孤帆の遠影碧空に尽き

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Qアノン 拡散する陰謀論 トランプ大統領が容認するなかで米政界にも進出 欧州でも極右と親和性

2020-10-07 22:58:50 | アメリカ

【9月25日 BBC】)

 

【「トランプvs悪のエリート」という構造のこの戦いの結果、いずれヒラリー・クリントン氏など著名人が逮捕され処刑されることになる】

世の中には奇妙な考えに取りつかれる人々がいるもので、アメリカ大統領選挙絡みでときおり目にする「Qアノン」と呼ばれる陰謀論もそのひとつ。

 

****【解説】 Qアノン陰謀論とは何か、どこから来たのか 米大統領選への影響は****

「QAnon(キュー・アノン)」と呼ばれる極端な陰謀論は、アメリカを中心にオンラインで人気を増している。そしてその支持者は、どうやら自分のことが好きなようだと、ドナルド・トランプ米大統領が発言するに至った。

 

トランプ氏は8月18日の定例記者会見で「Qアノン」について意見を求められ、「この国を愛する人たちだと聞いた」と答えた。「おそらく僕のことが好きらしいというほかは、実際は何も知らないんだ」

 

フェイスブックやツイッターといったソーシャルメディア各社は、「Qアノン」の過激で突拍子もない主張を広める動画やサイトにリンクする何千ものアカウントやアドレスについて、削除や凍結など厳しい姿勢で臨んでいる。

 

では、「Qアノン」とは何で、どういう人たちがその内容を信じているのか。

 

いったい何なのか

「Qアノン」の中心にあるのは根拠のない陰謀論で、「政財界とマスコミにエリートとして巣くう、悪魔崇拝の小児性加害者たちに対して、トランプ大統領は秘密の戦争を繰り広げている」というのが主なテーマだ。

 

この陰謀論を様々な形で吹聴する「信者」たちは、「トランプvs悪のエリート」という構造のこの戦いの結果、いずれヒラリー・クリントン氏など著名人が逮捕され処刑されることになると憶測を重ねている。

 

これが基本的なあらすじだ。しかし、ここから派生して大量の諸説が派生し、ぐるぐると迷走し、論争になったりしている。

 

「Qアノン」の主張の全容は膨大で、お互いに矛盾することが多い。支持者たちはニュースや歴史的事実に数秘術などを適宜、組み合わせては、独自の突拍子もない結論に至ったりしている。

 

そもそもの発端は

2017年10月に、匿名掲示板「4chan」に「Q」を名乗るユーザが連投した。「Q」は、自分が投稿しているのは「Q承認」という米政府の機密レベルの内容だと主張した。

 

一連の投稿はやがて、「Qドロップ」や「ぱんくず」と呼ばれるようになった。トランプ支持のテーマやスローガンや誓いの言葉などが散りばめられ、はたからは分かりにくい言葉遣いの内容が多かった。(中略)

 

本気にしている人はいるのか

実は、かなり大勢いる。4chanなどからフェイスブック、ツイッター、レディット、YouTubeなどへ流入した「Qアノン」的投稿の量は2017年以降、爆発的に増えている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の最中に、またさらに増えたようだ。

 

ソーシャルメディアの様子から判断するに、「Qアノン」の突拍子もない主張の少なくとも一部を信じる人は、数十万人はいる。

 

「Qアノン」の主張を完全に否定したと思える出来事があっても、その陰謀論の人気は衰えない。たとえば、初期の「Qドロップ」は、ロバート・ムラー前特別検察官によるロシア疑惑捜査ばかりを取り上げていた。

 

「Qアノン」の支持者たちは、ムラー特別検察官が捜査しているのは実は2016年米大統領選へのロシア介入疑惑ではなく、それは大がかりな見せ掛けに過ぎず、捜査は実は小児性加害者の集団に関するものだと言い張っていた。ムラー氏の捜査は終結し、小児性加害者についての一大暴露などまったくなかった。すると陰謀論好きの関心は別のことに移っていった。

 

熱烈な支持者は、そもそもQは自分のメッセージにわざと誤情報を織り交ぜているのだと主張する。そう主張することで、自分たちの信じる陰謀論は彼らの頭の中で反証不可能になるというわけだ。

 

どういう影響が

「Qアノン」の支持者たちは、小児性加害集団の犯罪隠しに加担していると信じ込んだ政治家やジャーナリスト、有名人を「敵」と認定し、否定的なハッシュタグやメッセージを大量に投稿する。

 

自分たちの陰謀論に沿って「敵」とみなした相手をオンラインで攻撃するだけではない。ツイッターが「Qアノン」に対抗措置をとったのは、「オフラインで実害」があり得ると判断したからだという。

