孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エジプト 過去・現在・未来 ファラオ像・テロ・宇宙開発

2017-03-26 13:34:08 | 中東情勢

(カイロ郊外の住宅街の沼地で見つかった古代ファラオ像【3月21日 ハザードラボ】)

カイロでテロ?!】
昨夜目にした、一般的にはほとんど注目されないけど個人的にはショッキングなニュース。

****カイロで爆発、4人が死傷…日本大使館の近く****
エジプト内務省によると、首都カイロ南部マアディ地区で24日、爆発があり、ビルの警備員1人が死亡、その家族3人が負傷した。
 
地元メディアによると、ビルの敷地内で金属の物体が爆発したらしい。同地区は、日本人が多く住み、日本大使館もある。警察が原因を調べている。【3月25日 読売】
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エジプトでは従来からシナイ半島を中心にイスラム過激派の治安部隊を狙ったテロが頻発しており、最近は少数派キリスト教徒を標的にしたテロも懸念される状況になっていることは、3月10ブログ“エジプト ムバラク無罪確定に見る「アラブの春」終焉 トランプ政権との蜜月 キリスト教徒迫害”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170310でも触れたところです。

普段はそれほどテロの危険性を気にすることはなく、テロがあった影響でフランス・パリへの観光客が大幅に減少しているといった話を聞くと、「そこまで神経質にならなくても・・・」なんて思ったりもするのですが、今回は事情がちょっと違います。

というのは、今日3月26日、エジプト・カイロに行くからです。今は国内移動の飛行機機内でこのブログを書いています。明日早朝にカイロに到着予定です。

よりによって出発前日に、首都カイロで・・・・やはり気にはなります。続報を見ないところからすると、テロではなく、単なる事故だったということでしょうか。そうであることを期待します。

エジプトの治安状況は、前回ブログでも触れたようにあまりよくありません。
今回の観光旅行でも、スーダン国境も近いアスワンからアブシンベル(ともに世界的観光地ですが)の移動について、バスでの個人移動はやめて、現地旅行社手配の専用車に警察官が同乗して、他の車とコンボイを組んで移動することになっています。

万一の場合も頭の片隅にあって、身辺整理に関することなどを書いたメモを自宅に置いてきました。
もちろん杞憂でしょう。そうでなくては困ります。

悠久の歴史 掘れば出てくる古代遺跡
最近目にしたエジプト関連のニュース。

冒頭写真は以前カイロ郊外住宅地で発見された古代ファラオ像の話題。
エジプト文明を感じさせる話題です。

****泥沼から見つかった巨像「ラムセスじゃなかった!」エジプト****
カイロ郊外で今月9日に見つかった古代のファラオ像について、エジプト考古学博物館は、当初予想されていたラムセス二世ではなく、紀元前7世紀の「プサメティコス一世」の可能性が高いという見解を公表した。

巨大な像は、独ライプチヒ大学のディートリッヒ・ラウエ教授らの発掘チームが、アイン・シャムス地区内の住宅街の沼地から掘り出した頭と胸部。

この地区は、古代の太陽神礼拝地だったヘリオポリスの一部で、紀元前13世紀のラムセス二世の神殿があった場所だと確認されていることから、見つかった彫像も当初はラムセス像だと考えられていた。

その後の調査で、彫像の背中部分に書かれた4つの古代エジプト文字を解読した結果、この像は紀元前664年〜610年に統治したプサメティコス一世の可能性が高いことが判明。

ラウエ教授は像の特徴から「ラムセス二世像を再利用した可能性もある」と見て、全身が見つかったら高さ9メートルを超すと考えられている像の残りの発掘に意欲を燃やしている。【3月21日 ハザードラボ】
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現代エジプトの向かう先は?】
現代のエジプトに関するところでは、「アラブの春」で失脚した(はずの)ムバラク元大統領が自由の身になったという話題。

****ムバラク元大統領、自由の身に=失脚から6年ぶり―エジプト****
エジプトのムバラク元大統領(88)は24日、軟禁下にあった首都カイロの軍病院から退院した。ロイター通信が弁護士の話として報じた。今月2日にデモ隊殺害をめぐる裁判で無罪判決が確定したことを受けたもので、元大統領が自由の身となるのは2011年に失脚して以来6年ぶり。
 
