孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  「合意間近・大詰め」から「和平協議中断」へ 揺れる米・タリバンの和平協議

2019-09-08 22:33:32 | アフガン・パキスタン

(米代表団との和平協議を続けるタリバーン幹部=2019年7月7日、ドーハ【98日 朝日】 彼らはタリバン全体をきちんとコントロールできるのでしょうか?)

 

【女性の権利は「イスラムの教えと伝統に沿った形で守る」?】

アフガニスタンにおけるタリバンとアメリカの和平協議が目まぐるしい動きを見せています。

 

****アフガン和平案「合意」 米特使、トランプ氏の承認待ち タリバーン、テロ続行****

米政府でアフガニスタン和平を担当するカリルザード和平担当特使は2日、米国とアフガニスタンの反政府勢力タリバーンとの和平合意案が「まとまった」ことを明らかにした。

 

トランプ米大統領の承認を待つ段階にあるとして、和平協議が大詰めにあることをほのめかした。

 

ただ、アフガニスタンではこの日もタリバーンによるテロ事件が起きており、和平への道は険しいものとなっている。(中略)

 

基本合意の内容については、米国がアフガニスタンに駐留する米軍約1万4千人のうち約5千人をアフガニスタンの五つの基地から135日以内に撤退させ、タリバーンアフガニスタンを拠点にした国際的なテロ活動を許さない、というものだと説明した。

 

さらに、カリルザード氏は、和平合意後にタリバーンアフガニスタン政府の代表者、他の民族・政党代表が集う会議が始まるとの見通しも語った。その場で、米軍撤退後のタリバーンアフガニスタン政府との停戦に向けた協議が進められる計画だという。

 

米国は2001年9月の米同時多発テロ後、テロを首謀した国際テロ組織アルカイダをかくまっているとして、アフガニスタンの当時のタリバーン政権に対する空爆を開始。以来、駐留米軍とタリバーンとの戦闘が続いている。

 

その一方で、両者の和平協議は続いており、9回目の協議が1日に中東カタールで終わったばかり。そこで基本合意に至った模様だ。

 

ただ、カリルザード氏は、残りの約9千人の撤退については言及しなかった。複数のタリバー幹部が朝日新聞の取材に明かしたところによると、9回目協議のたたき台となった合意案は、米軍の完全撤退は「段階的に」「14カ月以内に完了」となっている。

 

インタビューを前に、カリルザード氏はアフガニスタンガニ大統領に和平協議の現状を説明。ロイター通信によると、大統領報道官は2日、米側から示された合意案を精査して、政府としての見解を示す見通しを明らかにした。

 

一方、タリバーンはテロ活動の手を緩めていない。首都カブールでは、カリルザード氏のインタビューが行われた2日に外国人が多く暮らす居住区でタリバーンによる爆破テロが起き、16人が死亡、119人が負傷した。

 

タリバーには、早期の和平合意を促すために米国を揺さぶる狙いのほか、合意後に開かれる予定のアフガニスタン政府などとの停戦に向けた協議を念頭に、自身の立場を誇示する意図があるとみられ、治安が良くなる兆しはない。【94日 朝日】

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18年という「最長の戦争」により、米軍は2400人の戦死者を出し、数千億ドルの戦費を費やすところとなっており、トランプ大統領としてはこの戦争から米軍を撤退させることで次期大統領選挙において大きな「成果」をアピールしたい狙いと言われています。

 

紛争が停止することは実に喜ばしいことですが、問題は停戦後どうなるのかというところです。

大方は、米軍が手を引けばアフガニスタン政府は長くはもたないだろうと予想しています。

 

アフガニスタン政府崩壊後に出現する第2次タリバン政権において、市民の権利、女性の権利は守られるのか?