 

具体的な脅迫やオフラインでの行動が理由で逮捕された「Qアノン」信者もいる。

2018年には、大量の武器を装備した男がアメリカ中西部のフーバー・ダムにかかる橋を占拠した。この有名な事件では、マシュー・ライト被告(32)が後にテロ罪で起訴され、有罪を認めた。

 

米大統領選への影響は

米ピュー研究所の調査によると、ほとんどのアメリカ人は「Qアノン」について聞いたこともないと答えている。しかし、多くの信者にとって、自分は「Qアノン」を信じるからこそトランプ支持者なのだという、その発想の根幹をなしている。

 

過去にトランプ氏はわざとか知らずしてかは不明だが、「Qアノン」支持者の発言をリツイートしてきた。息子エリック・トランプ氏もインスタグラムに、「Qアノン」のミーム(拡散用の動画・画像)を投稿している。

 

11月3日に大統領選と合わせて行われる連邦議会選挙では、数十人の「Qアノン」支持者が出馬している。ほとんどに当選の見込みはないが、ジョージア州から連邦下院選に出馬しているマージョリー・テイラー・グリーン候補は当選の可能性が高いとみられる。

 

「Qアノン」支持者や、少なくとも陰謀論に同調的な人がかなりの確率で、アメリカの連邦議会議員になりそうだ。

【9月25日 BBC】

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【Qアノン運動は「オンライン宗教」であるとの指摘も】

“Qアノンは、民主党の政治家らが首都ワシントンのピザ店で小児虐待組織を運営しているなどとした、2016年大統領選前に出回った陰謀論「ピザゲート」から派生した。”【10月7日 BBC】ということで、民主党的なエスタブリッシュメント・政治エリートへの反発が基盤になっているようですが、Qの謎めいた言葉・暗号を散りばめた抽象的な表現を解釈する(事実と異なったら、解釈が違ったとされる 「ノストラダムスの大予言」みたい)謎解きゲーム、さらに最終戦争ハルマゲドンに至る宗教的発想の側面も。

 

****FBIが「民主主義の脅威」と名指した陰謀論グループ「QAnon」の実態に迫る*****

(中略)

QAnonは、常にQの発する暗号とトランプ大統領の発言を関連付けている。

 

Qは国家機密に近づける諜報機関、安全保障担当部門に所属する人物と思われている。(中略)QAnonは、QがDeep Stateのエリートに対する反革命のプロットについて少しずつ情報を提供していると信じている。

 

Qが提供する暗号情報の真偽はトランプ大統領の演説のなかに織り込まれた言葉やフレーズによって裏付けられると考えている。

 

QAnonは、リベラル派のエリートに対する反革命を「大覚醒(the Great Awakening)」と呼んでいる。QAnonは、リベラル派の嘘をすべて明らかにする「大覚醒」を「福音的真実(gospel truth)」と捉えている。(中略)

 

QAnonは、このDeep Stateに対する反革命を「善」と「悪」の最終戦争であると主張する。これは『聖書』に書かれた世界終末の最終戦争ハルマゲドン(Armageddon)の考え方に通じる。

 

その過程を経て、トランプ大統領はアメリカを“再び偉大な国家”にするというのが、QAnonの考え方である。ちなみに多くのアメリカ人は、世界を善と悪と戦いの場であると考える傾向が強い。最後の審判であるハルマゲドンが必ず起こること信じているのである。

 

■  QAnon運動は“オンライン宗教”である

Qから断片的に提供された情報は「drops」と呼ばれるルートを通して提供される。この情報は暗号化(code)されており、「crumbs(パンくず)」と呼ばれる。

 

このパンくずを集め、分析する解釈者は「baker(パン屋)」と呼ばれる。パンくずを集めたパン屋は、Qが提供した情報に特定の解釈を与える。その解釈を巡って、チャットルームでQAnonは議論を行う。その議論はあたかもインターネット上のゲームのようなもので、参加者は謎解きに加わり、仲間と同志的な共感を得るようになり、次第にQAnon運動に取り込まれている。

 

(中略)QAnon運動は「オンライン宗教」であるとの指摘もある。社会から疎外され、不安を抱く若者が自分の場所を得る場所であり、自己主張できる場所でもある。これは日本の新興宗教にも似た側面がある。

 

もうひとつの側面として、QAnonの宗教的発想がある。ジャーナリストのボニー・クリスチャン氏は、QAnon運動は宗教運動に似ており、「QAnonはエバンジェリカルや原理主義キリスト教徒の一部に共通する終末論的な発想に基づいている」と指摘する(中略)。