ムバラク氏は11年2月、独裁政権打倒を目指す民主化要求運動「アラブの春」で大統領辞任に追い込まれた。特別法廷は12年6月、大統領退陣を求めたデモの参加者の殺害に関与した罪で終身刑判決を言い渡した。しかし、その後裁判はやり直しとなり、最終的に破棄院(最高裁に相当)が無罪と認定した。
 
元大統領はこれとは別に、大統領宮殿管理費をめぐる不正蓄財事件で14年5月に禁錮3年の判決を受けた。ただ、この事件は未決勾留期間を含めて刑期が満了し、検察当局は「ムバラク氏を拘束する理由はなくなった」と判断していた。【3月24日 時事】
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このあたりは、前回ブログでも取り上げた“既定路線”に沿った動きです。

パン一切れか宇宙か
ちょっと意外なところでは、エジプトの「宇宙開発」取り組みに関する話題。
もちろん地下資源探索というりっぱな大義名分があっての取り組みですが、そんなことに金を使っている場合か?という指摘も。

****困窮エジプト、無謀な宇宙開発****
通貨は下落、物価は高騰して、暴動の恐れも シシ大統領の甘過ぎる皮算用に国民は疑心暗鬼

エジプトの首都カイロ郊外の建築現場で、青いガラス製のビルが日差しを浴びて輝いている。真新しい複合施設に入るのは新設されたエジプト宇宙局。60年代に頓挫した計画を復活したもので、技術革新を進めて人工衛星を建造し、広大な砂漠に眠っている資源を見つけ出すという。
 
民衆の支持を得た軍事クーデターで、軍トップのアブデル・ファタハ・アル・シシが権力を掌握してから4年近く。エジプト経済の失速はガソリンスタンド前の長い行列を生み、食料価格を高騰させ、絶望した市民を焼身自殺に駆り立てている。

大統領となったシシはカイロの東に行政・経済の中心都市を新設する計画を発表し、第2のスエズ運河を建設・完成させるなど、一連の巨大プロジェクトによってエジプト経済のテコ人れを図ろうとしている。宇宙計画はその最新版だ。
 
インフラヘの投資は雇用を創出し、経済成長の起爆剤になり得る。だが多くの国民が貧困にあえぐなか、そんな余裕があるのかと疑問視する声も多い。
 
昨年8月、宇宙局新設の発表と時を同じくして、エジプトはIMFから120億ドルの支援融資を受けることに合意した。観光収入の激減などによる財政難を穴埋めし、景気を浮揚して通貨危機を乗り切ることが狙いだ。
 
IMFは融資条件として補助金削減と税制改革を求めた。エジプトに対する外国人投資家の信頼回復の兆しはあるが、今年1月のインフレ率はIMFの融資が始まった昨年11月以来最高水準に達し、果物や野菜など基本食料品の価格が急上昇した。
 
「IMFと合意した融資条件には政府債務の削減も含まれる。この時期に宇宙計画など資金の新たな使い道を模索するのは不適切かもしれない」と、ワシントンのシンクタンク、タハリール中東政策研究所のティモシー・カルダスは指摘する。
 
食料が買えない最貧困層が暴動に走る事態を避けるため、エジプト政府は是が非でもIMFの融資を必要としていると、専門家は指摘する。
 
昨夏の終わりには、通貨安による輸入品価格の高騰が引き金となり、補助金付きの乳児用ミルクや砂糖などの生活必需品、経口避妊薬をはじめとする医薬品が不足。

シシは9月末、政府債務を軽減するための基金に、銀行取引の際の釣り銭を寄付するよう国民に呼び掛けた。それが反発を招き、貯金箱に潜んだシシが小銭をくすねる動画がソーシヤルメディア上に出回った。

真の進歩を妨げる恐れも
多くの国民が自暴自棄になっている。10月中旬には、アレキサンドリアでタクシー運転手が物価高騰に抗議して焼身自殺した。

あるトゥクトゥク(三輪タクシー)運転手が経済への不満をまくし立てる動画もネットに出回った。「写真の中のエジプトはウィーンそっくりだが、実際に街に出ればソマリアそっくりだ。役人がどうでもいい国家プロジェクトのカネ集めにかまけている間に、俺たちの教育水準はどん底だ」
 