 

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・・・一方、タリバーンが守る項目には「外国人がアフガニスタン領内から世界の国々に脅威を与えることを許さない」ことが挙げられている。

 

「外国人」とは、2001年の米同時多発テロを首謀した国際テロ組織アルカイダの残存勢力を意識した文言だ。米国はさらに「外国人による戦闘員や資金の調達」も許さないよう求めているが、タリバーンは渋っているという。

 

また、タリバーンが「撤退作業中の米軍を攻撃しない」ことや「アフガニスタンの軍人や外国籍の収容者を解放する」ことも盛り込まれている。タリバーンが監禁している大学教授の米国人と豪州人計2人を念頭に置いた項目だ。

 

人権や表現の自由の保障も挙げられているが、1996年から01年まで続いたタリバーン旧政権下で国際的な批判を浴びた女性の権利は「イスラムの教えと伝統に沿った形で守る」との条件付きになっている。

 

タリバーン交渉団の一人は「女性から教育や就職選択の権利を奪うことはしないが、国家元首になることは許さない」と語る。

 米

軍撤退後の、タリバーンアフガニスタン政府との停戦交渉も議論の的だ。骨子では、タリバーンが「即座」にアフガニスタン政府代表者などと話し合うことや、他の民族・政党と権力を分け合う「包括的な政権」づくりを目指す方針も掲げられた。タリバーンの権力独占を防ぎ、政情を混乱させずに撤退したい米政権の思惑がにじむ。【92日 朝日】

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【米国内、アフガニスタン政府の懸念】

トランプ政権としては、「後は野となれ山となれ」ではなく、きちんと今後について合意したといいたいのでしょうが、“女性の権利は「イスラムの教えと伝統に沿った形で守る」との条件付き”・・・・どこまで信用していいのか? “条件”がどういうものなのか?

 

アメリカ国内でも、米軍撤退後、タリバンが権力を求めることで「全面的な内戦」が生じることを懸念する声が上がっています。

 

****アフガン撤収で拙速回避を=元米大使ら9人が声明****

駐アフガニスタン米大使経験者ら元米高官9人が3日、アフガン駐留米軍の拙速な撤収を避けるよう訴える声明を出した。真の和平実現前に大規模部隊を引き揚げれば「全面的な内戦」が再燃し、米国の安全保障に「壊滅的打撃」を与えかねないと警告している。(中略)

 

声明は、アフガン政府が交渉の当事者に入っておらず、過激派組織「イスラム国」(IS)も活動する中、米国とタリバンとの合意が平和をもたらすか不明確だと主張した。【94日 時事】 

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当然ながら、交渉の枠外に置かれたアフガニスタン政府もそうした点を懸念しています。

 

****アフガン政府、米タリバン和平草案に「懸念」****

アフガニスタン和平をめぐり、米国とイスラム原理主義勢力タリバンがとりまとめた合意草案について、アフガン政府報道官は4日、「懸念を抱いている」と表明した。

 

報道官はツイッターに「(駐留米軍撤収などが生む)将来の危険性を完全に分析したい」と投稿し、草案を慎重に精査する構えを見せた。

 

アフガン政府は治安の重しである駐留米軍の撤収によって、タリバンが政府への攻勢を強めることを警戒している。(後略)【94日 産経】

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アメリカ・トランプ政権は、腐敗・汚職が横行し、タリバンに対する有効な対応ができないアフガニスタン政府を見限り、タリバンとの直接交渉で米軍の退路を確保しようとしているとの指摘もあります。

 

【テロ攻勢の手を緩めないタリバン 大統領選挙妨害も】

タリバン側は、テロ攻撃の手を緩めていません。

一般的には、交渉を有利に進めるための圧力と解釈されています。

 

タリバンは831日にも北部クンドゥズを攻撃、9月2日夜にはカブール東部の国際機関や外国人の住居が集まる地区で爆弾テロがあり、ロイター通信によると、少なくとも16人が死亡、119人が負傷しています。

 

もっとも、タリバン内部も一枚岩ではなく、和平交渉に反対する勢力もあります。

 

