織の資金によるもので、国内では多くの人から冷ややかな目で見られていた。”“タリバンが政権を掌握する前でさえ、家庭で虐待されている多数の女性が頼れる先はほとんどなかった”ということに見られるように、女性の権利を重視しない風潮はタリバンだけでなくアフガニスタン社会全般の問題である点は踏まえて置く必要があります。

そうしたなかにあって、若干の改善も。

****女子中等教育も「解禁」=3月下旬に再開か―タリバン****
フガニスタンの民放トロTVは23日、イスラム主義組織タリバン暫定政権が、3月下旬から中等教育課程以上の学校を女子についても再開するよう指示したと報じた。現在、タリバンは一部を除き女子は初等教育までしか認めておらず、国内外から批判を浴びている。
 
タリバンはこれまで、独自のイスラム法解釈に基づいて女子教育を抑圧してきた経緯があり、実際に再開されるかは不透明だ。【1月24日 時事】 
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【欧米諸国とタリバンの協議開始】
今後に向けて、タリバンと欧米諸国の協議が始まるようです。

****タリバン、オスロで欧米諸国と協議開始 人権や人道危機など焦点****
アフガニスタンを支配する武装勢力タリバンと、欧米各国との対面協議が23日、ノルウェーの首都オスロで始まった。昨年8月にタリバンがアフガニスタンの政権を奪還して以来、代表団が欧州で欧米政府と協議するのは初めて。

一方、タリバンと協議することに反対する抗議集会も、週末にかけて欧州各地で開かれた。

非公開の協議は3日間続く予定で、アフガニスタン国内の人権や人道危機の状況も検討する。
最も重要とされる24日には、タリバンは欧米各国に対して、アメリカの銀行で凍結されている数十億ドルの出金を認めるよう要請する見通し。

タリバン代表団のシャフィウラ・アザム氏はAP通信に対して、「アフガン資産の凍結を解除し、政治対話を理由に一般のアフガニスタンを苦しめることがないよう(欧米に)求める」と話した。
「今は厳しい冬で、飢えが広がっている。国際社会はそろそろ、政治的対立を理由にアフガニスタン人を罰するのではなく、アフガニスタン人を支えるべき時期だと思う」とも、アザム代表は述べた。

タリバンの復権以来、アフガニスタンでは失業と食料価格が急騰する一方、通貨の価値は急落し、金融機関は現金引き出しに上限を設けている。

国連によると、アフガニスタン国民の95%が十分な食事をとれていない。人口の55%が飢えの危険にさらされている状態という。

タリバン代表団は22日夜にオスロに到着。23日には、代表団の一部が人権活動家と面談したものの、話し合った内容は公表されていない。

女性の権利活動家のジャミラ・アフガニさんはAFP通信に対して、代表団は「好意的」な態度だったと述べ、「発言をもとに、実際にどう行動するかを見てみよう」と話した。

「タリバン承認ではない」
欧米側はタリバン代表団に対して、人権尊重と包摂性の高い政権作りを強く求める見通し。

昨年8月の政権奪還以来、タリバンはほとんどの女性について外で働くことを禁止。中学・高校には男子生徒と男性教師しか通うことができなくなった。こうした権利抑圧に抗議する女性たちへの取り締まりも厳しくなり、活動家の中には行方不明になった人たちもいるが、タリバンは関与を否定している。
人権活動家やジャーナリストに対するタリバンの攻撃も悪化している。

これまでのところ、タリバン政権を正統なアフガニスタン政府と承認した国はない。
ノルウェーのアンニケン・ウィットフェルト外相は21日、協議の開催を発表するにあたり、代表団と協議するからといって「タリバンを正当化するわけでも承認するわけでもない」と述べた。
「それでも、国の事実上の当局とは話をしなくてはならない」とも外相は話した。

今回の協議について、国外のアフガニスタン人の意見も割れている。BBCのリーズ・ドゥセット特派員によると、タリバンと関わるのは大事だと指摘する人もいれば、本国で人権侵害を繰り返すタリバンを欧州の首都に招いてはならないという意見もある。

オスロでの協議に反対する人たちが週末にかけて、欧州各地で抗議集会を開いた。オスロで抗議した1人はAFP通信に対して、家族を失ったアフガニスタン人を「面と向かって笑い飛ばす」ようなものだと協議を批判。「テロリストと話し合ってはならない」と述べた。【1月24日 BBC】
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