宇宙局の新設もそんな国家プロジェクトの1つだが、過去には経済的恩恵をもたらせなかったものも少なくない。14年、シシ政権はスエズ運河拡張のために元の運河の隣に第2のスエズ運河を建設した。その際、84億ドルの投資によって23年までに運河の通行料収入を年間130億ドルに倍増できると請け合った。だが現実には、昨年の毎月の収入は前年同期比で減少している。
 
宇宙開発はどの国でも政府の野心と資金を引き付けるものだが、エジプトはどうもこの分野が得意ではないようだ。10年には07年にウクライナと打ち上げた初の観測衛星「エジプトサット1」が制御不能に。宇宙開発ではめったにない失敗だった。
 
大学に投資し、研究を「縁故主義と検閲」から解放しない限り、政府がもくろむ人工衛星による景気テコ入れも期待外れな結果になりかねない。「エジプトの政治経済や治安を立て直すための、その場しのぎのダイエットのようなアプローチが、真の進歩を妨げてきた」と、カルダスは言う。

資源発掘という大義名分
エジプトも経済改革に取り組んでこなかったわけではない。昨年11月には変動相場制への移行とともに、燃料補助金の削減を実施。

金融部門ではこの決定を支持する声が多かったが、ガソリンスタンドには値上げ前にガソリンを買おうとする消費者が詰め掛けた。補助金削減が長期的には成長を促すと期待する声は多かったが、世界銀行の予測では17年のGDP成長率は4%で、昨年の4・3%から減少する見込みだ。
 
ドナルドートランプ米大統領と親しいシシは、米軍からの年間130億ドルの軍事援助の増額を期待している。だが人工衛星も大いに当てにしている。
 
「パン一切れか宇宙かを選べというのかと言われるが、人工衛星は資源発掘の手段だ」と、宇宙計画を監督するエジプト国立リモートセンシング宇宙科学機関(NARSS)を率いるモハメド・アデルヤヒアは言う。

彼によれば、この種の衛星に搭載されるセンサーは、地下のデータを収集し、鉱物や原油を探索したり、砂漠の多いエジプトにとって重要な資源である水などの在りかを突き止めるのに役立つという。「この衛星は私たちがパンを提供するのに不可欠だ」
 
政府寄りのエコノミストであるモフタル・アル・シェリフは、経済危機の時こそ貧困を切り抜ける一助となるインフラの整備に大掛かりな投資をするべきだと主張してきた。「ビルを建てるには、まず土台を築かなければならない」
 
アデルヤヒアも、独自の衛星を打ち上げなければエジプトは中東の他の国々に後れを取ると主張する。エジプトの近隣諸国は、そうしたプロジェクトの経済的恩恵を力説してきた。
 
イスラエルは宇宙計画の拡張で最高60億ドルの収入が期待できると主張。アラブ首長国連邦(UAE)はNASAで1万7000人余りのスタッフが働いていることを引き合いに出して、火星へのミッション計画などの宇宙プログラムが雇用創出に役立つと主張している。
 
多くのエジプト人は政府の主張に懐疑的だ。「国の言うことをうのみにはできない」と、ある若いウェブ開発者は匿名を条件に語る。テクノロジーに通じた22歳の青年なら宇宙計画の話に刺激を受けそうなものだが、彼は納得していない。「巨額の援助のおかげで資金には困らないかもしれないが、そのカネの使い道は闇に包まれたままだ。計画が実現するかどうかすら疑わしい」
 
IMFは今春、エジプトに次期融資を行う。しかしエジプト経済が長期的に安定するかどうかは、月の裏側と同じでなかなか見通せない。【3月28日号 Newsweek】
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“目先のパン一切れ”にこだわることなく、将来的目標を見据えた取り組みが重要・・・・というのは、ごもっともな言い分ですが、エジプトの現状、シシ政権のこれまでの実績を見ると、“その場しのぎのダイエットのようなアプローチ”という指摘があたっているようにも。えてぃ


成田空港に到着 チェックインがすみました。
今回はエティハド航空でアブダビ経由です。はじめて使う航空会社ですが、リッチな中東の会社ですから設備などは良いのでは。

明朝5時にカイロ着です。長いフライトになります・・・・・。

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