孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  バイデン大統領の老朽化インフラ改修アピール演説直前の橋崩落事故

2022-01-29 22:49:52 | アメリカ
(米ペンシルベニア州ピッツバーグで橋が崩落した現場を訪れた同市のエド・ゲイニー市長(右)とジョー・バイデン大統領(2022年1月28日撮影)【1月29日 AFP】)

【インフラ改修政策アピール直前の橋崩落事故】
実にタイミングが合った・・・と言うと不謹慎でしょうが、そんなアメリカの橋崩落事故。
事故当時、路線バスなど6台の車両が橋の上を通行中で、10人がけがをしたが命に別条はないとのことです。

****米ピッツバーグで橋崩落 バイデン氏のインフラ演説直前に*****
米東部ペンシルベニア州ピッツバーグで28日朝、道路橋が崩壊し、複数の負傷者が出た。ジョー・バイデン大統領はこの日、同市を訪問し、国内の老朽化したインフラを修復する1兆ドル(約115兆円)規模の投資計画について演説する予定で、事故はそのわずか数時間前に起きた。

崩壊した橋は、雪の積もる谷間に落下。ピッツバーグの公安当局はツイッターで、負傷者3人が病院に搬送されたと発表した。いずれも命に別条はないという。

バイデン氏は大統領専用機エアフォースワンで同市に到着すると、車で事故現場に直行。「ピッツバーグの橋の数は世界最多だ」とし、「私たちはそれをすべて修復する。冗談ではない。これは大きな変化になる。(橋は)全国で4万3000本あり、われわれは資金を投入する」と語った。

事故の被害は比較的小さかったものの、バイデン氏の訪問直前に起きたことから、即座に全米の注目を集めた。バイデン氏は同市での演説で、新型コロナウイルスの流行により打撃を受けた米経済の復興策として、歴史的な規模のインフラ投資などの取り組みをアピールする予定だ。 【1月29日 AFP】
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【老朽化するアメリカのインフラ 大型インフラ法案、超党派合意で成立】
アメリカのインフラ老朽化はここ10年来指摘され続けてきた大問題ですが、改善には先立つものが必要になるだけに手が着けられてきませんでした。

このブログでも1,2回取り上げたことがあると思いますが、下記は2013年12月1日、ニューヨーク市ブロンクスでメトロノース鉄道の列車が脱線し、多数の死傷者が出た事故を受けてのもの。


バイデン大統領はこのインフラ状況の改善を看板政策に掲げて取り組んできました。

****コラム:米政権のインフラ計画、民間が敬遠する設備への投資を****
米国内の老朽化したインフラは当然改修が不可欠とはいえ、バイデン大統領の念頭にある、そうしたインフラ施設全てが民間投資家にとって魅力を持つわけではない。

例えば、水道整備はその必要性と社会にもたらす恩恵はとても大きいが、資金の出し手が受け取るリターンは高くないかもしれない。公益の面で望ましいことが常に民間の観点から投資可能とは限らないが、双方の折り合いをつける余地はある。

アメリカン・ソサエティ・オブ・シビル・エンジニアズは、米国内のインフラに「Cマイナス」という極めて低い評価を下している。満足がいく水準に点数を引き上げるには、2029年までに2兆6000億ドルもの新たな投資が必要になると見積もっている。
そうした投資を怠れば、交通の乱れや信頼できない電力システムなどにより、39年までに10兆ドルのコストが生じてしまう。これほど大きなニーズがあり、リターンが得られる可能性もあるのだから、認められるだけのものを議会からしぼり出し、最大限の投資を実行することは重要だ。

民間企業は、リターンがすぐに得られ、その見通しも比較的確実で採算性が高い事業案件には喜んで投資するかもしれない。ただ、他の分野に関しては、政府の介入が必要だ。その典型的な領域は基礎研究だが、給水施設の改修も該当する。

環境保護局(EPA)によると、米国では地方自治体が運営する水道システムが国民の84%に水を提供している。ところが、人体に害がある鉛製の給水管を撤去する作業だけでも、貧困地域では一時的な巨額費用を負担する余裕が地元にはない。

そこで、バイデン氏は主に環境保護局経由で、各州が管理する融資用資金に連邦政府が計450億ドルを投入することを計画している。資金はそこから各地域社会に貸し出され、数十年かけて返済してもらう。各州もある程度の資金を追加的に拠出すれば、十分な規模が確保されるはずだ。

こうした水道改良事業は、社会貢献度も大きい。非営利団体の環境防衛基金は、鉛製の給水管930万本を撤去すれば、心疾患の減少などにより2050億ドル相当の付加価値を生み出せると試算する。1本当たりの撤去費用を5000ドルと想定すれば、リターンは約4倍だ。その上、これは極めて控えめな見積もりでもある。

子どもの鉛毒被害と、教育水準や知能指数の低下、犯罪率上昇の間には確固とした因果関係が成り立っている。コロンビア大学のピーター・ミュニッヒ教授は、鉛毒がもたらす社会的コストが現時点で子ども1人当たり5万ドルと推計する。

鉛製給水管の撤去は多額の資金がかかり、所有者たちが独力で進めることはできないかもしれない。メリットが完全に顕在化するには何十年もかかり、効果も社会全体に散らばる形になる。