 

したがってチャットボードでの会話に頻繁に『聖書』の言葉が引用される。コンコーディア大学のQAnon研究者マーク・アンドレ・アルゼンチーノ氏も「QAnon運動の一部のグループは、QAnonの陰謀論を通して『聖書』を解釈している」と指摘する(中略)。

 

同氏は、QAnonの交流の場になっているサイト”Reddit”はあたかも秘密教団のメンバーが“共通の神”について語り合う教会のような役割を果たしているとも指摘する。(後略)【10月7日 中岡望氏 YAHOO!ニュース】

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こうして分析すれば、奇妙な、突拍子もない「オカルト政治集団」Qアノンの広がりも、興味深いものに思えてきます。かつてのオウム真理教みたいな雰囲気も。

 

最近の拡大は、新型コロナによる不安感や巣ごもりの影響も指摘されています。

 

【「反エスタブリッシュメント」を掲げるトランプ大統領の存在がQアノンの政界進出を容易に】

ただ、現実問題としては熱烈トランプ支持者として政治をかく乱する要因にも。

 

****「Qアノン」政界進出に懸念 トランプ氏も容認発言****
11月の米大統領選と同時に実施する連邦議会選で、陰謀論信者「Qアノン」を容認する候補の政界進出に懸念の声が上がっている。20人以上が立候補し、1人は当選が確実視される。

 

トランプ大統領もQアノンに肯定的な発言をしており、荒唐無稽な陰謀論を後押ししかねないとの批判を受けている。

 

「トランプ大統領は闇の政府と戦っている。証拠がある」。南部フロリダ州で下院選の共和党予備選に出馬して敗れたリバ・シェリルさん(56)は主張する。

 

(中略)信者がQの抽象的な投稿を基に「独自調査」する仕組みで、最近では新型コロナウイルス対策や人種差別への抗議運動を中傷する陰謀論も拡散している。

 

メディア監視団体「メディア・マターズ・フォー・アメリカ」によると、Qアノンの主張に支持や共感を表明するなどした連邦議員候補は24人で、うち22人が共和党、2人が独立系(9月18日時点)。敗退や撤退した候補を含めると約80人に上る。ジョージア州の共和党下院議員候補グリーン氏は当選がほぼ確実だ。

 

トランプ氏はグリーン氏を「未来の共和党のスター」と称賛した。Qアノンについて記者団に対し「私を好きらしいということ以外はよく知らない」としたうえで「米国を愛する人たちだと聞いている」と発言。

 

トランプ氏を陰謀団と戦う救世主とする陰謀論に関しても「世界を問題から救う手伝いができるなら、やる気がある」と答えている。

 

陰謀論に詳しいマイアミ大学のユジンスキー准教授は「Qアノンのグループの規模自体は拡大していない」と説明。Qアノンにはエスタブリッシュメント(支配層)や政治エリートへの反感や疑念が強く、「反エスタブリッシュメント」を掲げるトランプ大統領の存在が政界進出を容易にしたと分析する。

 

大統領選への影響に関してユジンスキー氏は「Qアノンには右派も左派もいる。少数のため影響力は限定的だ」という。ただ、政治サイト「ポリティコ」は、激戦州フロリダ州のヒスパニック(中南米系)有権者の間でソーシャルメディアを通じてQアノンを含む陰謀論が拡散し、民主党候補バイデン前副大統領の支持率伸び悩みの一因になっていると報じた。

 

新型コロナの感染拡大を受けた外出自粛により、ソーシャルメディアで陰謀論を目にする機会が増えているとされる。フェイスブックやツイッターなどはQアノン関連のページや投稿を削除したが、いたちごっことの指摘もある。【9月19日 日経】

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アメリカだけでなく、欧州でも極右と結びつく形で拡散しているようです。

 

****「Qアノン」陰謀論、新型コロナで欧州にも拡散 極右との親和性に警鐘****

米国生まれの陰謀論「Qアノン」が、新型コロナウイルス流行であおられる恐怖に乗じて、欧州に根を張ろうとしている。

 

(中略)この陰謀論が、欧州のワクチン反対派や白人至上主義者、政府に不信感を抱く人々らに受け入れられ始めている。

 

インターネット上では欧州版Qアノンが次々と立ち上がり、ベルリン、ロンドン、パリといった大都市では、マスク着用や新型ウイルス感染抑制策に異議を唱える人々が、Qのメッセージを軸とした抗議デモを行っている。

 