****タリバーン指導者、暗殺未遂 内部の和平反対派、関与か****

アフガニスタンの反政府勢力タリバーンの指導者アクンザダ幹部の暗殺未遂事件が、隣国のパキスタン西部で16日に起きていたことが治安当局の調べで分かった。

 

アクンザダ幹部はアフガニスタンに駐留部隊を置く米国と和平協議を進めており、これを阻止したいタリバーンの和平反対派が関与した疑いがあるという。タリバーン内の意見の対立が激化すれば、合意間近とされる和平協議に影響が出る可能性がある。(中略)

 

アクンザダ幹部の所在先が表面化したのは今回が初めて。パキスタンはタリバーン執行部の潜伏を許す代わりに、その戦略に口出しをしてきた。

 

昨年まではタリバーンとのつながりを否定してきたが、米トランプ政権が軍事支援を凍結するなど圧力を強めたため、方針を転換。逆にタリバーンとのつながりを売りにして米国とタリバーンの和平協議の仲介役を演じている。

 

実際にパキスタンの口添えでタリバーンが動き、米国との和平協議に進展が見られたことから、トランプ氏は7月22日にパキスタンのカーン首相をホワイトハウスに招き、会談で関係改善をアピールした。【820日 朝日】

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タリバンは、今月行われるアフガニスタン大統領選挙も妨害することを明示しています。

 

****アフガンで28日に大統領選 タリバンが「妨害宣言」****

アフガニスタン和平をめぐり、米国とイスラム原理主義勢力タリバンの交渉が進展する一方、アフガンでは28日の大統領選に向けた準備が進む。

 

ガニ大統領は勝利を収めて「アフガンの統治者」として求心力を高めたい考えだが、タリバンは「民衆を欺くための策略だ」として選挙の妨害を明言。和平の行方も影響を与える可能性がある。(中略)

 

アフガンの支配者を自任するタリバンは選挙に強く反発し、8月初旬に不参加を呼びかける声明を発表した。選挙集会や投票所の襲撃を示唆している。

 

選管によると、タリバンは8月末から北部クンドゥズ州やバグラン州で攻勢を強めており、現地では投票所が設置できない状況に陥っているという。

 

タリバンは政府との対話を拒んでいるが、対話開始の条件の1つとして選挙実施の撤回を求めているともいわれている。

 

(前回選挙にも出馬した行政長官)アブドラ氏は「平和のためなら選挙から下りる用意ができている」と宣言しており、選挙の中止と引き換えに、タリバンが直接の和平交渉に応じるなら、出馬を取り下げる意向だ。

 

アフガン政治評論家のモハメド・ハキヤール氏は「アフガン政府の最優先事項は、タリバンとの進行中の戦争を止めることだ。タリバンが政府との対話に応じる姿勢を見せるのなら、選挙中止も選択肢だろう」と話している。

 

大統領選は28日に投票され、過半数に達した候補者がいない場合は上位2候補の決選投票になる。【94日 産経】

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【米兵の犠牲者を出す大規模テロに、トランプ大統領も和平協議を「中断」】

こうした頻繁なテロ活動、大統領選挙妨害の中で、95日、首都カブールでNATO軍要員を含む10名以上が死亡する再び大規模テロが。

 

****アフガン首都で爆弾攻撃、NATO軍要員2人含む10人死亡****

アフガニスタンの首都カブールで5日、自動車を使った爆弾攻撃が起き、北大西洋条約機構軍の要員2人を含む少なくとも10人が死亡した。同国の旧支配勢力タリバンが犯行声明を出した。

 

カブールでは2日にも、米軍の撤退をめぐってタリバンとの交渉を指揮する米特使がカブールを訪れていたさなかに大きな爆発が起き、多数の死傷者が出ている。

 

アフガニスタン内務省のナスラト・ラヒミ報道官によると、今回の攻撃で少なくとも10人が死亡し、42人が負傷した。

 