だが、そうした点にこそ、政府が介入してこれらのプロジェクトを最優先事項に近い政策に位置づけるべき理由がある。バイデン氏がまず取り組まなければならないのは、民間投資家が敬遠しても必要価値の高いインフラの整備計画をあぶり出し、どんな形であっても確実に実行できるようにすることだ。【2021年4月6日 ロイター】
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こうしたインフラ改善の必要性は党派対立で機能マヒにも陥っている米議会においても一定に認識されており、財政規律の問題や、より大規模な社会福祉投資法案との兼ね合いなどで紆余曲折はあったものの、インフラ法案は与野党対決法案としては“珍しく”超党派の賛成を得て成立しました。

****米上院、超党派のインフラ法案を可決 130兆円規模****
米上院(定数100)で10日、老朽化が進む国内インフラの整備に1.2兆ドル(約130兆円)を投資する超党派の法案が採決にかけられ、賛成69、反対30の賛成多数で可決された。

法案は今後、下院で可決されれば、バイデン大統領の署名を経て成立する見通し。ただし、休会中の下院での採決がいつになるかは確定していない。

上院の採決では野党・共和党からも19人が賛成票を投じた。反対していた共和党議員の1人、マイク・ラウンズ議員はこの日、妻のがん治療に付き添うために欠席した。

法案は、連邦予算から今後5年間で新規に5500億ドルを支出する内容。
1100億ドルを道路や橋、660億ドルを旅客および貨物鉄道、650億ドルを電力供給網、同じく650億ドルを高速インターネット網、390億ドルを公共交通機関、75億ドルを電気自動車用充電設備の整備にそれぞれ投資する。鉛製水道管の交換など、水道施設の刷新にも550億ドルを充てる。

法案の支持者らによると、大規模な投資による経済成長や雇用創出の効果も期待できる。ホワイトハウスによれば、連邦政府による公共交通機関や上下水道、クリーンエネルギーの送電と電気自動車用インフラへの投資としては史上最大規模。災害や気候変動への対策強化、高速ネットサービスの農村部や低所得層への拡大も図る。

老朽化するインフラの再建は長年、民主、共和両党が支持する優先課題と位置付けられてきたが、超党派の合意には至っていなかった。上院では数カ月前から両党の議員グループとバイデン政権が調整を続けていた。

バイデン氏は10日、ホワイトハウスでハリス副大統領とともに法案の可決を歓迎し、共和党議員らの支持に感謝するとコメント。議員らに直接、電話で謝意を伝えたことを明らかにした。

インフラ法案が増税につながることはないとされるが、議会予算局は先週、今年から2031年までの間に財政赤字が2560億ドル上積みされるとの推計を示した。

与党・民主党は同法案と並行して、さらに3.5兆ドル規模に上る社会福祉投資法案の成立も目指してきた。民主党のペロシ下院議長はインフラ法案について、社会福祉投資法案が上院を通過するまで審議しない構えを示してきたが、共和党や民主党内穏健派はこの姿勢を批判している。【2021年8月11日 CNN】
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日本の2021年度予算の国の一般会計歳出が106.6兆円ですから、102兆ドル(約130兆円)というのはやはり大規模です。

難航も予想された下院も11月に可決。法案はバイデン大統領の署名をもって成立しました。

****米下院、1兆ドルのインフラ投資法案可決 大型歳出法案は先送り****
米議会下院は5日、バイデン政権の経済政策の柱の一つである5年間で総額1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資法案を可決した。バイデン大統領の署名を経て成立する。

もう一つの柱である気候変動・社会保障対策に10年間で総額1・75兆ドルを投じる大型歳出法案は与党・民主党内の意見集約ができず、採決を11月後半に先送りした。
 
バイデン政権にとっては、3月に成立した1・9兆ドル規模の新型コロナ経済対策に続く大型経済対策となる。バイデン氏は声明で「今夜、我々は国家として記念すべき一歩を踏み出した。数百万人の雇用を創出し、21世紀の経済競争に打ち勝つ道筋をつける一世一代の法案だ」と強調した。(中略)
 
老朽化が進むインフラの刷新は米国の長年の課題だった。オバマ、トランプ政権もインフラ投資計画を策定はしたものの、党派対立などに阻まれ実現できずにいた。急速な物価上昇などで求心力が低下するバイデン政権はインフラ問題の解決に一定の道筋をつけたことを政治的な成果としてアピールしたい考えだ。
 
インフラ投資法案をめぐっては、バイデン氏と超党派議員の合意に基づき、8月10日に上院で可決していた。しかし、もう一つの柱である大型歳出法案の取りまとめが民主党内の意見対立で難航。同党内の大規模支出派と財政規律重視派の調整が長引き、インフラ投資法案の下院採決が大きく遅れていた。
 
巨額のインフラ投資に伴う財源は新型コロナ経済対策の未使用分や、インフラ投資をテコにした経済活性化に伴う税収増などでまかなう計画。ただし、増税に反発する野党・共和党に配慮して当初予定した法人増税は見送った。

この結果、支出に見合う財源が確保できなくなり、米議会予算局(CBO)の推計では同法施行で連邦政府の財政赤字は10年間で計2560億ドル増加する見通し。【2021年11月6日 毎日】
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上記のような経緯を経て成立したインフラ法案はバイデン大統領にとっては数少ない「実績」の目玉政策であり、そのアピール演説直前の今回橋崩落事故でした。
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