フェイク(偽)ニュースの監視団体「ニュースガード」は7月の報告書で、「米国での陰謀論(Qアノン)は目に見える形で広がったが、欧州でも根を張り拡散しつつあることは、あまり注目されていない」と警告。また新型コロナウイルスによる危機が「触媒」になっているとも指摘した。

 

■飛躍的な増加

ニュースガードの報告書によると、大西洋を渡ったQアノンの陰謀論は欧州版、あるいはもっと地域的なアレンジを施され、既存の陰謀論や陰謀論グループと結びついているという。7月時点でQアノンのサイトの英仏独伊を合わせたフォロワー数は45万人に届こうとしていた。

 

ニュースガード欧州サイトのチネ・ラベ編集長によると、昨年末から今年初めにかけて、Qアノン関連のウェブサイトやアカウント、グループが無数に登場し、そのフォロワーは「飛躍的に増加し続けている」という。

 

欧州版Qアノンが広めている主張は、新型ウイルスの「パンデミック(世界的な大流行)は、ビル・ゲイツ氏を頂点とする世界のエリートたちが仕組んだ、世界中の人々にワクチンを接種するための計画の一部だ」というもので、中には、感染予防策のソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)は米中央情報局が編み出した拷問手法だという主張まである。

 

インターネット上の過激思想を研究するドイツの専門家、ミロ・ディトリヒ氏は、2001年の米同時多発テロの直後など、危機の際に陰謀論がまん延することは珍しくないと話す。そして、どうにもできない状況を前に人々は無力感を抱き、非難を向ける矛先を探そうとするのだと説明した。

 

今回の新型ウイルス危機については、「外出制限が大きく影響している」と述べ、社会環境から孤立させられた人々が、インターネットを見て多くの時間を過ごしている状況を指摘した。

 

■「陰謀論のスポンジ」

フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどの大手ソーシャルメディアは、Qアノンのアカウントを禁止したが、フォロワーはより閉鎖的なフォーラム(広くデマを拡散していると思われるサイト)やより地域型の陰謀グループに移行しており、そうした空間で、移民の増加や新型ウイルスによる経済恐慌、個人の自由が失われているといった主張など、欧州で関心の高いテーマにQアノン的解釈を加えている。

 

エマニュエル・マクロン仏大統領やアンゲラ・メルケル独首相は国際陰謀団の一味だとか、ボリス・ジョンソン英首相はトランプ氏が「ディープステート(闇の政府)」と闘うためにQが投入したというような主張もある。

 

(中略)専門家らが特に憂慮しているのは、Qアノンと極右勢力の親和性だ。ドイツでは、欧州の白人人口を欧州域外出身者と入れ替える「大置換」が行われようとしているという国家主義者らの陰謀説を支持する人々の間で、Qアノンが定着しつつある。

 

ディトリヒ氏から見れば、Qアノンと極右勢力は核となる信念が共通しているため、この二つが交差することは「理にかなっている」という。「両者に共通しているのは、少数のエリート集団が秘密裏に『ドイツ人』にとって損失となる出来事を支配しており、また『主流メディア』の情報はコントロールされているため、『真実』は非主流メディアでしか分からない」という主張だ。

 

 伊誌「L'Espresso」の記者、アンドレア・パラディーノ氏は、「かすかだが、憂慮される兆候もある」という。彼が追っているQアノンのアカウントのいくつかは、武装を呼び掛けているという。 【10月7日 AFP】

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【対応を迫られる大手ソーシャルメディア】

大手ソーシャルメディアも対応を迫られています。

 

****米フェイスブック、陰謀論者集団「Qアノン」関連グループを全削除****

米フェイスブックは、陰謀論者の集団「Qアノン(QAnon)」を危険と認定し、同集団を代表するグループやページ、インスタグラム上のアカウントの削除を開始した。

 

フェイスブックは8月に暴力を礼賛する投稿をしているとしてQアノンのグループの3分の1を削除しており、今回、対策を大幅に強化した。

 

フェイスブックはブログへの投稿で、ユーザーからの指摘を受けて対応を取るこれまでの手法を改め、今後はQアノンを他の武装集団と同様に扱い、関連グループやページを探し、削除する方針を示した。(後略)【10月6日 ロイター】

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****陰謀論信者「Qアノン」増殖、リンクトインにも****

陰謀論を唱える集団「Qアノン」の信奉者が、ここにきて米ビジネス向け交流サイト、リンクトインでも自ら支持を公表し、ネット上でのプレゼンスを拡大し始めた。リンクトイン側は政治色の強い陰謀説を唱えるこうした信奉者らの存在を制限しようと対策を迫られている。(後略)【10月5日 WSJ】

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