爆弾攻撃は、厳重な警備が敷かれているシャシュ・ダラク地区で発生。同地区は、アフガニスタンの情報機関「国家保安局」をはじめとする重要施設が集まる「グリーンゾーン」に隣接している。

 

NATOがアフガニスタンで展開する米主導の「確固たる支援任務」によると、爆発でルーマニア人と米国人の兵士が死亡した。

 

米国史上最長となる戦争の終結方法を政府が模索する中、アフガニスタンで従軍中に死亡した米軍兵士の数は今年に入ってから少なくとも16人に達した。

 

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官はツイッターに犯行声明を投稿。「殉教を求める者」である自爆攻撃者が自動車爆弾を起爆し、「外国の侵略者」が死亡したと述べた。 【96日 AFP】

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交渉中に頻発する大規模テロ・・・・交渉を有利に進めるためとはいいつつも、これではタリバン側の「和平」に対する真意に疑問が生じます。

 

早期に交渉をまとめたがっていたトランプ大統領もさすがに躊躇したようです。

 

****トランプ氏、自爆テロでタリバーンとの和平協議「中止」****

トランプ米大統領は7日、アフガニスタンの反政府勢力タリバーンとの和平協議を「中止した」とツイッターで表明した。

 

アフガニスタンの首都カブールで5日に起きたタリバーンによる自爆テロで、米兵1人を含む12人が殺害されたことを受けて決めたという。

 

米国とタリバーンの和平協議は基本合意に達し、最終段階にあったが、トランプ氏の決断で最終合意は遠のく可能性が出てきた。

 

トランプ氏はまた、タリバーン幹部、アフガニスタンガニ大統領と8日に米国で会談する予定だったが、会談もキャンセルしたことを明らかにした。

 

ただし、トランプ氏はタリバーン側に揺さぶりをかけるために中止や会談キャンセルを表明した可能性があり、その場合は和平協議自体は今後も続くとみられる。

 

トランプ氏は7日、「タリバーン指導者とアフガニスタンの大統領が8日、(ワシントン郊外にある大統領専用の)キャンプデービッド山荘で、私と個別に秘密会談する予定だった」とツイッターに投稿。だが、タリバーンによる5日の自爆テロを受けて、「私は即座に会談をキャンセルし、和平交渉も中止した」と表明した。

 

トランプ氏はさらに「タリバーンは、非常に重要な(米国との)和平協議を続ける間も停戦に合意できず、12人の無実の人々を殺害するなら、意味ある合意に向けた交渉をする力はない。あと何十年、戦い続けるつもりなのだろうか?」とツイートし、和平協議を続ける間も自爆テロを行ったタリバーンを非難した。

 

米国とタリバーンの和平協議をめぐっては、米政府でアフガニスタン和平を担当するカリルザード和平担当特使が今月2日、タリバーンとの間で「(和平の)基本合意に達した」と発表。ただ、「米大統領が承認するまで(合意は)確定しない」とし、トランプ氏の最終判断を待っている状態と説明していた。(中略)

 

「米国第一」を掲げるトランプ氏は、在外駐留米軍の撤退を進めることで米国の費用負担減をめざし、アフガニスタンからも完全撤退を模索している。

 

米政府は昨年7月からタリバーンとの和平協議を断続的に続けており、9回目となる協議が今月1日に終わったばかりだった。【98日 朝日】

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タリバーンは、非常に重要な(米国との)和平協議を続ける間も停戦に合意できず、12人の無実の人々を殺害するなら、意味ある合意に向けた交渉をする力はない。」・・・・トランプ大統領としては珍しくまっとうな発言です。

 

ただ、北朝鮮との交渉の例もありますので、単なる“揺さぶり”なのかも。

トランプ流の奇策は短期的には大きな効果を生みますが、長期的にはその言動が信頼されなくなるという大きな問題があります。

 

いずれにしても、タリバン側がテロ活動を停止しない限り、いくら「和平」に関して合意しても意味がないように思えます。


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